no.5
グリーデルダはぼくらを乗り物の前へと連れてきた。
それは銀色で、丸く、表面はテカテカとしていてぼくらの顔を映し出している。
「お前たチ。
これに乗りナ」
グリーデルダはさっさと行けとばかりに、ぼくらをその乗り物へ押し込む。
中に入ると以外に広く、ふかふかの座席が整然と並んでいた。
「ここに乗ったラ、後ハ待つだけダ」
グリーデルダはそういうと、ちょっと大き目の座席に着いた。
僕らが座ると、シュッっという音がして、ふいに乗り物が動き出す。
「――ねぇ、質問していいかしら? 」
ぼくらの中の一人がグリーデルダに言った。
「なんだヨ。
面倒くさいことだったラ、ごめんだヨ? 」
グリーデルダはふわぁっと大きな口を開けて、あくびをしながら言った。
「さっき言ってた『絶滅危惧種』って、どういうこと? 」
「ああ、それか……」
グリーデルダは髭を触りながら、ぼくらを見渡す。
「お前たちノ、祖先。
そいつらガ、馬鹿なことニ、殺し合いをしテ、ほとんど全滅したんだヨ。
その時から数を増やそうト、飼育することになってネ。
今ハ……やっと500人くらいかナ。
お前たちハ、つがいにしてモ中々増えないシ、ホント面倒くさイ生き物だヨ。
まあ、味は……格別なんだけどね」
くくくっと笑い、舌なめずりをするとグリーデルダは、目を閉じた。
もう質問するな、と言うことなのだろう。
ぼくらは顔を見合わせた。
実感がわかない。
それもそのはずで、ぼくらが知ってる世界と全然ちがっていたからだ。
そして、ぼくらは先ほどの男が示した、それぞれの場所に連れて行かれた。
ぼくはというと、また元の『家』に戻され、アレがサルトウィンと温かいチャロンを出してくれた。
――夢だったんだろうか?
おなかが減っていたぼくは、むさぼるようにして、サルトウィンを食べる。
ぱくり。
ぱくり。
ぼくはお菓子を口に運びながら考える。
――絶滅危惧種。そう、グリーデルダは言った。
さくさく。
さくさく。
甘い味が口いっぱいに広がる。
――あれ? 緑の猫はなんて言ってたっけ?
もぐもぐ。
もぐもぐ。
――そもそも、猫なんていただろうか?
もぐもぐ。
もぐもぐ。
ぼくは……なにをしていたんだっけ?
頭がじんわりと痺れる様な、奇妙な感覚を感じ、ぼくはどきりとした。
――そんな、気がしたのは、ぼくの気のせい?
ぼくはチャロンを飲み、少しふらつきながら、学習装置を付ける。
――だって、アレが勉強の時間だと教えてくれたから――