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目下のところとんとんと。

 ガーネ視察一日目、第一階層巡り。

 もっとも外側の階層なのだが、内側から第一階層と名称しないと層が増える都度に全ての層の名称が変わることになる。

 そのことに関してお役人さんに話を聞いた所、適度に名前を変えることで時代の変化を意識させることができるからだそうだ。

 理解できなくは無いのだが書類を管理する者としてはたまった話ではない。

 保守派の王様に変わった時に『誰だこんな面倒臭い方法を取ったのは!?』とか叫んでいる未来が想像に容易い。


「しくしく……どうして私まで……。尚書様に憑依している精霊さんにご飯をあげるだけの簡単な仕事だった筈なのに……」

「目下のところお前を屋敷に置いて行くことはターイズの品位を落としかねないとの判断だ」

「お酒くらい飲んだって良いじゃないですかぁ! より取り見取りの銘酒がいっぱいだったんですよぅ!」

「使用人に一言断るならまだしも、忍び込んでいる奴を擁護する言葉はない」


 ラクラには雑用としてこちらと役人さんとの会話の記録を取らせている。

 大抵のことは説明された時点で大よそ理解できるのだが、後々に吟味する時に思い出せないことは多々あるのだ。

 そのためにどのような会話を行ったのかとその記録が役立つわけだ。

 本当ならば必要そうなところだけを抜粋して記録させたいのだが、ラクラの辞書には臨機応変といった単語が存在しない。

 そういったわけでひたすらに記録させている。

 

「そのとき尚書様は『ラクラ、今日は疲れただろうからもう自由に休んで良いぞ。ついでに残りの一生もずっと面倒を見てやる』と……」

「嘘の調書をマリトに提出したらお前の一生が即座に終わるぞ。あいつはお前のクズさを知っている上にお前を毛嫌いしているからな」

「マリト陛下は冷たい人なのですね、よよよ」

「そうではありませんラクラ殿、兄様はご友人に迷惑を掛ける存在を見ると虫唾が走り、ただ本能的に唾を吐いているだけですな」

「ひぃん、ミクスちゃんが少しも優しげのない説明をしてきますっ!」

「これは失敬、ですが私はラクラ殿は好きです! 自分に正直な所とか親近感湧きますからな!」

「わぁぃ、私もミクスちゃん大好きですっ!」


 なんだこいつらという顔をする、イリアスと役人さんも似たようなリアクションだ。

 ウルフェは見学ついでに手元の鎖で鍛錬をしている。

 大悪魔に育てられた男、エクドイクの特別製であらゆる魔力の性質に呼応してその姿を変えることができる鎖だ。

 いつの間にか腰の草摺(くさずり)のワンポイントとして着脱可能になっており、何時でも手の空いた時に鍛錬ができる。

 魔力性質の変化といった高等技術にはまだ取り掛かれていないが、鎖を自在に動かす訓練は順調な模様。

 ラクラに爪の垢を飲ませてやりたいと思っていた時期もあったが今ではウルフェがラクラに毒されないだけで満足だ。

 

