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サポートキャラの恋(短編化)

「占い師?」

「そう。シアは占い師、私が悪役令嬢として聖女様の恋を応援するキューピットになるの」

 友人の言葉にシアは固まってしまった。彼女が乙女ゲームに転生したと自覚したのはもう六年も前のことだ。前世の記憶を取り戻した夜は、一番の友人が悪役令嬢になるかもしれないと涙で枕を濡らしたものだ。けれどゲーム内の悪役令嬢と友人は違う。少しばかり言い方はキツいが決して誰かを貶めるようなことはしない。道を間違えそうになったその時は自分が彼女を支え、正しき道へと先導しようと決めていたのに、まさか彼女が悪役令嬢を演じることになるとは……。『キューピッド計画』の発案者は国王陛下と王妃様だという。名前は少しアレだが、内容は特別な力を持つ平民を国と強い関わりを持つように有力者の息子とくっつけてしまおうという真面目なものだった。初めは友人だけがメインとなって働く予定だったらしいが、一人では寂しいとシアとシアの兄も推薦したのだという。

 乙女ゲームにも攻略者達の好感度を教えてくれるサポートキャラとして占い師は存在した。占いの館自体に認識阻害の魔法がかけられているらしく、外に出てしまえば占い師の顔はおろか声や動作すらも全てあやふやになる。記憶に残るのは性別も年齢も不詳な占い師のアドバイス内容のみ。ファンの間では、悪役令嬢に隠れてヒロインを応援したい貴族の誰かではないかと言われていたが、まさか占い師も悪役令嬢も王国側の人間だとは思うまい。だが水晶も万能ではない。相手が思い浮かべた相手のことしか分からない。また占い師は数値や助言を知ることは出来ても、目の前の相手の想い人の名前や容姿までは把握することが出来ない。一般生徒ならそれで問題はないが、ヒロイン相手では想い人の勘違いが大きなミスに繋がる。より多くの情報を持ち帰ることが出来るかが計画成功の鍵となる。

 シアは学園生活を送りつつ、空き時間には陛下が用意してくれた占いの館へと向かった。すぐに利用者は来ないだろうと踏んでいたが、利用者は着々と増えていった。これも王家の秘宝である水晶の的確な指示のおかげである。シアはただ手をかざし、内容を伝えているだけだが、幸せそうな生徒達の顔を見ているだけで幸せになった。

 この勢いでヒロインが占いの館を利用してくれれば……と考えていたシアだが、計画は思わぬ方向へと向かった。一部の攻略対象者達が占いの館の利用者となったのである。王子様に至っては悪役令嬢と恋仲になりたいらしく、真剣な眼差しで助言を求めてくる。まさか婚約者と両親がグルになって他の女性との仲を取り持とうとしているとは想像もしていないのだろう。シアは毎回申し訳なさを抱えながらも、彼の成功を心から願って送り出す。けれど問題は王子ではない。

「思い人と距離を詰めたい」

 シアの思い人までもが占いの館ヘビーユーザーとなったのだ。それも名前すら知らないという。彼にアドバイスを告げる度に胸が痛んだ。

 ある日、館裏の花壇の世話をしていた際に彼から声をかけられたことをきっかけに距離が近づいていく。恋心が育っていくシアだが、役目を忘れることはない。必死にブレーキを踏みつつ、占い師として画策する。けれどヒロインがやっと占いの館にやってきたかと思えば、彼女の想い人は子爵家の四男。カマをかけてみても攻略対象者などまるで興味がなかった。そのため将来有望なその男子生徒の出世をバックアップした方が早いのではないか、との案まで出始めている。

 だがそうしたら彼の思いはどうなるのか。頻繁に占いの館へ通う彼だがまだ強いアプローチが出来ていない。せめて思いだけでも告げさせてあげたい。そう考えたシアはいつものように占いの館へと来た彼に「ラブレターを書いてください」と便せんを押しつけてさっさと追い出した。館の鍵を閉めたシアは失恋の痛みを胸に抱え、一人で泣いた。

 数日後、正式にキューピット計画は中止となった。占いの館も営業終了だ。もちろん花壇も撤収することとなる。もう話をする機会すらないのだろうと空を見上げたシアの視界の端に彼が映った。見覚えのある便せんを手にした彼はシアにそれを渡すと「返事はいつでもいい」と告げて去って行った。遠ざかる背中と封筒を見比べてから中を見たシアは彼の思い人が自分であったことを知る。シアが恋に落ちたあの日からずっと思ってくれていたのだ。嬉しくなったシアはすぐに自分の気持ちを打ち明けたくなった。彼の姿を探して校内中を駆け、そしてようやく見つけた背中に手を伸ばす。

「ずっと好きでした!」

 切れかけた息で短い言葉を紡ぐ。驚いた表情で振り向く彼にシアはゆっくりと自分の気持ちを伝えていく。次第に表情を驚きから嬉しさに変えていく彼はシアが全て言い切るまで我慢出来ずに彼女の身体を抱きしめた。彼の体温を感じながらシアは幸せで包まれたのだった。


今のところ長編として書く予定は未定ですが、書くとしたらヒーローの視点を入れつつ、出会いエピソードの回想を入れて。王子と悪役令嬢の仲を応援しつつ、デートシーンや主人公なんで気付かないの‼なエピソードを入れ、ヒロインの恋も応援するので10万字ちょっと出るくらいになるかなと思われます。


ヒーロー&王子の恋のライバル(と勝手に勘違いしている)はシアの兄です←ここは確定

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