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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
26/90

迷宮区『石の洞窟』 三

「テキ、ハイジョスル」


 次に現れたその生物は機敏な動きで殴り掛かってくる。 力自体は強くなければそこまで脅威でもない。 だが普通の生物とは明らかに違うそれに疑問が尽きない。


「レーザービーム」

「っ!?」


 突如、瞳から6本のビームが飛んできた。 ギリギリ横に回転しながら跳躍して避ける。


「ルナ!? あんなのいつもならすぐに避けれるでしょう!?」

「る、ルナさん? 体調が悪いんですか!?」

「…………」


 心配する2人をよそに観察を続ける。 不安になるだろうと言わなかったのに結局不安にさせちまったか。

 やはり声は掛けておくべきか。 なんかもう2人とも涙目だし。


「俺は大丈夫だ、あとでちゃんと話す。 まずはこいつを破壊する」


 殺す、ではなく破壊だ。 多分この生物は生物とは呼べないのだろう。 魔力という概念そのものを持っていないのだから。


「炎殺剣」


 炎を纏った刀でゴーレムを破壊する。 ゴーレムはそのまま目の光を失い動かなくなった。


「ルナ!」

「ルナさん!」


 2人が駆け寄ってくる。 調査員は…………まぁいるな。 なら問題ないか。


「歩きながら話す」


 そうして先に進みながら俺の疑問をとりあえず言ってみた。 すると2人は共に首を傾げる。


「「生物ではない?」」

「あぁ。 魔力ってのは絶対にどの生物にも流れているものだ。 もちろん神力も元は魔力だ。 でもな、こいつらにはそれがないんだよ」

「それで生物じゃないと…………けれど魔法でビーム飛ばしてきてたわよね?」

「あぁ。 だから驚いて回避が一瞬遅れた」


 あとは魔法陣もなかったところか。 あれも魔法と呼んで良いものじゃない。 多分俺やシルヴィアのような魔力のみを使うセブンスアビスや特別な存在特有の技だ。


「そういうことだったんですね。 良かった…………」


 胸元を押さえて心底安心したように息を吐いたシルヴィア。 フェシルは何故か俺の頬をつねってきた。


「いひゃい」

「そういう大事なことはきちんと相談しなさい」

「いひゃいいひゃい」


 更に強くつねられる。 手を離された後も若干ヒリヒリする。


「もう、フェシルさん暴力はいけませんよ?」


 そう言ってシルヴィアが俺の頬を撫でる。 しかしその表情は少し落ち込んでいた。


「あの……ルナさん」

「ふぁい?」

「その…………わたくし達、信用出来ませんか?」

「へ?」


 信用出来ない? いや、そんなことがあるはずがない。 背中だって預けられるし命だって預けられる。


「もう少し相談してくれても良いと思います。 わたくし達、まだルナさんの過去も詳しく知らないんですから…………」

「…………」


 そういや話してすらいなかった。 あぁ、そういうことか。 俺が何も話さないから不安にさせたのか。


「そうだな。 うん…………これが終わったら、ちゃんと全部話す」

「約束ですよ?」

「あぁ、約束だ」


 シルヴィアの頭を撫でて慰めてやる。 フェシルも少し寂しそうだったので同じことをしてやる。


「つってもあんまり良い記憶ばかりでもないんだぞ?」

「それでも大丈夫です…………」

「そうよ。 話してくれるだけで楽になることもあるでしょう?」

「お前ら…………」


 本当に、俺は何度こいつらに慰められて、支えられるんだろうか。 俺は彼女達に返せるものがあるのだろうか。


「…………」


 感動していると服の裾を掴まれる。 俺達3人同時に振り向くと先へ行くようにと促される。

 うん、ちょっと空気読もうね。 なんで俺達の周りってこんなに空気読めない変な奴らが多いの?


「そうですね、今は現状のことを考えましょう。 どうして魔力がないのに鉱物が動くんでしょう?」

「操作魔法かしら? いえ、それでも魔力は見えるわよね?」

「しかも魔法っぽいのを使ってきた。 あれもよく分からん」


 全くもって理解不能である。 どうしたものかと頭を悩ませるも解は出ない。


「…………それにちょっと気になってるんだが、ここは明らかに人工的、更には出てくるあのよく分からん動く鉱物の数も少ない」

「確かに魔力量があまりない場合はそうなるわよね。 壁が人工的なのは私も気になっていたし…………でも炎の塔も割と人工的じゃなかったかしら?」

「だから余計に分からなくてな…………」


 本当にややこしい。 何がどうなってんだ。


「うーん…………今は考えても仕方ないんじゃない?」

「そうだな…………とりあえず進んでみるか?」

「はい、そうしましょう!」


 シルヴィアは妙にやる気を出していた。 フェシルも早く俺の話を聞きたいとばかりに急かしてくる。


「ほらルナ、早く行きましょう?」

「いや、分かってるから背中押さなくても…………」

「ふふ、早く行きましょう」


 フェシルとシルヴィアに背中を押され無理やり先に進ませられる。 2人が押してくる時に身体を密着させるせいか胸の感触が凄い。


「テキ……ハイジョ…………」

「邪魔です♪」


 現れた謎の鉱物はシルヴィアの氷の魔法で瞬殺された。 まだ言葉の途中だったんじゃないか? 容赦ねぇ…………。


「流石シルヴィア♪ さ、行きましょう!」

「はい!」

「お前らな…………」

「…………」


 とてつもなく何か言いたげな調査員。 気持ちは俺もよく分かる。

 そのまま奥へと進んで行くとキキィー! と何やら妙な音が聞こえる。 例えるなら急ブレーキした車の音だろうか?


