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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
25/90

迷宮区『石の洞窟』 ニ

 草原を抜け、森を抜け、ぎっしりと敷き詰められた岩の空間へと出る。 岩の洞窟はこの岩場の何処かにあるらしいのだが。


「ルナ、こっちよ」

「ん? そうか」

「フェシルさん博識ですね」

「行ったことがあるだけよ」


 フェシルの案内の元、俺達は岩をぴょんぴょんと跳ねながら進んでいく。 ちなみに調査員は小柄の深くフードを被った子供のような外見の人だった。

 身魔力はほとんど見えないくらい小さいものだがそのフットワークの軽さからあまり足手まといにはならないのではないかと思う。

 ふとした時に存在を忘れそうになるくらいに希薄な人だ。


「あれよ」

「随分あっさり着くんだな…………」


 着いたのは大きな岩に囲まれた入口だった。 どんどん下に続いているようで坂道となっている。


「最初は本当に大したことないみたいだからすぐに行きましょう」


 フェシルを先頭に中へと入る。 本当に大したことないようで、フェシルが時折銃を撃ちながらどんどん進んでいく。 俺とシルヴィアは何もしなくてもいいくらいだ。

 しばらくの間歩いていると袖を引かれる。 視線を向けるとそこには調査員が何やら指を差していた。


「ん?」


 その方向に視線を向けると何やら小さな空洞が出来ている。 どうやらここが新しい通路らしい。


「フェシル、こっちらしい」

「え? ああ、そうなのね」


 少し先に進んでいたフェシルを呼び止める。 そして全員でその空洞を覗き込む。


「…………」

「…………」

「どうしました? 行かないのですか?」

「いや…………」


 俺とフェシルが思っていることは同じだろう。 いや、もしかしたら杞憂なのかもしれないが。


「とりあえず行ってみようぜ? 先頭は俺が行けばいいか?」

「私でもいいわよ?」

「わたくしも大丈夫ですよ」

「「…………」」


 俺達は2人して黙ってしまう。 とりあえずどうなるのか分からないので指摘はしない方がいいだろう。


「まぁ、俺から行く」


 俺がその小さな空洞に入ろうとしたところで調査員がいないことに気付いた。 空洞の先を覗き込むと足だけが見える。 先に行ってしまったらしい。


「よいしょ」


 俺は少し勢いを付けて滑るようにして中へと入る。 男の俺でも通れるのだ、そこまで狭くはない。 シルヴィアを除いて。

 通路の先から景色は変わった。 ごつごつとした岩が連なっていた先程とは違い随分と整地され、人工的に造られたような印象を受ける。 大量の岩が重なった壁や床も高性能のカッターか何かで斬り裂いたようにツルツルだ。


