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行き倒れのお2人りさん。果たして? (笑)
視界に広がる雨粒の嵐。おれたち冒険者(自称)一行は、スコールにあっていた。
「すごいですね。向こうから雲とともに、雨がやって来ますよ。」
「すごいな~。未来では気象はコントロールされていたから、逆に新鮮だな!」
「ほえ~。」
そうこう言っているうちに仲良く土砂降りになってしまい濡れネズミに。
「何でぼ~っとしていたんですか! このバカ所有者!」
「うるせいやい! このポンコツ美女め!」
「寒い、です。もう本当に最悪ですよ~!」
「はっくしょい!」
醜い争いが行われていた。
「これからどうするんですか?」
「そうだな~。どうしましょうか。」
「私、良い事思いつきましたよ! 魚でタンパク質の補充です!」
「おっしゃああああ! おれに任せろ!」
気合い十分とばかりに涼しげな渓流を探しだす。丘を越えたあたりから見渡せた。
「魚いっぱいいますね。」
「そうだな。」
「昨日から何も食べてないんですよね!」
じゅるり。忘れていたとばかりにお腹がぎゅるると鳴り出す。
5分後・・・。彼らは地面に仰向けになっていた。
「すまん。自然なめてたわ。(涙)」
「魚・・・。いや。お魚さん。私たちあなた様に敵いませんでした。」
「ううう。お腹すきました。グスン。」
おい。なんだこのポンコツ美少女は! おれより先に弱音はくなんて!
やるじゃねえか! くそう。なんとかしなければ! 2人仲良く天国に召されてしまう。
「だ、誰かお助けを~!」
「なんだ君たちは? 変わった服装をしているね。」
行き倒れを遠征中の武装商人たちに助けて頂いたのだった。
「助けて頂いて、本当にありがとうございました。このご恩は一生忘れません。」
「ううう。すみません。所有者。私が至らないばかりに。死んでお詫びしたいけど、なんか痛そうなので止めときます!」
「それが良いよ。命を大切にしてくれ。」
「グスグス。ありがとう。所有者。」
ひしっと抱き合って、お互いに慰めあうおれたち。
気まずそうに、商人が咳払いをする。
「お二人は取り敢えず、一番近くの街まで送り届けます。」
「ほんっとうにありがとうございます!」
2人仲良くお礼をしたのだった。
同中、小声でミナが話しかけてくる。
「人間って何でこんなに頭が回らないんですか?」
「あ?」
「思考回路が複雑すぎますし、処理速度が限りなく遅いんですよ!」
「そりゃそうだろ! 生物的限界ってあるんだよ! スーパーコンピューターじゃないんだ。」
「不憫な生き物ですね。かわいそうな所有者。」
「お前もいまその一員ってこと忘れんなよ!」
なんかもうほっぺたつねってやろうか!?
「でも、このままが良いです。だって、人間にしかできない事ってありますから。」
「そんなもんかね?」
ちょっとばかし顔を紅潮させているミナを見て呟いた。
こいつ、いつもおれの食事をものほしそうに見ていたからな。まあ、食欲に目覚めたのだろう。
そんなこんなで夜になりました。
「すみません。来客があるとは思わず、予備の毛布1枚しかないんですよね~。(嘘)」
「いえいえ。そんな。ご厚意にお預かりしまして。本当に申し訳ないです。」
ぺこり。それは日本人なら誰でも伝わる、最敬礼をする。
「きれいなお辞儀ですね。良い夜を!」
なんかいろいろ気を使ってもらっている気がするが、おれたち2人には何もないんだ。
「どうですか。ドキドキしますね。(笑)」
「おお、ミナもですか。(笑)」
「温かいって何だか不思議ですね。心までポカポカしてくる気がします。」
「確かにな~。」
面白い事を思いついたとばかりに、ミナがニヤリと笑う。
「私と所有者が初めて出会った時の話しを聞かせて下さい。」
「そうだな。それは何ともドキドキハラハラする素敵な出会いでした。」
先ずは・・・。と昔を振り返り始めた。
「おれが、新卒だった頃。当時は大いに金欠だったのだ。」
「・・・。」
「初ボーナスを手にした時のあのワクワク感。今でも忘れる事の出来ない良い思い出だ。」
「・・・・。」
「帰宅途中に、ロボット店の在庫処分セールがやってたので、フラっと店に入ったら、ミナがいたんだ。」
「・・・・・。」
「初めて、自分の金での大きなお買い物だったな。うん。高かった。」
「所有者さんの、初めて頂いちゃったんですね。」
「まあ、そうなるな。」
「まあ、フフフ・・・。」
続きも聞かせて下さい。そう言っているような笑みを浮かべて来る。
「型落ちモデルだったので、メーカー保証とかもついてなかったんだ。初期不良がなかったのは、本当に助かった。」
「まさに、運命の出会いってやつですね。」
「まあまあ。オホホ・・・。」
なんだこいつ楽しそうだな。まあ良い事ではある。
「いつ壊れてしまうか、本当に心配でな。ついつい余計な心配もしてしまったかもしれない。なんかすまん。」
「いえ。鬱陶しかったですけど、まあちょっとだけは嬉しかったかもです。」
「あれ? ツンデレのアップデート情報なんてあったけか?」
「もう、アップデートなんてされませんよ?」
「そうだったな。」
「これからは自分の手で、一歩一歩成長していきます!」
彼女の瞳は輝いていた。
おれは初心を忘れてしまっていたのかもしれない。
きっと、幼い頃誰でも持っていた。童心。それがこの世をワクワクしながら生きる、必要な感情だったのだろう。
読んでくれてありがとう♪