目下のところ小さな賢者さん。
本日はいよいよ待ちに待った魔法研究チームの顔合わせ、王様のマリトと護衛のイリアスはさておきとして顔を見合わせる面々はこれから共に切磋琢磨していく同胞と言うことになる。
一人はミクス、賢王の妹であり腕利きの冒険者、バリバリの実戦タイプとしての意見が出てくると期待している。
次にマリトが推薦した代表、それは――
「あの……お兄さんどうしてこんなことに?」
「ありと言えばありだな、マリトらしい人選でもあるな」
「でしょー?」
給仕メイドのルコである。
一応園芸の知識の豊富さからマリトに気に入られたメイドの一人、公ではないがマリトの嫁候補になりそうな人物でもある。
最近はマリトお抱えの園芸職人にも弟子入りしたらしいのだが、よもや魔法研究のリーダーとなるとは誰も予想できなかっただろう。
「もちろんルコに魔法研究の成果を期待しているわけではない、だが丁度良い常識人が欲しくてな。騎士では頭が固過ぎる、専門家に任せては我欲に走るだろうと悩んでいたところ丁度視界に入ったのでな」
「そ、そんな理由でですか!? 私には給仕の仕事もあるのですが――」
「それは本日から無しだ、園芸の修行に関しては継続して行ってもらうから心配はいらんぞ」
ルコがこちらを涙目で見ている、お前のせいかと言わんばかりである。
無論首を横に振る、事前に相談されたら少しは悩んでいただろう、賛成したけど。
「給料は増えるだろうから良かったじゃないか」
「わ、私にこんな大役が務まると思うのですか!?」
マリトとミクスはコクリと頷く、王族兄妹に肯定されては否定のしようもない。
「どうしても無理だというのならばそれでも構わない、だが新たな人材を見つけるまでは頑張って欲しい。何、基本的には友が上手くやるから心配する必要はないだろう」
「うう……わかりました……」
ちなみにルコに大役を任せたのは実績を出せればいざ嫁にする際に良い口実になるだろうというマリトの企みが一部の人間には見え見えなのだが、それを言うものはいないだろう。
「ルコは魔法の知識はあるのか?」
「ええと、基礎的なものならば学習しています。ですが研究できるほどかと言われたら無理ですよ」
「秩序を護る代表としてならそのくらいで上等だ、それでマリト、専門家の姿が見えないが実は知り合いとか言うオチはもう無いよな?」
「流石にね、素性を説明するならばクアマで魔法の研究をしていた『賢者』の弟子だ。当初はその賢者に声を掛けたのだが弟子を紹介されてね。もう来る頃だと……来たようだね」
パタパタと廊下を走ってくる音が聞こえる、そして扉の前でブレーキを掛ける音。
そして勢い良く開け放たれる扉。
「ここかー! いやぁお城は広いのだ!」
現れたのはファンタジー世界における魔法使いの格好、全身を覆うローブに巨大な尖り帽子。
まさに誰もが認めるであろう魔法使いらしい姿の……子供だった。
背はウルフェよりもさらに低い、年齢はいくつだ、十五未満だろうか。
中学生――いや小学生くらいだろうか……若いというよりも幼いという印象の少女だ。
横目でマリトを見る、爽やかな笑顔のままである。
「マリト……これか?」
「いや、見た目も年齢も若いのは否定しないんだけどね。こう見えても『賢者』の一押しなんだよ」
「あ、ターイズ国王なのだ、お城が広くて迷ってしまったのだ!」
さて、こんな小童がと怒るつもりはない、最初から変人をイメージしていたのだ。
バリバリ理系な感じとか、天才肌な感じの物臭野郎とか、そんな感じだ。
ただまあそっちかーと言う感じである。
「とりあえず自己紹介を頼めるか?」
「ノラッ! 大賢者バラストスの……何番目かの弟子なのだ!」
「ノラッか、変わった発音だな」
「ノラなのだ、正しく言えばノーデリクトランリス=ザクザリフュアンシュリトンなのだ」
なっが! カラ爺やボル爺よりも長い名前だ。
最近長い名前の新顔がいないから油断していたがまさかこんな小さな子がそういうポジションで現れるとは……さてはそろそろ長名ブームが来ているのか!?
