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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
43/90

海に潜む魔神 終

「あいつで厄介なのは一撃必殺のビームと氷の鎧と耐久力だ。 だが無理に氷の鎧を剥ごうとしても結構無駄になっちまう」

「どうしてですか?」

「どうしても持久戦になるからだ。 更にはこっちの魔力量を合計してもリヴァイアサンには届かない。 こっちが不利になっちまう」

「…………ならその前に仕留めればいい」


 つまりはそういうことだ。 魔力があるうちに本気の一撃をぶっ放して殺してしまう方が可能性としては高い。 周りの冒険者は氷の鎧に魔法が貫通しないせいかあまり役に立たなさそうだ。 途中から存在自体頭から抜けてたし。


「レスタ、お前らはどうする?」

「そうだね、付き合おう。 このままじゃ分が悪いのも確かだしね」


 2人の王に11人の家臣。 ここまで揃ってまだこちらが不利なわけだ。 面倒な相手だ。


「……ルナ」

「ん?」

「…………そろそろ攻撃していい?」


 そういや防御優先にしたのにフェシルとシルヴィアには攻撃が来なかった。 それどころか防御不可能のようなビームにわざわざ同じ土俵で付き合う必要はないな。


「そうだな、そうしてくれ」

「ん…………」


 後はどうするべきかというところだな。 1番手っ取り早い方法を取ればいいか。


「リヴァイアサンにトドメは俺が刺そう。 首斬れば終わるだろ」

「その通りですけどなんだか雑です」

「でも斬れるの? 氷が邪魔でしょう?」

「そうなんだよな…………」


 氷が高密度過ぎて斬っても多分切断には至らないのだろう。 どうしたものか。


「氷の鎧ならわたくしが溶かせます」

「けれど一瞬よね」

「僕も手伝おう。 というかそろそろ攻撃くるよ」

「……そうだな。 色々試しながら殺そう」


 そうして俺達は一気に離れる。 俺は水の上を走り、フェシルは物陰に隠れながらスナイパーライフルを構える。 シルヴィアもそれについていく形で後衛に。 セリーヌは何故かクロエと共に空へと上がっていった。 レスタ達はそれぞれ奥で作戦会議していた。 呑気だ。


「グギャァ!!!!」


 いきなり大量の魔法陣がリヴァイアサンの周りに展開される。 数にしておよそ100。 全方位の攻撃みたいだ。


「全員気を付けろ!」


 そこから大量の氷の礫が飛んでくる。 ひとつひとつが地面を抉るような高威力だ。 俺は全てを避けながら遠距離攻撃も加えて氷を削る。 フェシルはシルヴィアの魔法による炎の壁で守られていた。 クロエはセリーヌの防御魔法で全て防ぎ切る。 レスタ達は…………もう知らん。


「ライトニングブラスト!」


 反撃なのかいきなり炎の壁から雷の銃弾が貫通して来た。 それは見事に魔法陣から氷を射出し続けるリヴァイアサンの首元で爆散する。


「黒龍雷槍・爆雷!」


 更にその部分にクロエの雷を纏った槍が突き刺さる。 さっきまでは貫通しなかったというのに2人は何したんだ?


「ルナくん! 氷は一点集中にすれば貫ける!」


 一点集中…………ということはフェシルは銃弾を針のように、クロエは槍をモリのようにしたということか。 今までは基本威力重視にしていたがそういうことか。

 でも残念ながら俺にそういう技はない。 突きで精一杯だが炎魔の時のように刀がへし折れる。 間違いなく。


「なら俺が攻める方法は…………」


 氷の礫がなくなった。 そのタイミングで突っ込む。


「炎殺剣・黒!」


 長い身体に黒い炎が纏った刀で斬り裂く。 氷が溶け、青い鱗が露わになる。


「雷殺剣・一閃!」


 露わとなった鱗に雷を纏った刀で斬り裂く。 更に刀を返す。


「二閃!」


 更に先程炎殺剣を使ったもう片方の刀に雷を纏わせる。


「雷殺剣・黒断!」


 雷と更には黒い魔力により伸びた刀を思い切り振り下ろした。 反動で俺が軽く跳躍するほどに。 これで海に沈むこともない。


「雷殺剣・黒転!」


 更に身体を捻って空中で回転しながら刀で斬り裂く。 同時にその背中に乗る。


「クロスフレイム!」


 俺の意図を理解したのかシルヴィアの回転した十字の炎が首元の氷を溶かした。


「グギャァ!!!!」


 ひらひらとした手が俺に向かって伸ばされる。 いや、そこから魔法陣が展開された。


「遅いわ。 ライトニングレイ!」


 その腕をフェシルの自身の銃すらも焼き切れるような雷のビームで貫いた。 腕が自然と下に垂れ下がる。


「黒龍炎槍」


 更には俺の行く手を阻む氷がクロエの炎を纏った槍で全て貫かれて溶けていく。 ガラ空きだ。


「雷殺剣・黒絶牙!」


 俺はその首に向かって雷を纏った両刀を突き刺した。 バチバチと周囲に雷が飛ぶ。


「ちっ、浅い…………!」


 しかしあまり深くは刺さらない。 流石は首元、かなり硬質化している。 俺は続けて刀を振ろうとしたところでリヴァイアサンが身体を捻って振り落とされる。 同時にリヴァイアサンは海へと潜っていった。


「逃すか!」


 俺は雷を纏った刀をそのまま海に突き刺そうとした瞬間、半透明の何かが横を通った。


「……防御魔法?」


 それはセリーヌの防御魔法だっただろう。 しかし何をする気だ?


