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ねえ、おじいさん  作者: ゆゆ
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糊を食べたのは

ねえ、おじいさん。

あなたと暮らすこの小さな屋敷は私の宝物だった。

一年に一度、破れた障子を張替えるのは、宝物を磨くことと同じこと。

昨日から、私は飯を食べることを控えて、糊を作った。

あなたは相変わらずおちゅんに飯を与えていたけれど。

あなた、障子を張替えたらなんていうかしら。

喜んでくれるかしら。


刷毛と紙を手に糊を置いた居間へ行き、愕然とした。

あの雀が糊をすべて食べ尽くしていた。

あなたが飯を分けていたというのに、

私は飯を食べなかったというのに、

この雀は賎しくも大切な糊を食べた。

悪びれもなく、嬉しそうに食べる姿に目の前が真っ赤に染まった。


私は、紙を切る為に置いた鋏で、賎しい雀の下を切り落とした。

血が手につき、生温い感触があったが、気にならなかった。


それほど、私は激怒していた。

雀が焦ったように外へ飛び出したのを見た。






雀の下を切ったことを知ったおじいさんはたいそう悲しんだ。

涙を流して「かわいそうに、かわいそうに」と嘆いた。


ねえ、おじいさん。

あの雀は大事な糊を食べたのよ。

食べるものにも困るこの生活のなかで、やっと作った糊を食べたのよ。







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