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Home And Bloody Days  作者: ソォラ
7/15

7th Day

~~♪♪

とんとんっ。

「シュンくーん、もう朝だよー、起きてるー?」


朝を告げる音楽と、ノックの音と、僕を呼ぶハルカの声が重なって部屋に響く。

その多重奏で目が覚めると、僕は布団から起き上がり、手短にパジャマを脱ぎ捨てて、制服に着替える。

もちろん、ベッドで寝ている妹のクルミを揺り起こしておくのも忘れない。


僕が制服を着替え終わったころには、クルミも起き上がって制服に着替えだしている。


そして身支度を整えると、僕はドアを開けて、ハルカを出迎える。


「おはよう、シュンくん」

「うん、おはよう、ハルカ」

「おはよう~、ハルカ。ふわぁ~」


三者三様にあいさつをかわし、そして微笑みあう。


こうして、僕たちの一日は始まる……


「あ、そうだ、シュンくん」

「え、何?」

「今夜も変なことはしてなかったでしょうね?」

「う、うん、もちろんだよ」


……のであった。


(Ⅰ)


「ふわぁ~」


そう大きなあくびをするクルミに、苦笑する僕。


「寝不足なの?」

「うん……。昨日、夜遅くまで射撃基礎のテキスト読んでたから……」


あー、そういえば、クルミ、昨日は僕が寝る時間になってからも何か読んでたなぁ……

本当に努力家なんだなぁ……


「頑張るのはいいけど、あまり夜更かししすぎたらダメだよ?」

「うん、ありがとう兄さん……ふわぁ……」

「もう……クルミ、もっとしゃきっとしないと先生に怒られるよ? ほら、今日も、クルミの分までお弁当作ってきてあげたから」


そう。クルミが第112施設に入ってから、ハルカはクルミの分もお弁当を作ってきてくれるようになったのだ。


「クルミの分まで作ってもらってすまないね。大変でしょ?」

「ううん。気にしないで。シュンくんだけじゃなく、クルミにも喜んでもらえたら嬉しいから」


そう言って優しく微笑むハルカ。その笑顔は、まるでその笑顔を見る人の心を解きほぐし、癒しをあたえてくれるかのようだ。

そんなハルカは、かばんから魔法瓶を取り出すと、そのコップになっているふたに、コーヒーを注ぎだした。


「あれ、ハルカ、それは?」

「うん。多分、クルミ、夜遅くまで頑張ってるだろうなって思って、コーヒーを用意しておいたの。はい、どうぞ」

「うん~、ありがとう~……」


そうハルカに礼を言って、コーヒーを一口すするクルミ。

本当にこうやって気を利かせてくれるのは、とてもありがたい。こんなところは出会った幼稚園のころからずっと今まで変わってない。

僕にはそれが嬉しいし、そしてありがたかった。


「でも、いいなぁ……ハルカ。とても気が利くし、料理とかもうまいし……」

「ははは……でも、クルミだって最近は少しずつ、料理うまくなってきてるじゃない」

「ん……ありがと……」


と、ここで終われば美しいんだけど……


「あ、でもっ、シュンくんはわたしのなんだからねっ」

「あたしだって負けないんだからっ」


あー……また始まった……

コーヒーで、クルミの頭がはっきりしてきたからか、さっそく恒例のバトルを始める二人。

これもまた日常の光景。僕はやれやれと思いながら、その様子を見ていた。


(Ⅱ)


そして午前中の訓練が終わって、昼休み。


「のどかわいたし、ジュースを買いに行くかな……」


そう言って、財布を片手に購買へ。

すると……


「あ、この服いいねー……」

「うんうん、あ、このアクセサリーも……」


ハルカとクルミが、購買で、仲よく色々洋服やアクセサリーを見たりしていた。

って、洋服やアクセサリーまで売ってるって、この購買って一体……?


「あ、シュンくん、こんにちは」

「兄さん、やっほー」

「あぁ、こんにちは」


そうあいさつを交わす僕たち。


「二人って、よくここ見てるの?」

「うん、よく一緒に来てるよ」

「洋服とかだけじゃなくて、普通にジュースとかおやつとかを買いに来ることもあるけどね」


ねーっと言って微笑みあう二人。

ハルカとクルミといえば、ケンカばかりしてるってイメージがあるけど、僕が絡まないところでは仲がいいんだなぁ……

なんか微笑ましい。


「あー。兄さん、何にやにやしてるのー?」

「い、いや、なんでもないよ。それで、何を見てたの?」

「うん、これ」


とハルカが指で指したのは、とってもかわいいゴスロリの服だった。

というか、こんなものが置いてあるって……

そして、なぜか僕の背筋に汗が伝うのはどうしてなんだろう。しかも冷や汗。


「こ、これ、だれが着るの?」

「うん、これ、兄さんに着せたら似合うんじゃないかなー、って」


次の瞬間、僕は疾風になった。


(Ⅲ)


