目下のところ頑張ります。
歴史の裏における衝撃の展開の後に、更なる衝撃。
いや何回衝撃受ければいいんだ、そろそろ肩こりが治りそう。
「魔王が……このガーネを? 魔王同士は仲間ではないのか?」
「それぞれがユグラによって魔王にされた、同意を以て新たな人生を望んだもの同士であることは否定せぬがな。じゃが徒党を組むものはおらなんだ、難しいのじゃよ精神的にも体質的にもな」
金の魔王は手の平に黄金色に輝く球体を生み出す。
魔力の塊と言うのは経験則で理解できるが何かしらの手が加えられているようには感じられないのだが、それは明確な色を持っていた。
「魔界を生み出す魔力じゃがその特異性は魔王によって異なるのじゃ。魔界の魔力が人にとっての毒となるように互いの魔力は双方に悪影響を及ぼす。一つの領地に複数の魔王が同時にいることはできん」
「物理的な接近は互いに好まないと言うことか。それで精神的な意味についてはどうなんだ?」
「単純に性格が違いすぎるんじゃよ、『黒』は世界を憎み、『緋』は闘争を求めた。『碧』は孤高の安らぎを、『紫』は絶対なる支配を、『蒼』は……良く分からぬな」
「金の魔王、お前は?」
「妾が求めたのは……居場所じゃな、より良い居場所を作りたいと思っておる」
仮想世界とは言え金の魔王が手を加えたガーネを惨状に変えた時、確かに金の魔王は怒っていた。
割り切れているとは言え、手塩に掛けて育てた居場所だ。
その辺に嘘はないと見て良いだろう。
「他の魔王が狙っていると言う根拠が知りたい、その言い方だとどの魔王が関わっているかも不明なようだしな」
「うむ、根拠じゃがガーネ魔界で多くの魔物が集結をしておるのが観測された。争うわけでもなく、一つの意思によって集められておる。これが可能なのは魔族か魔王のどちらかだけじゃ」
「ガーネ魔界は『緋の魔王』が生み出した場所なんだろ? なら――」
「妾も最初はそう思っておったのじゃがな、どうも確証が持てぬのじゃ。先程も言うたが魔界に生まれる魔物の特徴は魔王によって変わる。しかし集っておるのはガーネ魔界に見られる獣系の魔物ではないのじゃ」
そういって金の魔王は空間にスライド写真を浮かび上がらせる。
そこに映し出されたのは魔物と呼ばれる異形の姿。
人間でも動物でもない異形の姿が夥しい数で群がっている。
人型に近いが甲殻類の様な爪を持つものや触手の様な器官を無数に持つ表現に困るものもいる。
その数もだが種類もあまりに夥しい、深海生物や神話生物とかにもいそうな連中だ。
ジャンル分けの難しいクリーチャー系と呼称するとしよう。
「ちなみにこっちが本来のガーネ魔界に見られる魔物じゃ」
そういってもう一枚のスライドを表示させる。
そこにはファンタジー世界御用達のゴブリンやオーク、オーガと言った獣人系の魔物が映し出されている。
ウルフェの様な亜人とは違う、どの魔物の眼も本能に付き従う獣としての野蛮さを感じる。
恐らくは亜人系ではあるのだろう、だが魔界で生まれたことによりその性質が変化していると見る。
「『緋の魔王』でないのなら他の魔王はどうなんだ?」
「そういうと思うて他のも用意しておる」
『黒の魔王』の魔物、巨大な鎌を持つ死神の様な化物、顔を持たない騎士、足が複数ある黒馬、右手が疼きそうになるレパートリーだ。
本人が世界を恨んでいるとだけあって復讐者系とでも言えば良いのだろうか。
中学生時代なら心惹かれていたかもしれない。
『碧の魔王』の魔物、ワイバーン、ドラゴン、大蛇、樹の巨人、どれにおいてもその巨大さが目立つ怪獣系の魔物。
今の年代だとこの辺の方がワクワク感がある。
なおターイズに現れる魔物の大半がこの写真に映っている魔物である。
