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セブンスアビス  作者: レイタイ
出会い編
19/90

迷宮区『炎の塔』 一

 俺達は現在何故か知らないがギルドに来ていた。 いや、理由は呼び出しくらったからという単純なものなのだが、その詳しい内容までは聞いていないのだ。

 ギルドとはいわゆる冒険者の管理施設のようなものだ。 フェシルがそこに登録している為に、そしてついでで呼び出されたわけだが。

 奥の部屋に案内され、ソファに座る。 当然俺は真ん中、左右をフェシルとシルヴィアが囲む。 この配置が今では当たり前のようになってしまったので少し困る。 2人とも良い匂いするし。


「ルナさん、尻尾触りますか?」

「あぁ…………」


 とりあえずお決まりとなったシルヴィアの尻尾にぎにぎ。 ふさふさだし触ってるだけで気持ち良いのは反則。


「わ、私も何かして欲しいのだけど」

「あぁ…………」


 フェシルの遠慮がちな抗議にも応えて頭を撫でてやる。 何このハーレム感。 すっごい罪悪感と幸福感があるんですけど。

 ちなみに罪悪感は日本が一夫一妻だからだろう。 この世界は一夫多妻、一妻多夫でも問題はないのだ。 そもそも結婚という概念すらないのだから。

 幸福感は言うまでもなく、ハーレムは男の夢である。

 しばらくの間2人の身体の感触を楽しみながら待っていると、キリッとした眼鏡を掛けた頭にお団子を作った女性が扉を開けて入ってくる。 歩き方やひとつひとつの動作が随分とキビキビしている。


「本日お呼び出しさせていただいた件なのですが」


 そして早速本題に入る。 こういう時は普通コミュニケーションが大事。 挨拶は言わずもがな世間話を挟んでから本題に入るのが基本だ。 この人、その辺りをよく分かっていないらしい。

 2人も少し苦笑いを零しながらも要件を待つ。


「こちらからお願いがあります」

「お願い?」

「はい。 真面目に聞いて頂きたいのでそのエッチな行為は控えてもらえますか?」


 いや、別にエロくはないだろ。 尻尾にぎにぎと頭撫でてるだけじゃないか。

 まぁ真面目な話なので素直に2人から手を離す。 若干寂しそうにしたのは見なかったことにした。 俺その表情に弱いし。


「ありがとうございます。 では本題へ。 本日お越しいただいたのはこちらに参加してもらいたいと思ったからです」


 そう言って胸元のポケットから1枚の紙を取り出した。 割と高級そうな紙だ。


「炎の塔攻略会議?」


 そこに書かれていたのは招待状のようだ。 内容は炎の塔攻略会議。

 炎の塔とはこの街の草原を砂漠とは逆方向に抜けたところで出る森にそびえ立つ有名なダンジョンだ。 その最上階まで登った者はいないとされる。 現在は確か25階まで上がったという報告があったはず。


「実は以前26階へと続く階段を発見致しました。 その攻略をして頂きたいのです」

「…………なんで俺達なんだ?」

「とある親子からあなた方のような実力者がいるという噂を聞いたものですから」


 とある親子…………もしかしてフェシルと初めて会った時に助けたあの親子か? あの程度で強いと思われるのもアレなんだが…………。


「フェシル・スペクロトゥム様の実力は把握しております。 ですが、あなたと…………そこの獣人族の方は全くこちらでは把握しておりません」


 獣人がいるのが気に食わないのか、それとも何故いるのか分からないという困惑なのか、ギルドの女性は少し言葉を詰まらせた。 シルヴィアは全く気にした様子はないので問題ない。


