SS 師走、下旬、車窓から
ぼんやりと車窓をながめていると、遠くに家々が立ち並んでいるのがみえた。
煙突もまばらに立っている。
その直ぐ上には、白色で、所々灰色の雲が流れていた。
雲はひらべったくて、厚い。
煙みたいだ、と思った。
そのとき、家々のあかりがぽつぽつと灯り始めた。
煙も、家の外壁も、橙色に灯り始める。
ふと振り返ると、夕陽が燃えているのがみえた。
人間のいとなみが、世界を美しくすることもあるのだと思った。
列車が息を吐いて止まると、ドアが開いて、つめたい風が吹いた。
夏の背は澄んだ匂いがする。