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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
52/90

3度目の合同任務 二

「ルナさん、どうですか?」

「ん……気持ち良い……」


 護衛任務まではまだ期間があるため、俺達はしばらくは宿屋生活が続くことになる。 報酬なので家に住むことが出来ないのは仕方ない。 きちんとやらないと貰えないのは世の摂理だ。

 そしてだからこそ、何処にも行けず、更には任務までの暇な時間はのんびり過ごすことにしているわけで。 今俺はシルヴィアに膝枕で耳かきしてもらっているわけだ。 尻尾の枕は気持ち良し。


「痛かったら言ってくださいね?」


 耳かき棒が優しく俺の耳を綺麗にしていく。 シルヴィアの耳かきは気持ち良い。 このまま一生ここで過ごしたいと思うほどに。


「目がトロンとして来てます。 ふふ……可愛いです」

「これが気持ち良すぎるからな…………」


 何ならこのまま熟睡してしまいたいくらいだ。 シルヴィアが鼻歌を歌うせいか、余計に眠くなってくるし。

 シルヴィアは嬉しそうに顔を近付けてくる。 …………何する気だ? キスか?


「ふぅ」

「ひゃい!?」

「わわ!?」


 な、何今の!? い、今耳に息を吹きかけられた……?

 身体がゾワリとして一気に上体を上げてしまう。 シルヴィアは驚いたように、それでいて呆然としながら俺を見つめていた。


「る、ルナさん?」

「…………俺、耳弱いみたいだ」

「そうだったんですか!?」


 初めて知った弱点だった。 というか普通は気付かない。


「す、すいません、そうとは知らず」

「俺も知らなかったから気にするな。 というか最後、なんで息を吹きかけたんだ?」

「え? 耳かきの最後はそうするものなのでは…………」


 そうだったのか? それすらも知らなかった。


「ま、まぁその、息を吹きかけるのはやめてくれ。 ビックリしちまう」

「は、はい…………」


 落ち込んだ様子のシルヴィア。 しかし俺がその様子に気付いたのはシルヴィアの膝枕に戻った後だった。


「ふぇ?」

「え? ど、どうした?」


 何事? 俺達は2人して見つめ合ってしまう。


「も、もう終わりなんじゃ……」

「そ、そうだったのか? …………じゃあ反対側は自分でやる」


 ついやってもらえるとか思ってたんだが。 恥ずかしい。


「い、いえ! ルナさんが良いのであれば是非やらせてください!」

「お、おう…………」


 なんというか、表現するなら物凄く嬉々としている。 シルヴィアは本当に嬉しそうにしていた。 立場は普通は逆。


「ふんふふんふ〜ん♪」


 シルヴィアが鼻歌を歌いながら俺の耳に耳かき棒を入れる。 なんだか先程よりも増して嬉しそうだ。

 しばらくの間シルヴィアの耳かきを堪能した後に大きく身体を伸ばす。 ほとんど動いてないせいか身体の節々から悲鳴が上がるが痛いわけではないので無視した。


「凄い音ですね」

「そうだな」

「肩とか凝ってらっしゃるんじゃないですか?」

「ん? そうかもな」


 俺は凝りやすい。 まぁだからなんだと言われればそれまでなんだが。

 シルヴィアは再び嬉しそうに、いや、ワクワクしながら俺に顔を近付けてくる。 近い。


「肩揉みもしていいですか!?」

「お、おう……なんで嬉しそうなんだよ」


 だから立場逆だっての。


「ルナさんのお役に立てるのが嬉しくて」

「この…………可愛い奴め」


 俺はシルヴィアの頭を撫でる。 シルヴィアはキャー♪ と嬉しそうに悲鳴を上げていた。 本当に嬉しそうに。

 ひとしきり撫でだ後に、後ろに回り込んだシルヴィアが俺の両肩に手を置いて揉み始める。 力加減が絶妙で気持ち良い。


「どうですか?」

「気持ち良い〜…………」


 つい間延びしてしまうほどに気持ち良い。 シルヴィア、こんなに色々な特技があったんだな。


「ふふ、ルナさんが気持ち良さそうでよかったです」


 そして随分と嬉しいことを言ってくれる。 これはもうあれだな。


「女神だな…………シルヴィアは良いお嫁さんになりそうだ」

「ふぇ!?」


 シルヴィアが驚いて一瞬で顔が真っ赤になった。 肩揉みの手も止まってしまう。 …………俺変なこと言った?


