海に潜む魔神 四
何やら大きな大砲のようなものが用意された。 そこに魔力を注ぐ。 魔力砲とか言っていたので多分魔力を撃ち出すものなのだろう。
「では行きます」
狙いを少し上に向け、真剣な眼差しで俺達に視線を向ける1人の男。 俺達が頷いたのを確認すると海に視線を向けた。
「魔力砲、発射!」
本物の大砲のように、しかしその弾は段違いの威力のものが撃ち出された。 高密度の魔力が様々な色を放ちながら放物線を描いて海へと落ちる。 またこのパターンである。
「赤晶・壁」
本日2度目の壁を作る。 戦闘時に濡れるかもしれないが最低限濡れたくはない。 だって透けたら嫌だし。 こいつらの下着は他の男には見せん。
再び、しかし先程のクロエの威力の数十倍の爆発が起こり、大量の水しぶきをあげる。 魔物が来ないのはその爆裂に木っ端微塵になったからだろう。
「グギャァァァァァァァァ!!!!」
そして海から出て来たのは青い大きな蛇だった。 いや、その顔からして龍だろうか。 ひらひらと動く手のようなものも見える。
明らかに別格。 本来人が挑んでいいような魔物ではないことが重々分かった。
その咆哮だけで赤い氷の壁が破壊される。 マジかよこいつ。
「魔力解放。 黒刀・二連」
刀を抜き、更にはもう片方の手に刀を創り出す。 明らかに遠慮をして勝てる相手ではない。
「…………初めて見る」
「わたくしもです」
「そうなのか?」
しかし俺の仲間達は無駄に呑気に俺の様子を眺めていた。 見るのは俺じゃなくて敵にしてくれないか?
「あれがルナの本気よ。 ということはあのリヴァイアサンがそれだけ強いってことよ。 気を引き締めなさい」
流石フェシル。 全員いきなり真剣な表情になった。 扱いが上手い。
「全員囲い込め! 全方位からの攻撃だ!」
数の有利を生かすらしい。 当然といえば当然の作戦だが相手は神レベル。 甘く見ていい相手でもない、
「ルナくん、どうするんだ?」
「俺たちは個人で動く。 俺とクロエは前衛、クロエは空中から攻めてくれ。 フェシルとシルヴィアは遠距離攻撃と援護、セリーヌはガードを最優先してくれ」
これが1番ベストだろう。 俺達の攻撃でどの程度攻められるか、そしてセリーヌの防御がどれほど持つのか。 不安要素は多々あるが。
「良い作戦だね。 僕達も混ぜてもらおうかな」
「…………レスタか」
レスタのパーティーも俺達の作戦に混ざって個人で動くようだ。 確かに囲むのにそれほどの人数は必要ないだろう。
「僕達も個人で動かせてもらうよ。 みんな、いつも通り行こうか」
レスタの合図でそれぞれが前衛中衛後衛に分かれた。 早い動きだ、相当戦闘慣れしている。
こいつらは気にすることはないだろう。 放っておいても自分達でなんとかしそうだし。
「クロエ、1番危険なのは俺達だ。 空中だからって気を抜くなよ?」
「うん、分かってる。 かなり強いのも……な」
クロエもリヴァイアサンの強さは充分感じてるらしい。 それは全員同様か。 それが出来なければこの戦場にいる資格すらないような気がする。
「行くぞ」
俺は足に雷を纏わせると超高速で海の上を走る。 向かうは一直線、リヴァイアサンだ。
「黒龍槍!」
「グギャァ!」
再び創り出された槍が空中から降り注ぐ。 しかしそれらは全てリヴァイアサンの咆哮だけで防がれる。
「雷殺剣・黒突き」
向かっている途中で突きを放って黒い雷を飛ばす。 しかしリヴァイアサンはしっぽを動かし、雷を叩きつけて消滅させた。 更に水飛沫を上げて俺の視界を奪う。
「ちっ…………」
軽く舌打ちをしながら横へと移動する。 海の上とは常に動いておかなければならないので厄介だ。
「ライトニング!」
「プラズマフォール!」
フェシルの雷の弾丸とシルヴィアの雷の爆撃球が一気に飛んでくる。 そのままリヴァイアサンに直撃し、大きく破裂した。
「グギャァァァァ!!!!」
「一応効いてはいる、か」
効かないわけではないようだ。 雷魔法が弱点かどうかは分からないが。
「雷殺剣・黒」
俺は痛みに苦しむリヴァイアサンに一気に近付くとその胴体を斬り裂く。 大量の紫の血飛沫が舞う。
「シャイニングプラズマ!」
「ライトニング!」
「ライジングブレイカー!」
俺が離れると同時にレスタのパーティーから大量の雷魔法が飛んで来て爆発する。 リヴァイアサンが隠れるレベルの爆発だ、相当な威力だろう。
「黒龍雷槍」
更には追い討ちのクロエの雷の槍が裁きの如く天から投擲され、リヴァイアサンの右肩を貫いた。
「グギャァァァァァァァァ!!!!」
痛みに苦しみながら暴れまわる。 その度に海が荒れる。
「気持ち悪…………」
流石に足場が悪過ぎる。 俺は慌てて浜辺に戻ろうとしたところで尻尾の攻撃が。
「邪魔」
接近戦に持っていけるのなら俺の方に分がある。 叩き落される尻尾をカウンターで斬り裂いた。
「グギャァ!!!!????」
切れた尻尾に驚いたのか妙な声をあげたリヴァイアサン。 そこに周囲を囲んだ冒険者達の魔法の追撃があるわけで。
俺が浜辺に戻ると大量の魔法に撃たれて沈むリヴァイアサンが視界に入った。 しかし何故だろうか? 全く魔力が減った気配がしなければなくなる様子もない。