『蒼の魔王』の魔物、スケルトンやゴースト、死霊術を使うだけあって確かにアンデッド系だ。
しかしドコラのときに見たような人間の死体を使ったアンデッドはあまり見られない、元が人間のゾンビは自然発生しないようだ。
いや、スケルトンはどうなんだろう、人間を象っているだけなのだろうか。
『緋の魔王』の魔物は既に見たのでスルー、一番ファンタジーっぽいよね。
『紫の魔王』の魔物は人型に見えるが所々に獣のパーツを組み込まれている悪魔系、ラクラがちょくちょく『あ、あれ倒したことあります』と言っていた。
「以上じゃな」
「金の魔王と『色無し』についての魔物の特徴は無いのか?」
「妾は魔界を創って間もなくユグラに滅ぼされておる。魔物が生まれる前に浄化されてしまったからの。今残っておる妾の魔界と言えばこのガーネ城だけじゃ」
「え、ここ魔界だったのか」
「無くても生きられるんじゃがの、妾の力を使うためには最小限のスペースは必要じゃ。それ故に立ち入りを制限しておる」
魔界の中で魔王はその力を最大限に発揮できる。
金の魔王にとってはこのガーネの城内部だけが彼女にとっての魔界なのだ。
「でも魔物は生まれないんだな」
「魔界で生まれる生物が魔物になるのじゃ、『碧』は草木や虫も魔物にしておったが妾はそれらとは相性が悪いようでの」
魔王の個性やらが反映されるとしたら金の魔王が生み出す魔物は……狐で和風なイメージもあるから日本の妖怪の様な感じだろうか。
再びスライドがクリーチャー系に戻る。
どの魔王の魔物とも特徴が一致していない、確かに絞り込むことはできないだろう。
「そうなると残るは『色無し』か」
「『色無し』は会ったこともないし表舞台に存在しておらぬからの。怪しいと言えば怪しいのじゃがの、じゃが他の魔王がわざと形を崩して生み出しておるのではないかとも思うておる」
「そんなことが可能なのか?」
「妾の独自の調査ではあるが――魔界を生み出すのは魔王の素の魔力じゃがその際の気の高ぶりや消沈に合わせて生まれる魔物に変化があった事例があるのじゃ。鍛錬を積むかあるいは……」
なるほど、例えば怒りの感情で魔力を放出すれば猛々しいレッドドラゴンが生まれ、冷酷な感情で魔力を放出すればアイスドラゴンが生まれるとかそんな感じだろうか。
しかしこんな異形の魔物を生み出すとなると鍛錬と言うよりかは……。
「この魔物を生み出せる環境を作るときの精神状況が気になるな」
「うむ、少なくともまともではないじゃろうな」
「とは言え元々は『緋の魔王』の魔界だったわけだ、そこに新たな魔界を生んだ副産物と言う可能性とかもあるよな」
「その辺は試したことがないからわからんの、過去の歴史において魔王同士の争いは数回あったが領土の奪い合いは無かったからの」
「あったんだな」
「うむ、『碧』と『緋』が互いに我が強くての、仲裁に入った『蒼』『紫』もまとめて『碧』に半殺しにされておったわ」
準最強である『碧の魔王』の強さは他の魔王をまとめて半殺しにできるレベルなのか……。
そんな奴がターイズ領土に隣接した魔界にいると言うのはなかなかにヘビーな話である。
「『黒』と『碧』が争ったこともあったがその時はユグラが仲裁に入っておった、そうでなければ『碧』はユグラに滅ぼされる前に死んでおったであろうな」
そして『黒の魔王』はそんな『碧の魔王』を圧倒、その『黒の魔王』はスライムに……いやこの話はもうよそう。
「金の魔王は他の魔王と連絡が取れるんだろう?」
「いつでもと言うわけではないがの、満月の夜にのみ互いの意識がかつて『黒』が創った空間に送り込まれるようになっておる。ユグラに言われて用意された魔王達の交流の場じゃ。そこで念での会話ができると言った感じじゃの。御主の話もその折に『緋』から聞いたのじゃ」