そして、最悪の事態を回避した僕は、午後の訓練に挑んだ。


今回はいつものシミュレータを使った戦闘訓練。ただいつもと違うのは、アヤメやハルカの情報車両リサーチャーも同行して……言ってみれば、訓練小隊総出で訓練に挑む、ということ。

リサーチャーからの情報から戦局を的確に読みとり、しかもリサーチャーも守らなくちゃいけないと、かなり緊張する訓練だ。


「シュンくん、そちらから見えてると思うけど、6時方向から一機接近してきてるよ」

「うん、わかった」


うん、ハルカの言うとおり、僕の機体のレーダーには、6時方向からこっちに接近してくる反応がある。

僕はそっちのほうに前進しながら、機体の上半身をその反応の方向に向ける。

そして、敵が視界にあらわれた!


「クルミ!」

「う、うん!!」


クルミが両肩のガトリング砲を細かく左右に振りながら発射する。

敵MeSは、その弾幕の直撃を何か所かに浴びて沈黙した。


「ハルカ、もう一機は?」

「うーん、まだこちらのレーダーにも映ってないみたい」

「そしたら、もう少し前進してみようか」


そして慎重に前進する。


「反応あり! え、後ろから!?」

「えぇっ!? し、シンヤ!」

「うん、わかった!」


ハルカからの報告に、僕は僕の後方を歩いていたシンヤに声をかけた。

彼の機体が後ろに向き直り、リサーチャーを守る位置に位置どる。

もちろん僕も。


少しして、レーダーに反応があった。やっぱり、先ほどまでの僕たちの進行方向の後ろ……つまり、今僕たちが向いてる方向から接近している。

おそらく大きく回り込んで、後ろから奇襲するつもりだったんだろう。


MeS小隊にとって、リサーチャーはいわば目や耳のようなもの。それが先に破壊されるということは、MeS小隊の敗北を意味するし、可能であれば先にリサーチャーを叩くというのは、MeS戦の常道だ。


そして……


「来たよ、シュン!」

「あぁ! ファイア!!」


僕とシュンの二機の一斉射撃を浴び、敵は沈黙した。


そして画面に表示される


MISSION COMPLETE


の文字。


それを確認して、僕は大きく息をついた。


(Ⅳ)


そして、今日の訓練を終えて、寮に向かうときの帰り道。


「本当に、今日はハルカのおかげで助かったよ、ありがとう」

「ううん。シュンくんの役にたてて、わたしも嬉しいし」


そう微笑みあう僕とハルカ。


「でも、本当にハルカってすごいよね。的確に情報を分析して教えてくれるし」


確かにそうだ。ハルカの情報分析にはおおいに感謝してる。今日だって、もしハルカが背後から来てるのを教えてくれなかったらどうなってたことか。


「あたしなんか、ただ銃撃ってただけだしなぁ……」

「だってシュンく……ううん、みんなを危険に巻き込みたくないもの。それに、クルミだって、ガトリング撃つのうまくなってたじゃない」

「う、うん……」

「それだけで、シュンくんはとても助かってたと思うよ。ドライバーとガンナーは運命共同体だもんね」


うん、ハルカの言うとおりだ。同じ機体に乗っている以上、ドライバーとガンナーは彼女の言うとおり運命共同体。

ドライバーがうまく機体を動かさないと、敵の攻撃でガンナーも危険にあう可能性があるし、ガンナーがうまく敵を射撃して撃破してくれないと、逆にこちらが攻撃を受けてしまって、二人とも危険な目にあうかもしれない。

そう考えると、本当にクルミが射撃が少しでもうまくなったのは、とてもありがたい。


「ん……ありがと、ハルカ……」

「うん、どういたしまして」


そう笑顔を浮かべるハルカ。その笑顔はあの毎朝の、心を解きほぐし、癒しを与えてくれる笑顔だ。

その笑顔を見ていると、本当に心の中が温かくなってくる。


明日もこんな微笑みを見られたら……


「そうかぁ……あたしと兄さんは運命共同体かぁ……」

「あーーー! でも、シュンくんはわたしのなんだからねっ!」

「ううん! あたしと兄さんは兄妹なんだから、あたしのなのっ!」


見られたらいいな……




To be New Day...


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