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セブンスアビス  作者: レイタイ
死霊魔術師と神槍編
82/90

特別編1 私は意外に純情だった

 初めはただの好奇心と神への復讐のためだった。 噂で聞いた優しい王様。 その王様なら大いに利用出来るだろうと考えた。

 …………結果から言うと失敗したわ。 大失敗。 何もかもが予定通りに行かなかった。

 けれどその失敗は悲しむべき失敗じゃなかった。 それはむしろ…………。


「ふふ…………」


 胸元で心地良さそうな寝息を立てているその男の子。 整った中性的な顔立ち、長い黒髪、赤い瞳。 身長は少し低めだけれどそれも可愛いと思えるくらいに魅力的な男の子。

 それよりも私が…………いえ、私達が気に入ったのは性格の方かしらね。

 誰にでも、ではないけれど基本的には優しい性格だった。 しかし現実が厳しいとよく分かっているせいか、容赦がない時は本当に容赦がないのよね。 綺麗事ばかり並べる気持ちの悪い男もいるけれど、そいつらは現実を直視出来ない弱い人間なんだと思うわ。

 とりあえずはそんな彼は今は心地良さそうに私の胸元で眠ってくれている。 本当に可愛くて、その寝顔を見るだけで頬が緩んできてしまう。


「紅月……ルナくん…………」


 その名前を呟くも、あまりしっくりと来ない。 彼の名前はそうだけれど、やっぱりいつも通りのあだ名の方が良いわね。


「ふふ……月くん…………」

 

 月……夜空に浮かぶその光は暗いものを照らしてくれるものというのが私の認識。 それに稀に赤い月も見ることも出来る。 それとルナという月の女神の名前から月くんと呼ぶようになった。

 今は彼にそのあだ名をつけて良かったと思っているわ。 だって……暗くなった私の心に本当に光をくれたのだから。 なんて、少しくさいかしらね。


「すぅ……すぅ……」

「可愛い……♡」


 この世のものとは思えないくらい可愛い寝顔をしていた。 本当になんでこんなに可愛いのよこの子は!


「月くん月く〜ん♡」


 月くんの頭に手を回して抱きしめてしまう。 胸に顔を埋める形になってしまうけれど、それすらも嬉しくなるくらい魅力的なのが月くんの凄いところよね。

 しばらくの間月くんの頭を撫でていると、月くんは少し唸っていた。 も、もしかして起きてしまったの?


「月くん?」

「んー…………」


 あら? た、ただの寝言なのね。 けれど月くんが寝言を言うなんて珍しいこともあるものね。 いつもはずっと心地良く寝ているだけだったのに。 …………いつも心地良く寝てくれるだなんて、なんて幸せなの? ドキドキし過ぎて私の心臓がとてつもないことになってしまっていた。


「何を言うの?」


 ドキドキしながら質問してみる。 答えなんて返って来なくてもいい。 ただ私は彼の側にいられるだけで…………。


「ネティス……好き…………」

「っ!? んもう! 可愛いんだから!」


 何よこの可愛い生き物は! 本当に生きてるの!? 私の妄想じゃないわよね!?


「おっぱい!? おっぱいが良いの!? 揉む? 舐める?」

「すぅ……すぅ……」


 って…………そうよね、寝言よね。 別に胸が揉みたいとか吸いたいとかじゃないわよね。

 …………でも吸ってるところもう1回見たいわね。 あれは可愛かったわ……。

 あとは膝枕と胸枕、一緒にお風呂とマッサージ、そのままエッチまでして…………。 あら? 割といつも通りね……?


「私ってやり過ぎなのかしら…………。 月くんもあまり下手に介入されるのは嫌よね?」


 過度な介入は月くんの言うところの過保護になってしまうわね。 本当ならもっとしたいけれど…………。


「んん…………」

「あ、あら? も、もしかして起こした?」


 寝ぼけた表情で上体を起こした月くん。 そのままボーッと私の方を見てくる。 えっと……起きてる? それとも寝ぼけているだけ? 月くんの場合はよく分からないのよね…………。

 月くんは周囲を見回した後に首を傾げた。


「……ここ…………どこだ?」

「え? わ、私の部屋よ?」

「…………」


 月くんはボーッとしたまま夜空を見上げる。 つ、月くん? どうかしたの?


