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目下のところ大問題だ。

 一度卓が沈み、再び現れる。

 今度の卓の上には何も乗っていない、話し合いのための卓だ。


「どれも納得に欠ける勝利とは言え、妾の用意した仮想世界内で条件を満たしたことは確かじゃ。約束は守ろう、御主達を味方として客人として迎えるとしようではないか」


 新たに現れた椅子にそれぞれが座る。

 その数は五つ、金の魔王はと言うと先程と同じく人様の膝の上に陣取っている。


「おい、何故そこにいる。彼から降りろ」

「椅子が足りなくての、玉座からでは声を張り上げねば届かぬじゃろ?」


 金の魔王への警戒心が抜けていない護衛二人組、ウルフェの視線も痛い。

 ウルフェの場合どちらかと言うと金の魔王にそこを代われと言いたげだ。


「君もだ、いつの間にか金の魔王との距離が妙に近くなっていないか?」

「そりゃあこっちは一時間で終わったんだ、その間ずっと話してりゃ多少は打ち解ける。仮想世界でもいろいろと情報を仕入れていたしな」

「仮想世界の記憶は残らないのではないのか?」

「小さな金の魔王と遊んだ記憶はある程度残るようになっているんだ」


 同じことを複数した記憶は残らないが固定の反応以外、つまりは用意されていた特殊なリアクションは実績解除の結果の様なものとして記憶に残る仕様なのだ。

 だからこそ金の魔王がどこを撫でられると喜ぶのか、好きな食べ物は何なのかと彼女にまつわる情報がクリア後にも残っているのだ。


「勝負中にそんな暇潰しをしていたのか君は」

「逆だ、勝負中だからこそだ。仮想世界は金の魔王の力で『再現』された物に過ぎない。だがその中にいる小さな金の魔王は『用意』された物なんだ。相手を知る時、その者の意図が汲み取れる物を調べるのは定石だぞ」

「そ、それもそうか」

「どうせお前等、とりあえず斬ったり殴ってみたりしたくらいしかしてないんだろ」


 目を逸らすイリアスとウルフェ。

 魔王に対するこの世界のヘイトは高い、仕方が無いと言えば仕方が無いのかもしれない。

 金の魔王が姿を現した時、イリアスは躊躇無く斬り殺しにいっていた。

 ガーネの国王だと言う立場すら意識から抜け落ちているほどだ。

 現代では魔王の直接的被害は無いが間接的被害は多大なものがある。

 魔界で生まれた気性の荒い魔物による死傷者が後を絶たないからだ。

 イリアスの両親とてそう、ユグラ教の教えでも魔王は絶対悪として教え込まれている。

 まあ、そのことを自覚しているであろうに何の対応もせずに斬られるようなマヌケな魔王なら救いようもないし情報を得る価値も無いわけだが。

 ウルフェに関しては……金の魔王にさしたる興味が無いのだろう。

 仮想世界も楽しむことがメインで機能らしい機能をほとんど使っていないのだ。


「何度も言うたであろう、御主等の資質を見ると。勝負に対する向かい方、その実力、そして妾に対する想い。僅かな時間で勝負に勝ち、妾のことをしっかりと学ぼうとした殊勝な心意気、妾が気に入るのも自然のことじゃ」

「自分を吐かせた奴を気に入るってのも大概な性格だよな」

「ええい、やかましい!」


 バンバンと顔を尻尾で叩かれる。

 それにしても器用なものだ、ウルフェも尻尾は動かすが喜んだ時やテンションの高い時がほとんどだ。

 こうして自在に動かすのは珍しい。

 他の黒狼族もこう言った動きは無かった気がする。


「さて、それでは妾に答えられる質問があれば答えるとしようかの。妾が聞きたかったことは全員を待っている間にこの者から聞いておるからの」

「そうだな、まずはターイズ国として知っておきたいことから質問しよう。『蒼の魔王』を生み出したとされる湯倉成也と魔王を打ち滅ぼした勇者ナリヤ=ユグラとの関連性だ」

「ふむ、ナリヤと言う響きは懐かしいのう。その名を呼んでいたのは『黒』だけじゃからな」


 金の魔王の表情が変わる。

 愉快そうな笑みで少女らしさを感じていた風貌はない。

 人の膝の上に乗ったままということは気にしないことにしよう。


「妾を初めとする歴史に名を残した魔王、その全てを生み出した者と滅ぼした者は同じじゃ。ユグラこそが妾達を蘇生魔法で蘇らせ魔王へと変貌させた存在であり、同時にその全てを滅ぼした勇者でもある」