「まだ何かあるぞ」
「本当かい?」
「あぁ、四神がこんなにあっさり終わるわけもないしな」
「…………それもそうだね」
俺とレスタは2人して浜辺から海を覗き込む。 すると俺達の方向に勢いよく水のビームが飛んで来た。
「うぉ」
「おっと」
俺達2人は慌てながらもサッと避ける。 水のビームはそのまま上空へと上がり、雲すらも斬り裂いた。
「な、なんだよそれ…………」
攻撃範囲無限かよ。 どういう攻撃してんだあいつ。
「また海から引きずり出さないと駄目みたいだな…………」
俺は再び海の上へと飛び込んだ。 俺に向かって水のビームが飛んでくるものの速度を考えればほぼ当たる気配すらない。
「黒龍雷槍!」
再び飛んでくるクロエの槍。 良いタイミングだ。
「雷殺剣・黒絶牙!」
大きく膨張した雷を纏った刀をクロエの槍と同時に海に突き刺した。 大量の雷が流れ込み、更にはクロエの槍の威力もあってか更に倍増される。
「グギャァ!!!!」
「うお!」
俺がいたのはリヴァイアサンの真上。 そこまで勢いよく上がってくるとは思わなかった。 俺は打ち上げられるように空中に飛ばされる。
「ルナくん!」
そこを飛んで来たクロエに助けられた。 まぁ空中から攻めても良かったが。 クロエは片腕に槍を、片腕で俺の腹部に手を回して支えてくれる。 器用なものだ。
「悪い、助かった」
「気にしなくてもいいぞ?」
「そうか? でも重くないか?」
「そんなことはないぞ。 龍人族は力が強いからな」
そういえばそうだったか。 しかしその細腕のどこにそんな力が、と疑ってしまう。
「グギャァァァァァァァァ!!!!」
「大層御立腹のようだな」
「かなりダメージは与えれたんじゃないかな?」
そう思いたいのだが魔眼は別に体力を見る目ではない。 全く分からん。
「にしては元気になってるような気がするのは気のせいか?」
「怒っているからだろう」
まぁ確かに怒らせた。 それはつまり敵視されたということだ。
リヴァイアサンが口を開く。 そこから葵魔法陣が展開され、先程の水のビームが飛んでくる。
「クロエ」
「大丈夫だ」
クロエは優雅に飛行を続け、リヴァイアサンのビームを避ける。 するとリヴァイアサンは首を動かして追尾させて来た。
「あいつ…………フェシル!」
「ライトニングブラスト」
フェシルはスナイパーライフルに持ち変えるとその高威力かつ雷を纏った弾丸でリヴァイアサンの首を貫き、爆破させた。 容赦ない。
「グギャァ!!!!」
貫かれた首から大量の血が噴き出る。 しかし途端に傷口が凍りついた。
「あ?」
氷はどんどんと体全体を覆い被さっていく。 まるで氷の鎧のようだ。
「クロエ、降ろしてくれ」
「分かった。 ……いや、ちょっと待って。 降ろすって落としてくれということか!?」
「そうだが…………」
「だ、駄目だ! 危険すぎる!」
いや、平気だし。 何ならいざという時は空中を風魔法で蹴って移動出来る。だから別にクロエに助けられなくても1人で勝手に体勢を立て直せたのだ。
「ま、いいから離してみろって。 問題ねぇから」
「ほ、本当か? 絶対だぞ?」
「あぁ、絶対だ」
クロエは渋々といった感じで俺の手を離した。 重力に従い落下していく。
「グギャァ!」
そんな俺に向かって幾つもの水色の魔法陣が展開される。 氷魔法も使えるわけか。
「グギャァ!」
「フレアブレイズ!」
そんな魔法陣を飲み込むようにシルヴィアの広範囲の炎のビームがそれらを消し去った。 本当、頼りになる。
「炎殺剣・黒蓮!」
黒い炎を纏った刀を突き刺す。 泥の中に咲き誇る蓮の花のように炎が広がり、リヴァイアサンの身体中の炎を溶かしていく。
「雷殺剣・黒雷伝!」
刀を突き刺し全身に駆け巡らせるように思い切り雷魔法を流し込んだ。 リヴァイアサンの身体が黒い雷で帯電し始める。
「グギャァ!」
しかし途中で全身から再び氷の鎧が生えた。 更にはその魔力密度が増し、強度も跳ね上がっただろう。
俺は跳躍してリヴァイアサンから降りると同時に海を走り抜ける。
「ライトニングブラスト!」
フェシルが追い打ちに更に引き金を引く。 雷を纏った弾丸の連射。 しかしその全ては氷の鎧によって意味を成さない。
「硬いわね…………」
「任せてください! クロスフレイム!」
シルヴィアの3mほどのばつ印の炎が回転しながらリヴァイアサンの胸元の氷を砕いた。
「ライトニングブラスト!」
「黒龍雷槍!」
そこに間髪入れずに2人の追撃。 同時攻撃による高威力な魔法攻撃に流石のリヴァイアサンも弱って来た。
「どんだけ身体に風穴開けてると思ってんだよこいつ…………」
本当に化け物だ。 普通ならば死んでもおかしくない。 というのに弱っただけで全く死ぬ気配がない。
「グギャァァァァァァァァ!!!!」
リヴァイアサンが叫ぶ。 怒りを体現したかのように。 その咆哮だけで周囲の物が吹き飛ぶくらいだ。
「まだまだ…………絶対に殺してやる」
俺は浜辺に戻ると全員を呼び寄せる。 攻撃パターンも大体読めて来たからだ。 それは伝えておくべきだろう。