「しかし第二層との隔たりである塀沿いに進んでいるがどこも似た景色だな」


 第一層に関しては人口はさほど多くは無い。

 現在この層は発展途中で川からの水路を引いたり、田畑の開拓作業が頻繁に行われている。

 第二層に近づくにつれ村々のような家並みが増えるが、既に家の取り壊しを行い新築の建て直しに移っている箇所もある。

 第一層はまるで文明ができるまでの流れをリアルで見ることができる博物館だ。

 強いて違いを上げるなら川の上流での工事の規模が丁寧に感じる。

 既に他の層で使用されている水が流れ込む場所だけに慎重に工事を進めているのだろう。

 川幅は平均して三百メートルより少し大きい。

 特徴的なのは川側には軍隊が常駐しており、川の監視が行われている。

 この国ではゴミを川に捨てることは重罪で、国王の敷地にゴミを投げ入れる不敬罪と変わりない。

 そういった法があることで船着場でのメンテナンスもかなり入念らしい。

 水周りで思い出したが、昔の西洋文化に似ているこの世界で魔法以外で異色に感じたのはトイレの有無だ。

 ターイズもガーネにもトイレは存在している。

 メジスについては聞いていないがラクラがトイレの存在に違和感を持たないのはそういうことだろう。

 水洗とまでは行かないが汲み取り式のトイレでも国の衛生面は大幅に向上している。

 トイレットペーパーの代用品が質感の良い葉っぱと言う点は違和感満載だが木の棒よりかはマシだろう。

 肥料としての活用法も早い段階で普及していたようで、その回収技術も高い。

 臭いに関しては魔法やらマジカルな鉱石の恩恵があるため、下手な水洗トイレより清潔な場所もあるほど。

 この辺の差異についてはこの世界に来た男、湯倉成也の様な存在が影響を及ぼしたのではないかと推測している。

 日本は江戸時代からインフラの設備は高水準だったからね。

 百年前の人間が文化を広めたらこうなってもおかしくは無い。

 足りない物はファンタジーの力でどうにかする、現代人から見たらなんとご都合主義な世界だろうと呆れるばかりだ。

 

「どうだイリアス、ターイズに比べてガーネは」

「そうだな、広大さや設備だけで言うならばターイズよりも遥かに上だろう。だがターイズにはターイズの良さもある、そこは譲るつもりはない」

「良い答え方だ、確かにターイズはガーネに比べれば規模は小さいが綺麗に纏まっている安心感があるからな」


 ガーネが無尽蔵に拡張する発展国家ならばターイズは完成された伝統国家と行った所か。

 どちらも一長一短だ、だが人口の増加で言うならばやはりガーネの基盤が強い決め手を持っている。


「しかし国ができていく光景が一度に見れるのはガーネならではだろうな。護衛の任を別としても遥々来た甲斐はあった。学べることは多いだろうな」

「そりゃ良いことだ。ついでにその殊勝さをラクラに身に付かせてくれれば感謝で一杯になるんだがな」

「それは難題だな」


 ラクラの方を見る、馬車に揺られて気持ち良さそうに眠っている。

 これをこのままで知名度を上げる約束をエクドイクとしているのだが……こりゃガーネから帰ったら本格的に考えないといけないよなぁ。


「ミクス、ラクラが退屈して眠っている。話し相手になってやれ」

「了解ですご友人、さーラクラ殿! 共にガーネについて語り合いましょー!」

 

 取り敢えず寝かせておくのは許せなかったのでミクスをけしかける。

 背後が喧しくなるが溜飲は下りるので良しとしよう。

 ハイペースでの移動だったのだが第一層全域を細かく回ることはできなかった。

 川沿いと道沿いに進み、南から北へと進んでいったが流石に領土が広すぎる。

 朝に出発し、屋敷に戻ってきたのが日が沈みきった後だ。

 ガーネまでの旅路とほとんど変わらない、いや全土が平野な分日陰がなくてむしろ体力的にはだいぶ消耗した気がする。

 屋敷の玄関ではルドフェインさんがこちらの帰りを待っていたようだ。

 予定していた時間よりも一時間以上遅れての帰宅だと言うのにその表情には疲れも痺れも感じさせない。


「お疲れ様でした、視察の方はいかがだったでしょうか?」

「初日ですがとても勉強になっています。ルドフェインさんをお待たせしてしまったようで申しわけありません」

「お気になさらずに、私の本日の業務は皆さんを迎えて終わりですので」

「帰りが遅くなる時点で気にはなりますよ」

「ふふ、お気持ちだけで十分嬉しいです。そうだ、陛下より言伝を託されていました」

「言伝ですか、なんでしょう?」


 ルドフェインさんの表情からしてそう重要そうな話ではなさそうだが、日程の変更等だろうか?


