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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
7/90

鎖に繋がれた少女 三

 考えなかったわけじゃない。 予想していなかったわけじゃない。

 今俺は現在、長い長い廊下が続く道で天使に囲まれていた。 というか窓から侵入してものの数分でバレた。

 天使の探知能力のせいだろう。 即効で囲まれてしまったのだ。


「神速剣・隼」


 ひたすらに足を動かし、天使の横を通り抜け様に3人ほど斬り殺す。

 高速の剣技は天使ですらも見ることが出来ない。

 雷魔法による速度の上昇、風魔法による斬れ味の上昇、水魔法により刃を滑らせることで更に速度を上昇させた同時に3属性魔法を使用する割と難易度の高い技だ。


「神速剣」


 真正面に立ちはだかったゴリゴリマッチョな気持ち悪い天使の胴体を高速で斬り裂く。 同時に横を通り抜ける。

 囲まれはしても一点を集中して攻撃していればいずれ道は開く。 その穴を狙い、俺は飛び込んだ。


「逃がすな! ここで仕留めろ!」

「「「「はっ!!!!」」」」


 恐らくは司令塔の天使の命により、更に数名俺の目の前に立ちはだかる。 そして一斉に腕を突き出した。


「「「「バーニングブラスト」」」」


 目の前から発射された超爆発は廊下そのものを飲み込んでいく。 更には後ろからも同様だった。 前後から爆発魔法に挟まれた形だ。


「水氷剣・剣壁」


 歩みを止めず、目の前の爆発魔法に刀を盾にするようにして突っ込む。 刀から大量の水が噴き出し盾となる。

 そのお陰で傷は最小限。 右腕を少し火傷した程度の負傷で済んだ。

 俺はそのまま跳躍して天使の上を抜ける。 天使達は一瞬、俺に視線を向けた。 その瞬間押し負けた爆発魔法に飲み込まれる。

 俺が水の盾で防いだ為に威力が激減されていたのだろう。 まぁ狙ってやったのだが。


「氷風剣・千花」


 振り向いて刀を振るい、氷の礫を飛ばす。 礫は花が咲くように広がる。 爆発魔法を貫通し、天使達に追い討ちを掛ける。


「あの子は…………!」


 何処にいるのか分からない少女。 何処かに幽閉されているというのは拷問されているということで分かったものの、それが何処なのか分からない。


「鉄心!」


 ドスンッ! といういかにも重いような鈍い音と共に上からゴリゴリマッチョな天使が降ってきた。

 その天使は全身が土魔法に覆われており、おそらくは硬いのだろう。 硬化というやつだ。


「剣などに負けるかぁ! グランドプレス!」


 左右からの土魔法によるプレス機のような攻撃。 俺は跳躍してそれを避けながら刀を鞘に収める。


「抜刀術…………」


 初めて使う技ではあるが成功はする。 というよりは今までの剣技と全くやることは変わらないのだから。


「鉄心に死角などな–––––」

「黒切」


 スパンッ!と天使の首を斬り落とす。 刀に纏った黒い魔力が霧散し、飛び散る。

 黒の濃度の濃い魔力はガード不能の切断攻撃となる。 この技があれば天使や神の神聖すらも容易く斬り裂くことが出来る。

 もちろん大量の魔力を消費するのであまり多用は出来ないが、今回は速度重視だ。 魔力の消費は痛いが問題はないだろう。


「急がないと…………」


 急ごうと足を進めようとした俺の頬に炎の銃弾が掠めた。 驚いて視線を向けると悠然な笑みを浮かべた全身鎧姿に翼が生えた天使が宙を浮いていた。

 神力など見ずとも一目で分かる。 一般の天使とは違いかなり上位のクラスだ。


「神槍」


 精製魔法による槍の精製。 そして投げ槍の如く投擲される。

 防ぐ事も出来るとは思いうが、かなりの神力が込められている。 魔力はあまり無駄にすべきじゃないだろう。 俺は回避することにした。


「神壁」

「っ…………!」


 俺の背後に金色の壁が出来た。 背中をそこにぶつけ、一瞬動きを止められる。


「神槍・連」


 まさに槍の雨。 いや、まさにというよりは本当に槍の雨が降ってきた。

 それらを回避しながら天使との距離を詰めていく。


「風切」


 刀を一振りし、カマイタチを飛ばす。 しかしそれは槍によって貫かれ、追い討ちとなって俺に襲い掛かる。


「ちっ…………!」


 バックステップで躱すことを余儀なくされる。 このままではジリ貧なのに、一体あの天使は何を考えているのだろうか。

 そう思った瞬間背後からもう1人の天使が見えた。 弓を引いている。


「ライトニング」


 ジュバン! という超高速の雷を纏った矢が飛んできた。 ギリギリ避けるものの、間に合わず、左肩を少し貫かれた。


「っ…………!」


 痛みで少しよろけた。 そこに躊躇いなく降り注ぐ槍の雨。

 槍は俺の右腕に突き刺さり、身体を浄化するかのように痛みが走る。


「ぐっ…………!」


 腕に槍が突き刺さったままなんとか他の槍を避け続ける。 しかし動き回るごとに痛みが増してくる。

