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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
22/90

迷宮区『炎の塔』 四

 20階層にて、現在俺達は魔物の襲撃に遭っていた。

 レッドゴブリンと呼ばれる1m程の赤い鬼の魔物やその上位種のレッドコボルドという二足歩行の狼のような魔物の集団だ。

 統率力が高く、集団で組織を形成しながら襲ってくる厄介な魔物だ。 知能が高い為かそれぞれナイフや槍、弓やといった武器を持っている。 更には炎の魔法も使用してくるので見習い冒険者ならば一瞬で殺されるくらいの力がある。


「シルヴィア!」

「はい!」


 本来担当するはずの数は1チーム3体。 つまりは魔物は合計21体と単純計算で1対1の構図となる。 しかし20階層ともなると1対1では勝てない人間も出てくる。

 俺は1人で5体を、フェシルとシルヴィアが他のチームの援護というよく分からないことにはなっていた。

 向かってくるレッドゴブリンをカウンターで斬り殺しながら周囲の戦況を観察する。

 フェシルとシルヴィアの援護もあってかそこまで苦戦した様子は見られないが、それでも割と問題はあるわけで。


「コンド! ルイファ! そいつを囲め!」


 レッドコボルドを3人がかりで囲んだおっさんが滅多打ちにする。 方法としてはこれが1番確実だ。

 俺も普段は瞬殺するのだがダンジョンは長期戦。 出来る限りの魔力消費は抑えたいので1対ずつ確実に斬り殺す。

 フェシルとシルヴィアに関しては均等に魔力消費をするように(シルヴィアの方が魔力量は多いのでそちらも考えて)交代で援護してもらっている。


「紅月殿! 後はそこのコボルドだけで––––––」

「ん?」


 何やら指示された気がする。 しかしもうすでに斬り殺した後なんだが。


「あ、すいません。 なんでもないです」


 何故だか知らんが謝られた。 というか誰だお前。

 見知らぬ人は置いておいて刀に付いた血を払いながら納刀する。 すると盛大な拍手を受ける。


「流石です! 格好良いです!」

「紅月様〜!!!!」

「ひゅ〜! ひゅ〜!」

「…………ダンジョン内であんまり騒ぐなよ」


 何故かもてはやされた。 興味がないのでフェシルとシルヴィアの元へと向かうと2人は頬を膨らませていた。


「どうした?」

「ルナ、一気にモテモテよね」

「そうですよ。 ちょっと優し過ぎです」


 何やら不機嫌なご様子。 これが嫉妬というものなのだろうか。 不覚にも少し可愛いとか思ってしまった。

 2人をあやしながら奥に進んでいくと何故だか懐かしく感じるバーンスライムが現れた。


「へへ、あいつくらいなら楽勝で––––––」


 とかいうフラグを立てるからこうなるのだろう。 バーンスライムが急に薄く広がり、大きな赤い魔法陣を展開した。

 例えるならマグマの波だろう。 勢いは強くはないがかなり強力な広範囲攻撃が繰り出される。


「ライトニング」

「アクアウォール」


 フェシルがそのマグマに向かって青い雷を纏った弾丸を撃ち出した。 一点集中の貫通する銃弾はマグマの波を突き破ってバーンスライムを貫く。

 更にはシルヴィアが俺達の目の前に水の壁を作り出した。 高魔力のそれはマグマすらも防ぎ切り、飲み込むようにして倒れた。