「次、私が行くわね」


 そうしてフェシルもやってくる。 フェシルはこのダンジョンのことを知っている分珍しそうに周囲を見渡す。


「最後、わたくしが行きますね」

「「…………」」


 俺達2人はじっと空洞を見てしまう。 そう、シルヴィアは本当に通れるのか? いや、どの部分が詰まるとは言えないが。


「あ、あれ?」

「だいじょうぶ––––––」


 俺が空洞を覗き込んだ瞬間、驚くべき景色が目に入ってきた。 というかシルヴィア、そういえば下はスカートでした。


「ひゃっ!? る、ルナさん! 見ないでください!」

「…………フェシル、あと頼む」


 案の定詰まってた。 しかも予想を超えて尻尾だけでなくその大きな胸まで。 あと今日は白かった。 何処がとは言わない。


「んあ! ふぇ、フェシルさん! そこは!」

「何言ってるのよ、ここが詰まってるんだから」

「で、でも! いや、ふぁ!」


 なんかすっごい甘い声が聞こえる。 俺が微妙な表情で調査員を見ると全く興味なさそうだった。 ある意味救われた。


「はぁ……はぁ……はぁ……お、お待たせ致しました」

「…………ルナごめん。 なんかすっごいことに…………」

「お、おう…………男としては役得と思うべきなんだろうな。 …………でもなんかごめん」


 シルヴィアは頬を染め、若干涙目で少しよだれ持たれている。 服もはだけてエロい。

 同時にかなり申し訳なくなっちまった。 やはり事前に言っておくべきだった。


「だ、大丈夫か?」

「はい……はぁ……はぁ……ですが、ちょ、ちょっとお休みしたいです…………」

「ですよね」


 まさかこんなことで休息になるとは。 うん、普通は思わないだろう。


「すまん、ちょっと休憩させてくれ」


 コクンと頷いてくれたのでとりあえずは事なきを得た。 んー、本当にしょうもない理由での休憩だなおい…………。


「立てるか?」

「は、はい…………あぅ」

「おっと…………」


 倒れ込もうとしたシルヴィアを慌てて抱きとめる。 荒い息を繰り返すシルヴィア。 普段なら反応しちまうだろこれ。 この前ヤッてて良かったと心の底から思う。


「はぁ……はぁ……ルナさん♡」

「ん? ちょっと待って? シルヴィアさん?」

「ルナさんルナさんルナさん♡」

「ちょ、ちょっとシルヴィア落ち着きなさい」


 シルヴィアに抱きつかれて頬ずりされる。 あ、これいつものパターンだ。 もちろん夜の運動の意味で。

 しばらくの間シルヴィアを宥めた後にようやく少し落ち着いた。 精神的にかなり疲れた。


「す、すいませんでした」

「い、いえ、私が悪かったわ。 ごめんなさい…………」

「い、いえ! フェシルさんは助けてくださっただけで! その…………まさか尻尾と胸が詰まるとは思わなくて…………」


 シルヴィアは耳まで真っ赤に染めていた。 ここで俺が気にしなくていいとか言うとちょっと落ち込まれるのだろう。 なんかどうでもいいと言っているみたいだし。


「ま、まぁ可愛かったぞ?」

「…………ルナさんあんなのが好きなんですか?」

「…………」


 そこは嘘でも頷けよ俺! 反応に困った俺の顔を見てシルヴィアは涙目になってしまった。


「ほ、ほら、あんな事故もたまにはあるって。 な?」

「ないです」

「ないわね」


 ちょっとフェシルさんもそっち側!? こっちのフォローしてくれよ。


「それにルナ、少し嬉しそうだもの。 気にする事ないわよ」

「そ、そうですか? い、いえ! 気にしますよ!」

「そう? 私とルナ以外は見てないわよ?」

「調査員忘れてないか?」


 全員で調査員を見ると周りをキョロキョロしていたり鞄から何か容器を取り出して周りの岩の採集などをしていた。 仕事熱心だった。


「…………私達、早く行ったほうがいいのかしら」

「流石に休むの早過ぎたからな…………」

「わたくしももう大丈夫です。 お手数をお掛け致しました…………」


 シルヴィアも無事元に戻ったのでとりあえず出発の準備をする。 といっても楽な体勢でいた為に少し着崩していただけなのだが。


「なぁ、そろそろ出発するけど大丈夫か?」

「…………」


 調査員は振り返るとコクンと頷いた。 喋りはしないが悪い雰囲気は感じない。 色々読めないっていうのが本音だ。

 先に進み始めると魔物が出現し始める。 あまり強敵ではない。 多分だが。


「シンニュウシャハッケン…………ハイジョスル…………!」


 それはまるでロボットのようだ。 体長2m程。 全体的に丸い印象がある。 球体を繋ぎ合わせたかのような身体で腕には3つの球体、そしてその先に小さな球体で3本の指を作っている。 足も同様で3つの球体に3本の指。 それらを胴体の大きな球体が繋いでいた。 顔は半球体で目のような物が縦に3つずつが2列の計6つ付いている。

 調査員が鞄からスケッチブックのようなものを取り出してババっと特徴を描き始めた。


「これは描き終わるまで耐えないといけないのか?」

「…………」


 首を横に振られた。 遠慮はいらないらしい。というかこの魔物? は魔力が感じられない。 あと喋った。


「じゃあ遠慮はいらないわね」


 フェシルがハンドガンを抜くと引き金を引いた。 その謎の生物は頭を貫通され、穴が空く。


「ゴゴゴ、テキ、ハイジョ」


 どうやら風穴を開けられたくらいでは止まらないらしい。 続けてシルヴィアが右腕を伸ばす。


「アイスブレイク!」


 謎の生物に氷の魔法がぶつけられる。 大きな氷の塊が謎の生物にぶつかったと同時に壊れて崩れる。 それに巻き込まれる形で謎の生物の四肢が崩れた。


「ピピ…………テキ……ハイジョ……ハイ…………ジョ…………」


 それっきり動かなくなった。 薄く白く光っていた目もその輝きを無くした。


「お、終わりました?」

「そうみたいだな」

「このダンジョン、私とは相性が悪そうね…………」


 主に貫通力重視のフェシルに破壊系の攻撃は向かない。 もちろんないわけではないのだが魔力を多大に消費してしまうのだ。

 しかし、これは本当に魔物か? 謎の生物、とは思うのだが魔力や神力が感じない生物など今まで見たことがない。


「…………」

「ルナ? どうかした?」

「…………いや、このダンジョン。 もう少し詳しく知る必要があるみたいだな」


 崩れた謎の生物を手に取って見てみるも大した情報はない。 特別な鉱石か何かというわけでもないようだ。


「何かの能力か…………?」


 あり得るのはそれくらいだろう。 そういった魔法も実は存在する。

 操作魔法という無機物を操作し、自由に動かす魔法だ。 遠隔操作も可能なのが魅力なのだが問題は多々ある。

 まず遠隔操作をしたところで自分が見えてなければ行動に移せないという残念な問題だ。 つまりダンジョンのような複雑な地形でそれは使えない。 もちろん近くにいるのならば別だが気配は全く感じない。

 次に常に魔力を消費し続ける為に消費量が多過ぎる。 普通の人間では間違いなく持たない。 セブンスアビスでも怪しいところだ。

 あとは先程のシルヴィアのように物質そのものを破壊されれば動かせなくなる、動きが多少ぎこちなくなるといった問題がある。

 …………ぎこちない? さっきの生物はどうだった? 随分と動きは機敏だったんじゃないか? フェシルとシルヴィアによって瞬殺されはしたものの動き方は普通のそれとは違ったように思う。


「フェシル、シルヴィア、次の奴には少し様子を見ないか? もちろん複数出てきた場合は1体に絞る」

「え? えぇ、それは良いけれど」

「…………? 分かりました」


 2人は首を傾げながらも頷いた。 これで少しは何か分かると良いのだが…………。

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