真に強き龍人 終
結論から言おう。 めちゃくちゃ弱かった。 何がと言われるとまぁ組織のことなのだが。
あの後侵入した俺達はそのまま最深部まで一気に突っ走った。 襲ってくる人間はフェシルの銃とシルヴィアの魔法でほぼ全滅。 更に組織のボスらしき奴はあまりの事態に困惑しながらも俺達に土下座していた。 まぁ苛立っていたクロエに槍で殴られて気絶していたのは今では良い思い出だ。
そうしてやることは全て済ませ、近くの砂漠の街にてギルド員に身柄の確保を頼み、ようやくこの仕事は終えた。
しかし全く納得いってないご様子のクロエはしばらく俺達と行動を共にし、その時に礼をすると言われてしまった。 断ったのだが無駄だったのは言うまでもないだろう。
「お疲れ様でした」
全ての報告を済ませるとジーナは俺達を労った。 うん、そこまで疲れる作業じゃなかった。 フェシルも同感だろう。 俺達は神にまで挑んだ経験があるのだから。
ギルドを出た俺は首を傾げる。 あまりにも話がスムーズに終わりすぎて少し動揺する。 俺達はそこまできちんと仕事をこなしたのだろうか。
「俺らってきちんと終わらせたんだよな?」
「うん? そうなんじゃないのか?」
「いや、なんかこう…………実感がないというか。 いつももっとなんかボスらしき奴が出てくるってのに今回は土下座されただけだからな…………」
多分それが原因。 フェシルの時は神と戦ったし、シルヴィアの時は大衆という大きな敵があった。 セリーヌの時もボスは微妙なとこだったが…………今回はそれを超えるくらいに拍子抜けだ。
「物足りない感じ、と言えばいいのかしら? そういうのは感じるわね」
「確かにそうですけど。 ですけど平和なのは良いことじゃないですか?」
「まぁそうなんだけどな…………」
どうも納得が出来ずにモヤモヤするというか。 何故こんなことになったのか。
「ルナくんは達成感が欲しいのかな?」
「まぁ端的に言うとそうなる……のか?」
「…………疑問形?」
自分で自分の気持ちがよく分からない。 色々と感覚が麻痺してるのかもしれない。 怒涛なことがあって普通の日常に違和感を感じる、というのもあり得ることだ。
「んー…………」
「モヤモヤする前に家を探しましょう」
「そうなんだけどな。 なんか集中出来る気がしない」
「…………エッチは?」
「随分と急にぶっ込んできたな…………」
しかし少しやる気になってしまった。 仕方ない。 男だもん。
「何を言ってるんだセリーヌさん! い、いきなり、その、え、エッチだなんて!」
「…………初めて、奪って欲しい」
「本当に何を言ってるんだ!? そ、それは確かに私もルナくんなら良いかなって思ってるけど…………でもいきなりは駄目だ!」
ん? 今何やらとんでもないことを言われたぞ? 俺の気のせいか? 幻聴か?
「…………ルナに惚れた?」
「っ!? そ、そんなことは…………」
「ないですか?」
「…………あります」
「なんでいきなり敬語になるのよ」
あれ、今肯定したよ? と、ということはクロエって俺のこと…………。
「た、確かにルナくんは格好良かった。 その…………頼りになって優しくて……それにすぐに赤面するところも可愛い……」
「ん…………気持ちはよく分かる」
「わたくしもです」
「同じく」
…………なんか話が変な方向へ脱線してないか? 誰か止めなくて良いのか? 無理だな。 だって止める奴いないもんな。
「る、ルナくんはどうだ?」
「な、何が?」
「私みたいな龍人族は…………嫌いかな?」
わぁー、涙目。 しかもかなり可愛い。 心臓がドキドキしてまともな思考が出来ない。
「き、嫌いじゃないです」
「なんでルナも敬語なのよ。 よくあることだけれど」
「そ、そうか、良かった…………」
安心したように息を吐く。 うん、そういうのやめてね? 心臓に悪いから。
「…………ルナ」
「ん?」
「……エッチしよ」
何その誘い方。 服を摘んで上目遣いとかどこで学んだ。 グッとくる。
「お、おう…………」
「っ! …………ルナ大好き」
つい頷いてしまうとセリーヌは頬を緩めて俺の腕に抱きついてくる。 何やら腕に物凄く柔らかい感触が!
「ず、ズルい! 私も頼む!」
そう言いながら反対側からクロエに抱きつかれる。 いや、抱きしめられる? とりあえずクロエは身長が高いから俺の身長では谷間に顔を埋めそうで怖い。
「わ、わたくし達蚊帳の外です」
「何を言ってるのよ。 ちゃんと混ざるに決まっているでしょう?」
「そ、そうですよね!」
おっと? 4Pどころか5P? しかも男子俺1人だけ? 大丈夫なのかそれ!?
「じゃあ今日はもうお終いね」
「はい! 家はまた今度買いましょう!」
「ん…………今はホテルへ」
「宿のことだろう…………?」
2人に腕を引っ張られ、更にはもう2人に背中を押されて俺の今日の予定は全てエッチになってしまった。
終わってからいうのもなんだが気持ち良かった。 というかどこを触っても柔らかいとか女の子って反則だ。
いつの間にか消えた何やら納得出来なかったモヤモヤの正体は未だ分からず。 しかしこれだけは言える。 男は大抵スッキリしたら後はどうでも良いと。 …………本当に単純な生き物であるとそう思ってしまう。
俺達は結局なし崩し的に新たな仲間であるクロエを入れて5人で同じベッドで寝て過ごした。 若干狭いのとやっぱりどこを見ても女の子に囲まれているという感覚には未だに慣れず、そしてこれからも一生慣れる気がしない。 寝不足になるなこれ。
そんなことを考えながらも4人の満足気な寝顔を見て苦笑いを零しながら目を閉じた。




