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1から5を修正しました。
「意外です」
クローム嬢は呟いた。
...何が?
「いえ、シスイの背景については概ね理解できました。私が商会の一人娘として生まれたことや両親に恵まれた事が偶然であることを再確認致しました。」
生真面目なのね。
「なので、私が気になったことは...失礼ですが、イドラ殿の分析です。人伝てに、貴方はまるで浮雲のような方だと聞いております故、良い意味で裏切られました」
分析なんて大したモンじゃないよ。ただ、triggerを持つ人間同士の戦いには必要なことだからね。
「曲がりなりにもうちのギルドの‘五指’に名を連ねる者ですから。これくらいできなければ話になりませんよ、なぁイドラ、よ」
アルメイアさん、それパワハラですよ。
職務放棄からのギルド資産着服からの一揆という黄金ムーブキメるかァ?オォン?
「そうだイドラ。独房、半日追加だったな。もう面会も十分だろ?」
え、え〜?やだなアルメイア様ってば私めはまだクローム嬢と世間話に興じたいと...
「じゃあな」
ぎゃあー!trigger使うなんてサイテー...
俺はアルメイアのtriggerにて虚空に消えた。
「あっけない消え方をしたものですねぇ...」
「アリサ。まだ慣れないかもしれないけど、これが暗幕のガンナーの日常よ」
あまりにも自然体といった様子のアルメイアにこれから起こるギルドでの喧騒を幻視し、彼女は一つため息をついた。
「とんでもない職場に就職したものです」
「今のはアルメイア殿の...?」
「ええ。ご心配なきよう。煮ても焼いても死なないような奴ですので少し虚空に飛ばしてやった程度ではなんともないでしょう」
「は、はぁ...」
流石の才女といえども、流れるように消えたイドラと消したアルメイアには動揺を隠しきれていない。かくいう私も人が虚空に消えるのを見るのは初めてでどぎまぎしている。一介の新人受付嬢には少々ショッキングなシーンだった。
ただ、イドラ殿の断末魔と表情はちょっと面白くて噴いてしまうところだった。
「それで、クローム嬢。そろさろ本題をどうぞ。私も暇ではありませんので」
「...お気づきでしたか」
?が浮かぶ。
「事件の顛末を聞きたい。本人に礼が言いたい。間者、それこそ爺やにでもやらせればいいではないのですか。それが一番効率的ですし、大商会の一人娘である貴女とて暇ではない。貴女自身がギルドまで来る理由にしては弱いと思いまして」
成る程。確かに、そういえばそのような気もする。
「実は3日ほど前に東側筆頭の商会の一人息子との縁談が持ち上がりまして。半ば強制のようなものですが。
そこで、ギルド暗幕のガンナーに秘密裏に縁談を“無かったこと”にして欲しいのです。
これは西側筆頭商会としてではなく、私個人の依頼です」
「ほほう」
なにやら雲行きが怪しくなって参りました。