幸福の偶像
アケディアは少年の母の魂とリンクする。
それは自分という存在を消す事になる。だが、契約したのだ。
この醜く、儚く、優しさに溢れる小さな命と。
「…泣くな。僕の子はこんな事じゃ泣かないぞ。」
「…え?」
そこには懐かしい感覚があった。母の匂いだ。
さっき居た悪魔はもうそこには居ない。アケディアに母の記憶、感性が加わった。
「お母様、なの…?」
「正確には違う。お前の母の要素を持った悪魔だ。」
「じゃあもうお母様は……」
「安心しろリント。お前の母は僕に宿っている。契約の内容はお前の母になる事だからな。」
「……っ!お母様…!会いたかったよぉ…」
「すまなかった。お前を置いて死んでしまって。だが、今度は簡単には死なないぞ。何せ悪魔だからな。後、問題は無いか?さっきまでの僕にお前の母の要素が加わった感じで多少違和感は感じるだろうが許して欲しい。」
「大丈夫だよ、お母様。少し口調が変わってるだけだよ。」
「そうか。お前は本当に優しい子だな。」
「えへへ。」
悪魔の王が一介の人間の母となった。
悪魔は願いを歪んで叶えさせ、人間が絶望する顔が好きだ。そんな悪魔が人間を幸福にさせている。
アケディアはただただひたすらに優しいのだ。憤怒の王、イーラが心配するくらいに。
部下の2人もそんなアケディアが好きで付いているのだ。