「一気に魔力を使ってしまいました…………」

「咄嗟だったものね。 私もよ…………」


 2人は割と魔力を消費した。 もちろんそれでもまだまだ余裕そうなのはそういうことだ。 気にするほど消費してない。


「ん? まだいるのか」


 再びバーンスライムがドロドロと動きながら迫ってくる。 再び薄く広がり赤い魔法陣を展開する。


「風切」


 俺はそのタイミングでカマイタチを飛ばして赤い魔法陣ごと盛大にバーンスライムを切断する。 バーンスライムはそのまま倒れてしまう。


「あ、凄い邪魔になっちまった」

「横から通れるので気にしなくていいんじゃないでしょうか?」

「そうね」

「そうか? ならいいや」


 俺達はそのまま先へと進もうとする。 しかし他の連中は動こうともしない。 視線を向けると全員口を開いたまま固まっていた。


「なんだよ?」

「え? あ、いや。 は、早く進もう」


 おっさんが呼び掛けてようやくといった感じで全員我に返った。 なんだよこいつら。

 無視して先に進んでいると大量の炎の魔法が飛んでくる。 恐らくはレッドゴブリンだろう。


「じっとしてろ」


 刀を抜いて大量の炎魔法を斬り裂く。 全てを防ぎ終えたタイミングでフェシルが銃の引き金を引く。

 全滅したレッドゴブリンを確認するととりあえずで一息吐いた。


「…………なんか妙な気配を感じる」

「妙な気配?」

「あぁ。 魔物だとは思うんだが…………なんか他のと違うというか、ピリピリしているというか」

「あ、それはわたくしも感じておりました。 この辺りに何か潜んでいるのではないでしょうか?」


 俺とシルヴィアはダンジョン初心者だ。 まぁ俺は記憶なら持ってるけど…………。 フェシルは思い当たったのか顔を上げた。


「それってもしかしてブラッドミノタウロスじゃないかしら? 遭遇した人は真っ先に逃げなさいって警告があるくらいよ」

「マジか。 てことは…………」


 俺達は後ろを付いてくる全員に視線を向ける。


「足手まといがいて勝てると思うか?」

「そんなはっきりおっしゃらなくても…………」

「いえ、実際事実だもの。 けれど少し厳しいかもしれないわ」


 それほどの相手らしい。 ということは俺も全力を出さざるを得ない相手というわけだ。

 だってもう逃げようとしても遅いしな。 そこの角を曲がれば。


「へへ、俺が1番に角を曲がるぜ!」


 ここで調子に乗る奴がいるわけだ。 通過しようとするチャラい男に足を掛ける。 すると盛大にすっ転んだ。


「痛っ! 何すんだ––––––」


 俺に文句を言おうとした瞬間、角から突然斧が飛び出してくる。 かなり大きなものだ。 その斧の大きさからおおよその魔物の大きさは判断出来る。


「ひぃ!?」


 斧は男の目の前の地面を砕く。 重すぎで切れるのではなく砕いた。 相当面倒だ。


「いいからとっととこっち来い」

「ひぃぃぃぃ!!!!」


 俺が言ったからなのか生存本能なのかは分からないが男は大慌てでこっちに走ってくる。

 それを追い掛けるように角から大きな太く赤い指が出てくる。 そのまま顔を出したのは5m程の巨体を持つ牛顔の魔物。 身体はゴリゴリマッチョな人間といういかにもミノタウルスという感じの魔物だ。 ちなみに名前の通りなのか全身が赤黒い。