「一言だけですが、『オカエリナサイ』と」

「『ええ、ただいま』……っ!?」


 あまりにも自然に返事をしてしまったが今のは間違いない。


「ご友人、今の言葉は何かの詠唱か何かで? オカエリナイ、タダマ……聞かない言葉ですな」


 周囲の者達の顔を見る、今交わした挨拶の意味を理解できていない。

 間違いなく今のは日本語だ。


「『何者だ、あんた。何を知っているんだ!?』」


 堪らず日本語で質問をする。

 久しぶりに発音する日本語だが意識していれば特に問題なく使える。

 言語翻訳の憑依術は無意識下では相手から感じられる魔力に刻まれている言語を選択し発している。

 聞き取る際も同様で複数の言語を同時に翻訳することもできるらしい。

 だが今ルドフェインさんの言語は途中に日本語が混じっていた感触がある。

 厳密に言うならば憑依術が翻訳をできなかったという違和感だ。


「……? ええと、申しわけありませんが何を言っておられるのか……」


 ルドフェインさんは困惑顔、言われてみれば今のはガーネ国王から託された言葉だった。

 発音もどこかぎこちなかった、恐らくは言われた言葉をそのまま繰り返したのだろう。


「――そういえばガーネ国王からの言葉でしたね。取り乱して失礼しました」

「いえ、差し支えなければ今の暗号の意味を教えていただけないでしょうか? 陛下は言えば伝わると言っていたのですが、その驚きようですと何か失礼なことを言わされたのではないかと……」

「――おかえりなさい、そういう意味ですよ。地球(こちら)の故郷の言葉です」


 その発言を聞いて他の事情を知る者も今のやりとりの意味が理解できたようだ。

 ガーネ国王は地球、それも日本語の挨拶を知っている。

 地球人なのか、それとも地球に詳しい物だろうか。

 いやそれよりもこちらに対し、日本語の挨拶を使用したということを焦点にするべきだろう。


「そうでしたか、それにしてはとても驚いていたように見えましたが……」

「突然故郷の言葉で話されたら驚きもしますよ、ガーネ国王もひょっとして黒い髪と黒い瞳を?」

「いえ、ですが貴方の容姿を聞いて今の言葉を贈るようにと」


 ふむ、こちらの特徴と言えば黒い髪に黒い瞳だ。

 その情報からこちらの出身が地球、日本人ではないかと推測したと見て良い。

 ただ確証はない、だからこうやって試したのだろう。

 だが地球を知らない者ならばこの風貌を魔族のようだと多くの人は言う。

 賢王ならば地球人と結び付けるよりも先にそちらを疑うはずだろう。

 既にルドフェインさんを通してこちらの魔力を見抜いたか?

 しかしそれだけでは確信はできないだろう、さらに調べを入れるはずだ。

 だが試みたのはこちらが地球人かどうか、それが意味することを考える。

 ガーネ国王はターイズに地球人がいることを知っている存在だということだ。

 現段階でそれを知っているのはメジスの法王、ターイズの国王、そしてラーハイトだけだ。

 マリトはこちらの素性は伏せて交渉を行っていた。

 事情を本国に持ち帰ってから考えると言っていたエウパロ法王が帰国中にガーネに立ち寄り事情を説明したとは考えられない。

 消去法でガーネ国王はラーハイト筋から情報を得ていると見てよい。

 もしくはラーハイト本人……いやそれはない。

 ラーハイトは以前までメジスの司祭として潜り込んでいた、そんな長期間国を空けていては怪しまれるどころの話ではない。

 そもそもターイズでこちらの姿は目撃されている。

 風貌を伝えた時点で確信し、既にアクションを行っていておかしくない。

 わざわざこんな回りくどい真似をするとも思えない。

 ラーハイトに関係し、国王としての立場を持つ存在。

 うわお、嫌な予感しかしねぇ。

 ……ここはこちらも揺さぶるべきか。

 これらの行動を行う理由はこちらを試そうとしているからだろう。 

 どうやらルドフェインさんには事情を話していない、明確な悪意や敵意を持っているわけではなさそうだ。

 

