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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
40/90

海に潜む魔神 二

 長かった。 ただひたすらに長かった。

 水着を選んだはいいものの4人は当日見せると言って聞かなかったのだ。 楽しみにしてたのに。

 そんなこんなでモヤモヤしながらようやく合同任務出発の当日。 俺達は早速集合場所に来ていた。


「海、楽しみね」

「はい。 リヴァイアサンがいなかったら遊べるんでしょうか?」

「ん…………いても遊ぶ」

「それは危ないと思うぞ…………?」


 全員遊ぶ気満々だった。 俺も遊ぶ気満々だけど。 美女4人と海とか俺いつの間にかハーレムのリア充野郎になってたんだな。

 集合場所は例の如く噴水広場。 ここは実はその為の施設でもあるらしい。 どうでもいいが。


「こら、キミ達。 子供がこんなところにくるんじゃありません。 あっちで遊びなさい」


 突然金髪の妙なチャラ男に話し掛けられる。 だが、子供? 遊ぶ? 俺に言ってんのか?


「獣人族と龍人族を道具にするのも駄目だよ? 分かった?」

「…………あ?」


 なんだこのチャラ男野郎。 ちょっと身長が高いからって調子に乗ってないか? 蹴り飛ばしていいか?


「ルナくん、抑えて抑えて」

「そうよ。 こんな変な奴に苛立ってたらキリがないわよ」

「…………勘違いのクソ野郎」

「セリーヌさん、ルナさんの口調が移ってますよ…………?」


 全員に宥められて平静を装う。 つかなんだこの男。 ぶん殴っていいか?


「ここは今から合同任務の集合場所になるんだから。 ほら、早く行って」

「…………その合同任務の参加者だが?」


 苛立ちを抑えながら首にぶら下げているミスリルのプレートを見せる。 3人も同様。 クロエのは貰い忘れた。


「え? き、キミ達参加者なのかい? ほ、本当に? まだ20歳も行ってないだろ?」

「だったらなんだよ」

「…………」


 何故黙る。 俺達が睨み付けると一瞬気まずそうに視線を逸らした後で何故か思い付いたように自信満々に俺達を見下す。


「ふ、ふーん。 キミ達、若い頃から苦労してるんだね。 でもそんな歳でまだ命は落としたくないだろう? ならここは降りるべきだ」

「私達、少なくともあんたのような変な奴よりは有能だと思うわ」

「ん…………邪魔はしないで欲しい」

「あの、お2人とも落ち着いてください」

「そうだぞ? こんな所で揉め事は駄目だ」


 シルヴィアとクロエがフェシルとセリーヌを嗜める。 シルヴィアは変な時に暴走するがクロエは常識人だ。 やっとまともなツッコミ役が入った気がする。


「そんな子供相手に俺が遅れを取るとでも?」

「……………」


 子供って俺のことだよな? 別にこんな奴どうでもいいが、なんか腹立つな。 あれだ、コンビニにたむろする不良みたいな。 なんか知らんがガン飛ばしてくるよな。


「ルナさんは子供なんかじゃありません! 素敵な方です!」

「そうだ! 馬鹿にするのもいい加減にして欲しい!」

「おっと…………? ツッコミ役がいなくなったぞ?」


 全員臨戦態勢だ。 大丈夫かこれ?


「お前らちょっと落ち着け」

「アルカラ、少し落ち着け」


 同時に声を出した。 相手はやたらとゴージャスな鎧を着た男だ。 水色の髪に爽やかなオーラを放つ黄色い瞳の男だった。 この中でも明らかに別格。 魔力量だけで見れば大したことないのかしれないが、実力は恐らくセブンスアビスに勝るとも劣らないほど。 その背後にいる連中もフェシル達と同等くらいだ。