ラグドー卿の孫の名前はそこまで長くなかった気がするんだけどな……ノーデリクトランリス、愛称がノラといったところか。
覚えられる気がしないからノラのままで良いだろう。
見た感じ非常に活気のある訛り言葉の女の子、これが才能あるとした場合結構マッドだったり問題児な感じを受けるが……まあ物は試しだ。
「それじゃノラ、早速だがちょっとお前の能力を見てみたい。この体の中にはある精霊が憑依されている。その仕組みが分かるか?」
「見せてみるのだ、ふんふん、確かに何かいるのだ、てい」
とノラは人の胸に手を当てたかと思うと何かを引き出すような行動を取った。
「おい、ひょっとして今――」
「―――、―――?」
……あーこれは精霊を引き抜かれた感じか?
向こうの言葉が話せなくなってるし、向こうの言葉も聞き取れない。
そんなに簡単に抜けるモンだっけ、この精霊さん。
一応世話になっているんだから大事に扱ってあげてくださいね?
「とと、言葉が通じないと困るんだが……おいマリト、言いたいことは分かるだろう。戻させろ」
この中で察しが一番良いであろうマリトに向かってジェスチャーで伝える。
マリトは手を上げて応じ、ノラに何かを話す。
ノラはそれを承諾したのかこちらの胸に再び手を当てる。
「元に戻したのだ」
「ああ、聞こえるようになった。抜き取るなとは言わんがせめて一言断ってくれ」
「すまないのだ、でもなかなか面白い術だったのだ。にーちゃんの魔法なのか?」
「いや、ユグラ教の大司教、マーヤさんの術だ。こっちは異国の民でな、言葉が通じないと言うことでこうして精霊に頼って会話をできるようにしてもらっている」
「聞いた事の無い言葉だったのだ、髪も目も黒いし、変なにーちゃんなのだ」
「見た目で判断するのは良くないぞ、それを言えばノラの若さだってこの場に相応しくないことになる」
「む、それは……ごめんなさいなのだ」
ふーむ、あっさりと……素直に謝ることのできる子か。
年齢の事で舐められれば嫌味の一つでも返してくると踏んだが、そうでもなかったか。
実力は確かに高い、自信家ではあるが他者から諭される余裕を持っている。
こちらの要求したスペックは確かに満たしていると見て良いだろう。
「ま、良いさ。ノラ、お前の実力は分かった。次はここに来た理由を聞こうか」
「理由? 師匠が修行だから行けと言ったから来たのだ」
「で、それを鵜呑みにしてきただけか? 何をするかとか聞かされていないのか?」
「それは聞いたのだ、魔法の研究をするから力を貸してやれと言われたのだ」
「それでやる気満々でやって来たというわけだ」
「そうなのだ!」
「……マリト、大賢者からの言伝はあるのか?」
「ああ、あるよ『弟子を頼む』とね」
「丁度良いギブアンドテイクか。賢者と賢王のやり取りとしちゃそういうもんだろうな」
「どういうことなのだ?」
「何、ちょっとお前の師匠の考えを推察しててな」
「多分君の考えている通りだと思うよ」
大賢者はマリトの要請を聞いて弟子の良い修行の場になると弟子を託したのだろう。
その辺は自然に学ばせるべきか、一応どの程度か見てみるとしよう。
「ノラ、お前の師匠の意図、何を思っているのかは分かっているか?」
「新しい魔法を生み出す実戦の場なのだ、現場でぶいぶい慣れて来いという意味なのだ!」
「ぶいぶいて、まあそれじゃ半分だな」
「じゃあ残り半分はなんなのだ?」
「お前の実力を磨くためだけじゃないって話さ。すぐに分かるようになるだろうから最初はぶいぶい頑張ってくれ」
「わかったのだ! それでにーちゃんがこの研究所で一番偉いのだ?」
「いや、一番偉いのはこのルコ様だ」
「様っ!?」
とルコを紹介する、突然の様付けで困惑するルコ、ちなみにマリトが陰で吹き出している。
