お礼の気持ち
俺は荷物で重くなった両腕にグイっと力を入れ、パシリとしての役目を遂行する。
今は望結と結月先輩の買い物に付き合っている。
2人は服やら靴やら化粧品やらの店を周っては買い、周っては買いを繰り返している。
その荷物は勿論俺担当で既に両腕が埋まってしまっている。
俺はこの状態で歩き回るのがしんどいので近くの柱に身を委ね、デパートの目印とも言えるでっかい中心柱の上部にある時計に目をやる。
今日俺らが待ち合わせした時間は10時でそっから望結が少し遅れてきて、ドッキリだのなんだのかけられて行動開始時間が遅くなってしまったので、少し急ぎ気味で2人は店を回っていた。
回る店は予め決めていたようだが、あのお店可愛いだの、ちょっとここよるだの色々寄り道してしまったせいで、既に5時間は経過していたのだ。
その間俺はずっと荷物で両腕が塞がっているのだ。
「俺も少しは見て周りたいんだけどなぁ」
俺はポツリと呟く。
そして5分後、望結と結月先輩は大きな紙袋を抱えて出てきた。
俺はまた増えるのかと肩をガクッと落とし2人の方を向く。
すると2人は少しオドオドしながらこちらに近づいてきた。
ん?っと俺は首を傾げ、2人はを見つめる。
すると望結が顔を俯かせたまま俺に小さな紙袋を前に差し出してくる。
「別にそんな小さいヤツじゃ無くて、そのおっきい方持つぞ?
そっちの方が重いだろうし」
「別に持たせる訳じゃ無いよ、コレは今日1日付き合ってくれたお礼
2人からのお礼の気持ち」
俺は望結から紙袋を受け取り紙袋に視線を落とす。
「これ開けてみても良いか?」
望結は少し顔を赤くし顔を上下する。
結月先輩も同様に顔を上下する。
俺は紙袋から横長の箱を取り出し、リボンを外す。
そして箱の蓋を手に取り開ける。
するとそこには1面真っ黒の革製の長財布があった。
1面真っ黒とだけあり地味ではあるのだが、どこか高級感がある長財布だ。
俺は少し引きつった顔で結月先輩の方に視線を飛ばす。
「えぇっとこれ、幾らしました?ハハ」
無意識に乾いた笑みを発してしまう。
「聞きたい?聞いたら失神するかもだけど···」
と冗談なのか本当なのか区別の付かない事を言ってくる結月先輩。
「いや、いいです、結構です。聞いた俺が間違いでした」
平謝りする俺。
てか、なんで俺謝ってるんだ?何この状況。
すると目の前にいた望結がいきなり大声を上げた。
「うわぁ、びっくりするだろ急に大声出すな」
俺は数歩後ずさりながらそう口にする。
望結は腕時計を長め
「ごめん、私今から親のお仕事のお迎え行く約束してるんだ」
「だから私先帰るね、じゃーねー」
俺たちに有無も言わせずすぐさまタクシーを捕まえてどこかに行ってしまった。