表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第0話 Prolog

ここは一体……。どこだ?


外が今……、朝なのか? それとも夜なのか……? 分からない。

今外は、雨が降っているのか? それとも晴れているのか……? それすらも分からない。


何故そんな簡単な事が分からないのかって?


それは俺が今、窓が一切無い、コンクリートの壁だけの部屋に居るからだ。いや、『居る』と言う言葉は間違っているな。正確に言うなら、『閉じ込められている』と言うのが正しいのかもしれん。

周りを見渡して見ても……。外側から鍵が掛かっている鉄の扉を除けば……、やはり何も無い。本当にコンクリートの壁だけの部屋。『どこかの建物の中』と言う事は、状況からしても、見ても分かる……が、俺にはこの建物の中は、身に覚えも無いし心当たりも無い。

それに……。所持品から財布や腕時計はおろか、携帯も盗られている……。


それらの事を考えると……。


やはり俺は今――


故意に閉じ込められたのではなく、誰かに捕まって監禁されているのか。


でも、誰に?



俺は部屋の真ん中に立ち、考える。


でも、答えは分からない……。



「―――?」


俺は鉄の扉へと視線を向ける。

突然、鍵の掛かっていた鉄の扉が「ガチャン」と、鍵の開く音が聞こえたからだ。

そしてそれは、俺の気のせいではなく、「ギィイイイイ」と、錆びた音を響かせながら、ゆっくりと鉄の扉が開いた。


「マスター!」

「マスターさん!」

鉄の扉の向こうから、うちの女性従業員の二人がコンクリートの部屋へと入って来た――それも、全身シルエットの人間にリボルバーを突き付けられた人質として……だけど。

「……」

俺が黙って睨んでいる事に対して、楽し気に「フフフ」と笑うシルエットの人間。

「相変わらず怖い顔をするねぇ~。《《マスターさん》》」

「何が狙いだ」

「まぁまぁ。そう焦らずとも。それにしても……、日本屈指の探偵と呼ばれているマスターが、こうもあっさり捕まってしまうとはねぇ~」

楽し気に語るシルエットの人間。俺はやれやれと溜息を吐く。

「人違いだな。俺は探偵じゃない」

「でも、世間ではマスターは探偵と呼ばれている。《《名探偵》》と……」

不気味に「ククク」と喉を鳴らして笑うシルエットの人間。

「ては本題に入ろう。マスターは仲間を助けるかい? それとも……、仲間を見捨てちゃうのかな?」

「……何が言いたい?」

「ほぉ~。名探偵と呼ばれているマスターが、この意味が分からないのかい?」

「……あぁ。俺は探偵じゃないから、分からないな」

「うん。じゃあ、仕方がない。小学生でも分かるような説明をしてあげようではないか。」

大袈裟に手を広げるシルエットの人間は、今度は指でクルクルとリボルバーを回し始めた。

「このリボルバーで撃ち殺す前提の話だけど、まぁ、撃ち殺すけど。ぷはは。失礼。で、つまりマスターは、仲間を助ける選択をしてマスターが撃たれ死ぬか、逆に仲間を見捨てる選択をしてマスターが生きるかぁ~だよだよ」

銃口を俺に向けるシルエットの人間。俺は、ふぅーと息を吐く。

「……なるほどな。お前がその約束を守ってくれるなら――」

俺はシルエットの人間を強く見る。

「殺せよ。俺を」

その返答を聞いたシルエットの人間は「フフフ」と笑う。

「マスターならそう言うと思っていたよ」

「話が早くて助かる」

「う~ん? それはどうかな?」

「どう言う意味だ? それは」

「僕が本気でマスターの約束を、素直に守るとでも」


その瞬間――


「――何!?」


人質として扱われていた女性従業員二人が撃たれ――


――三発目の弾が俺の方へと飛んできた。



ハッ――


『撃たれた』と、思った瞬間――俺は布団から目が覚めた。

俺は、気持ちを落ち着けるように胸に手を当てて部屋を見渡す。

いつもの俺の部屋。いつもと変わらない俺の部屋。タバコの煙とアルコールの臭いが入り混じっている俺の部屋。

俺は、自分の胸に手を当てているところを見て、ふぅーと優しく息を吐く。

「夢……、か」

呟いた俺は、優しく胸を撫でおろした。


まったく……。嫌な夢だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