「つ、月くん?」

「ふぁぁ…………。 眠い…………」

「そ、そうよね? なら早く寝ましょう?」

「んー…………」


 月くんは欠伸をした後にそのまま私に向かって倒れてくる。 咄嗟に受け止めようと上体を起こすも間に合わなかった。


「ふぁ!?」


 月くんの顔はそのまま私の股の中へ…………。


「つ、月くん! は、離れて! あぁ!? つ、月くん!?」


 咄嗟に突き飛ばしてしまった。 ベッドから落ちた月くんの様子を慌てて確かめる。


「いっつ〜…………ん?」


 月くんは頭を押さえながらも立ち上がる。 よ、良かった…………。


「…………何事?」


 どうやら月くんはパッチリ目が覚めたみたいだった。 し、仕方ないわよね。 いくら朝に弱い月くんでもあんなことされたら眼が覚めるわよね。


「ご、ごめんなさい。 私がその……月くんを突き飛ばしちゃって…………」

「あー…………どうせ俺が寝惚けて何かやらかしたんだろ?」


 月くんは寝惚けていたというのにあっさりと自分に非があることを結論付けた。 実は起きていたのではと思わせるくらいに色々と悟っている。


「え、えっと…………股に顔を…………」


 濁しながら状況を伝えると顔を真っ赤にして驚いていた。 そのまま視線は横へ。


「すいません」


 そして敬語で謝罪。 月くんは自分に非があったり、もしくは色々とやらかした場合にはこうしてちゃんと謝罪が出来る子。 本当に王様なのかと疑うくらいに普通なのよね。


「その……よろしければこのまま二度寝をしても……?」


 そして不安そうな表情を浮かべていた。 もちろん月くんの心情は大体分かる。

 そんなことで……その程度のことで私が月くんから離れるだなんて絶対にあり得ない。 だって私は月くんのこと…………。


「ふふ……もちろん」


 だから私が取る行動は手を広げていつでもウェルカムというのを伝えるだけ。 そうすると月くんは安心したように私の胸に顔を埋めながら抱きついてくる。 可愛い…………。


「ネティス…………」

「うん? 何?」

「大好きだ」


 珍しく頬を緩ませた月くんはそんなトドメを刺してくる。 いつも私の心を支配するのは……どんな時でも考えてしまうのは…………。

 月くんは王様としては似合わないかもしれないわ。 でも……人としては、1人の男の子としては、物凄く魅力的で可愛い子だから。


「私も大好きよ……♡」


 そう、心を込めて言わせてくれる。 月くんの緩んだ顔が可愛い。 本当に嬉しそうにしてくれてるのが伝わってくる。


「ん…………」


 そのまま目を閉じる月くんの頭を撫で続ける。 月くんは安心したように再び寝息を立て始めた。

 月くんも不安なのよね? 誰かに見捨てられるのも、誰かに裏切られるのも。 だから、何度も何度も確かめて、何度も何度も訊ねて、そして安心を得たい。 本当に私と変わらない。

 どこか私と似ていて、そして魅力的な男の子。 純情で初心で、未だに恥ずかしがったりするような子。


「…………月くんと似ているってことは、私も純情ということになるの?」


 確かに今更月くん以外の人を好きになることなんてあり得ない。 だってそんな人が大勢いるのなら世の中はきっと平和になるだろうから。

 だから私のこの想いは、この感情はこの子だけに向けられるものなんだと思う。


「月くん…………」


 月くんの頭に手を回し、抱き寄せながら目を閉じる。

 私のことはどうであれこの気持ちは本物だと思う。 なら私は一途にこの子を想い続けたい。 力になりたい。

 そう思わせるこの子に対してなら、私は純情でいられるのだと、そう思う。

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