「おおー、……でもあんまり凄そうじゃないのだ」
「そうだな、魔法の技術に関してはルコはお前よりずうっと下だ。だがお前の師匠がルコを見たらきっとこう言うぞ『なんて良い上司だ』ってな」
「本当なのだ?」
「ああ、そこが理解できればお前の師匠も喜ぶだろうよ」
「……わかったのだ、よろしくなのだルコ様!」
「いや、あの様付けは……」
「うむ、それでは頼みますぞルコ様っ!」
「ミ、ミクス様までっ!? お、お兄さんっ!?」
こうしてターイズ魔法研究所が城の領地の中に設けられることになった。
ちなみにノラはミクスと共に生活するとのこと、ミクスならば大丈夫だろう。
しかし男女比率が絶望的である、これは早急に何とかせねば憧れの環境だと言うのに肩身が狭くなりかねん。
その場を去るマリトに次仕入れるなら男を優先してくれないかと密かにこぼしておく。
「ところでルコ様、まずは何から始めるのだ?」
「ええと、その……お兄さん?」
「ああ、悪い悪い。ノラには今から説明する理論やらをどうにか魔法で再現できないか考えて欲しい。実践的な相談なら冒険者をやっていたミクスを頼れるだろう、ただこっちが与えるのはほとんどが机上の空論になる。結構大変だからな?」
「にーちゃんは魔法には詳しくないのか?」
「おう、全く使えん。ルコ様以下だ」
「お兄さん? それ止めてもらえませんか?」
割と怖い目つきで睨まれる、マリトの友人と言う立場はほとんど効果をなし得ないようである。
あまりからかい過ぎると研究を中断してでも説教をしそうである、程ほどにしよう。
「師匠みたいだと思ったのに意外なのだ」
どんな師匠だ、目が死んでいるのだろうか。
あーいや、でもマリトに預けると言う選択肢を選ぶ辺りは同意もできる。
そうか、ノラが案外素直なのはこちらに師匠の面影を感じたからなのか。
――ろくな師匠じゃねぇな、きっと。
「ちなみに魔法の構築を編み出すだけが仕事じゃない。魔力に関する研究も色々進めていく予定だから好き嫌いは程ほどにな」
「ふふん、ノラは万能なのだ! ドンと来いなのだ!」
「良く言った、じゃあ最初はこれだ」
ポケットから出したのは小さな黄緑色の鉱石、魔封石である。
「魔封石なのだ、これがどうかしたのだ?」
「これの仕組みは理解しているか?」
「もちろんなのだ、魔封石の持つ魔力に魔法の構築が触れると魔封石の魔力の特性でその構築が分解されるのだ」
さらっと答えてくれる、基礎知識も随分と高いようだ。
才能だけだと文献やらを揃えたりで本代の費用がかさむとも思われたがその辺は安く上がりそうだ、ありがたい。
「そうだな、お手軽に手に入るくせにその効果は絶大だ。こいつのせいで歴史における魔法の研究が遅れていると言っても過言じゃない」
「そんなことは無いと思うのだ、これを遠ざけておけば魔法は使えるのだ」
「近づけられたらどうするんだ?」
「使えないのだ、当然なのだ。にーちゃんは馬鹿なのか?」
「こいつ……つまりこれがあるせいで魔法は自由に使えない、対人戦闘における魔法が発展しないのはそういうことだ。魔法の研究にも金は掛かる、円滑な研究を行うためには背後に資金を提供できる組織が必要になる。その大手となるのが国だ」
一応この辺でノラの反応を見てみる。
難しそうな顔をしているが国がお金持ちと言うことくらいは理解している感じだ。
「では国がお金を出したいと思えるものはなんだと思う? もちろん魔法じゃないからな」
「うーん……病気を治す方法とかなのか?」
「そうだな、医療技術の発展は国民の寿命を延ばし、人口増加に繋がり、果ては国力の増加へと続いていく。だが治療魔法の研究はそれなりに進んでいて今では習得や普及への資金援助はしているが研究は少ないんじゃないか?」