「お、およ、およ、お嫁さんですか!?」

「ん? あぁ…………何なら俺が欲しいくらいだ」


 結婚って概念がないけどな。


「そ、それって…………世間でいう…………あ、愛の告白ですか?」

「へ?」


 そうなの? この世界ではそう捉えられるのか? うわー、やっちまった…………。 あ、でも好きなのは事実だしいいか。


「シルヴィアばかりズルいわ! 私も言って欲しい!」

「うお、ビックリした。 いつからいたんだフェシル…………」


 気持ち良さにかまけて全く気付かなかった。 そもそも今日は俺とシルヴィア以外は買い出しに出ていたはずだが。


「私も愛の告白が欲しいわ」

「いや、俺あれが愛の告白とか全く知らなかったんだけど…………」

「「え…………」」


 2人して意外そうな顔をされた。 そんなに意外かよ。


「俺のいた世界では良いお嫁さんって、家事が出来て気遣いが出来て優しくて有能な人を指すんだが」

「そんな…………わたくしが……」


 はいそこで照れないで。 俺もちょっと恥ずかしいから。


「そうなの? この世界じゃあなたに永遠の愛を誓うって言ってるようなものよ?」

「お、おう…………重いな」


 そんな話になってたのか。 そりゃシルヴィアも照れるわけだ。 俺も恥ずかしいしな!


「ま、まぁでもお前らが好きなのは変わらないっていうか…………」


 顔が熱い。 耳も熱い。 2人に視線が合わせられん。


「ルナ…………」

「ルナさん…………」


 2人が感動したように目尻に涙を溜めたと思いきやいきなり飛びついてきた。 咄嗟に受け止めるも、その衝撃に耐え切れずに背中を床に打ち付けた。


「いった〜……………」

「わわ、る、ルナ大丈夫!?」

「あ、あぁ、平気だ」


 心配そうに見つめてくる2人。 でも顔が近い。 後頬を染めて、うっすらと目尻に涙を溜めた2人が色っぽい。 色々まずい状態だ。


「…………ルナさん」

「…………ルナ」

「ちょっとお2人さん? ど、どうした?」


 2人が惚けたように俺を見つめる。 体温が一気に上昇したかのような錯覚に陥る。


「「ちゅー…………」」

「うぇ!?」


 驚いている間に唇を塞がれる。 2人の顔が間近にあって更に体温が上昇した。


「いや、あのな!?」

「今日はこのままヤっちゃいましょう」

「ルナさんと……お久しぶりですね!」


 おう、やる気かよ。 しかも既に服脱ぎ始めてるし。 ちょっとは恥じらい持てよ。


「ただい––––わわ!? な、何してるんだ2人は!?」


 タイミング良くクロエが入ってきた。 救世主だ。


「少しはしたないぞ? ほら、服を着て」

「何を言ってるのよ? クロエも混ざるでしょう?」

「そうですよ、それでいいんじゃないですか?」


 良くない。 全く良くない。 でもクロエの反応は…………。


「そ、そうか……? なら…………」


 クロエは顔を真っ赤にしながらも渋々服のボタンを外していく。

 ですよね! そうですよね! そんなことだろうと思ったわ!


「…………痴女?」


 そこにいつの間にか帰ってきたセリーヌがとんでもない一言を発した。 しかしまんまその通りなので否定は出来ない。


「痴女じゃないです! ルナさんだけですから!」

「そうよ! ルナにしかしないわよ!」

「そうだ! ルナくんだからこうして…………」


 わお、全員否定はやっ。


「…………気持ちは分かる」


 理解も早いよ。 早過ぎる。 好きなのと何でもしていいのとは違うだろう。 嬉しいから困るけどさ!


「ルーちゃーん! ジュース買ってきたから一緒に…………え?」

「「「「え?」」」」


 え、じゃなくてだな。 なんでセリーヌまで脱ぎ始めてんの? あとエイラ、マジで助けて。


「ななっ!? わ、私まだ経験ないのに!?」

「え? そうだっけ?」

「た、確か…………あれ? でもネティスさんは既に奪ってもらったって言ってましたよ?」


 あー、奪ったんじゃなくて奪わされたんだけど。


「そんな!? わ、私以外全員経験あり!?」

「ちょっと待てその流れやめろ! お前は止めてくれよ!」

「私も参加する!」


 エイラまで脱ぎ始めて大混乱だ。 周りには痴女しかいない。 俺の仲間は全員痴女だった。


「ただいま。 あら? 大乱行? 私も混ぜて♡」

「混ざるな! 助けろ!」

「でも嬉しいでしょう?」


 うん、否定は無理だ。 実際嬉しいのは事実だもん。

 その後はまぁ、想像通りである。 でも気持ち良かったので後悔はしていない。

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