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いのししさまは苦手です 【WEB】

作者: 雨澤 穀稼


   いのししさまは苦手です


 わたしは いのししさまが

 苦手です……

 とっても とても

 苦手 何です

 過去に 二度……

 わたしは 苦情を受けて

 話し合いに いっただけなんですよ

 戦う気なんか

 これっぽっちも なかったんですからね

 今でも 忘れられません

 あの 強い覇気に あてられて……

 過去のわたしは ズロボタに

 負けちゃいました……

 あんな デッカイのを

 怒らせちゃ いけません

 ドスン ポッキリ ですよ

 心も 躰も

 歩くのだって ままなりません

 下山途中で 拾った

 丁度よい 木の棒を

 杖がわりに ついて

 頼って 帰りましょう

 テンテン つくつく

 とぼとぼ とぼとぼと

 テンテン つくつく

 とぼとぼ とぼとぼと

 シデへの道程(みちのり)

 還りましょう

 まったくもう とばっちりです


 その次は わたしです

 イノシシ年 侮るなかれ

 で御座います

 煮え湯を 飲まされちゃいました

 ポロリと 口から

 零れた 言霊が

 たわいの無い 言霊なれど

 生涯通して 恨まれる

 事だって あるのです

 解き放たれた 言霊は

 刃となりて かえりきぬ

 触れては ならぬ

 逆鱗に 触れちゃいました

 それまでは 仲良く

 やって いたんです

 それから 全て

 突っかかる

 それはどうして

 何で 何で

 改善 やり直し

 時間ばかりが 浪費されてゆく

 わたしの 関わることは

 いいも 悪いも

 駄目 駄目 駄目

 関係なくて

 駄目 駄目 駄目

 御本人さまが

 そう仰られておりました

 何も かにもに

 反対! 反対!

 大反対!

 いのししさまの 力は

 とっても とても

 強いんです

 みんなを 巻き込むほどに

 わたしのしてきたことは

 ひっくり返され なかった事に

 結局全て 白から黒へと

 改悪されました

 完敗です 降参です

 わたしは和を 乱すものなり

 わたしは ひとり

 テン テン トボトボ

 さりました

 テンテン トボトボ

 三重の地へと 去りました

 テンテン トボトボ

 トボトボト

 後は 風の吹くまま

 呼ばれるままに

 波乱の旅が

 テンテン トボトボ

 トボトボト

 始まりました


 わたしは 大悪人なのでしょうか?

 きっと 色々と 私の知らないわたしが

 しでかして来たのでしょう

 解き放たれた 言霊の刃は

 いつか いつかの わたしに

 戻ってくるのでしょう


 わたしは いのししさまが

 とっても とても

 苦手何です



   ある時……



 ある時 珍しく

 メールが ひとつ

 届いていました

 今 御所の近くです

 夜だけど 御参りしても

 大丈夫?

 明日 子供が受験なの と……

 一緒に写真の 貼付あり?

 開くと 道の向こうに

 積まれた 御酒樽 神社の看板

 えっ……駄目だろ!

 神様には 神様の

 わたしたちの

 遠く及ばないい

 御都合が ありましょうし

 神社様にも 神社様の

 営業時間が 御座います

 拾漆時 拾陸時が

 よく 御目にする 御時間です

 きっと神様も 神様の御都合

 お休みの 時間なのでしょう

 黄昏時 逢魔ヶ刻は

 読んで 字の如なのです

 魔に 逢う

 まだ 行けそう

 間に 合いそう

 そんな時は 要注意

 危険です 駄目!

 駄目 駄目 駄目!


 黄昏時は 逢魔ヶ刻って

 言うから

 止めといたらと……

 メールを 返し

 御受験だから

 天神さまかな?

 ある意味 勝負事

 ギャンブルは

 駄目だけど

 八幡さまかな……? と

 貼付の写真を よく見ると

 足腰に有名な 御社さま

 ココって……あっ……

 一瞬 目が あったよな?

 看板に 描かれた

 いのししさまが……

 えっ……ひやり

 気のせいか?

 画面を 閉じて

 バタンと寝そべる

 グ〜ッと 一伸び

 受験か〜っ……と

 想い馳せ……



   ドンッ!


 

 ドンッ!

 締め切った お部屋に

 響いた 大きな音?

 そちらに 振り向く

 その瞬間……

 カラダが 急に重くなり……

 フェイドアウト…

 ……………………………………………

 ……………………………………………

 ……………………………………………

 重い瞼 ぼんやり霞む

 意識が 戻りだす

 気怠〜い カラダ

 あれ…… 寝てたんだ?

 あっ ドンの音?

 してたよな?

 振り向く そこに

 締め切った お部屋

 風も無いのに

 干してある 洗濯物が

 Tシャツ 一枚 揺れていた

 そして ポトリと

 落ちました

 えっ……今 音のが

 先だったよ

 時間差って? と

 取り敢えず 一人

 ツッコミ しておきました

 

 わたしは いのししさまが

 とっても とても

 苦手です 



   リンリンリン



 もう 大丈夫だよと

 何かが 告げて

 

  リンリン リンリン リン

 リンリン リンリン リン

 リンリンリン シャラララ

 リンリンリン シャラララ

 カラン カラン

 カラン カラ〜ン

 リン リン リン

 シャン シャン シャン

 リン リン リン リン

 シャン シャン シャン

 シャラララ……と音がする


 ココは エレベーターのついた

 小さな アパート

 最上階 ベランダの向こう

 リンリンリン

 カラン カラ〜ン

 リン シャラララ

 シャン シャン

 シャン シャン

 音がする……

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