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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
6/90

鎖に繋がれた少女 二

 あれから更に時が経過した。 俺は早速鍛冶屋へと急ぐ。

 冒険者というのはかなり不安定な職のようで、特にブルしかいないこの辺りではあまり稼ぐことは出来ないようだ。

 ようやく10日が経過した。 ならば刀を貰った後はダンジョンに潜る気だった。


「どうも」

「おお、来たか紅月くん。 早速だがこれを使いたまえ」


 そう言って渡されたのは刀だ。 鞘から抜いて確かめると綺麗な刀身が現れる。


「私なりに色々とやってみた。 試作品1号だ。 是非すぐにでも感想を聞かせてくれ!」

「いや、まだ使ってねぇんだけど…………。 と、とりあえずありがたいな」


 刀を鞘に戻し、腰に差す。 なんだか侍になったようだ。

 実際は侍よりも強いのだが、それはまぁ気にしないことにしよう。

 日本で魔法の概念を持ち込むのは恐らく間違いだ。


「じゃ、俺は少しダンジョンに潜ることにする。 金が心配なんでな」

「そうか、それなら仕方ないな。 だが、いいか? 必ず使い心地を確かめるんだぞ? ここで死んで2度と帰って来ないとなった瞬間どうなるか分かっているのか?」

「え? いや、さぁ?」

「降霊魔法でお前を呼び戻してボコボコにしてやる」


 なんだその方法は。 しかしこれは彼女なりに心配してくれているのだろうか?

 全然素直じゃない上になんか微妙な気分になる。 しかし自然と笑みが漏れた。


「なんだよそれ。 あと死なねぇし」

「ふふ…………さぁ、とっとと出て行った。 私は試作品2号で忙しいんだ」

「はいはい」


 刀をありがたく受け取り鍛冶屋を後にする。

 すると何やら視線を感じた。 以前にも同じような視線の感覚を感じたことがある。


「…………」


 鍛冶屋を出て丁度向かい側の建物。 その影に以前出会ったセミロングの天使がいた。

 その天使はじっと俺を見つめる。 良い機会なのかもしれないと、俺はそっと近付いた。


「何か用か?」

「…………何がしたいの?」

「え?」

「…………私はあなたの敵」

「殺す気がない奴は殺したくないしな。 天使の全てが敵だとは思ってない」


 本心を告げると無表情が崩れ、目を少し開いた。 驚かれたらしい。


「そう…………」

「それで何か用か?」

「ん…………」


 やはり用があって来たらしい。 じゃなきゃわざわざ待っていたりしないか。


「…………家臣が危ない」

「は? 家臣?」


 一体誰のことだ? 家臣? 俺はまだ1人で仲間も誰もいないはずなのだが。


「…………? 銃を使う人」


 銃を使う人…………もしかしてあの少女のことか? しかし危ないとはどういうことだ?


「神に捕まった」

「っ!?」


 捕まった? 何故? あの子は全く関係がないはず–––––。

 いや、この天使も今あの子のことを俺の家臣だと言った。 つまりは…………。


「誤解で捕まって人質にされてるってことか…………?」

「ん…………今拷問中」


 なんだよそれ。 なんでそんなことになってんだよ。


「ちっ…………場所は」

「ん…………行くの?」

「当たり前だろ」


 そんな俺を興味深そうに見つめる天使。 しかし今はそんなことを気にしている暇はない。


「じゃあ移動する…………」

「は?」


 いきなり天使を中心に魔法陣が展開される。 その魔法陣は俺の足元にまで広がり、青く輝く。

 これは転移魔法だ。 俺は抵抗することなくその魔法陣を受け入れた。


「…………もういい」


 声を掛けられて目を開ける。 そこは大きな砦だった。

 白く高く造られたその建造物は一見して城のようにも見える。


「ここは…………?」

「白牢の砦…………天使の基地の1つ」

「天使の基地?」


 そんなものがあるのか。 ということはここには天使の軍勢がいるわけだな。


「ん…………どうする?」

「…………行く」

「…………正気?」


 確かに正気の沙汰じゃないのだろう。 敵の本拠基地に突っ込むようなものなのだから。

 しかし、だからと言ってここで俺があの子を放置するわけにはいかない。 何も悪くないあの子がそんな目に遭うことすらおかしいことだ。


「…………あなたは止めた。 でもあの子は戦った。 だからこうなってる。 それでも?」


 …………確かにその通りだ。 あの子に止めるよう言ったはずなのだ。 しかしあの子はそれを無視して戦った。

 だが結局のところ俺はそれを放置してしまった。 無理矢理にでも黙らせて、最初から俺がやるべきだったのだ。


「それでも、だ」

「…………」


 俺の瞳をじっと見つめたその天使は小さく笑みを作った。


「素敵な王様」

「は?」

「ん…………頑張って」

「ああ。 …………あの、お前の名前だけ聞いていいか?」

「ん…………ヒーラ」


 ヒーラ、という名前なのか。 覚えた。


「ヒーラ、ありがとな」

「ん…………」


 しかし、この子は同じ天使を殺されていいのだろうか。

 ヒーラは再び移動魔法を使い、どこかへと消えて行った。 その際に最後に手を振っていたのには少し慰められた気がした。


「…………」


 改めて振り返るとその城から何人かの天使が飛び立ったのが見えた。 ここですぐにバレるのは得策じゃないな。

 俺は窓をゆっくりと炎の魔法で溶かして中へと侵入した。

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