 違ってくれていた方がこの世界の者達への衝撃は少なく済んだのだが……そうも行かないようだ。

 自分を生み出した存在、そして自分を滅ぼした存在を見間違える可能性は低いだろう。


「先に妾について話をしておくかの。妾がまだこの世界に生きる只の人であったころ……随分と昔になるの」


 ------------------------------------


 金の魔王、かつては金狐(きんこ)族と言う亜人の少女であり、同族だけで構成された村で生きていた。

 魔王が生まれる前の世界に魔物がいようはずもない。

 獣による脅威は微々たる物、人の命を脅かす存在は飢えと病、そして立場を同じくする人であった。

 今とは違い人々は互いの差異に敏感であり、人と亜人との隔たりは埋めがたいものがあった。

 人間達は野蛮な亜人を数により迫害し、亜人達もまた身体的に劣る人間に苦しめられる屈辱を暴力で訴えた。

 生まれた互いの衝突は魔王の歴史よりも遥かに多く、その数は誰も数えたことはなかった。

 妾の住んでいた村が一夜にして焼き払われ、同胞を皆殺しにされたことも当時ではさほど珍しい話でも無かった。

 唯一の生き残りであった妾であったが、その全身は火に焼かれ刃に斬り刻まれ……その命は風前の灯であった。


「おや、目覚めたようだね。こんな傷でも意識が覚醒できるなんて、亜人の生命力は素晴らしい」


 じゃが死ぬ前に一度だけ目覚めた。

 どこの荒ら屋じゃったか、痛みに目を開けると全身は余す所なく包帯を巻かれ、目の前には……ユグラがおったのじゃ。

 なりゆきとしては大陸を放浪していたユグラが村を訪れ、辛うじて息のあった妾を発見し治療を試みたと言ったところかの。

 しかし妾はユグラの優れた治療の甲斐も無く、助かる見込みは無かった。

 治療魔法を施そうにも妾の生命力と魔力は既に尽きかけておったからじゃ。

 無念と言った気持ちは無かった。

 妾の一族とて無辜の民と言うわけではなかったからの。

 人間を襲い殺した者も大勢おった……因果は巡るものだとしみじみしておったの。

 自身の死はさして不幸ではない。

 それなりの年齢まで育ち、世の中の無常さを知った上で逝けるのだ。

 上々よな、と思っておった。

 だと言うのに――あの男は言うた。


「実にロクでもない死に方だね。君はそれで満足しているようだけど君の人生はゴミみたいなものだよ。君より何倍も裕福に生きている僕が言うんだ、間違いない」


 こともあろうに、人様の気分を害する言葉を死人同然の妾にずけずけと!


「君が望むならば君には第二の人生を与えよう。一度死ぬ身だ、次は自分の好きに生きてみたくないかい?」


 その挑発に妾は乗ってしもうた。

 そんなことができるならばやってみせよと。

 そして次に目覚めた時、妾は魔王となっておった。

 第二の魔王、『金の魔王』として。


 ------------------------------------


「その後妾はユグラからこの統治の力を教わり、好きに生きよと野に放たれた。これが妾が魔王になった経緯じゃな」

「湯倉成也は『蒼の魔王』には死霊術を教えていたようだが、それぞれに自分の知恵を与えて回っていたんだな」

「うむ、どの魔王も今のメジスに集められユグラの秘術を教わっておった。そして妾には『統治の金』と言う二つ名を名づけおったわ」


 恐らくは『統治の黄』だとは思うがそこは黙っておこう。

 しかしこの金の魔王が二番目の魔王か……。

 見た目は参考にはならないようだ、気をつけねば。


「湯倉成也は魔王にする候補者を事前に調べていた、金の魔王の村が焼かれた一件も湯倉成也が関わっているかもしれないな」

「そうかも知れぬな、じゃが妾はあまり身内に未練も無かったからの。そういった(しがらみ)から解き放って貰えた時点で感謝しておった。とは言え生前の知人は誰も居らぬのでな、未だ魔族も生み出しておらぬのだ」

「魔王の魔力特性が周囲の生態に異常をきたすんだったな。それで生前から親しい者を付き従える為には魔族にする必要があると」

「そうじゃな、劣化魔王みたいな物じゃ。蘇生魔法もいらぬし同意があれば簡単じゃぞ、ちょっとなってみるかの?」


 ちょっと近場に酒場ができたんだって、ちょっと飲みにいく?