「ガーネ国王も随分悪戯好きな方のようですね」

「え、ええ。割と茶目っ気の多い方です」

「それではこちらからも軽い挨拶を返事で贈っても良いですか?」

「それは構いませんが……あまり長い言葉は正しく伝えられるかどうか……」

「短い言葉なので大丈夫ですよ」


 ルドフェインさんに日本語での言葉を伝える。

 ルドフェインさんは複数回それを反芻し、こちらの確認を取り屋敷を後にしていった。


「しかし……これはどうしたもんか」

「随分と深刻顔だな、今のやり取りで何かわかったのか?」

「ああ、多分だがガーネ国王とラーハイトはなんらかの形で繋がっていると見て良い」

「何っ!?」


 イリアスとミクスの表情が疑問顔から騎士と冒険者の顔になる。

 その切り替えの早さは護衛としては頼もしい限りだ。


「ご友人、詳しく聞かせてもらっても良いかな?」

「ああ、そうだな」


 先程の考えを伝える。

 こちらを地球人であると推測した理由がターイズに地球人がいることを事前に知っていた可能性があるという旨を話すとそれぞれが納得いった顔で頷く。


「なるほど、ご友人の風貌は確かに珍しい。伝承や噂だけで判断するのならばまずは魔族である可能性を疑うでしょうな」

「だが先程の問答は地球人であるかどうかの試し事、魔族よりも地球人であることを先に連想できるのは陛下とエウパロ法王、そしてラーハイトだけと言うことだな」

「人の説明を今推理したみたいに語ってくれるな」

「見事に尚書様の言葉を反芻していただけでしたね」

「ウルフェでもおなじこといえます」


 目を逸らす二人、先程頼もしいと思った感情を返せ。


「それで、ご友人は最後にルドフェイン殿になんと?」

「こっちも試すような感じの言葉だな。簡単な挨拶程度しか知らないのであれば首を傾げるだろう。意味を理解したのであれば何かしらの行動をせざるを得ない言葉だ」

「なるほど、それでなんと?」

「……その考えを一切する気の無い姿勢、嫌いじゃないぞ」

「えへへー」


 皮肉の通じない照れ顔のミクスを前に軽く溜息。

 分かりやすく説明しないこちらが悪いんでしょうかね、そうでしょうね。


「ルドフェインさんはこの後の仕事はもう無いと言っていたが間違いなくガーネ国王に報告に行くだろう。こちらの伝言を理解できれば夜にでも動きはある」

「それでなんと?」

「――秘密だ」

「いけず!」

「秘密にしている場合か。ミクス様と私は君の護衛なのだ。相手がどう動くかを把握するためにも君の行動は理解しておく必要があるのだぞ」


 そこを言われると耳が痛い、結構強気なコメントだったから怒られそうで言いたくないんです。


「どうせまた突拍子も無い言葉を伝えたのだろう、そこまで怒らないから言うんだ」

「怒るのは確定なのか!?」

「こういう状況で君がやらかすことは大抵私の胃が痛むことだと理解しているからな!」


 むう、これはうやむやにできそうな空気ではないようだ、諦めよう。

 へへ、イリアスもすっかり馴染んでくれちゃって……嬉しいやら悲しいやら。


「訳すると……、話がある、だ」

「わざと濁すな、ハキハキ言え」

「……()()()()()()()()。だ」

「よし、そこの石床の上に正座しろ。全部説明が終わるまで満杯の酒樽を膝に乗せてもらおうか」

「待て、それは拷問の一種だ。護衛対象にする行為じゃない」


 目が据わっているイリアス、やはり怒っておられるご様子。


「ご友人、兄様からろくでもないことをしでかすから注意するようにとは言われておりましたが……でもそんなご友人も好きです!」

「そんな突拍子過ぎる告白とかいらないからイリアスを止めて!?」

「ししょー、たいへんですね」

「ウルフェまで声が乾いてるだと!?」


 とりあえず酒樽を抱えさせられることは避けたが正座のままで説明を始める。


「ラーハイトは魔王のために動いていたと言う事実は間違いがない。そんな奴が報告する相手は魔王、もしくはその配下の魔族と考えられる。ラーハイトが協力する目的は魔族にしてもらうこと、この約束を取り付けられるのは魔王本人かその腹心である魔族に限られるだろう?」