「グォォォォ!!!!」

「ぶ、ブラッドミノタウロス!? ぜ、全員退避!」


 おっさんが叫ぶも間に合わない。 ブラッドミノタウロスの歩幅が大きいせいか逃げても追い付かれる。


「俺とフェシルで殺る。 シルヴィアはあいつらの護衛と俺達の援護を頼む。 仲間無視して逃げる奴はまぁ放っておいていいぞ」

「はい。 ふぇ? いいんですか?」

「問題ない。 フェシル、やるぞ」

「えぇ」


 俺達はそれぞれの獲物を構える。 ブラッドミノタウロスはそんな俺達をギロリと睨み付ける。 口からプシューっと白い煙が出ていた。


「グォォォォ!!!!」


 ブラッドミノタウロスが叫ぶ。 その瞬間動いた。

 フェシルの銃弾がブラッドミノタウロスの身体に撃ち込まれる。 しかしその筋肉のせいか、はたまた別の理由か全て弾かれる。


「ライトニング」


 バチンッ! という音と共に超高速の雷を纏った弾丸がブラッドミノタウロスの肩を撃ち抜く。 しかしそれすらも弾かれてしまった。


「っ! ルナ!」


 ブラッドミノタウロスが左腕を振りかぶる。 フェシルは冷静だ。 銃弾が防がれたとしても慌ててはいない。


「雷耐性か…………? 雷殺剣」


 ブラッドミノタウロスはその巨体故か遅い。 俺は一気に懐まで飛び込むと雷を纏った刀を突き刺す。


「うわ、また折れた」


 またまた刀を折ってしまった。 鍛冶師に何を言われるか…………。 いきなり突きで確かめるべきではなかったか。

 殴るのをやめ、掴みかかろうとしたブラッドミノタウロス。 刀を捨てながらその腕を蹴り踏台にして優雅に跳躍。 空中でバク転をしながら着地して距離を取った。


「フェシル!」

「えぇ! バーニング!」


 炎を纏った銃弾がブラッドミノタウロスの身体に撃ち込まれる。 炎には炎を。 とか思ったのだが案の定聞いた様子はない。


「アクアブレイズ!」


 続いて水が纏った銃弾が射出される。 精製魔法で造られた特別製のものだ。 その威力は絶大だったりする。 決して最初水鉄砲だとは思ってない。 だって威力がおかしかったもん。

 水の銃弾はブラッドミノタウロスの右太ももを見事に捉え、更には貫通した。 つまりはそういうことだ。


「精製魔法・氷刀」


 フェシルから教えてもらった精製魔法。 それを使い、更には俺の特別製として氷の刀を造った。 もちろん普通の刀に劣るがそれでも大差ないくらいには詰めたはず。 多分。


「水氷剣・水斬」


 水の斬撃がブラッドミノタウロスの右太ももに追撃を与える。 大量の血が噴き出し、ブラッドミノタウロスが片膝を付いた。


「アクアショット!」


 間髪入れずにフェシルが間近まで迫るとショットガンを放った。 全ての銃弾が水魔法付与の特別製だ。

 ショットガンはブラッドミノタウロスの胸元にめり込み、大量の血を吹き出させながら倒す。


「精製魔法・氷刀ニ対」


 もう片方に刀を作り出し二刀流となる。 その場を踏み込むように軽く跳躍する。


「水氷剣・絶牙」


 氷を纏い、水が纏う。 巨大化した2つの刀が獲物を屠る牙の如くブラッドミノタウロスの両胸を貫いた。

 次いで地面を崩し、大量の砂煙が舞う。

 一閃して煙を全て吹き飛ばしてブラッドミノタウロスを見下ろす。 口や身体中から大量の血を流して動かなくなっていた。


「なんであんなに雷耐性あったんだこいつ?」

「さぁ…………でも割と余裕だったわね」


 俺達が余裕そうにシルヴィアの元へと戻るといつの間に戻ってきていたのか全員が盛大に拍手をする。


「ルナさん、フェシルさん、なんだか動いてませんか?」

「「え?」」


 俺達は同時に振り返る。 するといきなりブラッドミノタウロスの身体が爆発? 蒸発? した。

 白い煙が立ち込める中細い人型の何かが立ち上がった。


「変形した…………?」

「いや、あれが本体みたいだ。 普段のミノタウロスの姿は炎で作ったみたいだな」


 魔眼で確認出来た。 流れていた魔力が一気に散って1人の魔物の姿となる。 炎自体が魔法だったようだ。


「ということはあれが本来の姿? 私達人間に似すぎていないかしら?」

「そうだな。 確か昔に炎魔って魔物がいたはずだ。 多分それだろうな」


 特徴とも一致する。 黒い人型の魔物で全身から炎が噴き出しているのだ。


「3人でやるぞ。 油断はするな」

「えぇ」

「はい」


 俺達はそれぞれ構える。 俺が二刀流を構え、フェシルは銃口を真っ直ぐに向ける。 シルヴィアも左手を引いて右手を突き出していた。


「グォォォォ!!!!」


 その咆哮を合図に俺達は走り出した。

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