白銀のエルフ 三
翌朝、俺達はそれぞれ色々と準備をしながらもボーッとしていた。 別にやることもなければやりたいこともない。
強いて挙げるならばギルドへの報告くらいのものなのだが、それは別に昼からでも問題ないだろう。
「ルナさん、髪の毛梳いてもいいですか?」
「ん? あぁ」
シルヴィアにお願いされた。 いや、俺が受けるのか。 普通逆じゃね?
なんてツッコミを心の中で入れながらもシルヴィアに手と櫛で髪を整えてもらう。 これがかなり気持ち良い。
「いいわね」
「フェシルのは俺がやろうか?」
「いえ、私もする方が良いのだけれど」
お前もそっちかい。 というかどんだけやりたいんだこいつらは。
「…………シルヴィアのは私がする」
「いいんですか?」
「ん…………尻尾のお礼」
「ふふ、ありがとうございます」
セリーヌがシルヴィアの後ろに回ると手櫛で髪を梳き始める。 なんだかこうしてると俺も何かやらなければいけないような気がしてきた。
「フェシル、おいで」
「えぇ。 …………いえ、何よその誘い方。 つい頷いちゃったじゃない」
何やら文句を言われたが俺の前に座った時点でやることは決まっている。 俺はゆっくりと丁寧に髪を梳く。 フェシルの髪はサラサラしていて気持ち良い。
「ん……ルナ上手いわね」
「これでも昔は結構母親の髪とか整えてたんでな。 こういうのも出来るぞ」
いわゆる地肌マッサージというやつだ。 俺が適度に力を込めてマッサージしてやるとフェシルは気持ち良さそうに声を上げ始めた。
「ん……ふぁ……んぁ……ルナ、気持ち良いわ…………」
「あんまエロい声出さないでくれるか?」
「そんなこと……んぅ……言われたって…………」
後ろからすっごい視線が刺さる。 なんかチクチクするし。
「ルナさん、わたくしも後でお願いしてもいいですか?」
「ん? あぁ、構わないが」
「っ! やった…………!」
静かに喜んでいた。 しかし女の子は本当にこういうの好きだな。 無駄な知識だと思ったが覚えておいて良かった。
そのままフェシルのマッサージを続け、続いてシルヴィアになった。 セリーヌは尻尾にぎにぎに戻っていた。
「んぅ……んぁ!」
「ちょ、露骨に変な声上げないでくれよ」
「だ、だって…………ルナさんの手が気持ち良くて勝手に…………」
なんかエロく聞こえちゃうんですけど。 でも俺がしてるの、ただの地肌マッサージだからな?
それからはシルヴィアの色っぽい声に耐えながらようやく終えた。 何故か2人は頬を染めていた。
「す、凄かったです…………」
「そうよね…………」
「…………そんなに?」
セリーヌは不思議そうな顔をしていた。 俺も気持ちはよく分かる。
「セリーヌもやろうか? それとも俺に触られるのはまだ嫌か?」
「…………」
セリーヌは少し考え、2人に視線を向けた後に真っ直ぐに俺の方を見た。 そこには強い覚悟が見て取れる。
「お願いする」
「任された」
一歩踏み込んできてくれたこと。 そこに感謝しながらセリーヌの髪を梳いていく。 セリーヌの髪はかなりサラサラしていて指に絡みついてきたりしない。 極上のものだった。
「触ってるだけで気持ち良いな」
「…………ほんと?」
「あぁ。 完璧だ」
本当に完璧な手触りだった。 そのまま優しく梳いていき、最後にと地肌マッサージをしてやった。
「大丈夫か?」
「ん…………へいき…………っぅ…………」
いや、全然平気そうじゃないぞ…………? まぁ気持ち良いならそれでいいか…………。 悪いことしてるわけじゃないし。
セリーヌの言葉にもならない声を聞きながら少しして地肌マッサージも終える。 俺の理性を褒めて欲しい。
「…………気持ち良かった」
「そりゃ良かった」
「またお願いしていい?」
「お前が望むならな」
まさかの次のおねだりまでされた。 これは結構距離が縮まったんじゃないだろうか? 初対面では警戒しかされていなかったし。
「私も何かしたい」
「何かって?」
「…………」
その何かが分からずに首を傾げられた。 しかし首を傾げたいのは俺の方なんだぞ?
セリーヌは顎に手を当てて少し思案した後に何かを思い付いたように俺の背後に回り込む。
「…………?」
「ぎゅっ」
言葉とともに何故か抱きしめられた。 何故?
「セリーヌ?」
「ん…………胸を押し付ける」
「なるほど…………」
いや、なるほどじゃないな。 何言ってんだ俺は。
「いや、やっぱりおかしくないか?」
「…………胸は嫌い?」
「そりゃ男だから好きだけど…………」
何故みんな俺が胸を嫌うのだと思っているのだろう。 男はみんな好きだろ、普通。
そういえばこんな話を聞いたことがある。 若い世代は女性の胸が好きで、中年代は尻が好きならしい。 俺は前者なのでまだまだ若者だ。 いや、高校生なのでガキなんだけど。
「ならお礼」
「お礼にこれは痴女じゃないか?」
「…………?」
おっと、この子天然でやってます? だとしたら物凄い破壊力です。 柔らかいし良い匂いするし。
「こうした方がいい?」
セリーヌが全体重を俺に押し付けてくる。 その分だけ胸の柔らかい感触が!
「いや、やめてくれ。 俺は1度始めたら止まらないケダモノらしいぞ?」
「…………じゃあやめる」
流石に身体までは許す気はないらしい。 スッと離れた。 残念なような安心したような。
「私達ならいつでもいいわよ?」
「そうですから、残念な顔しなくても…………。 セリーヌさんのおっぱい、そんなに良いんですか?」
「残念な顔はしてねぇよ」
「やっぱりおっぱいが名残惜しいとは思ったんですね?」
おおう、言い返せなくなっちまったよ。 実際思ったし。
俺が黙ってしまうとフェシルからも冷たい視線がきた。 いや、だって男なら仕方なくね?
「ルナ、私達ならいつでもいいって言ってるわよね?」
「いや、それとこれとは話が別じゃないか?」
「言い訳無用です! もう! フェシルさん!」
「えぇ!」
「え、いや、ちょ、何?」
俺は何故か2人に左右から抱きつかれ、強制的にベッドに連行された。 これはまさかとは思うがそういう展開なのか?
「お仕置きよ」
「お仕置きです」
そうして2人に押し倒され、そのまま頬にキスされる。 いかんいかん、最近ヤッてないから。
「ルナ…………好きよ」
そのまま唇を奪われる。 更には軽くを軽く撫でられた。
「っぅ…………!」
「あ、ビクってしました。 可愛いです…………」
そのままシルヴィアに身体を尻尾で包まれて身動きが取れなくなった。 その様子をじっと見ていたセリーヌと目が合う。
「…………これが痴女」
「いや、納得してないで助けてくれないか!?」
何やらまた1つ勉強をしたようだ。 最も全く役に立つ機会はないだろうが。
俺はそのまま2人に襲われた。 もしかすれば俺と同様に2人も溜まっていたのかもしれない。
俺は心の中であることを決めた。 きちんと定期的にやらないと2人は危険だと。
ちなみにその後は何故かセリーヌもお試し体験的なもので本番以外で参加していたのは深く考えないことにした。




