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第六話

注、この作品は主人公の一人称のみで構成されています

 あんな事を言っておきながら、ベラトリクスもクロも頼れるアテがある訳でも無く、その日その日を生き抜く放浪者のような生活をしている様子でした。少々呆れに近い感情を抱きながらも、やると決まった事はやり切らねばなりません。私はこの二人についていく他ありませんでした。

 食料を調達する話になった時、私は純粋にどうやって調達しているのか興味をそそられました。二人は「獲物が見つかるといいけど」などと言いながら国を出て、森へ向かいます。

「え、狩りでもするんですか…!?」

「うん、そうだよ」

 当たり前だろう、というような顔をしてクロは言います。もう、野生に帰っちゃってますよね!?

「あ、そっち行きました!」

「任せておkあれっ…ううむ、しくじったか…」

「ベラ婆の分まで俺がっ!」

 …でも、実際狩りをしてみるととても楽しくて、最初に抱いていた呆れはどこへやら、私は二人と共に獣を追い回していました。けれど、いつまでもこうしては居られません。最低限文化的な生活をしなければ…!

 綺麗な清流の水を飲み核を潤しながら、私は二人にいつまでも森暮らしはしたくない事を伝えました。二人は私と同意見だったようですが、反論も持ち合わせていました。

「金を稼ぐのが難しいんだよな〜」

「儂らは皆、はたから見れば幼い体躯の子供じゃからのう。まず仕事がなかなか貰えなんだ」

 失念していました。子供が労働しお金を得られる環境というのは、残念ながら限られています。そう、だからこそ森暮らしだったのです。

「頼れる人物が居りゃあ良いんだけどな」

 クロは言います。頼れるアテがあればこんな事にはならなかった訳です。でも、頼れるアテであれば多少は希望が見えてきます

「自警団…」

 私は呟きました。バラズ王国東部2番地区、私の故郷。私の為に色々な事を考えてくれた、父と仲が良かったあそこの自警団なら、きっと…

「自警団?」

「ふむ、どういう事か聞かせてはくれぬか?」

 私は自警団の人達の話をしました。彼らは父と仲が良かった事、私の為に色々なことをしてくれた事、治安維持に貢献している強さなど、全てを話しました。

「ワンチャン俺らの保護者になれるかもしれない位あるじゃん」

「期待度はかなり高いのう」

 そうと決まれば帰るのみ。いざバラズ王国へ!…と言うものの、バラズとベルネクスはかなりの御近所さんなのですぐ到着する事でしょう。

 そうしてバラズとベルネクスとを繋ぐ街道を歩いている時の事でした、別ルートへ繋がっている街道の分かれ道の方から見慣れた人々が歩いてくる様子が目に入ったのです。それは、自警団でした。私がよく知っているあの自警団でした。

「なっ、なんで貴方達が…!」

 思わず私は声を上げました。それにいち早く反応したのは自警団の団長さんでした

「無事だったのかっ!」

「え、知り合いなのか!?」

 クロも困惑したように言います、しかし団長さんはそんな事眼中にありませんでした。

「なんで貴方達と街道で出会うんですか…おかしいじゃないですか!?」

 私は問いただそうとしました。すると団長さんは私の前に屈んで、私の顔をまっすぐ見ながら話し始めました。

「君が売られたと知ってあの地区を棄てたんだよ。形はどうあれ君はあの人の娘だ、それを売ってしまった彼らに守る価値を感じなかった。そうだろう、人の娘を売るような奴らだぞ」

「で、でも…っ」

 私は言い返したかったけれど、言葉が出てきませんでした。

「…気になるのか、あの町の現状が」

 私はその言葉に対し深く頷きました。

「分かった、行こうか」

 しばしの沈黙の後、団長さんはそう言いました。街道を歩いている間、クロとベラトリクスは団長さんに様々な質問をしました。

「なぁ、名前はなんて言うんだ?」

「ダンテだ。それから副団長がセシル、団員はジルヴァーナ、キース、エルヴァート、ネイディアスだな」

 団長さんが名前を呼ぶと団員さんが一人ずつ手を挙げて自分が誰かを示します。

「のう、今は何の仕事をしておるんじゃ?」

「今は傭兵をやってる。傭兵団の団名はリカオンだ」

「なぁなぁ、セブンとはどんな関係なんだよ?」

「彼女の父親と仲が良くてね、団ぐるみ家族ぐるみの付き合いだった。俺から言わせれば妹や姪みたいなもんだな。セブンちゃんがどう思ってるのかは知らないが」

 い、妹なんですか…

「というか、昔から疑問だったんだけど何で自警団が存在するんだ?」

「うむ、それは儂も気になるのう」

「国家の平和を守る筈の騎士が役立たずだからだ。…きみ達、まだ十代だろうに"昔から"ってなんだよ(笑)」

「何だっていいだろ〜」

「儂は中々特殊な事情があるんじゃよ」

 そんな事を話しているうちにバラズ王国の城門が見えて、久しぶりの母国に私は安心感を覚えました。団長さんが私に最終確認をしてきました。本当に良いんだな、と。もちろん私は深く頷きました。

「久々のバラズですね、団長」

 副団長さんが団長さんに話しかけました。それに対し、団長さんは小さな声で副団長さんに何かを伝えていました。

 バラズ王国東部、1番地区を抜け…ついに帰ってきた2番地区は酷い、酷い有様でした。

「俺達自警団が治安維持をやめて姿をくらましたから、崩壊したんだ」

 そこら中にゴミが散らかり、強面の知らない人たちがナイフ片手に道を闊歩しています。ネズミや虫が這い回っている上、あらゆる方向から喧騒の声と血の匂いがする、最悪の町になっていました。

「団長の要望で、近隣地区の自警団にもここの治安維持引き継ぎは行われなかった。…その価値すら無いと我々は考えたんだよ」

「そんな…」

 私は何も言えませんでした。

「他人の娘を売ってその金を住民で山分けするような町が、どこまで墜ちるんだろうなと思ってな」

 団長さんは言います。確かに彼らは酷いことをした、でもここまでする必要なんて…

「セブンちゃん、アンタこう思ってるね?"ここまでする必要は無かったんじゃないのか"ってさ」

 団員のジルヴァーナさんが言いました。私はそれに対し、何も言わずにただ頷きました。

「もともとね、この地区は闇に溢れた場所だったんだよ。表沙汰にならないように住民たちが隠蔽してただけで、あの頃から危ない薬の売買含む違法取引なんかがあった」

 初めて知ったこの町の真実に、私は吐き気を覚える程でした。強い衝撃と嫌悪感が私を包み込んでいきました

(おれ)たち自警団は騎士じゃねーから強い権限がなくて無視せざるを得なかった。…もともと、己たちはこの町に希望なんて見てなかったんだ」

 キースさんが続けます。そして団長さんが語りだしました

「そんなクソみたいな地区で唯一、完全にピュアだった世界…それがセブンちゃん達とあの魔法薬販売店だったんだ」

「だからセブンちゃんが売られた時に、アタシらはこの地区を棄てたってワケ」

 ジルヴァーナさんが話を結んだ直後、クロが声を上げました

「なんで騎士は動かねぇんだよそんな状況で」

「さぁな、俺には分からん。…だが、それが騎士ってものなんだ」

 団長さんがすぐに答えます。クロは団長さんの疲れたような目を見て、黙りこくってしまいました。

「のう…後ろの奴ら、儂等を狙っておるように見えるんじゃが…」

 ベラトリクスがそう言い、全員が後ろを向くとそこには包丁を持った男が数人いました

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