満月と言えばついこの間か、次の満月までは一月近くある。
しかし互いに不干渉な筈の魔王が月一で顔合わせ――いやネット通話の様なものか。
そんな集いに強制参加とは、ユグラの性格も悪い。
「確認をしたりはしなかったのか?」
「先々月に話を切り出しておる、みーんな知らんぷりじゃったわ」
話を聞くにその定例会はある一定時間は強制参加、せっかくなので互いに情報交換することになっているとのこと。
金の魔王はそこに現れる魔王の数で復活したか否かを判別している。
話す内容は様々だが何せ話題がほとんど無い、沈黙だけで終った月もあるとか。
「妾は人の世界の話、『紫』は主に人と魔物との戦いの話、『緋』は我々にとって共有すべきと判断したことを話す。『蒼』はその話に一々悲嘆にくれ、『碧』は騒がしいだの眠りの邪魔だのと怒ってばかりじゃ。『色無し』は今まで一言も喋ったことがないの」
随分と他の魔王の性格が掴めてきた気がしないでもない。
まともに話している魔王二人が好戦的と言うのはどうも致命的に良識人の足りていないメンバーに感じるが。
「件の話を切り出してもこれと言った変化はなくての」
「魔族が動いていると言う可能性は無いのか?」
「魔族も魔物を操れるのじゃが、魔界は生み出せぬのじゃ。あの異形を生み出すには新たな魔界を構築し直す必要がある。そうなるといずれかの魔王の協力は必要となるのじゃ」
金の魔王の話はこれでほとんどとなる。
専門外の話が多い、背後にいる魔王の正体を掴むには材料が足りていない。
単純な目線で言えば『色無し』が最も怪しい、魔物の傾向も不明のままで今までに交流も一切無い。
しかし話題を出しても沈黙を決め込んでいる以上は確認のしようもない。
「金の魔王が他の魔王から恨まれたり、命を狙われる覚えとかはあるのか?」
「それは皆から狙われておるの」
「一緒に謝ってやろうか?」
「妾は悪くないわ! ユグラのせいじゃ、ユグラの。定例会に召集されることもそうじゃが魔王には序列と言う制約が植えつけられておるのじゃ。これは『優先順位』が求められる場合、序列に従わねばならぬと言う呪いじゃ。生まれた順に序列は配られておって妾は二番目じゃ」
序列か、と言うことは金の魔王は二番目……『黒の魔王』がいない以上は金の魔王が一番優先順位が高いことになる。
これが現在の魔王で一番の序列トップ……。
これがかぁ……。
「その序列の影響力はどの程度なんだ?」
「話し合いの場では基本妾が主導権を握れるの、他にも何かしらの順番を決める際には妾が最優先となれる。それに逆らえば本人にとってとても不快な気分になると言う呪いが働く」
何と言う微妙な呪い、しかし魔王レベルをとても不快にできる呪いと言うのはある意味強力だ。
話し合いの席程度ならば譲らざるを得ないと言うわけか。
「当然じゃが力技に持ち込めば序列の立場は無視できる。あまり故意に利用すれば先が怖いだけじゃがの」
ユグラ的に言う『お姉ちゃんが優先なんだよ』的な縛りと言ったところか。
そりゃあ力で劣る金の魔王に発言の優位を奪われ、優遇される立場が金の魔王になると言うのはまさに目の上のたんこぶだ。
プライドの高い魔王達からすれば話し合いの場ですらその序列の存在は嫌で堪らないことだろう。
納得のできないことは力で訴えられるがそう決断してから事が終わるまでの間は序列の呪いにより常時不快にさせられる、大抵のことは金の魔王に立場を譲らなければならないのだ。
「ちなみにどれくらい不快なんだ?」