何せ傷を治す魔法があれば裂傷、打撲、骨折と言った大抵の外傷は治癒できる。
病気によっては多少の違いはあるのだろうがそれでも万能薬のように使えてしまうのだ。
この世界の平均寿命は医療技術のレベルに比べやや高い、魔力があれば大抵の病気に対応できるからだ。
無論外敵である魔物の影響もあるし、あらゆる状況に対して迅速に動ける救急隊といった物もない。
その分の死亡率は高いため現代と比べれば流石に平均寿命は下回るのだが、それでもやはり高いものは高い。
しかしファンタジーにおいて回復魔法と言うものはレパートリーに乏しいのである。
ゲーム的に言えば状態異常一つ一つに解除魔法を用意していては覚えるのも使うのも手間なのだ。
当然早期であらゆる症状に使える魔法が生み出されるのは自然な流れである。
「ではご友人、国を豊かにする方法とかですかな?」
「国を豊かにする方法を求めるのは時代が良くなった証拠ではあるんだがな、過去の歴史から言えば国を護るため、強くするために国は力を、財力を投資してきた。手っ取り早く言えば争うためだ」
「争う……」
「戦う者を増やすために土地を開拓し、守りを固めるために城を築く、相手を確実に倒すために武器を生み出す。人の文明の進化には争いは重要な要素だ、もちろん褒められたことじゃないんだがな。だが人は仲良く手を取り合うよりも競い争った方がより発展に力を入れる生き物なんだ。ここで話を戻そう、魔法は人間同士の争いには向いていると思うか?」
「魔封石があるから対策は難しくないのだ、向いてないのだ」
「そうだ、魔封石があるために魔法と言う攻撃手段はほとんどが効果を成さない。自陣で使える回復魔法だけが発展したのはそのせいだ。実戦では魔力強化やらがメインになっている。だから国は魔法の研究にそこまで金を出さなかった。この魔封石という対処法があったからこそ魔法の研究は大きく遅れたというわけだ」
「難しい話なのだ、あと人間は馬鹿なのだ」
「おう、それが分かればお前は十分賢者になれるだろうよ」
魔法には無限の可能性があるのにもかかわらず、戦争で使えないと言う理由だけでその進歩を遅らせてきたのだ。
そりゃあ愚かと言う他無い、魔法の研究に専念したユグラはその辺は賢かったと言うべきだろう。
結果が悲惨なのを考慮すればやっぱり愚かではあるのだが。
「それでだ、最初の研究はこの魔封石について調べようと思ってな。魔法を分解するのは分かった、だがどうやって分解しているのかそういった仕組みを調べて行きたい」
「そんなことを調べてどうするのだ?」
「なんだ、今までの話を聞いてもこれを調べる価値が分からないのか」
「む……」
ノラは考え出す、それに合わせてミクス達も考えているようだ。
それぞれきちんと自分で考えるのはよろしい傾向だ、もう少し打ち解ければ相談しながらの話にも発展するだろう。
最初に閃いたのはルコ、妥当な位置だろう。
魔法に遠い者程この発想には至りやすいのだ。
「お兄さん、ひょっとして魔封石を無力化する方法とか考えようとしています?」
「さすがルコ様、いやルコ、ごめんて、睨むなって……。コホン、魔封石で魔法が無力化されると言うのならばさらにそれを無力化する方法もあるかもしれないだろう?」
「いや流石にそれは難しくないか……」
「イリアス、ドコラの戦い方を覚えているか? アイツは死霊術を多用していたが同時に魔封石の扱いにも長けていた」
「あ、ああ……」
「あれは魔封石の効果範囲外で魔法を使い、魔法で魔力の性質を変化させてその性質を利用して戦っていた。これも立派な魔封石の対処法なんだ、自分は魔封石の恩恵を得て相手の魔法を封じる。そして自分は任意の魔法を使って優位を作った」
