no.1
ぼくらは、細く長い道をただひたすら歩いていた。
特に行く当てもなく、ただただ、ひたすら歩く。
「もう、やめないか? 」
誰かが言った。
「やめて、どうするの? 」
もう一人が言う。
ぼくらは、どうしていいのか分からなかった。
今までは、只レールの上を何も考えずに進んでいればよかった。
そう、何も考えずに。
そして、その何も考えない生活が続いていたある日、
突如として、ぼくらのレールが無くなってしまった。
ずいぶん長い間考えることをしなかったぼくらは、
考えるということが、出来なくなっていることに気が付いた。
ぼくらは、アレにゆるゆると支配される生活にどっぷり浸かりすぎたのだ。
ぼくらという存在は、とても空虚だった。
大体にして、「ぼくら」ってなんだ?
自分ってなんだ?
とりあえず、生物学上での生き物だということは分かる。
だが、それが何だかわからない。
ぼくは急に『不安』というものに襲われた。
多分、そうだと思う。
不安なんて、数世代前の『ニンゲン』と言われていたぼくらの祖先が味わっていたものだ。
ぼくらには、安らぎも、不安も、苦しみも、憎む、ということもない。
完全に管理されていたからだ。
そう。
すべてにおいて。
良いとか悪いとか、そんなことは分からないけど。
とにかく、ぼくらは生まれるときからアレの管理下にある。