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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
33/90

真に強き龍人 一

 セリーヌの告白を受けてから数日が経過した。

 俺はいつも通りの時間に目が覚め、いつも通りボーッと寝ぼけながら目を覚ます為に顔を洗う。

 これが俺のいつもの俺のパターンなのだ。 というか一般的にはこんな感じなのではと思う。

 それから昼までだらけ、ボーッと過ごしてしまう。 俺は基本朝に弱い。


「…………ルナ、朝から何もしてない」

「まだ眠気が抜けてないんじゃないかしら?」

「いつも通りといえばいつも通りです」


 何やら女性陣がこそこそと俺を見ながら話している。 この状況にも慣れた自分がいるから怖い。


「ルナ、起きて」

「いや、起きてるからな?」

「…………まだ眠い?」

「多少はな」


 みんなで寝るとね、緊張してあんまり眠れないんですよ。 何故か分からないが俺を囲むように寝てくるのだ。 両サイドをフェシルとシルヴィアが、枕元にセリーヌがいる。

 寝ようとしてうつ伏せになればセリーヌの胸。 仰向けになればシルヴィアの尻尾。 横を向けばフェシルの唇ともうどこを向いても美女三昧。 緊張するのも無理はないだろう。


「昼寝…………する?」


 そう言って自分の太ももをポンポンと叩く。 膝枕のお誘いだよなそれ?


「膝枕で寝るとお前が辛いぞ?」

「問題ない。 あと今日は初めても奪って欲しい」

「お前もそんなこと言うのか…………」


 意外、ではないか。 結構エロ発言してんな。 誰かまともな奴入ってくれねぇかな…………。


「あれ? ルナさん、ギルドから召集がかかってます」


 いつの間にか宿屋の店主が来ていた。 何やら白い手紙をシルヴィアが受け取っていた。 それがギルド召集の連絡らしい。


「そうか? じゃあそっち行くか…………」


 せっかく眠れるチャンスだったが仕方ない。 ジーナも大切な仲間だ。 そしてそろそろ鍛冶屋にも顔を出さないといけないだろう。 時間が開けば多分文句を言われる。


「膝枕…………」

「また今度してやるから…………。 いや、してもらうから? どっちだ? まぁいいか。 とりあえず後日また付き合ってやるから、な?」

「ん…………ならいい」


 セリーヌは物分かりが良い。 というか変態ロリコンに閉じ込められていただけあってか、知識が豊富だ。 ロリコンが勝手にベラベラと色々話していたらしい。 本人はあまり嬉しくなさそうだった。

 4人でギルドに向かうと何度目かの奥の部屋へと連れられる。 ジーナが顔を出した。


「急な呼び出しで申し訳ありません」

「いや、構わないが。 何か緊急事態か?」

「こちらをご覧ください」


 そうして見せられた資料。 調査員の報告書のようだった。

 内容は奴隷にされた龍人族について。 様々な拷問やら強姦を受けているという悲惨な内容だった。


「…………いいのかこんなの。 最近ようやく龍人とも和解してきたんだろ?」

「はい。 ですのであなた方にこの組織を潰して頂きたいのです」


 わぁー…………なんだかヤクザグループ丸々破壊しろとか言われた。 あまりに現実離れしたそれには流石の俺も断り––––––。


「仕方ないから受けようか。 見過ごせないし」


 ません。 というか断る理由がない。 こんな気に食わないことをしている連中は1度きちんとしめるべきだ。


「ふふ、そうね。 奴隷だなんてルナが1番嫌いそうな言葉だものね」

「そうですね。 誰でも平等ですもんね」

「ん……行きたい」


 満場一致のようだった。 というか俺が頷けば全員頷くんじゃないか? 例えば4Pとか。 いや、前したな。 セリーヌも混じえてヤッたわ…………。 初めてはしてないけどな!(ここ大事)


「場所は…………隣町か。 遠いな」


 以前シルヴィアの時に砂漠の街へと向かおうとしたが、場所はそこだった。

 砂漠故に広大過ぎる上に場所を転々としているせいか判明に困るらしい。 政府も中々に苦労しているようだ。


「懐かしいですね」

「そうね…………」

「いや、そこまで昔でもねぇよ」


 しかもきちんと行ってねぇし。 感慨に浸る理由なくね?


「生け捕りは可能ですか?」

「元々無駄な殺生は好きじゃないんでな。 こんな奴ら死んでもいいとは思うが…………きちんと罪を償わせた方がいいだろ」

「そうですね。 酷いことをする方々はそれ相応の罰を受けるべきだと思います」

「私もそう思うわ。 …………見せしめに数人殺ってもいいんじゃないかしら?」

「殺るの?」

「だから殺らないっての」


 シルヴィア以外分かっていないっぽいですよ。 シルヴィアも前まであんなに優しかったのにちょっと最近言葉遣いが悪くなってきてないか? 俺達の悪影響のせいか?


「全員捕縛、もしくは無力化して全員突き出す。 ただ、もし手加減してこっちが殺されそうなら…………全力でもって消せ」


 あ、結局殺すのか。 いや、仲間が死ぬくらいならそうするべきだ。 こっちも命を懸けているのだから。


「それで構いません。 申し訳ありません、また無茶なご依頼を」

「気にするな。 基本何でも受けるって言ったろ? 報酬も良いしな」


 全員無駄遣いはしないのだが、やはり4人分だと結構掛かる。 この町の物価が高いというのも要因の1つだ。 その分アイテムの売却は高値で売れるのでトントンと言えるか?


「お前もこんな厄介な案件任されて大変だな」

「それが仕事ですので」


 何この人。ギルド員の鑑か何か? でもそんなだから厄介な仕事を押し付けられるんじゃないか?