 雷の魔法を足に纏わせながらの高速移動で鎧天使の背後まで移動する。 そして風魔法で足場を作りながら射程距離内へと入れる。


「雷殺剣・一閃」


 雷による速度プラス威力重視の剣技。 鎧を斬り裂きはしないものの、雷による威力で地面へと叩き落とす。

 空中で刀を離し、槍を引き抜いて捨てる。 これで幾分か動きやすい。


「ライトニング」


 再び響くジュバン! という音と閃光。 雷を纏った矢が飛んできたのだ。

 空中というバランスの取りづらい体勢を狙ってきたようだ。


「水氷剣・柳」


 刀を掴んで水魔法を使用しながら振るう。 水は矢そのものの軌道をズラし、俺は紙一重でそれを避ける。


「っ!?」


 弓矢天使が驚いたのが分かった。 しかし何よりも優先なのは手数の多い鎧天使の方だ。


「炎殺剣・追花」


 炎を纏った剣を倒れる鎧天使の胸元に突き刺す。 炎が噴き出し、まるで花のように広がる。

 中心の高熱、更には矢の攻撃は噴き出す炎によって威力は自然と軽減される為に追撃用プラス防御用として使用出来る技だ。

 その炎に焼かれ、鎧天使は力無く倒れ、灰となる。


「…………」


 刀を引き抜くと弓矢天使の方へと歩き出す。 容赦はしない。 情けは掛けない。

 この世には良い天使もいれば悪い天使もいる。 いや、良い神も入れば悪い神もいるというべきか。

 それは王にしても変わらない。 セブンスアビスという立場を利用する奴は必ずいるだろう。

 しかしそんなことを選別出来る余裕など戦場ではありはしない。 こいつらがどれだけの想いで戦場に出ているのかは分からないが、殺し合いをしておいて見逃すなんてことはあり得ない。


「ひいぃ!!!!」


 怯えて逃げようとする弓矢天使に雷を纏った足で高速で追い付くと、首を刎ねる。

 血が噴き出して倒れる弓矢天使の残骸を無視して周囲を見回す。


「牢だったら下の階になるのか?」


 普通の砦の構造ならそうなるのだろう。 地球では砦を見たことがない上に記憶を探っても何も分からない。 そもそもセブンスアビスがこの砦に来ることすらおかしいのだから。 だがなんとなく想像は付く。

 天使にとって上に行くことが至上の喜びなのだろう。 勝手なイメージだが。

 なら逆に地上は汚らわしいという概念でもあるのではないだろうか。

 日本でも牢屋はそういう意味がありそうだ。 地下牢とか言うしな。 多分だが。


「下の階…………下の階…………」


 下へと続く階段を探しながらひたすらに走る。 いや、天使のことだから階段なんて概念はないのかもしれないが。

 とりあえずは下に続く道を探して走るのみ。


「あれか…………?」


 何やら穴のようなものを見つけた。 薄暗くてあまり良い雰囲気ではないが。

 そもそも牢屋へと続くのならそういうものだろう。 そう納得させて急いでその穴へと向かう。

 腕の傷が痛む。 早く止血しないといけないのだろうが、呑気に休んでいると天使に暗殺され兼ねないので安易に休めない。


「はぁ……はぁ……」


 息を切らしながらもその穴へと飛び込んだ。 案の定、そこは牢屋が並んであった。

 しかし人1人いない。 しかし白骨死体や腐った死体などは置かれたままとなっていた。

 酷いくらいの腐臭が鼻に付く。 こんな所にあの子を閉じ込めていると思うとかなり腹が立つ。


「あの子は…………!」


 だからこそこんな所から早く出してあげたい。 俺はその想いに駆られて走り出す。

 どんな理由があろうときっかけは、巻き込んだのは俺の責任だ。 どうか無事であって欲しいと心の底から祈りながら足を動かし続ける。

 鳴り響いたガシャン! という金属音。 音のした方向は…………。


「あっちか」


 俺は方向転換し、音のした方向へと走り出す。 1番奥にいるものだと思ったが、そういうわけではないのか。


「あ…………いた」

「…………!?」


 ようやく見つけた。 ボロボロの服から覗く白い肌。 しかし痛めつけられた後が目立ち、赤く腫れてしまっている。

 更にはボロボロの服から下着どころか胸の先端や股下のあそこまでもが微妙に見えてしまっている。

 しかしそれでも俺は視線を外せなかった。 決して性欲に負けてとか、そんなものじゃない。


「良かった…………」


 ただ、安堵した。 鎖に繋がれた腕が痛ましい。 俺は刀で牢屋を斬り裂こうとするもガキンッ!と弾かれてしまった。


「…………黒切」


 黒い魔力を大量に込め、檻を斬り裂いた。 檻が破れたことに驚きを隠せない少女に駆け寄り、その鎖も斬り裂いた。


「なんであんたが…………?」

「助けに来た。 俺のせいで巻き込んだようなもんだしな」


 キョトンとする少女。 まるで理解出来ないと言った雰囲気だ。

 俺はその子をその様子を見ていると目頭が熱くなってくる。


「本当に…………良かった…………」


 そしてゆっくりと抱き寄せた。 少女は少し困惑したままだったが、それでも俺は彼女の温もりを感じられたことに安心した。

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