「ルナくん! そのまま刀を海に突き刺してくれ!」

「え? お、おう」


 クロエに言われた通り刀を海に突き刺した。 バチバチと雷が伝い、海で大きく広がった。 更に追い打ちでクロエの槍が海へと飛び込んだ。


「グギャァ!?」


 再び海上に引きずり出す。 すると急に俺の足元に足場が出来た。


「っ!? ぼ、防御魔法?」

「…………ルナ、助けて」

「え? うお!?」


 気付けばセリーヌが落下していた。 というかなんで?

 疑問に思いながら跳躍してセリーヌをキャッチする。 すると周囲に魔法陣が展開され、足場となっていた防御魔法がリヴァイアサンの足元へと移動した。


「な、何する気だ?」

「ん、攻撃」


 すると発生した防御魔法がどんどんとリヴァイアサンを囲んでいく。 しかしそんなことをしてもビームで一撃では?


「バリアプレス」


 リヴァイアサンが口を開いたと同時に囲んでいた全ての防御魔法がリヴァイアサンに向かう。 新手のプレス機だ、しかも防御魔法である分硬い。


「…………防御は最大の攻撃」

「普通は逆なんだけどな。 今はそれに頷くしかないな…………」


 プレスされ、互いが互いを相殺しあった防御魔法。 その真ん中にいたリヴァイアサンなどひとたまりもないだろう。


「ルナくーん! 離れてー!」

「あ? あぁ…………」


 やりたいことが分かった。 俺は大慌てで距離を取る。 レスタ達がやろうとしていたこと、それに気付いたからだ。

 俺達が戦っている間、レスタ達は再びあの大砲に魔力を注いでいたのだ。 30数人分の魔力をたったの7人で注ぐとか無茶しすぎもいいとこだ。 まぁ他の連中呆然としているかいつの間にかいなくなっているかで役に立たなかったしな。


「レッツゴー!」


 俺が超高速で離れると同時にその大砲は撃たれた。 リヴァイアサンに向かって直接。


「グギャァ!!!!」


 リヴァイアサンも応戦する為に口を開き、魔法陣を展開させる。 何度も見たあのビームだ。


「なぁ、あれって防がれんじゃねぇの?」

「えっと、そうかな?」


 ビームは見事に魔力の球を貫き、更には切り裂いた。 まぁそうなるわな。

 しかし真っ二つになっても勢いは消えず、そのまま大きなリヴァイアサンに片方が直撃した。


「グギャァァァァァァァァ!!!!」


 リヴァイアサンが痛みに苦しむ。 流石にあんなものを直撃すれば相当なダメージだろう。 …………問題はそれでも死んでいないところだが。


「どんだけしつこいんだあいつ」

「本当に厄介よね…………」

「でもかなり弱っていると思います」

「ん…………もうちょい」

「そうだな。 このまま攻め切ろう」


 俺達が再び構えようとした瞬間、リヴァイアサンの周りに魔法陣が展開される。 しかし今度は水色ではなく青。 水魔法だ。


「なっ…………」

「どうしました?」

「ま、魔力密度が桁外れだ。 何する気だ…………?」


 その魔法陣に込められた魔力はほぼ全力なのではというくらいに込められていた。 大幅にリヴァイアサンの魔力が減るのが確認出来る。


「グギャァァァァァァァァ!!!!」


 リヴァイアサンが咆哮を上げる。 魔法陣は大量の水が溢れ出し、まるで津波のように襲ってくる。


「っ! 黒晶・壁重!」


 黒い魔力で氷の盾を創り出す。 それも五重に。 俺達を覆うように展開させる。


「バリア」


 更に内からセリーヌの防御魔法を張る。 こちらも五重だ。

 波が覆い被さるように俺達に襲い掛かる。 まるで隕石のような衝撃が氷の壁に駆け巡り一気に3枚砕け散った。


「ぐっ…………!」


 4枚目にもヒビが入る。 かなりの魔力を消費し、張り直そうとするもそれよりも早く破壊されていく。


「ルナ!」

「ルナさん!」

「……ルナ!」

「ルナくん!」


 4人が支えてくれる。 しかしそれでも足りない。 全く足りる気配がしない。

 4枚目の壁が破壊される。 俺は咄嗟にセリーヌの防御魔法の内側に更に氷の壁を張った。 一気にほとんどの魔力が持っていかれる。


「も、もう持たない…………!」


 5枚目の壁が破壊され、今度はセリーヌに全ての重みがいく。 俺は腕を伸ばして押し込むようにバリアを支える。


「…………きつ……い…………」


 どんどんとバリアまでもが割られていく。 津波という力の強さを実感した。 こんなものを人間に防ぐことなど出来ないのだろうと。

 セリーヌの壁が破壊され、俺の作った最後の壁にも一気に亀裂が入る。 更に魔力を込めながら懸命に耐え続けるも自然の摂理には勝てなかった。

 最後の壁が破壊され、波に飲まれて流される。 周囲の壁やら物やらに全身をぶつけ、俺の意識は強制的に暗転させられた。

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