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「嘘です」
女は抜け抜けと言い放った。
この時点でこの女、キャサリンへの殺意は頂点に達した。しかし、顔には意地でも出してやらない。
それが、現状唯一の反撃だと信じて。
「おいおい、じゃあ俺があんたと寝るために払った金はどこにいくってんだよ」
「私のもの。」
ぶち殺すぞ。シンプルな怨嗟が鼻から微かに漏れたが、気取らせない。
冷静さを失った人間など野性に勝る獣以下。
奴は待ってる。俺が激情に駆られた瞬間を。
だから、それ以上に待つ。痺れを切らしたバカが負ける。
「ふざけてんじゃねぇぞこのアマぁぁぁあ!!!」
俺はバカだった。
「バァカがぁ!trigger 起動ッ」
クリムゾンライフルッ!
女の手に出来の悪いアニメのように突然、大口径の真紅の銃器が握られていた。照準は勿論、俺。
「死ねぇッ!!」
無闇に死ねなんて言うなよぉ〜。
まぁ、死んでほしいから死ねって言うんだろうな。
お兄さん悲しくなるよ。あんた、顔は綺麗なのにな。
銃弾が銃口から飛び出してくる瞬間。俺は意識を音の速さに落とし込んだ。
trigger、起動。
クィックドロウ
真紅の弾丸が宿屋の壁にめりこんだ。勝負は決まっていた。