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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
34/90

真に強き龍人 二

「なんだか怪盗になったみたいでワクワクしますね」

「そうね。 気持ちはよく分かるわ」

「ん…………同意」

「いや、隠れるのは無理だったろ」


 ついに見つけた、というよりは報告にあった所から動いておらず、更にはセリーヌの移動魔法のおかげか、ものの5分でその基地に辿り着いた。

 というよりは見つかった。 というか偶然見つけた。

 まさかの地下である。 大きな潜水艇? のようなもので地下に基地を作ってあったのだ。 そりゃ政府も探し出せないだろう。 基本下とか気にしないし。

 偵察に出たような組織の下っ端を気絶させてこそっと入ったわけだが。 周りは隠れる所もなければ既に見つかった後である。

 怪盗ならバレちゃ駄目だろう。 というかこの場所は明らかに怪盗には向いてないだろ。


「何者だ! 貴様ら!」

「少し静かにしてなさい」


 しかしバレても問題ないんだなこれが。 フェシルが全員銃で眉間を撃ち抜く。


「殺すなよ…………?」

「大丈夫よ、加減はしたもの。 しばらくは起きないでしょうけれど」


 見れば全員銃弾は貫通していなかった。 眉間から白い煙が出ており、組織の連中は白目を剥いて倒れている。


「ま、ならいいか。 早く進むぞ」


 結局は全員生け捕りにするのだ。 ならば正面突破した方が早い。 というかそれ以外の選択肢を俺達は知らない。

 地図がないので潜入ルートも分からなければ龍人族がどこにいるのかも知らない。 ならば派手に暴れて誘き出した方が早い。


「侵入者だ! 撃てぇ!」


 先へ進もうと広場の中心に出た瞬間囲まれた。 全員が銃を所持している。 これは仕方ないか、魔力消費など考えていられないだろう。


「…………サークルバリア」


 俺が動こうとしたところでセリーヌの小さく、それでもよく通る声が聞こえた。

 いきなり俺達を囲む魔法陣が展開され、半透明のドーム状の盾が出来上がった

 銃弾はその盾に全て弾かれ、意味を成さない。


「えっと…………」

「ただの防御魔法。 …………それなりに使える」


 銃弾の嵐が終わった瞬間バリアは解けた。 セリーヌは更に腕を伸ばす。


「バリアカノン」


 魔法陣が展開され、先程と同様のバリアが四角柱となって真っ直ぐに撃ち出された。

 バリアなのに何故か攻撃のようだ。 その四角柱は見事に敵の1人の腹部を捉え、そのまま壁とプレスさせる。


「ん…………」


 セリーヌが腕を振り回す。 その度に四角柱が振り回され、周囲の敵が全員殴られるように吹き飛んでいく。 なんとなくシュールな光景だ。


「防御魔法ってあんな使い方だっけ?」

「普通は違いますけど…………でも自由に動かせるにはかなりの練度が必要なはずです」

「じゃああれは何気に凄いのか。 でも…………」

「えぇ…………シュール、よね」


 なんだかんだ凄いことをしていたらしい。 ちょっとダサいとか思ってごめんな?

 セリーヌの力も確認した後に更に奥へと進んでいく。 奥は通路になっているようだ。 ひたすらに長い通路を走る。


「龍人族って本当にいるのよね?」

「まだ殺されてなけりゃ多分な。 ちょっと場所聞くから待っててくれ」

「え? ちょ、ルナ!?」


 俺は更に足を速く進めると曲がり角から現れた組織の人間を捕縛する。 そのまま適度に雷魔法を流して痺れさせた。 どうでもいいがこの男、雷耐性が低い。


「な、なななんだお前ら!?」

「お前に質問する権利があるとでも?」

「…………ないです」


 物分かりが良いようだ。 話が早くて助かる。


「で、聞きたいんだが龍人族の奴隷はどこにいる」

「…………」

「黙るな」

「ひぃぃ!?」


 首元にナイフを突きつけてやる。 1人くらいなら殺しても大丈夫。 どうせ下っ端だし。 あまり良い気分でもないが。


「ち、地下室です! 今はほとんどの幹部が黒龍騎の相手をしてます!」

「黒龍騎?」

「セブンスアビス並みの強さの龍人です! その…………処女を奪おうと全員で躍起になってます…………」

「ふーん。 で、その地下室ってどこ行きゃいいんだ?」

「あ、案内ですか!?」

「当たり前だろ」


 だって道分からないし。 普通地図とか持ってないだろうからな。 地図があればあっさり気絶させられたが。


「いたぞ!」

「人質、だと…………?」


 大量の下っ端が正面から走ってきた。 相変わらず銃を持っているわけだが。


「ひぃ! た、助けてくれぇ!」

「人質など構うな! 撃てぇ!」

「えぇ!!!!????」


 人ってそんなに驚いた声出せるんだなと思うくらいの声だった。 というかこの人質盾にしてもいいわけ?


