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第二話

注、この小説は主人公の一人称のみで構成されています

 自警団のリーダーさんは一緒にいてなんとなく安心感がある人で、父とも仲良くしていました。彼なら私の仕組みの話をしてもいいのでは、という思考が私の中を渦巻き、集中できず片付けの手が動かないまま気づけば数十分が経っていました。

「大丈夫かい? 気がそぞろなようだけど」

 絶好の機会、と思うと同時に本当に言っていいのか、という思いが生まれ、考えがまとまらず私は適当に返事して片付けを再開しました。片付けを進めている間、リーダーさんは心配そうに私の方を何度も確認していました。

 

 ***

 

 父の遺品をすべて片付け、さっぱりとした我が家の三階、元研究室の中、私は自警団のリーダーさんと向かい合っていました。自分の仕組みの話を打ち明けようと決めたのです。

「そうか…辛かったな」

 リーダーさんとじっくり話して、私の仕組みの件は秘密にする事、辛くなったらいつでも自警団の拠点に来てもいいという事が決まりました。なんだか、気が楽でした。私は大切にされている、という実感が湧いて、ほんのちょっとだけ自分という存在に希望を感じました。ふと窓の外を見るともう陽が落ちかかっていました、リーダーさんはそれを確認すると私に

「セブンちゃん、君のこれからの事は俺達が既に色々考えてあるんだけど、今日は時間が時間だしまた明日話すよ」

 と言って帰っていきました。何もかもが綺麗に片付けられ、がらりとした部屋に一人きり、私は父の優しい笑顔と、自分のこれからの運命に思いを馳せながらその夜を過ごしました。

「明日から、どうなるのかな」

 

 ***

 

 夜が明け、空が青くなり始めたくらいに一階から足音が聞こえてきました。二人か、三人分くらいでしょうか。二階で水を飲み、一階に降りると自警団のリーダーさんと、もう一人自警団のメンバーが来ていました。

「やあ、セブンちゃん」

「おはようございます」

 軽く挨拶を交わし、昨日の夜言っていた「私のこれから」についての話を始めました。私を近所の人に預かってもらう計画のようでした。父に代わる親役がいれば、という話になりこの結論に至ったそうで、私としても異論はありませんでした。この地区の絆は深く、私は皆に愛されている、という前提があったからこその計画です。私はそんな場に生きている、という事実そのものに私は感謝しました。リーダーさんは安心したような表情で私を見ていました。私が失意から立ち直れた、という風に見えていたのでしょう。実際の所は、まだほんのちょっとだけ落ち着かなかったんですが。メンバーさんが私を引き取る事に同意している御近所さんのリストを取り出しました。

「この中から、一人選んでね」

 と言われ、私はリストを覗き込みました。

 

 ***

 

 私は向かいの家に住んでいるおばさんに引き取られる事になりました。よく買い物に来てくれていたし、父とも仲が良く、とても優しい人です。この人なら安心できる、という確信をもって私はこのおばさんを選びました。

「ようこそ、セブンちゃん。ここが君の新しい我が家だよ!」

 優しい笑顔とともに歓迎され、私は自分の選択が間違いでなかった事を確信して安心しながらおばさんに挨拶しました。

「これからよろしくお願いします」

「そんなにかしこまらなくて大丈夫よ、お友達みたいに接して良いからね!」

 ハハハッ! と快活に笑い、おばさんは私の頭を撫でました。若干ごつごつとした手でした。お友達のように、とは言うものの私は友達を持ったことが無いので、引き取られてから一月くらいはどんな接し方が良いのかを悩むばかりでした。最終的には父と同じように接すれば良いと判断し、それまで何もしていなかったお詫びも兼ねて家事のお手伝いや頼まれごとをより一層頑張りました。おばさんはよくどっちが養われているんだか分からないねと笑っていました。

「毎朝コップ一杯の水だけ飲めば動けるし、いっぱい手伝ってくれてるからねぇ。おばさん助かっちゃうよ」

 新しい生活も、それはそれでとても楽しいものでした。商売をしなくなり、接客もしなくなったため他の人達との接点は減りましたが、それでも会ったときは挨拶をして、色々お話をして、可愛がられて、父の死や自分の仕組みの事が頭を離れる事はありませんでしたが、少なくとも辛くなったりはせず幸せな日々を過ごしていました。自警団の拠点にお邪魔したりする事もなく、そうしてどんどん時は過ぎていきました。

 

 ***

 

 おばさんに引き取られて5ヶ月が経ちました。もう今の生活にもすっかり慣れて、毎日おばさんのお手伝いをして、おつかいに行って、お話をする。この日々が、今度こそずーっと続くんだと信じていました。

 ある日のこと、知らない人が訪ねてきました。大きな体とどことなく怖い雰囲気、見ているだけで不安になるような人です。おばさんが玄関でその人と話しているのを隠れて見ていたら、おばさんが

「セブンちゃーん!」

 と私を呼びました。きっと挨拶しなさいと言うんだろう、パッと軽く挨拶をしてそれ以上何かしたりは無いようにしよう、と決めて私は玄関に行きました。

「どうも始めまして、セブンです」

 私がそう挨拶するとその怖い人が私の腕をがしっと掴んできました。混乱しながらおばさんの方を見ると、溢れそうなくらいに金貨が詰め込まれた袋を手に

「奴隷商さん、2、3枚くらい数を誤魔化したりしてないよねぇ?」

 と。怖い人の方を見ると

「人は見た目に依らないという事を知るべきだ」

 と。何、どういう事!?奴隷商!?なんでおばさんがあんな大金を!?なんで私はこの人に掴まれて…!?

 私はとにかく必死でした。戦闘用機構を起動し、どうにかして拘束から外れてこの場から逃げ出そうと奴隷商に攻撃を仕掛けました。ですが私の剣は奴隷商を傷つける前に止まりました。魔術によって私の腕と脚は奴隷商の意思に制御され、抗おうにも抗えず、更に別の魔術で今度は父に意識を遮断された時のような感覚が私を襲いました。私は…逃げなければいけないのに……くらくらして…抗うこともままならず……。

 

 ***

 

 遠くから声が響いたような、そんな気がします。でも遠いようで、意外と近くにある音のような気もします。これは、誰の声?

「おねーさん、いつまで寝てんだよ。おーい?」

「あまり騒ぎ立てるな、目が醒めた時に不快に思われても知らんぞ」

 誰かが私の顔を覗き込んでいました。

「…ここは?」

 私はその誰かに問いました。何があったのか、今何が起こっているのか、そのすべてがまったく分からず、見当もつかず、私は混乱と恐怖の渦の真ん中にいました。

「ここは牢屋だよ、あのおっさんが俺らの為に用意した専用の"珍しい奴隷入れ"さ」

「イロモノ枠専用牢…とは、なかなかどうして失礼だと思わないかの?」

「仕方ねーだろ、俺らはどうせ家畜同然だ。あいつにとっては」

 そこで私は始めてもうひとり誰かがいる事を認識しました。取り敢えず周囲の状況と環境を確認しなければと感じ、私は上体を起こしました。言われたとおり、そこは牢屋でした。家畜などの動物を入れておく檻のように、何一つそこにはありません。ただ敷き藁が敷かれただけの寂しい檻の中に、私と、何故か恐ろしく危ない気配を放つ小さな少年と、どこか不思議な雰囲気をまとった少女だけがいました。

時間経過、場所の変化が多くてなんだか行数稼ぎみたいになってしまったと思いながらも、書き直すのは大変なのでそのままで。まだまだ精進しなければと思います。

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