 突っかかってきたこの金髪の男、アルカラという奴もなかなかに強いレベルではあるがまだ未熟。 しかし属するパーティーは化け物レベルだったらしい。


「申し訳ない、こちらのパーティーメンバーがちょっかいをかけた」

「いや、こっちこそ悪かった」


 互いに謝るとにっこりと微笑まれる。


「キミは随分と面白いパーティーを連れてるね。 獣人族に龍人族か…………珍しいね」

「ま、そうだろうな」

「僕はレスタ・ブラッドオリオン。 よろしくね」

「紅月 ルナだ」


 互いに握手を交わす。 するとフェシルは目をパチクリとさせていた。


「れ、レスタって冒険者最強のパーティーの…………?」

「ふふ、そう言われてるね。 でも今となってはその地位も危ういかな?」


 そう言って意味深な視線を送ってくる。 俺がこいつらに追いついているとでも言いたげだ。 実際そこまで大差はないだろうけど。


「キミとはまたどこかで会いそうだ。 是非仲良くしておきたい」

「いいのか? 俺はセブンスアビスだぞ? 神に目をつけられてもどうにもならないぞ」

「果たしてそうかな? キミは神に匹敵する力を持っている」


 俺の実力を見誤っていた。 前の神結構ギリギリだったんですよ? フェシルがいなけりゃ勝てなかったし。


「それと、キミも勘違いしている」

「ん?」

「僕もセブンスアビスだ。 あまり良い記憶はないけどね」


 なるほど。 だからその実力なわけか。 相変わらず世の中狭い。


「ふふ、同じ王同士仲良くなれるかもしれないね」

「お前みたいなのが王ならな」


 腹の探り合いは終わった。 そしてこの男の本性が垣間見えた気がした。 恐らく俺に似ている。 だがどこか違う。

 多分彼は善人の記憶を受け継いでいないのだろう。 だから自身の記憶を否定し、その力を正義の為に振りかざそうとしている。

 争いを好まないセブンスアビス、という点では似ているのかもしれないが根本的に違うのだ。


「それじゃあまた。 アルカラ行くよ」

「はい!」


 そして嵐のようなパーティーは去っていった。 俺はその背中を見続ける。


「…………ああいうセブンスアビスもいるんだな」

「確かに格好良い見た目はしていましたが、ルナさんには負けますね」

「当たり前よ。 ルナに勝てる男なんていないわ」

「ん…………あれは脆い」

「確かに真に強いイメージは湧かないな」


 正義を張り続ける根拠が小さ過ぎる。 間違っているという否定からくる正義。 俺のように何かを背負っているわけではなく、ただそれは間違っているからという単純な理由。


「ちょっと羨ましいけどな」


 俺のように枷がない。 良き王であることに縛られなければ俺ももっと上手く生きていけるのだろうか? いや、それをすれば彼女達はついてきてくれない。 それは嫌だ。


「…………男性にも好かれたいんですか?」

「そ、そうなの!? ルナってそっちの気もあるの!?」

「そういうことじゃねぇよ」

「ん…………女好き?」

「もっと言い方あるだろ」

「皆、そろそろ落ち着いた方が…………。 ルナくんが困っている」


 やはりクロエは常識人だ。 たまにちょっと暴走するようだが。

 少しして更に何組かの冒険者が集まってくる。 誰も彼もが実力がある強者達。 もちろん先程のレスタとかいうセブンスアビスほどではないが。


「えっと…………確か俺達の他に5組いるんだったな。 てことはあとは2組か」

「意外と多いですよね?」

「いや、戦力的にはそれくらいで丁度良いレベルだと思うぞ?」

「…………イフリート、強い?」

「同じくらい強いということはそういうことになるのだろう。 何かあるのか?」

「ん…………」


 セリーヌは仇討ちに燃えている。 これが吉と出るか凶と出るか。 いや、絶対に凶にさせてたまるか。


「まぁそれはおいおい話すとして、なんで残り2組はこんなに遅いんだ?」

「準備をしているのでしょうか?」

「多分…………?」

「それでも時間は守るべきだろう」

「そうよね。 1発お仕置きしようかしら…………」


 それって遅刻したらお仕置きになるってことだよな? 俺朝弱いんだが、1番可能性高くないか?


「…………ルナさんが寝坊した場合はどうするんですか?」

「その時は仕方ないわよ。 ルナにだって悪気があるわけじゃないんだから」

「それだと今遅刻している2組も悪気があってしてるんじゃないと思うが…………」


 しかしフェシルは意外と寛大だ。 理由があれば寝坊も許されるらしい。 でも俺のはただ単に朝が弱いだけで理由にはなっていないんじゃないか?


「ルナくんは低血圧なのかな?」

「あぁ。 だから朝は何してるのか自分でもあんまり覚えてない時がある」

「そうか…………その、朝なら大抵のことは許すぞ?」

「…………?」


 何を許すんだろうか。 身体か? いや違うな。 赤い顔してるからってそれはない。 だってクロエは純情だから。 初めての時も俺のを見てビックリした後に遠慮しながら触る程度だった。 途中から撫でられてキスされたような気がするがあまり考えないことにした。


「…………クロエはエッチ」

「なっ!? ち、違う! そういう意味じゃないから!」


 やっぱり違ったか。 うん、まぁ分かってたけどね?


「その……ほら、ルナくんは朝はのんびりしているだろう? だからその時なら……あ、甘えてくれてもいい」

「…………おっぱい舐めてもいいの?」

「それは駄目だ!」


 いや、だからなんでセリーヌは全部エロ方面なんだ。 お前ちょっと痴女過ぎない?


「……吸う?」

「それも駄目だ!」

「…………挟む?」

「何をだ!?」


 なんだこのコント。


「お2人とも、お静かに。 そろそろ始まるみたいですよ?」


 いつの間にか残りの2組も来ていたらしい。 そうして最高ランクの冒険者達の合同任務が開始した。

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