「そうだな、続けろ」

「あ、はい。こちらを地球人だと試してきたことからガーネ国王はラーハイトの持っている情報を手に入れていると推測できる説明もしたな?」

「ああ、つまりガーネ国王はラーハイトの上に存在する魔王、もしくは魔族であると?」

「いや、そうだとしたらこちらへの対応が食い違う。ラーハイトはこちらに刺客を送り込んで来たんだ」


 ラーハイトがこちらを排除しようとしていたことも当然耳に入っているだろう。

 だがガーネ国王はこちらの風貌を聞いてさらに試してきた。

 ラーハイトから詳しい話を聞いていればそんな真似はしなくても確信に近いものは感じるだろうにだ。


「ラーハイトの上にいる奴が本の回収を命じていたのは間違いない。本を解読されれば魔王に不利益な情報があるんだからな」

「ふむ、君が本を読めると言う話をメジスに流した後に君が襲われるようになったわけだ。ガーネ国王が魔王に忠誠を誓う魔族ならば君を敵視しているだろう。このように悠長に試すことは違和感を覚えるな」

「ラーハイトの上司が魔王だとしてもだ、ラーハイトには顔を見られている、だからわざわざ試す必要がない。ラーハイトに確認させれば一発だからな」

「そうだな……いやそうなるとおかしくないか? ラーハイトの報告を知っていながら、ラーハイトに命令を下している立場ではない。食い違っているではないか」

「食い違ってないんだよ、ガーネ国王はラーハイトの上司からその話を聞いた可能性が高い。だからターイズに地球人がいると言う情報を知っていながらこちらの詳しい姿を知らないと見て良い」

「……そこまでとなると確かに関係としてはしっくりくるな」

「そしてこれらの情報を得られたガーネ国王はラーハイトの上司と同格の存在と見て良いだろう。それで考えうる限りで最も大きい存在はと言えば魔王になるわけだ」

「むむぅ……」


 頭の中で整理を始めるイリアス。

 ミクスもうんうんと頷いているが頭の上に疑問符が浮かんでいるように錯覚する。


「魔族である可能性も否定はできない、とは言え日本語を理解できるレベルにもなれば魔王を生み出した湯倉成也と関係のある魔王の方が濃厚だと思ったわけだ。とは言えハッタリレベルのいちゃもんだ、当たっていれば良いな程度のな」

「たいそうな理由を説明しておいて結局は確証がないのか!?」

「こっちの伝言が理解できなくても地球人であることは把握できているだろう。理解できた場合についてだが、こちらをわざわざ試してくる程の魔王であれば興味を持って接してくるだろう。魔族であっても近い行動は取る。もしも違うのならばこちらの勘違いを正そうと行動する可能性が高い、他国の使いに魔王扱いされて困らない王様はいないだろうからな」

「ご友人、最後のまとめだけで良かったのではないか?」

「全部説明しろと言われたから考察から全部話したんだよ、簡潔に話せと言われたら今のまとめだけを言っていた」


 色々な思考をすっ飛ばして結論だけ言うとイリアスは怒るんだ。

 長文になろうとも仕方ないじゃないか。


「結局、これからどうすれば良いのだ?」


 人に散々説明をさせておいてこれからのことを丸投げしてくるイリアス。

 この辺はいつになっても変わらない気がする。


「それはガーネ国王次第だな。黒ければ今日中にでも、白ならば明日辺りに何らかの行動を見せてくるだろう。そんなわけで今日から護衛には気合を入れてもらおう」

「君と言う奴は……」


 ひょっとすればもう少し長い時間を用いて様子を見てくる可能性もあるだろう。

 などと言う考えはすぐに否定されることになる。

 その日の夜、再びルドフェインさんが屋敷に訪れてきたのだ。


「夜分遅くに申しわけありません。今から皆さんをガーネ城にご案内しろと国王陛下からのご命令がありました。お手数ですがご同行お願いします」


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