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ぼくら  作者: 神田春希
2/5

no.2

 ぼくらは生まれたときからすでに支配されていた。

 もう、数世代も前からで、それはぼくらにとって至極当然の出来事。


 食べ物を与えられ、学習装置を一日数時間付ける。

 適齢期になると、アレがパートナーを見つけてくれる。

 そして、寿命が間近になると、、グリーンパラダイスと呼ばれる施設へ移る。


 ぼくらには、それがすべてだった。


 アレの存在は、ぼくらにとって神。

 アレの教えは神の教え。

 アレがぼくらの礎だったのだ。


「ねぇ――

アレってなんなのかな? 」


 不意に一人がつぶやいた。


 アレの正体?

 ぼくは背中にひやりとしたものを感じた。


 するとぼくの頭の中の霧が徐々に晴れていくのを感じる。

 これが、考えると言うこと?


「あたし、怖い」


 誰かが呟いた。


「なんか、変だよな」

 もう一人も呟く。


――ぼくは左腕にそっと触れる。

 そこにはマイクロ・チップが埋め込まれている。

 皮膚の上から、無機質な感触を感じて、ぼくは気味が悪くなった。


 ぼくらは、何に管理されていたのか?


「ねぇ、私たちって、

なんで歩いているんだっけ? 」


 誰かが言った。



 ぼくは、今日の出来事をゆっくり思い出してみた。




 朝、6時。

 アレがぼくに起きろと言った。

 そしてアレがぼくにポーディという、肉料理みたいなのを食べさせてくれる。

 いつもの、何気ない、ひと時。

 チャロンを飲み干すと、アレが学習装置をつける時間だと教えてくれた。

 そして、ぼくは学習装置を付けて、ソファーに腰を下ろした。

 そんな感じだった。

 不意にぱちぱちという音がして、ぼくは学習装置をはずす。

 ぱちぱちという音は、あちこちから鳴っていた。

 ぼくは恐ろしくなり、

 初めて外へ飛び出す。


 初めて外に出ると、真っ暗で、何もないところだった。

 ぼくは振り向いて出てきたところを見ようとしたけど、

 そんなものは全くなかったかのように、静かな闇だけが佇んでいた。

 

 長く、細い道だけがぼくの目の前にあった。


 よく見ると、その道には矢印がついている。

 ぼくは他にすることもなかったので、矢印に向かって進んでいた。


 進んで行くうちに人がひとり、ふたりと増えていった。


 ――そして、僕らはいつの間にか、一緒に歩くことになったんだ。



「君らはどうして、家の外にでたの? 」

 ぼくは言った。


「わからない」

「私を呼ぶ声が聞こえたの」

「気が付いたらここに立ってた」

 皆、変な答えだった。


 ぼくらは立ち止まったまま、何をしていいのかわからず、

 ただ、立っていた。


 すると、向こうのほうからぼんやりとした明かりが見えた。


 徐々に、徐々に近づいてきているようだ。


「なに? あれ? 」


 明かりがぼくらに近づいてくると、その明かりを持っているのは緑色だったが猫と呼ばれる生き物に見えた。


 とうの昔に絶滅したはずの種族だ。

「あれって、猫ってやつ? 」


 誰かが言った。

「猫ってこんなにでかい生物なのか? 」

 ゆらゆらとした明かりに照らされて、ぼくの背丈よりも高い緑色の猫が近づいてくる。



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