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「かっこいい男ってなんだと思う?」
俺は気取ってアルメイアに問うた。
「なんなの?急に。半日追加されたいの?」
俺は独房に居た、またしても。懲りないねぇ。
「小銭稼ぎはいい加減やめなさい。と言いたいところだけど。偶然にも依頼主の娘さんが手にかかる前に助けられたのはあなたの功績ね」
「ダルルルオォ?じゃあここからだしt」
「それとこれとは話が違う」
「オォ↓オォ↑オン」
これが俺の慟哭だ。
本音はアルメイアと話したいからここから出たくないわけだが、ポーズってのはやっぱり大事だ。様式美はくだらないってやつの気が知れねぇよ。これが良いんだろう。
「ともかくだ。俺が思うにかっこいいことしたやつがかっこいいのは当たり前だ。単純にすげぇって話。でもな、それでカッコつけ始めるのは違う。だせぇ。つまり、自然体でかっこいいことするやつがかっこいいと思うのよ
結論だが、俺、かっこよくね?」
「半日追加」
「ホギャアァァァァッ!!!」
何したってんだよ俺がッ。この俺がッ。
発狂も程々にやれやれとポージングを決めていると、階段を降りてくる音がする。地下に独房とはこれまた様式美に則った良い配置じゃねぇか。誰が思いついたんだっけなアルメイア。
「あんたが独房は地下しかありえないってゴリ押したんでしょうが」
分かってて言ったんだよ。俺の悪い癖だ。
「お前と他の奴らでギルド作ったのが丁度一年前か。でかくなったもんだなここも」
「あんたはさぼってばっかりだけど」
確かにな。それとアルメイア。待たしてるけどいいのか?そこの。
「あ。」
「失礼します。お伝えしたいことがありまして、よろしいですか?」
「いいぜ。確か一昨日入ってきた受付の子だろ?アリサだったかな?」
「はい!‘五指’のイドラ殿に覚えて頂き光栄です!」
「いつの間に名前を...(私でさえ覚えていなかったのに...)」
「当たり前だろー。同じギルドの仲間じゃねぇかー」
こういう小さな繋がりに助けられることもあるし。
「要件ですが、なんでも先日イドラ殿が助けた、依頼主のお嬢さんがいらっしゃっていてイドラ殿と面会したいと...」
「...そうか。では独房の中で面会というのも格好がつかないでしょう。アリサ、鍵は持ってる?」
「おぉ、アルメイア様。慈悲を下さるのですね。ありがたやありがたや」
「馬鹿か。うちのギルドの評判に傷がつかないようにするためだ馬鹿が」
「馬鹿って2回言った!2回も!」
「嬢を長く待たせるわけにはいかん。私は先に行く」
カツカツカツカツカツ...
うわーすっげー早足...
「アルメイア殿とイドラ殿は本当に仲がよろしいのですね」
カチャッ
全時代的な錠前が小気味良い音を立てて外れた。
これだよこれぇ。
「仲が良いって言って良いのかねぇ」
「受付の先輩方がアルメイア殿が独房に行った後はどことなく機嫌が良いと教えてくださいました」
「ほんとかな〜。ジョーやクレッグたちとまた飲みに行く時にでも聞いてみるか〜」
アルメイアこそ至高なり。
階段を登ってギルドのロビーへと向かう。
向かう先で声を掛けてくれる職員たちに挨拶を返す。
それにしてもせっせと働く彼らを見て。
「みんなちゃんと働いてて偉ぇわやっぱ」
しみじみと思っちゃう。
「何を仰いますか。アルメイア殿はギルド内でイドラ様のやり方に不満が溜まらないように独房という処置をしていますがギルドの皆は知ってますよ。この大都市の西側の治安が良いのはイドラ殿のお陰だって。
街の人も知ってます。かく言う私もイドラ殿の存在もあってこのギルド‘暗幕のガンナー’に就職しようと思ったので」
「はっはっは。そりゃありがたいが俺は俺の好きなようにやってるだけさ。言うこと聞かない問題児に変わらない。結局自分の仕事をきっちりやれるやつが一番凄いと思うぜ俺は」
なんて言ってればもうロビーに着いてしまった。
「クローム嬢。あそこにいるのが当ギルドきっての唐変木、イドラの阿呆でございます。」
「初手からかましていくじゃんか、アルメイア。一勝負しよう。檻から解き放たれた俺は強いぜ」
「無視してください。クローム嬢。こやつは三度の飯より下らない茶番が好物です故」
「オオオオオォォン」
俺はギルドのロビーで人目を憚らず咽び泣いた。しかし、ギルドの奴らはいつもの事とばかりに無視。なぁジョー、クレッグ、ラリーひでぇよなぁお前らはそう思ってくれるよなぁ。
「いや、いつものイチャイチャだろ?」
「「あぁ」」
これのどこがイチャつきなんだよ...お前らおかしいよ...
「あのぉ...」
あ、クローム嬢。