その57 居酒屋での掛け声について思うこと
いやぁ、ビールの美味しい季節になりましたね。寒さも日々厳しくなり、そろそろ羊さんからの挨拶が届きそうな今日この頃、飲むのはやっぱりビールですよね。
ビール。見た目のあの爽やかさ。口にするとキレのある味わい、そして程よい苦み・渋み。いやぁ、いいですねビール。もしビールが、『次世代のスターを探せ』みたいなコンテストなに挑戦していたとしたら、芸能会社に激震が走りますものね。某アイドルグループよろしく、長蛇の列ができることでしょう。まぁ、目当ては握手ではなく、丁重姿勢での名刺交換でしょうけど。
そんな大人気のビールさんです、居酒屋でも引っ張りだこです。ただ、私真浦塚真也、この居酒屋での一つの掛け声に関して、どうしても許せないものがあるのです。
さぁ、ここで皆さん、想像してみましょう。金曜日の夜、今貴方は同僚、もしくは友達と飲みに来ており、居酒屋に到着しました。人数は…、そうですね、ボックス席の個室が似合う4人としましょう。
そして今、扉を開けました。すると目の前にはあの光景が広がっているわけです。そうです、パラダイスです。大の大人が、皆一様に顔を赤くして、普段だったら電車内での音漏れにも敏感な耳の機能を一切無視した音量で、ニュースや週刊紙のゴシップ記事のような下世話な話を繰り広げる、あの楽園が目の前に広がっているわけです。
俺もあの楽園に早く入りたい。早く入って上司や部下の悪口あるあるを言いたい、芸能界で彼女にするなら誰談義で他のメンバーのタイプを聞いてみたい。そんな衝動にかられながらウズウズしていると、店員がやってくるわけです。まぁ、多分ここは…、女性スタッフでしょう。
その女性スタッフに対して『あれ、芸能人の〇〇に似てるって言われない』なんて全くの見当違いなことを言って(多分パラダイス効果で頭のネジに不調がでたのでしょう)、スタッフに苦笑されながら席に案内されるわけです。
そして、『どっこいしょういち…っと』と、とりあえず言っておいて(多分ネジどころか頭が回転してないのでしょうね)、出されたおしぼりで手や首筋や顔を拭いて、4人で顔を見合わせて『まぁ、そりゃそうだろうよ。こういう時はやっぱりあれでしょうよ。』とアイコンタクトを交わし、テーブルの呼び出しボタンを無視して、他の客に料理を運んでいるスタッフを号令のような大きな声で呼び止め、声高らかにあの掛け声を放つわけです。
『とりあえず、生中四つで。』
さぁ、皆さん。どうでしょう、この掛け声。もう腹立たしいですよね。
えっ、どこが腹立たしいかですって。何も不思議なことはないですって。あるとしたら枝豆を頼んでいないことと、スタッフ誰にでも声をかける訳じゃなくて可愛い女性スタッフに声をかけるべきですって。
いやいや、なにをおっしゃっているのやら。ははーん、さては皆さん、もう一杯ひっかけながらこのエッセイを読んでいるのですね。さすが年末ですね、よっナイス自堕落。
いいでしょう。それではここは、こたつに入りながら観てもいないテレビをBGM代わりにしている私真浦塚真也が、丁寧に説明して差し上げましょう。
まずはこのグループが頼んだものにご注目ください。そうですね、『生中』ですね。生中、正式名称『生ビールの中ジョッキ』。いやぁ、いいですよね。美味しいですもんね。もし『生中』が選挙に出てたら圧勝でしょうね。観衆を酔わす名演説、是非聞いてみたいものです。
それでは次にその『生中』を頼む時に使った掛け声にご注目ください。そうですね、『とりあえず』ですね。
はい、もうお分かりですね。えっ、全然分からないですって。皆目検討もつかないですって。強いて言うなら、生中なんて一息で飲むからストックも合わせて八つ頼むべきですって。ははーん、さては皆さん、すでにビールは飲み干して熱燗にシフトチェンジしましたね。さすが年末、よっナイス飲んべえ。
いいでしょう。こうなったら私真浦塚真也がとことん説明して差し上げましょう。私が言いたいことは以下の事です。
『生中に対してとりあえずとは何事だ。』
想像してみて下さい。ビールですよ。幸せですよね。しかもそれが『生』なのですよ。もっと幸せになるじゃないですか。生チョコレートに生キャラメル、はたまた最近食べることが出来なくなってしまった生レバーまで。『生』というのはそれだけ特別な存在なのです。
えっ、なになに。生と言えばもっと特別な存在があるですって。はてそんな存在がありましたっけ。なになに、生のオッパ…。もう、酔っぱらいはどっかに行ってください。よっ、ナイスハレンチ。
大変失礼いたしました。全く、無礼講とマナーを履き違えた方には本当に困りますよね。この高貴な『へりくつエッセイ』に下ネタを持ち込むなんて。全く、うんこに関して真剣に考察していたどこかのエッセイストと一緒にしないで頂きたい。
さて話を戻しますと、そんな特別な『生』のビールなわけですよ。しかもそれが『中』なのですよ。『小』では物足りないが『大』では手に余る。そんななかでの一番最適な『中』なのです。もう完璧ではないですか。非の打ち所がございません。
それなのにです。そんなミス、若しくはミスターパーフェクトに『とりあえず』とはどういうことでしょうか。そんな片手間な言葉で生中を頼んでもいいのでしょうか。『やっぱりここは』や、『なんといっても』が打倒なのではないでしょうか。生中さんもそっちの方が意気揚々と登場してくれると思うのですよね。もしかしたら、味にも多少変化が出るかもしれません。自信のあるもののキレや渋みは一級品ですからね。
皆さんも『とりあえず生中で。』発言に関して、一度考えてみてはいかがでしょうか。『やっぱりここは生中で。』の方が美味しく感じられると思いますよ。
ただ、飲み過ぎには注意してくだいね。あんまり飲み過ぎると奥さんや旦那さん、お子さんやご両親に『全く、いつも飲み歩いて。』と怒られてしまいますよ。その時に、今流行っているからといって、飲みに行ってしまう理由を決して『妖怪のせい』にされませんように。『妖怪のせい』にが通じるのは可愛げのある子どもたちだけ。もし大の大人が使おうものなら、身内から妖怪も逃げ出す鬼の顔が飛び出しますよ。鬼の手でビンタされないことを、真浦塚真也は願っております。
長々とへりくつ失礼しました。
またお会いできたらお会いしましょう。
失礼します。
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