「知らぬ、『黒』がおったときは妾は『黒』を恐れて逆らったことが無かったからの。ただ魔王同士の争いの際には序列下位の魔王は凄く気分が悪そうじゃったの」
下手をすれば戦闘に支障が出るレベルか、堂々と名乗り出て金の魔王を始末しない筈だ。
金の魔王が助けを求め、それを拒否すれば他の魔王を優先すると言う序列の呪いで不快にされる。
つまり、金の魔王を白昼堂々襲おうとすれば他の魔王からも敵意を向けられる危険性がある。
「妾一人が殺されるのであればそれも構わんと思うておったのだがの、ああも分かりやすく侵攻の用意を進められては妾も悩ましく思うのじゃ」
「いつ頃動くとかは分かるのか?」
「わからぬ、妾の仮想世界でもあの軍団は動き出す気配を見せんかった。仮想世界の欠点に魔王が生み出せぬと言うものがあるからの」
「……そういえばラーハイトが本を探し始めたのはいつ頃なんだ?」
「一年以上前じゃの、ドコ……なんじゃったかメジスの暗部とやらが『緋』の場所に現れたと言う話のすぐ後じゃったからの」
またドコラの株が上がっている、死人なのにストップ高にならないな。
と言うかそれって仮想世界のドコラから話を聞ければ『緋の魔王』の所在が分かると言うことではないだろうか?
……まあこれは後に取っておくとして今は金の魔王の問題をどうにかする方が先だろう。
ラーハイトは仮想世界の勝負開始前からメジスより盗まれた本を探すという命令を『緋の魔王』から受けていた。
それ故にイリアスの世界でもその使命だけは残っていて現れたのだろう。
しかしこれと言った動きが無かったのは報告する『緋の魔王』が仮想世界に生み出されていなかったから……辻褄は合う。
仮想世界のこちらが何もさせなかったと言う可能性もあるけどね。
今ガーネ魔界にいる魔物の群れも仮想世界では操作する魔王がいない、だが現実世界では今日にでも侵攻を始めても不思議ではない。
「仮想世界でその魔物と戦ってみたのか?」
「うむ、ガーネの兵を差し向けてみたがほぼ互角じゃった。地の利の差で敗走することになったが守りに徹すれば即座に陥落と言うことは無い」
魔物はいるのだ、仮想世界の兵士をぶつけて戦力差を調べることはできる。
その結果はほぼ互角か、数割が死ねば撤退する戦場とは違い魔物の侵攻は最後の一匹まで続くだろう。
そう考えれば発生する被害が攻めようとも守ろうとも甚大になるのは明らかだ。
第一層、いや三層までは戦場に巻き込まれてしまうだろう。
ターイズの騎士団に助力を願うのはどうだ?
いや、魔王が現存していると言うだけで国を空ける余裕は無い、他国の防衛に回せる兵士には限りがあるだろう。
強力な助っ人には違いないが打開策としては弱い。
「ところで、君は金の魔王に協力するつもりなのか?」
とイリアスが問いかけてくる。
そりゃあ、まあ……うん。
「敵じゃない以上は見捨てられないだろ」
「んっふっふっ、妾が魅力的なのが罪なのじゃな」
あ、イラっと来てる。
気持ちはわからんでもないが落ち着こうなイリアス。
「……勝負で負け越していたらどうしていたんだ」
「そうじゃのう、頼りにならん奴等じゃと追い返して後は妾一人でどうにかする他無かったじゃろうな。御主が真っ先に勝った時には御主だけでも協力して貰えぬか頼むつもりじゃったがの」
そりゃあ無能相手に助けを求めるはずもないか。
認めてもらえるのは嬉しいがそれでも現状は厳しい。
同じ戦力の化物達の進軍、これを迎え撃っていては被害は避けられない。
何、圧倒的に勝てる戦術だって? そんなもんあるか。
ターイズならば騎士達レベルのチート戦力と森に囲まれた地形を利用して長距離での罠や遊撃等をこなせば色々と実現可能かもしれないがガーネには平原しかないのだ。
どうやっても総力戦は避けられない。