「なんかすっごい速度の奴が出てくるんじゃないか?」

「そうなの?」

「そうなんですか?」


 ここに車という概念はない。 ならば考えること、それは外から持ち込まれた知識ということだ。 ならばセブンスアビスか?


「シンニュウシャハッケン。 ハイジョシマス」


 先程の謎の鉱物の塊がやって来た。 しかし足が何故か車輪になっていた。 車輪には棘が付いていて当たるだけで死ぬだろう。


「な、なんですかあれ!?」

「わ、分からないけれど危なくないかしら?」

「いや、まぁ遠距離攻撃すりゃそこまで脅威でもないけど」


 俺は試しにと手を伸ばした。 赤い魔法陣を展開し、車輪目掛けて炎を飛ばす。

 炎は見事に車輪に当たり、破裂して股を引きずりながら慣性の法則に従ってこちらに向かって来る。


「レッドテイル」


 こちらに当たる直前、シルヴィアが炎を纏った尻尾で謎の動く鉱物を弾き飛ばした。

 鉱物はそのまま壁に弾かれ、うつ伏せに倒れる。 しかしここは人間らしく腕を地面について上体を起こそうとしていた。


「トドメ、刺してやる方がいいんだろうな…………」

「分かりました」


 シルヴィアが水色の魔法陣を展開し、氷の魔法でトドメを刺した。

 これでなんとなく犯人は分かった。 セブンスアビスか、それの関係者なのだろう。 異世界の知識がその証拠だ。


「地球人か…………?」


 しかしそれにしては漫画のようなデザインだった。 車輪に棘をつければ余計に遅くなるだけだろうに、無駄なことを。 でもそれがある意味人間らしいというのがなんとも言えないところだ。


「どうかしたんですか?」

「いや。 …………さっき足元で回ってたやつあるだろ?」

「えぇ、初めて見たけれど」

「あれは俺が前の世界であった代物でな」

「「っ!」」


 2人が驚いたように目を見開いた。 どうやら俺と同じ想像をしたらしい。


「ということはここはセブンスアビスの…………」

「そういうことなの?」

「さぁな…………。 だがセブンスアビスの特殊な能力、それに人工的に作られたような洞窟、神や天使に逃れる手段を考えればそう考えるのが自然だと思う」


 最弱のダンジョンならば自身が危険に晒される可能性は少ない。 更には魔族がいることから天使や神は間違いなく入って来ない。 もし入ってくればそいつは馬鹿だと思う。

 そして更にはダンジョンに出来た空洞。 狭く作られていてシルヴィアも詰まるくらいだ。 翼を持つあいつらには通れもしないだろう。

 第一飛行出来るあいつらの対策に下の方に作ったのかもしれない。 注意が薄れるからという理由で。 そうすればバレにくくもなる。


「特殊な能力…………でも魔力が見えなくなる理由にはなってねぇんだよな…………」


 必死に頭を捻るも何も思い浮かばない。 隠蔽が上手く、俺の魔眼ですら通用しない能力とか? それなら一応魔眼は効果がなくなるが、しかしそこまで隠蔽能力があるならばわざわざダンジョンに隠れたりしなくても問題ないだろう。


「んー…………」

「考えるルナさん、知的で格好良いです」

「そうね。 絵になるわね」


 何やら2人が騒いでいる気がする。 いや、いつも通りか? なんかよく分からなくなって来た。 慣れって怖い。


「全く思い付かん。 何かあるか?」

「「格好良い!」」

「へ? 何が?」


 格好良い? この辺に何かそんな刺激するようなものあったっけ?

 周りをキョロキョロとしながら何なのか確かめようとすると2人が慌てた様子で止めて来た。


「い、いえ! 格好良いのはルナさんのことです」

「そ、そうよ。 とりあえず私達もよく分からないわ」

「そうか。 …………で、何で俺が格好良いってことに?」


 俺が聞くと2人はゆっくりと視線を逸らした。 実はあまり真剣に考えてないとか?


「…………まぁいいか」


 俺が過剰になってるだけだろう。 多分別のセブンスアビスの可能性が出てきたから。

 そのまま俺達は奥へと進む。 急に視界が悪くなってきた。 灯りがここまで届いていないのだろう。 いや、そもそも灯りとかなかったんだが。


「ここから暗くなるみたいね」

「気を付けて進みましょう」


 危機的状況を悟ったのか2人の視線も真剣なものに。 先程の和やかなムードはどこに行ったんだとツッコミを入れたくなるほどの切り替えの速さだった。

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