少年との出会い
「ぐ、グラトニー。スコーン持って来たよ。」
「おお、心の友よ!やはり持つべきものは友だな!本当にありがとう!」
スコーンで大喜びする暴食の王。
何故か?
悪魔は食事の必要が無いため、魔界には食物は当然、菓子も無いのだ。なので地上の菓子類は嗜好品として貴重な物になっている。
(本当…羨ましい。軽々しく友なんて呼んでしまって。)
「じゃ、じゃあ僕はまた地上行ってくるから…皆に……よろ、よろしく。」
「もぐもぐ」
怠惰の王は枕を持って地上に現界する。
最初に目に飛び込んできたのは遠くで燃え盛っている炎だった。
「何だ…?」
怠惰の王は枕で浮きながら燃えている場所へゆっくりと向かう。
段々と見えてきたのは人間の小さな集落だった。
そこには戦ったのか血が飛び散り、武器は投げ捨てられ、死体は1箇所に集まって燃やされていた。
(何だ…ただの小競り合いか。
…しかし何故こんな貧相な場所で?武器は見る限り整えられている。都市からかなり離れている小さな集落に鍛治なんてあるだろうか。死体の数も多い。)
(そして周りに人間の気配も無い。
恐らく何かを隠蔽、保護していたが、見つかり殲滅されたのだろう。しかも迅速に。)
冷静に分析し始める怠惰の王。意外にも人間の事情にやたら詳しい。
(まぁ、僕には関係ないからほっとこ。)
ふよふよと拠点に戻っていく怠惰の王。部下の2人が怠惰の王が休憩できるように小屋を作ってくれていたのだ。本当に頼りになる部下である。
戻っていく途中、何か魔法で隠れている者を見つけた。
その魔法は稚拙で、頭を抱え込んで震えているのを怠惰の王には見えてしまっている。
(何だろアレ?意外と魂美味しそうだし食べちゃおうかな。)
怠惰の王は隠れていると思い込んでいる者をつつく。
「ひゃぁ!?もう許して!いい子にする!いい子にするからぁ!」
隠れていたのはまだ幼い白髪の少年だった。必死に怠惰の王から逃げようとしている。
が、コケてしまった。
「あぅ!うぅ…」
「あーあー、もう逃げられないねぇ?どうするの?」
「助けて…助けて…!誰か!」
そこで少年はやっと怠惰の王を見る。普通ならSANチェックの1つでも入るが
「僕が助けてあげるよ。恐怖か……」
「お母…様!お母様!会いたかったよぉ!」
「ぶべっ!」
格好良くセリフを決めようとしたが、少年から抱きしめてきて遮られてしまった。
「お母様…やっと迎えに来てくれたんだね…僕、頑張ったんだよ?でも逃げる事で精一杯で…最後は見つかっちゃって…僕は逃がされたけど結局…でもお母様と会えるならそれでいいや……」
「ちょ、ちょっと離れろ!服が汚れるだろ!」
「お母様…お母様…」
「このぉ、いい加減に……と気を失ったか。じゃあ、いただこうとするかな。」
怠惰の王は手をつけようとする。
が、まだ食べれていない。
(何故だろう…こいつは食べようとすると食欲が無くなる。それにさっき抱きついてきた時、僕は魔法を使って殺そうとしなかった。…しかもこいつ僕を見て発狂していないぞ。)
「……備蓄として持っていくか。」
これが怠惰の王と少年の出会いであった。
人間の魂の食べ方
・そのまま食べる。
・殺した後、魂が出てくるのでそれを食べる。
・あんなことやそんなことで搾り取る。
注意点
・殺す場合、魂が出てきてすぐ食べないと天か、地へ行ってしまう。
・老化や自害によって出てくる魂を食べても効果は無い。
・出てきた魂は魔素で保管できるが、時間が経つにつれ効力は少なくなり、3日経つと消滅してしまう。天界と魔界に居る魂は消滅しないので注意。
これが分かれば悪魔になってもすぐに格が上がるよ!やったね!