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領土を持たない系の渡邊帝国はアメリカ合衆国で外交上承認されるのか (2)

   モンタナ級戦艦セセ-1(セセ-1)

   グレーブセンド湾 ブルックリン区 ニューヨーク市

   昭和一四(一九三九)年 七月一日 午前五時二八分


 スマートフォンのアラームが鳴っていた。


 目覚めた光の前には、オレンジ色の灯りに照らされた見慣れない壁がある。


 アラームは日の出の時間に合わせていた。次に目を開けた時には転移しているはずだったから、もう此処は一九三九年の世界なのだろう。


 光の寝ているこの船長室は、戦艦アイオワに設けられた、ルーズベルト大統領の宿泊した船長室(FDR Cabin)を再現していたはずだ。


 うつ伏せのまま顔を反対方向へと向けると、そこはLの形をした部屋だった。短い横線に置いたベットで、頭を長い縦線に向けて寝ていた。オレンジの人工的な光は、縦線の左側にある開いた扉から溢れている。


 少し躊躇ってから、光はこう呟いた。


 「‥‥ああ。‥‥知らない天井だ」



 軽く朝食を済ませて身嗜みを整えた光は、右舷の甲板へ降りて船体を大きく一周した後で、一番砲塔上面から右舷に伸びるキャンバス地の日除け下に佇んでいた。セセ-1だけは、日除けが、一番砲塔・四番砲塔の上面から、左右の弦側へと張られている。


 セセ-1の船体には、縦に、横に、斜めにと、明かりの消えている電灯が、星の数ほどぶら下がっていた。


 見れば、船首を一二時として、一時にあるフォート・ハミルトンから、五時方向にあるコニー・アイランドまでの沿岸部は黒山の人集りだった。一定の距離を空けて、多くのヨットやボートも集まっている。編隊を組んだ飛行機の姿も見えていた。


 人の目を集める試みは成功したらしい。



 昨晩といってよいのかはわからないが、もう一人の光と話しているうちにこうなった。


 午前〇時から日の出までは、コニー・アイランドにあるルナ・パーク、スティープルチェース・パークといった遊園地が霞むほど、二〇二三年の基準でも過剰なほどに、イルミネーションで一六隻の戦艦を飾り立てようと。


 光の乗っているセセ-1からセセ-8までの八隻の戦艦は、コニー・アイランド寄りに、一列縦隊の第一戦艦戦隊として、ロッカウェイ海峡を抜けて、ザ・ナロウズに向かうような形で停泊している。


 セセ-1の船尾は、コニー・アイランドとホフマン・アイランドを結ぶ線を超えたあたり。セセ-8の船首が、コニー・アイランドのマンハッタン・ビーチに差し掛かったあたりにある。


 セセ-9からセセ-16までの八隻の戦艦は、一列縦隊の第二戦艦戦隊として、ホフマン・アイランドとスウィンバーン・アイランドの東側に、自由の女神のあるリバティ・アイランドに突入するかのように停泊していた。


 スタテンアイランドのサウスビーチにも、コニー・アイランドのように遊園地がある。北のフォート・ワズワースから、南のミラー・フィールドまで、第二戦艦戦隊を目当てに、同じような人集りがあるはずだ。


 ミラー・フィールドは、第一次世界大戦中、合衆国で初めて戦闘中に戦死した陸軍の航空操縦士ジェームス・イーリー・ミラー大尉の名を取って名付けられた、芝の滑走路を持つ飛行場だ。


 そして、フォート・ワズワースにも、フォート・ハミルトン同様に、沿岸砲が整備されている。



 光は、フォート・ハミルトンに目を向けた。その手前にある島はフォート・ラファイエット。


 フォート・ハミルトンには六つの砲台があると聞かされていた。スマートフォンで確かめてみると、一二インチ沿岸砲二門が一つ。一二インチ沿岸迫撃砲八門が一つ。一〇インチ砲M1900二門が一つ。六インチ砲M1900二門が二つ。三インチ砲M1903二門が一つ配備されていた。

 

 

 

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