無論強力な魔法を放って敵が一網打尽で壊滅、そんなご都合主義が通る世界でもない。
イリアスの戦闘力ならまとめて百匹くらいはいけるかもしれんが山賊のアンデッド集団とは規模が違う。
当然捌ききれる数でもないし、あんな魔物共に飲み込まれればイリアスとてひとたまりも無いだろう。
金の魔王を守るだけならばいくらでも可能だがガーネという国を守るのはそう簡単な話じゃない。
そこまで考えていると玉座の間が開く、同時に金の魔王が出していたスライド写真が消える。
現れたのはルドフェインさん、そういえば勝負から七時間以上は経過しているのだ。
とっくに朝日が昇っている時刻、他の連中は六時間前後眠っていたとは言え、こちらは深夜から金の魔王と喋りっぱなしなのだ。
うん、眠い。
「気になって見にくれば……王よ! 来客の皆様を朝までつき合わせるとは何事ですか!?」
「んっふっふっ、つい話が盛り上がって長くなってしまったの。では一度お開きといこうかの」
「そうしてください、全く……皆さんお休みになられますか? それとも朝食のご用意を先にしましょうか?」
溜息混じりのルドフェインさん。
この王様、外交的立場で言えばなかなかファンキーなことをやってるからね。
「……そうだな、私は食事をしてから少し休みたい」
「私も……あ、そうだ、寝る前に少しお酒が飲みたいです」
「ラクラ、朝から酒というのは……」
「寝る前ですから大丈夫ですよ」
「……ねむいです」
「ご友人はどうされますか?」
一息吐くのも良いだろうが……今は丁度思考回路が良い感じに回っている時だ。
調子の良いうちにもう少し情報を得て整理をしたい。
「ガーネ国王、こちらで食事を取ることは構いませんか?」
「妾と一緒に食べたいのかの? 普段なら断るところじゃが妾と御主との仲じゃ、許すぞ」
「……随分と仲良くなられたのですね」
普段大臣達にしか顔を合わせない王様が来客と食事をするのだ、それは珍しい光景なのだろう。
しかしルドフェインさんの目がちょっとジト目で怖い、『あー、悪友ができちゃったよ』的なニュアンスを感じる。
「ご友人がそうなさるなら私も一緒にいますぞ」
「……私も一緒するしかないな」
「なんじゃ、護衛ならいらんじゃろ。この後二人で仲良くしとるだけじゃから帰って良いぞ」
「「誰が帰るか」」
欲望に忠実なラクラと純粋に眠さに勝てないウルフェが屋敷へと戻り、その後運ばれてきた食事を取った。
ミクスの毒見により食事が二割程減ってしまったが深夜明けの食事なら文句も言うまい。
「さて、食事も済んだことだし――」
「一緒に寝るかの?」
「金の魔王、一度斬らせてもらえないか、蘇るのだろう?」
「そういうことは人に頼むことではないと思うのじゃがの?」
金の魔王の悪ふざけに一々反応する二人、そこまで気にすることでもないだろうに。
大体そいつは両刀、お前等にも欲情してるような奴だぞ。
意地悪な性格ではあるが金の魔王は人間が好きなのだ。
過去に争いあった者達だが今は手を取り合い、彼女にとって望ましい居場所を作っている愛しい存在である。
守備範囲が広すぎると言う点くらい、実害が無いうちは見逃してやろうではないか。
「枕は出してもらうが、仮想世界に案内してもらう。肉体疲労だけなら向こうに行っている間に回復できるだろう。横になりながら行けるならありがたい」
「それはできるが……しかしの、精神的な疲労は残っておるじゃろう。ゆっくり寝てからでも良いのじゃぞ?」
「少しでも不安を先に解決してやりたい、という建前も言っておくが……今はだいぶ良い感じでな。『俺』にとって無理の無い範囲でやらせてもらおう」
そして再び仮想世界へと向かうのであった。