その49 浦島太郎について思うこと
先日、ひょんなことから幼気なお子様に絵本を読み聞かせる機会がありました。滑舌が著しく欠陥している僕なんかが読み聞かせて大丈夫かと思いましたが、選んだ本が『浦島太郎』というメジャーどころだったことと、お子様がほとんど『浦島太郎』に興味を全く持たずに熟睡さるたことにより、特に何の問題も起きずに無事に終了することができました。
まぁ、お子様にとってみれば、『浦島太郎』なんて僕に読んでもらう以前からお父さんお母さんに読んでもらっていただろうし、亀を助けて竜宮城に行って、乙姫から玉手箱を受け取って、開けてお爺さんになってしまうなんてストーリーは、たまに会う僕の名前を覚えるよりもたやすいことでしょう。
ただ、そんな柄にもない日夜を過ごした時にこんな疑問が浮かびました。
『浦島太郎が子ども達に伝えたいメッセージは一体何なのだろうか』と。
絵本が読んだことがある、読み聞かせたことがある人ならばお分かりでしょうが、絵本には大抵子ども達に伝えたいメッセージが存在するのです。例えば、『かさ地蔵』だったら、『困っている人(まぁお地蔵様が人なのかは分かりませんが)を助けると、いつか自分にも返ってくるんですよー。』とか、『オオカミ少年』だったら、『嘘ばっかりついちゃだめですよー。』とか、『三匹のこぶた』だったら、『家は一生もんの買い物なのだからちゃんと選ばないとだめですよー。』とか、『走れメロス』だったら、『意外と走ればなんとかなるものですよー。』とかちゃんとしたメッセージがあるのです。
それに比べて、『浦島太郎』はどうでしょうか。なにかこれといったメッセージを発しているでしょうか。いえ、発していないのです。何故か、ものすごくぼんやりとしているのです。
だって考えてもみてください。浦島太郎は亀を助けて竜宮城に連れていってもらって、なんとも絢爛豪華な宴を開いてもらいました。そこで話が終わるならば、このお話の持つメッセージは『かさ地蔵』のように、『困っている人(まぁ亀ですが)がいたら助けてあげなさいねー。』なるわけです。ただ、浦島太郎にはまだ続きがあるのです。
浦島太郎はその後乙姫様から『決して開けてはいけません』との言葉と共に玉手箱を受け取ります。そして地上にもどると自分の家族、友達が誰もいない。なんと竜宮城での楽しい一時と思っていた時間は、何年間という取り戻せない時間だったのです。ここで話が終わるならば、このお話のメッセージは『楽なことばかりに目を向けていると大変なことになりますよー。』となるわけです。だがしかし、浦島太郎にはまだ続きがあるのです。
浦島太郎はその後、玉手箱を開けました。するとなんとお爺さんになってしまったのです。これで話が終わります。もしこの部分だけ読んだとすれば、このお話のメッセージは『人の言うことを守らないと、大変なことになりますよー。』となるわけです。
どうでしょうか。このように考えてみると『浦島太郎』は結局のところ何を伝えたいのだろうかという疑問を持ちませんか。
というか、乙姫はなんて恐ろしいものを亀を助けた恩人に渡しているのでしょうか。お土産だというのに開けちゃいけないと言われるし、開けたら開けたでお爺さんにしちゃうし。こんなものただの危険物ですよ。今回は海底だから助かりましたよね。もし乙姫様がアメリカにいたとして、帰りに飛行機なんて使った日には大変なことになりますものね。『これは亀を助けたお礼なんだ。大切な人にもらったんだ。だけど開けるなと言われているんだ。開けたら恐ろしいことが起こる気がするんだ。』と必死になって説明する何十年も前のファッションで身を包んだ日本人。確実に普段入れないであろう通路から小部屋に連れていかれますよ。
いやぁ、考えれば考えるほど分からなくなってしまったぞ、『浦島太郎』。
皆さんも、昔読んだお話に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。意外と夜長を過ごすのにぴったりかもしれませんよ。
長々とへりくつ失礼しました。
またお会い出来たらお会いしましょう。
失礼します。
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