「バリア」


 俺達の目の前に瞬時に展開された防御魔法が銃弾を全て防ぎ切る。 相変わらず硬いな。


「…………えい」


 セリーヌが指でバリアを弾く。 するとバリアはこの狭い通路を思い切り飛んでいった。


「た、退避ぃ!」

「うわぁぁぁぁ!!!!」

「お、押すなぁ! ぐあが!」


 人が密集した状態で防ぐ方法などなく。 全員そのまま押し出されて壁とプレスされた。


「…………死んでないよな?」

「……加減はした。 骨くらいは折れてるかも」


 セリーヌは容赦もなかった。 まぁ容赦する必要はないのだが。 良心ってあるよな…………。


「さて、とっとと道案内してもらおうか?」

「ひぃ! わ、分かった!」


 雷魔法を解いてやる。 ずっと弱い雷伝を食い続けた男はフラフラしながらもなんとか先頭を歩き出す。


「少しでも変な動きをすれば…………分かるわね?」


 後ろからフェシルが銃を突きつける。 やっぱり容赦ないな!


「あはは…………」


 シルヴィアも苦笑いだ。 気持ちはよく分かる。

 男の案内の元、階段を見つける。 地下室に繋がるのだろう。 でもふと思う。 既にここって地下なんじゃ?


「…………地下室って、この階じゃないの?」

「今俺もそれは思ったな」


 地下室なんだろ? ここ自体が地下なんだから階段を下る必要があるのかと。


「あ、本当です。 もうここって既に地下なんですよね?」

「こ、ここは1階ですから! 俺達はそういう風に呼んでますから!」

「「あぁ、そう」」


 俺とセリーヌの声が重なる。 ややこしいことしてんだなこいつら。

 階段を下るとそこはいつかに見た並べられた牢屋だ。 フェシルの時もこんな感じだったな。


「…………懐かしい景色ね」


 フェシルは少し懐かしげに目を細めた。 でもここ違う場所だからな? あと良い思い出ないだろ。


「ここに来たことがあるんですか?」

「いえ、ここはないけれど。 こういう牢屋でルナに泣きつかれたのよ」

「なんだその説明は。 事実だけど俺が囚われてたみたいじゃないか」

「あれですよね? ルナさんがフェシルさんを助けて、安心して泣いてしまったんですよね?」


 なんでこの人は見たことあるような口振りなの? 実はあの場にいたんじゃないか?


「…………ルナは泣き虫」

「絶望には泣かないし気丈だけど安堵とかには弱いのよね」

「泣いてるルナさん、ちょっと可愛かったですもんね」


 いや、泣いてるのが可愛いってどういうことだ。 そんなわけないだろ。 というか本当に見てた? いや、あれか、セリーヌの時に泣いたな。


「こ、ここです!」


 そんな俺達の話を遮るように道案内が終わる。 この奥から男の怒号が聞こえてくるわけだが。


「そう。 ご苦労様」


 うん、やはり容赦ない。 フェシルの銃弾が後頭部を撃ち抜き、反動で前に仰け反ったところで壁に頭をぶつけてそのまま気絶した。 可哀想に。


「お? 龍人族発見」


 少し進んだ先に龍人族が牢の中にいた。 やさぐれていて、更には少し生臭い。 本当にヤッてんだなあいつら…………。


「シー…………」


 口元に手を当てて静かにするようジェスチャーしながら反対の手でこちらに来るように促す。

 虚ろな瞳が俺を見つめる。 そして言われた通りこちらに近付いて来た。


「もうちょいで出れるから待ってろ?」


 俺はその頭を撫でてやる。 龍人族は目を見開いた後に軽く頷いた。

 あまり期待はされていないだろう。 だがまぁ助けて欲しいのが事実なので頷いたということか。


「さて、幹部とやらを暗殺しに行くか」

「殺しちゃ駄目ですよ?」

「分かってるって」


 暗殺、というかバレずに気絶させる。 高速で動けばそれも可能だろうか? いや、遠距離攻撃の方が良いな。

 こそこそと足音を極力立てないように歩き、どんどんと奥へと進む。 本当に怪盗になった気分だ。


「ルナ、気配はどの辺り?」

「…………分かるの?」

「えっと…………次の角を曲がった辺りだな」


 こっそりと次の角を曲がって壁に張り付いて様子を見る。 静かになったはずの怒号が再び聞こえて来る。


「いいからとっとと股開けやおらぁ!」

「…………貴様らに屈する気はない」

「死ぬか? 死ぬかぁ?」

「…………殺したければ早く殺せ」


 牢屋からは気丈な声が聞こえて来る。 あくまでも屈しない。 誇り高き龍人族を体現しているような。


「手前に2人、奥に3人だ。 フェシル、手前2人頼めるか?」

「えぇ、問題ないわ」

「俺が突っ込むからその隙に撃ってくれ」

「了解よ」


 作戦は決まった。 後は実行に移すだけだ。

 俺は最大限、5人が気を抜く瞬間が来ないかと目を光らせた。

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