第三話 声
「……聴こえる。 ……確かに、きこえる…」
僕は洞穴の奥の暗闇をじっと見つめ…唾をのみ込んだ。
「何か…いや、誰かいるのか……?」
考えにくい。こんな洞穴の奥に、人?
でも、確かに人の声に聴こえた。
「……行ってみる、か」
僕は恐る恐る穴の奥へ向かった。
─── 王宮
王の側近は、廊下を歩きながら顎に手を当てて思案していた。
「勇者一行は大丈夫だろうか」と王に問われ、一応は大丈夫と返したものの、一抹の不安は隠せない。
何せ魔王軍は強大なのだ。救世主とはいえ、勇者一行では歯が立たなかったら……?
考えたくもない。
頭を振って嫌な考えを振り払った。
……とはいえ……。
ふと、あの日のことを思い出した。
4人の救世主が発見され、王宮に連れてきた日だ。
王はたいそう喜んだ。「言い伝え通りだ。これで世界は救われる」とたいそう喜んでいた。
頭に浮かぶ言葉は無いか、それが各人に与えられたスキルであると説明し、一人ずつ、話を伺った。
ユウジという若者はブレイブハートというスキルを持っていた。
勇気の心を力に変える、選ばれし勇者にのみ与えられた強力な力だ。
マホという少女はデコ盛りマジック、というスキルを持っていた。
既存の魔法をパワーアップし操れる、至高の魔法使いにのみ与えられた力だ。
ケンという男は開眼強キャラ、というスキルを持っていた。
凄まじい潜在能力を持っているということだ。詳細不明だがこれまた異能の力だ。
……そして、ヨミという人間。
「して、ヨミよ。 お主はどのような言葉が浮かぶ?」
「は、はい! 僕は、"サードアイ"という言葉が浮かんでます!!」
「……は?」
周囲のドヨめき。ヒソヒソ、ドヨドヨ。
聞き間違いじゃないか? そんな、まさか。
「サードアイ……? 間違いなく、か?」
「はい! 間違いなくサードアイです!!」
キラキラと目を輝かせる少年に対し、王は一瞬「え、これ言っていいん?」という顔をしたが、「それは割と聞くやつだ」と告げた。
あの時の、固まったヨミと、何とも言えない顔をしている王と、「どうすんだこれ」という空気の広間を思い出すと背筋が冷える。
……まあ、言い伝えもあるんだし、大丈夫だろう。
側近は頭を振って、再び嫌な考えを追い出した。