 みたいなノリで人の一生を変えるイベントに誘うのはやめて欲しい。

 金の魔王には生前に親しい者がいなかった、と言うよりは人間と亜人との争いに辟易としていたのだろう。

 そして金の魔王に与えられた力は統治に特化した技術……ふむ。


「魔王はお互いのことを知っているんだよな?」

「うむ、生まれた順番で言うならば『黒』『金』『碧』『蒼』『緋』『紫』の六体が顔見知りじゃな」

「実は他にも魔王がいるんだってオチは無いのか」

「おるぞ、一人な。ただその魔王にユグラは名前をつけておらぬ。歴史上人の前にも現れておらん。妾達はその存在を知っておるが……妾は顔を見たことが無い。『色無し』と皆からは呼ばれておるの」


 ふむ、つまりは歴史的に現れたのは六体で総勢七体と言う訳か。

 と、ここで挙手したのはイリアス。


「勇者ユグラが魔王を生み出したのが本当だとして、何故ユグラはお前達を滅ぼしたのだ」

「それはの……ユグラ曰く、公平で無かったからじゃ」

「公平……?」

「妾達はユグラによって解き放たれた、妾は特にすることも無く自由に生きておったのじゃがの。中には魔界という領土を広げ、人の世界を侵略しようとした者もおった。と言うより最初の一人が切っ掛けでそれぞれが魔界を広げ始めたのじゃ」

「……『黒の魔王』か」

「然り、『黒』は最も世界を憎んでおったからの。辺境に魔界を生み出し、魔族と魔物を従えた『黒』は人間と亜人の区別無く殺戮を開始した。それを見て他の魔王たちも動き出したのじゃ」


 『黒の魔王』、突如現れ世界中を恐怖に陥れたとされる魔王でも最も恐れられた存在として歴史に名を刻んでいる。

 その最後はターイズ領土内にある山にてスライムに捕食されたらしい。

 そこだけを聞くと情けなく感じてしまうのはスライムを雑魚モンスター扱いにした日本のゲーム会社のせいだろうね。


「『黒の魔王』が創った魔界の話は聞かなかったが、辺境に創っているだけで広げてはいないのか」

「『黒』はとことん人を嫌っておっての、汚物が這っている土地などいるかと吼えておったわ。逆に自重無く人の土地を侵食したのが『紫』じゃの」


 最も爪痕の深い場所、世界最大の魔界とされるメジス魔界、それを生み出したのが『紫の魔王』だ。


「それに続いたのが『緋』と『蒼』、『碧』はちょっと趣旨が違うのじゃが……そんなわけで他の魔王も魔界を広げて行ったのじゃ。その虐殺や支配は圧倒的での、瞬く間に人は窮地に立たされおった。対立していた人間と亜人が手を取り合わねばならぬほどにな」


 いがみ合う者同士が手を取り合う条件、それは共通の敵が出現することだ。

 魔王と言う強大な存在が現れたことで、人間と亜人は協力して立ち向かったのだろう。

 美談にも語れるが、そもそも争うなという話である。

 だが魔王の力は強大過ぎた、中には黒狼族のように僻地に逃げ隠れた者達もいたわけだ。


「それでも状況は先程やらせたターイズとガーネとの戦い以上に一方的での。なんの面白みもないのと眺めていたところ、ユグラが動いたのじゃ」

「メジスに現れ、『紫の魔王』を討ち滅ぼしたわけだな」

「うむ、そこからはユグラの一方的な反撃じゃ。続いて『蒼』、『緋』、『碧』と順に倒されて行った……ちなみに次が妾じゃ」

「さっきの話だと金の魔王は魔界を創ってなかったんだろう?」

「いや、それがじゃな……他の魔王達が張り切っているのを見ているとな? 何と言うか一人で何もせんのも寂しいのうと、ちょこんと一国の隅っこに魔界を創ってしまっての。その日の内にユグラが『紫』を滅ぼしての……」