「それは大丈夫よ。 この2人は私よりも強いから」

「本当ですか?」

「同じくらいだとは思うんだがな。 まぁ俺は一応セブンスアビスだし」

「…………え?」


 いつもこんな反応されないか? いや、でも嘘ではないしな。


「そ。 私はこの人の家臣になったの」

「私もです」

「は、はあ」


 何やら納得していないといった感じのギルドの女性。 だが事実なので受け入れてもらうしかない。


「ダンジョンなら天使の襲撃もないだろうしな…………俺は別に構わねぇけど。 興味あるし」


 ダンジョンでも炎の塔は難易度が高いと評判だ。 もちろんそれは一気に上がろうとした時の話だが。 休みながら、そして集団で行えばかなり難易度が下がる。

 オーレリアやハグロウの記憶を探っても炎の塔のダンジョンの記憶はなかった。 行ったことがないのだ。


「ルナが行くなら私も行くわ」

「わたくしも行きます」


 2人も賛同する。 うん、まぁそうだろうな。


「ありがとうございます」


 ギルドの女性は行儀良く、丁寧に頭を下げた。


「何か必要なものがございましたらこちらでご用意させていただきますが」

「んー…………飯?」

「それくらいよね」

「それくらいですね」


 何故飯なのか。 まぁ金がないからだとしか言えないのだが。


「あ、替えの服とか大量に買わないといけないんじゃないか?」

「大量にはいらないわよ…………でも少しくらいは必要よね」

「そうですね。 毎日同じ服は嫌ですよね」


 ギルドの女性が微妙な表情をする。 そうですよね。 必要なものって武器とかアイテムのことですよね。 俺達そういうの必要ないからな…………。 もちろんあるに越したことはないんだけど、あっても荷物になって邪魔になる可能性が高い。


「ま、服は流石にこっちで用意するけどな。 飯はそちらで何かしてくれんのか?」

「え? え、えぇ、お望みでしたら」


 という事らしい。 話はまとまったな。


「じゃ、早速服買いに行くか…………。 この招待状、持っていてもいいのか?」


 招待状には攻略会議の日時と場所が記されている。 念の為にも持っておきたいのだ。


「はい。 元々そちらにお渡しする予定のものでしたので」

「そうか。 じゃあ飯はよろしく」

「よろしく」

「よろしくお願い致します」

「は、はい」


 何やら戸惑った様子の返事を聞きながら部屋を出て行く。

 初めてのダンジョン攻略という事でシルヴィアは少し緊張気味だ。


「今から緊張してても意味ないぞ?」

「そ、そうですよね」

「フェシルは大丈夫か? 昔……その、色々あったんだろ?」

「えぇ、平気よ。 今はルナもシルヴィアもいるもの」


 フェシルにとってダンジョン攻略は少し特別なものになるかもしれない。 しかし本人はいつも通りだ。 その言葉が本心なのだと分かると嬉しくなる。


「ですが、本当に大丈夫でしょうか?」

「何がだ?」

「いえ…………他の方々のお役に立てるのか心配で…………」


 むしろ逆に他の奴らに足を引っ張られるんじゃないか? シルヴィアは勘違いしているようだが他の奴らの方が普通に弱いだろう。

 フェシルも同じことを思ったのか苦笑いを零していた。 俺達はかなり上位に入るのも分かっているのだろう。

 まぁ俺は一応王だし。 他の奴らより優れてなければ何の為のセブンスアビスだよ、というツッコミを入れなければならなくなる。


「まぁいいだろ? 今は先のことより今のことだ。 服に結構な金を使っちまうな」

「確かにそうですね。 ど、どう致しましょう?」

「どうもしないでしょう。 依頼をこなせば自然とお金は貯まるわ」

「つっても俺達普段はギルドに出入りするのはあまり良くないだろうけどな」


 ギルド登録済みの冒険者ではないからだ。 いや、俺王だし? とかいう言い訳はする気はない。 王だって冒険者くらいしたい。


「登録した方がよかったか…………?」

「あまりお勧めはしないわ。 色々な実技試験を受けさせられるだけよ」

「そうなのか? じゃあいらねぇか」


 フェシルもいるし問題ないだろう。 ギルドから直接依頼が来るくらいだし、一応繋がりは持てたと思ってもいいだろうしな。


「じゃあ服買いに行くか…………」

「はい! フェシルさんはどんな服がお好みですか?」

「私はそうね…………見てみないことには。 動きやすい服と、その…………エッチの時に着たまま出来る服とか?」

「そんな服があるんですか!?」

「いや、ないだろ」


 何考えてんだこいつは。 着衣とかちょっとテンション上がっちまうだろうが。 …………あれ? 俺の性癖って実は全部フェシルに知られていたりするのか?

 なんて考えている間に服屋へと着いた。 というか偶然見つけた。


「まずはルナの服よね」

「はい。 格好良いのを選びたいです」

「俺服のセンスからっきしだからな…………。 まぁ選んでくれると大変助かる」


 この発言を俺は後で後悔することになる。 だって5時間くらい悩まれた上に着せ替え人形のように何着も試着させられるし。

 ちなみに2人の服は動いやすいように冒険者向きの装備だったり可愛らしい普段着や、本当に何故か存在したエッチ時の服を購入した。 意外と高かったのに何の躊躇いもなく金を出せたのは…………考えるのをやめた。

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