3度目の合同任務 終
結局のところこの新米冒険者の道案内の目的は何だったのだろうか。
敵わない虎の魔物と戦わせる為? それとも先に強い魔物を見せて、ブルを見た時にああ、この程度かと思わせたいのか。
まぁ詰まる所、そういう目的がなければ向上するものもしないものである。 今回はその肝心の目的が明確にされていない。 だからだろうか。
「ねぇルナ、私達が全部仕留めればいいのかしら?」
「さぁ…………」
俺達は現在虎に囲まれてかなりの大ピンチ。 実際俺1人でも何とかなるくらいの危機なのだが今回の合同任務の意味が分からない以上は攻められないのだ。
「ひぃぃ! ま、魔物ぉ!!」
「お助けを〜!!!!」
「やめてくださいやめてくださいやめてくださいやめてください」
「ごめんなさい! た、だずげでぇ〜!!!!」
やる気あんのかよこいつら。 本当に新米冒険者か? ただの一般人じゃねぇか。
「ルナ、いいわよね?」
「あぁ…………」
流石にもう見ていられないしな。 フェシルに許可を出すと太もものホルスターから銃を抜いて全ての虎を撃ち抜いていく。
流石の腕前である。 というかさっきから護衛役の仕事が多すぎる。 こいつらが冒険者かどうかすら怪しいくらいだ。
「ちょっと! 困るよ!」
案内人の男が駆け寄ってくる。 どうやら困るらしい。 殺したのはマズかったか。
「どうして全て殺してしまうんだ!」
「一応護衛だしな。 死者が出てもいいなら放置するけど?」
俺達は自分の任務を遂行しているだけだ。 ギルドがどれだけ俺達に期待してこの任務を与えたのかは知らんし一応出来る範囲はしてやるつもりではあるが、そこが明確とされていないのならやるべきだ。 不明なら殺る。 死者が出てからでは遅過ぎる。
「それは困る。 だが全て殺されると練習にならないじゃないか」
「じゃあ次から1体残すってことでいいんだな? そこから先の責任は俺達は取らんぞ」
「護衛役だろう!?」
いや、何言ってんだこいつ。 護衛の意味分かってんのかよ。 それがこの合同任務の売りだっていうから乗ってやったというのに。
「あのな、じゃあお前は襲われそうな相手を直前で助けることなんて出来ると思うのか? せいぜい食われるところを眺めるだけだろ」
「それは…………」
「言ってることが矛盾してんだよ。 お前がどうしたいのか知らないし興味もないが、自分の都合の良いように周りを解釈してんじゃねぇよ」
だからシルヴィアにも説教されんだろうが。 何ならここでもう一度俺がしてやろうか?
「キミ達は護衛だろう!」
「だから護衛してんじゃねぇか。 なら俺は全員見捨てておけばいいのか?」
無駄に突っかかってくるなこいつ。
「い、いいのか!? 俺がお父様に言えばお前らなんて––––––」
あー、こいつ金にモノを言わせた無能のタイプだ。 1番相手にしたくない上にこいつの下についた日にゃとんでもない目にあうのは見え見えだ。 最悪だな。
「仕方ないわね…………。 あなた、どういう了見が知らないけれど、ウチの王様にケチをつける気かしら?」
ネティスが悠然な笑みを浮かべる。 こういう時のこいつって大体ロクなこと考えてないよな。
「お、王様?」
「彼はセブンスアビスなのよ。 そして私達はその家臣…………この意味が分かるかしら?」
「な、なんだよ! 王だからなんだってんだよ!?」
「ふふ、今ここであなたの存在自体を消すことだって––––––」
「ひぃぃぃぃ!!!!」
案内人の男は顔を真っ青にする。 いや、やり過ぎな。 というか笑った顔が怖いわ。 笑顔で何言ってんだ。
「分かったのなら大人しくしていなさい。 それとも…………王を前に抵抗する手段があるのかしら?」
妖艶な笑みを作るネティス。 その意味ありげな視線でこっち見んな。 やりたいことは分かったから。
「で? どうする? 俺としては今ここでお前を消しても…………」
ポケットから左腕を出す。 同時に雷の魔法がバチバチと腕に纏い始める。 脅しには充分。
「わ、分かりました!!!! や、やめてください!」
「で、どうする? お前らはこの無能なおぼっちゃんに案内を務めさせる気か?」
改めて新米冒険者どもに聞いてみると全員一斉に首を横に振った。 ある意味統率されてるんじゃないか? 反面教師って言う意味で。
「とは言うものの俺もこの任務の報酬に色々掛けてるんでな。 失敗はさせたくないわけだ。 何が言いたいかと言うと、俺達がお前らに冒険者のなんたるかを教えてやろうということで、どうだ? 乗るか?」
全員で顔を見合わせ、何故か歓声が起こった。 歓声の意味は全く分からんけどな。
「で、お前はどうする? 冒険者だってんなら教えてやらんこともないぞ」
「はぁ!? なんで俺がお前らなんかに教わらなきゃならないんだ!」
「あ、そう。 じゃあお1人で山を降りてくれ。 じゃ」
ここに用はない。 というかもう無駄に綿密に組まれた日程もクソもない。 やることは今から全て変更だ。
「なっ!? ま、まま待ってくれ! 置いて行かないでくれ!」
「いや、だって教わる気全くないんだろ?」
「1人じゃ帰れないじゃないか!」
いや、知らねぇよ…………。 というか、ならなんで来たんだよ。 せいぜい最終的には魔物に食われるのがオチじゃねぇか。
「はぁ…………」
俺はそんなツッコミを言わずに溜息だけを吐いた。 何を言ってもこの手の人間は無駄なのだ。
「ルナさん、どうしますか?」
「移動魔法で連れてけばいいんじゃね? それか無視するか。 そうすりゃ勝手についてくるだろ。 多分」
別に相手をする気にはならない。 もちろん見捨てたいとは思わないが本人が気に食わないというのなら俺は別にどうでもいい。
「まぁ後味が悪くなるし、連れて行きましょう?」
いつかに俺も同じようなことを言ったような。 まぁその通りだな。
「はぁ、仕方ないな」
俺は再度溜息を吐きながら苦笑い。 すると全員同じような反応を見せてくれた。
「もう黙ってついて来いよ…………」
「っ! ありがとうございます!」
急に下手にでやがってとか思うべきじゃないんだろうな。 でも俺はとりあえずで納得することにした。 多少は寛容にならなきゃな。 この手の人間はこの世界には大勢いることだし。
後日、俺達の噂は街中に広まることになる。 強いのに任務が途中放棄されるミッションクラッシャーだと。 …………俺達悪くなくね?