 実害なけれど顕現してしまった罪で断罪と言う訳か、容赦ないな。

 歴史で言えば最後にユグラと戦い敗走した『黒の魔王』はかの山で最期を迎え世界は平和になったとされている。

 それにしても魔王を六人抜きって、ユグラの強さが異次元としか言い様が無い。


「ユグラは言っておった、『いやー悪いねー、ちょっと君等を相手にするには彼等には早過ぎたようなんだ。公平じゃ無いのは良くないよねー? そういう訳で一回お休みでよろしく!』と。こちらが何かを言う前にばっさりじゃ!」


 軽っ、そんな理由で二度目の生を終らせられるとか堪ったもんじゃないだろ。

 しかも金の魔王は『黄の魔王』として歴史的に語られている。

 他の魔王のカラーを考えれば『黄』の方がすんなりと来るのは分からないでもないんだがね?

 金の魔王はユグラに対して恩人でもあるが理不尽に振り回されている被害者でもあるというわけだ。


「ユグラのしたことは完全なマッチポンプだな。魔王を生み出し、野に放った。魔王が人間の脅威になるや人間の味方になり魔王を滅ぼしてまわったわけだ。酷い話だな」

「私もユグラ教の聖職者ですけどショックです」

「その割にはそこまで動じてないように見えるな」

「まあ昔の人ですし、でも立場的にはショックを受けないと怒られるじゃないですか」


 こいつを司祭にした奴は誰だ、ウッカ大司教か!?

 こんな話を聞かされたら大抵のユグラ教徒はショックに打ちひしがれるか魔王を嘘つき呼ばわりして斬りかかっているぞ。


「あの狂人のやることはさっぱりじゃ。今も一体どこにおるのやら」

「……いや、数百年前だぞ、死んでいるだろ」

「魔王を一人で殺しまわれる程に人間の枠を超えておるのじゃ、寿命なんぞで死ぬものか」


 恐ろしい事実がポロリとこぼれて来た。

 勇者ユグラはまだ生きている可能性があるとのこと。

 うわ、会いたくねぇ……。

 湯倉成也、地球人かつ日本人なのだが……異世界に迷惑かけまくりのロクデナシであることが判明した。


「魔王を生んだ湯倉成也と勇者ユグラの別人説は完全に否定されたか……」

「同じ名前ではないか、何故別人だのと思っておったのじゃ?」

「魔王を倒せるほどだ、湯倉成也は内在魔力も相当あったんだろう?」

「無論じゃ、最も高い魔力量を誇っておった『碧』と互角以上じゃったからな」

「地球では魔法や魔力が表向きには存在していないんだ。だから地球人には魔力が無いのが基本だと思っていたんだがな……こっちが特別なのか?」


 とは言え体に何かしらの変化は感じていない。

 湯倉成也が陰陽師やら寺生まれでそういった力を持っていた説を復活させることになるとは……。


「妾もその点は拍子抜けじゃった。魔王最弱の妾でも恐れる必要がないとはの」

「質問、良いですか」


 挙手したのはミクスだ。

 先程から歴史の裏にあるロクでもない話をどんどん聞かされ頭が痛いだろうに真剣な表情を崩していない。


「金の魔王が二度目に蘇ったのはいつ頃でありますか?」

「妾が復活したのは百年程前じゃの。目覚めたら湖の中での、這い出てからふらふらと彷徨っておった。この弱さでは悪さもできんのでな、人の社会に溶け込むため、現代の者達の営みと言うものを学ぶことにしたのじゃ。これがなかなか面白くての、せっかくの魔王の力も活かしてみたいと思いガーネの先王と出会い、王位を譲ってもらったのじゃ」