 多少不安になっていたところ、ジーナは更にもう1枚紙を取り出した。 やけに高級感溢れる紙だ。


「これは…………冒険者名簿?」

「はい。 出来ればここに登録して頂きたいと思っています。 もちろん強制は致しません」

「これって名前書いたらなんか面倒な体力試験とかあるんじゃなかったか?」

「今回は破棄させて頂いております。 この名簿はミスリル級冒険者のみ記載させて頂いている特別なものですので」

「み、ミスリル!? それって最高ランクじゃない!?」

「そうなのか?」


 冒険者のランクとかあったんだな。 初めて知った。 まぁそれくらいしなきゃ適切な依頼も出せないか。


「既にフェシル様の名前は記載させて頂いております。 他の方々も記載させて頂きたいと思っております。 これがあれば、いざという時の後ろ盾にもなりますので」


 あぁ、これは彼女なりの俺達への気遣いか。 いざという時、あまり役には立たないかもしれないが、あっても損はないという話だろう。


「そういうことならありがたく記載させてもらおう」

「はい。 ではペンを」


 俺はペンを受け取るとスラスラと名前を書いていく。 一応フェシル以外の全員分。


「はい、確かにご確認致しました。 こちらをお受け取りください」


 渡されたのはミスリル鉱石というかなり高額なもので出来たプレートだった。 きちんとそれぞれに俺達の名前が記されている。


「…………もしかして最初から渡すつもりだったか?」

「はい。 紅月様なら必ず受けると思っておりましたので」


 こちらの動きはあらかた予想通りだったらしい。 まぁそうだろうな。 こっちに不利な条件が全てなかったわけだし。


「こちらもどうぞ」


 そう言ってネックレスも渡される。 このネックレスにプレートを付け、首からぶら下げるようだ。

 言われた通り、全員分のネックレスにプレートを付けてそれぞれに配っていく。

 別にどうでもいいが、セリーヌってどれだけ強いんだろうか。 セブンスアビスに匹敵するのは昔のことからなんとなく想像が付くが。 ナイフで殺害したくらいだしな。 ならミスリルランクでも問題なしか。


「これって付けてて意味あんのか?」

「割とあるわよ。 商人との交渉の時に見せれば信用されると思うわ」

「あぁ、そんな感じの使い方か…………」


 要するに身分証の代わりみたいなものだ。 ギルドから信頼と実力を認められれば、的なものだろう。


「しかし何もしていないのにいいのか?」

「…………? あなた方は石の洞窟の謎の解明をしていますが」


 あれってそんな意味があったんだな。 てっきりただの個人的なお願いだと思った。 実際何人か調査員が亡くなったみたいだし。


「ま、とりあえずこの組織はぶっ壊しておこう。 生け捕りにした後はどうすりゃいい?」

「近くの街にギルド員を手配しておきます。 何かあれば向こうから話しかけてくるでしょう」


 それってつまりは監視じゃないか? いや、まぁ裏切られると困るから当然の処置か。


「そうか。 じゃあそれでいい。 お前ら、行こうぜ」

「えぇ」

「はい」

「ん……」


 全員の返事を聞いて立ち上がる。 早速街へ向かうわけだが、またあのクソ長い道のりを行くわけか。 ギルドを出るとつい呟いてしまう。


「楽に行く方法とかねぇかな…………」

「移動魔法は…………?」

「俺は使えん」

「私も無理ね」

「わたくしもです」

「…………じゃあ私がやる」

「「「へ?」」」


 いきなり自分の指を噛んだセリーヌが自身の血で地面に魔法陣を描いていく。 というか思い切り移動魔法の魔法陣だった。


「使えるのか?」

「ん」

「…………なんで石の洞窟でそれ使わなかったんだ?」

「魔法陣描いたら消された」


 魔法陣が消えた? あぁ、そういうことか。

 向こうのセブンスアビスは大気の魔力を吸い取ることで自身の魔力に転換出来る。

 魔法陣や術式などの大気に固定させる魔法は使えなかったのだろう。 意外と厄介な能力だったんだな。


「そうか。 でもお前、隣町まで行ったことあんのか?」


 移動魔法は本人が行ったことのある場所にしか反応しない。 もし行っていないのならば無駄なわけだ。


「行ったことない…………途中までなら行ける」

「じゃあ途中まで頼む」


 思ったよりもショートカット出来そうだ。 帰りはかなり楽になるだろう。

 そう考えると家を持つのもいいかもしれない。 高難易度のダンジョンの中は何故か不思議な力に守られている為に移動魔法は無効化されるのだが、それ以外でなら活用出来る。 いちいち指を噛まないといけないのが難点だが自動再生で勝手に治るわけだし。

 セリーヌが描き終えた魔法陣に全員で乗る。 そういえばヒーラはいきなり魔法陣を展開していたっけ。 あいつの移動魔法は凄かったんだな。


「転移…………」


 セリーヌが小さく呟く。 俺たちの乗っている魔法陣が青白く輝き始めた。 そのまま視界は真っ白に包まれる。

 次に移った視界は砂漠だった。 どうやら一気に砂漠まで移動出来たらしい。


「これがあれば家買っても良さそうだな」

「家ですか?」

「あぁ。 俺達の家」


 金を貯めていずれは街で家を買えばいちいち宿代を払う必要がなくなる。 長期的に見ればそちらの方が得なのだ。

 移動魔法があればダンジョン以外でセリーヌに魔力があればいつでも帰ることが出来る。 いざという時の逃げ道を作れるわけだ。


「まぁ今はとりあえず行こうか。 急いで行かないと報告にあった場所から変わっちまうかもしれないし」


 組織に場所を変えられたら面倒だ。 俺達は出来るだけ急ぐことにした。

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