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その24 命名について思うこと

『命名』

漢字2文字で表すことのできるこの言葉ですが、この行為の重みは大層なものであると思います。だって、これから一生その名前で呼ぶわけですからね。まぁ、だから子供が産まれたときなんかには、姓名判断や画数にかなりこだわるのでしょうけど。

ただ、僕が思うに、中には『もっとちゃんと考えてあげれば良かったのに…』というものもいくつか存在してしまっているんです。

例えば、この命名。



『ウミヘビ』

もうね、ここまでくるとただの悲劇ですよ。何ですか『ウミヘビ』って。『海』の『蛇』って意味なんでしょうか。人間の僕がこんなに衝撃を受けているんです。ウミヘビたちにとっては、これ以上の衝撃だったはずでしょう。多分こんな会話がなされたに違いません。


とあるウミヘビ「た、大変だよ、井上さん!」

井上と呼ばれたウミヘビ(以下井上)「どうしたんだい、蝶野さん。ははーん。さては浮気がばれて、奥さんに実家に帰られちまったんだな。」

蝶野と呼ばれたウミヘビ(以下蝶野)「何言ってるんだい。俺は硬派な男だよ、一人の女性しか愛さない硬派な男だよ。…って、そんなこと話してるんじゃないんだよ!大変なんだよ、井上さん!」

井上「だから、その大変なことを早く話してごらんよ。こっちだって暇してるわけじゃねぇんだから。」

蝶野「あぁ。じゃあ、驚かないで聞いておくれよ。…実は俺たちの呼び名が決まっちまったんだよ。」

井上「…はぁ?」

蝶野「いや、だから、俺たちの呼び名が決まっちまったんだよ!あぁ大変だ、大変だよ、井上さん。俺たちの呼び名が決まっちまったんだよ。」

井上「いや、何言ってるんだい、蝶野さん。呼び名っていったって、俺は井上だし、蝶野さんは蝶野さんなんじゃないのかい?」

蝶野「井上さん。あんたも話の分からない男だねぇ。いいかい。呼び名っていうのは、俺たちの分類の名称ってことだよ。例えばなぁ、…ほら、そこら辺を泳ぎ回っている魚がいるだろ。ほら、あの魚だよ、長野さんとこのバカ息子。…そう、健太だよ。俺たちゃ健太って呼んでるけどな、ありゃ人間に言わせると『イワシ』って言うらしいんだ。つまり、呼び名っていうのは、人間が俺たちのことを背格好や特徴が同じ奴等の事を呼ぶときに使う名前ってことだよ。」

井上「なるほど、そういうことか。了解、了解。いやぁ、それにしても蝶野さん、あんた博識だねぇ。」

蝶野「やめてくれよ。こっぱずかしい。まぁ、これでも大学を首席で卒業してるからねぇ。」

井上「ところで、その呼び名っていうのは、何になったんだい。さぞかし立派な名前になったんだろうね。」

蝶野「…あぁ、そうだった、そうだった。いけね、このままだ大学に行ってましたっていう自慢話になるところだった。いいかい。心して聞くんだよ。俺たちの呼び名は…。」

井上「俺たちの呼び名は?」

蝶野「ウミヘビだよ。」 井上「…。はぁ?なんだいウミヘビってのは。『ウミ』ってのはあれかい。海のことかい。じゃあ、『ヘビ』ってのはなんだい。なにか深い意味を持った言葉なのかい。」

蝶野「いや、『ヘビ』っていうのは、陸で生活しているひょろながい奴で、おれたちにそっくりらしいんだ。」

井上「え?じゃなにかい。俺たちはその『ヘビ』って奴に似ている『海』に生活している奴だから、『ウミヘビ』だっていうのかい。」

蝶野「まぁ、そうだろうね。」

井上「冗談じゃないよ!そんなバカな話があっていいのかい!俺たちはずーっと昔の御先祖様の代から海で生活しているんだよ。それを、その陸で生活している『ヘビ』って野郎に似ているからって『ウミヘビ』なんて名付けられちゃあ、俺は御先祖に申し訳ないね。あぁ申し訳ないよ。だってそうだろ。ほら、あそこで泳いでいる魚を見てみなよ。あいつだってひょろながいだろ。それなのにあいつの呼び名は凄い格好良いじゃないか。ほら、この前蝶野さんが教えてくれたじゃないか。何て言ったっけ。…そう!『リュウグウノツカイ』だよ。いやぁ、格好良いよ。意気じゃないか。それに比べて、なんだい『ウミヘビ』っていうのは。あぁだんだん腹が立ってきたよ。そもそも、何で俺たちが二番煎じなんだい。『リクヘビ』だって良いわけじゃないか。何!?どこかの就活サイトに似ている?そんな話はどうだっていいんだよ!あぁもう我慢できねぇ!直談判にでてやる!」

蝶野「ちょっと、止めておくれよ、井上さん。」

井上「うるせぇ!男に二言はないんだ!」



いやぁ、井上さん。あなたの気持ちは痛いほど分かります。この出来事を境に、ウミヘビは人間を噛むようになったとかならないとか。…まぁ120%フィクションですけど。それに、今落語の番組を見ながら執筆しているせいか、会話が少し落語調。いやぁ、影響されまくりのエッセイですね。


皆さんも命名するときには、今一度注意してみてはいかがでしょうか。まぁ、そう言っている僕も、幼稚園児の頃に、補助輪付き自転車に『スーパー真也号』なんて付けてましたけど。あぁ、今思い返すだけでも恥ずかしい。


それでは最後に、ウミヘビさんと同じくらい呼び名に怒っているであろう方々を紹介して、今回のへりくつを締めさせて頂こうと思います。





『キクラゲ』


長々とへりくつ失礼致しました。

またお会いできたらお会いしましょう。

失礼します。

御覧頂き有り難うございます。

評価・感想等頂けると嬉しいです。

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