「えらいあっさりと譲ってもらったんだな」

「二、三年程その者の下に仕え、正体とその力、素性を明かしたまでじゃ。きちんと認められた上で推薦してもらったのじゃぞ?」


 金の魔王の力は統治者からすれば破格の性能だ。

 賢王であるマリト以上の成果を安定して出せる、金の魔王を信じられるのであれば立場以上に国を思う者ならば譲りたくなるのも理解できる。

 そこを信じさせたのは金の魔王の実力と言った所だろう。


「……もう一つの質問です、他の魔王も同様に復活しているのでしょうか?」

「うむ、『黒』以外は全員復活しておるな」


 空気が重くなるのが分かる。

 金の魔王が復活していると言うことは他の魔王も復活するのだ。

 復活する前ならば用意もできるが、どうやらほぼ全員が揃っている模様。


「時期的に言えば妾が最初じゃな、大体十数年ごとに目覚めておったの」

「彼等の目的は……以前と同じなのでしょうか」

「妾はガーネを育てることで満足しておるがの、基本中身は全員同じじゃからな」

「つまりは、人の世界への再侵攻……」

「するじゃろうな、特に『紫』と『緋』は」

「他の魔王はどうなんだ?」

「『碧』が魔界を創る理由は静かに眠れる土地を求めておるからじゃ。既に過去に生み出したターイズ魔界を拠点とし、ぐうたらと眠っておる」


 領土内に面する魔界にとっくに魔王がいました、しかも『碧』って魔力量とかがトップレベルと聞いた気がするんだが。

 一人だけ目的が違うと聞いたが、安寧を求めて魔界を生み出したタイプの魔王と言うことか。

 とは言えイリアスの反応が気になる。

 そりゃあターイズに来る親の仇でもある魔物を生み出した張本人が未だにそこにいると言うのだ。


「最強なのは『黒』じゃが次点では間違いなく『碧』じゃ。じゃが奴の魔界にずかずかと足を踏み入らねば奴から動くことはないじゃろうな」


 ターイズへの方向にはあらゆる魔物を喰らう『黒魔王殺しの山』もある。

 こちら側から触れない限りは比較的安全と見ても良いのだろう。


「『蒼』は自主性がない、過去では『紫』に誘われて共に領土を拡大しておった。今回もいずれかの魔王に唆されなければ動きはないじゃろう」


 安全なようにも感じられるが、過激派の魔王の影響を受ければ同じように危険な存在になると言う感じか。

 蒼は湯倉成也から死霊術を教わっている、敵対するとしたら不死の軍団を相手にすることになるのだろうか。


「『緋』と『紫』は単純に野心がある、この両名は放っておけば必ず動くじゃろうな」

「『碧の魔王』以外の魔王の居場所はわかるのか?」

「分かっておるのは居場所に拘っておる『碧』だけじゃな。それぞれが過去に生み出した魔界にいると思うておったんじゃが、そうでもないようでの。メジス魔界は『紫』の場所じゃったが今でも魔物同士が縄張り争いをしておる。魔王が君臨すればそんなことをしている場合でもないからの」


 他国に隣接するその名を持つ魔界は現在でも魔物が現れている。

 冒険者達は時折魔界に足を踏み入れ魔物の巣を掃討したりしている。

 確かに以前と同じように魔王が再度君臨していれば噂の一つや二つ立っていても不思議ではないのか?

 最奥に位置していれば辿りつけていない可能性もある、想定は下手に絞らない方が良いだろう。


「そうそう、御主等が追っているラーハイトという小僧じゃが妾はその居場所を知らぬ。知っているのは『緋』くらいなものじゃろう」


 こちらの読みは大よそ当たっていた。

 ラーハイトは『緋の魔王』の傘下、その魔族の座を狙って行動していると見て良いだろう。

 しかしそうなるとガーネに来た目的はこれで達成、これ以上の足取りも追えないのではないだろうか?

 一気に話が進んだように見えて、実際問題が増えただけで何一つ解決していないんですが、はい。


「金の魔王、これは質問と言うか疑問なんだが……なんでそこまでペラペラと情報を話せる?」


 金の魔王の力は優れているがそれは統治に限った話、実際に隣国であるターイズよりも兵力は弱い。

 つまり金の魔王の戦闘力はかなり低いものとして見て良い。

 そんな金の魔王が他の魔王の情報を売れば恨まれるのではないだろうか。

 そんな危険な橋をこの魔王が渡る理由があるのだろうか。


「味方になると言うたではないか。――と言いたいが御主を納得させる手っ取り早い話をするとしようかの」


 金の魔王が膝から飛び降りる。

 そして玉座の方へ進み、振り返りながらこう言った。


「妾が統治するここガーネを狙っておる魔王がおるのじゃ。なんとかしてくれんかの?」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の名前一切出さないで話続けれるのが凄い。 今まで読んだことない手法でびっくりです。 [気になる点] 水晶は8つ、黒と共にくすんだ白もあったはずですが、 あれは魔王とは関係ないものだ…
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