ターイズの騎士達がドコラに苦戦したのは魔封石を使われ、自分たちは魔法の影響を受けていたからだ。
探知魔法で索敵され戦闘力を解析後対処され、こちらが探知魔法を使えば魔封石で妨害される。
これによりドコラは一方的に情報戦で優位に立っていた。
「只の賢い戦い方と言えばそれまでになるんだがな、もしもさらに魔封石の特性などを調べてそれを生かせればそれは大きなメリットになるとは思わないか?」
「それは……まあ確かに」
「魔力による肉体強化があるのは知っている、だが魔法による肉体強化はあるか?」
「それはある、実戦では不意に解除される危険性もあって使えないが鍛錬時には魔力による強化の体感に役立つ」
「ターイズの騎士達は肉体強化の魔法を学び、その感覚を魔力で再現する訓練をしておりますからな」
ターイズ騎士団の肉体強化の真髄はそこにある。
本来ならば強化魔法を使用して得られる力を魔力を込めることによる肉体強化で再現しているのだ。
魔法による強化がオートならば魔力による強化はマニュアルだ。
部分的な強化や強弱の調整が利くマニュアルの方が優秀ではあるが習得にはかなりの時間と労力を要する。
そして一番のメリットは相手によって解除されないと言うことだ。
これが魔法ならば打ち合う際、相手の武器に取り付けられている魔封石の接近だけで解除される危険性がある。
戦闘中にギアが勝手に変わっていてはまともに戦えるはずも無い。
「ガーネとターイズの兵力の差はそこにあると言っても良い。だが魔封石の影響を受けずに強化魔法が使える環境になったらどうなると思う?」
「……考えたくないな」
「鍛錬のレベルだけで言えばやはり騎士団が上だ、しかしガーネの兵力は一挙に底上げされることになる」
「ご友人……これは研究しない方が良いのでは? みすみすターイズの利点を捨てることになるのではないでしょうか」
「今は魔封石が有効だ、だが他の国がいつ魔封石を無力化、回避する方法を確立するかわからんぞ?」
魔封石の脅威が無くなれば戦場における魔法の有用性は格段に向上する、当然どの国も魔法の研究に力を入れるだろう。
だが遅れた者は致命的なハンデを背負うことになる、先進国と途上国の関係に近いだろう。
「いたちごっこになるが魔封石の無力化の無力化だって思いつくかもしれない、無駄になることはないだろうよ」
「そこまで行くとなんとも複雑な話だな……」
「……にーちゃんは変人なのだ」
「なんだいきなり」
「魔封石の研究をしたいなんてそれだけでも変なのだ、でもその先にもっと変なことを考えているのだ」
「嫌になったか?」
「そんなことはないのだ、面白そうなのだ」
「そうか、それは良かった。あとな、魔封石の研究はするにしても普通に魔法の構築の研究は別にするからな。ある程度の実績を生みださにゃ国から資金を借りるのも難しいからな」
そういって次に用意していた羊皮紙を取り出す、ある意味これが当面の本命と言っても良いだろう。
「これは……以前も言っていたアレか」
「おう、原理は知っているからな。近い実例もある、割と早い段階でできる可能性もあるし目に見える実績には丁度良い」
これに関しては創作意欲も出やすい、何せどれ程の効果が出るのかが想像に容易いからだ。
現にノラもこの仕組みを見て真剣な目で羊皮紙を見つめている。
小さくて幼いがその実力は確か、多少気がかりな点もあるがそこは他のメンバーが十二分に補えるだろう。
今の規模はまだ小さいがきっと将来面白い物が生まれるに違いない。
「おお、にーちゃんはやっぱり変態なのだ」
「こいつ……まあこれに関しては既存の魔法の理論やらをこちらが勉強する必要がある。その辺の補佐は任せたぞノラ」
「わかったのだ、山を転げる丸太に乗ったつもりでドンと任せるのだ!」
「大怪我確定じゃねぇか」