ゆえに戯れる。
再び同規模の魔物の軍勢が現れた。その金の魔王の報告に驚きを隠せなかった各国の代表ではあったが、マリトは即座に次の防衛策を実行に移した。
こちら側には無限の兵を生み出す『殲滅』の力を有する『蒼』がいる。ならばユグラから同等以上の力を与えられている黒の魔王にも、軍勢を追加する手段があるのではと予測をしていたのだ。最初の侵攻の際に、魔物達を使い捨てのように動かしたことからもその可能性は十分に伺えた。
黒の魔王は現状、同胞の体を奪っている状態。かつての力は行使できずとも、セレンデ魔界に何かしらの手段を残していたのだろう。マリトは大防壁を主軸として兵を展開し、対応を行っている。
魔物の軍勢の動きは相変わらず、兵士に対して意識を向けずに大防壁の先を目指そうとしているらしい。大防壁による地の利と、碧の魔王の魔物によって戦況は圧倒的にこちらが有利。しかしこれまで観測できていなかった魔物が一斉に現れた情報からして、今侵攻してきている魔物を殲滅しても次があるのではと懸念は尽きない。
「大防壁は土魔法で造り出したもの。規模だけならば歴史上最高峰だけど、強度自体は特段に秀でているわけではないのよね。持久戦に持ち込まれたら、どこまで保つか分からないわよ」
「魔物の動きはその持久戦を望んでいるかのような動きらしいな。補強は難しいのか?」
「ある程度はできると思うわ。でもあれは大地の魔力を利用したものだから、既に大防壁周囲の大地の魔力は枯渇寸前。外部から魔力を補う以上、資源としての魔力には限りが出てくるわ」
現在マリト達は大防壁の耐久性と今後の防衛についての会議をしている。現状俺にできることは、この体の中にある特異性に馴染むことだ。
デュヴレオリから受け継いだ大悪魔達の特異性、しかしこれらの能力を行使するには俺の体は人間寄り過ぎる。それでもいくつかの特異性は即座に新たな戦力として役立ちそうではある。
「流石に腕は伸ばせない感じ?」
「そのようだ。体に骨の認識があるのがどうも邪魔なようだな」
現在のところ、行使できそうなのは『轟く右脚』、『駆ける左脚』、『嗅ぎ取る鼻』、『聡き耳』、そして『頤使す舌』の五つだ。どれもデュヴレオリや他の大悪魔達が行使していたものと比べ劣化してはいるが、使い所は十分にあるだろう。『蒼』と共に特異性の行使を練習しつつ、体の調子を確かめる。
「部位を変化させる両腕やお腹や背中、そもそも存在しない部位の角と尻尾の特異性は難しそうね。気合で生やせない?」
「元から生えていないからな……」
「そうよねぇ……。私は一回切断した事あるから、その辺を再生させる感覚とか掴んでるんだけど……」
ただ両足が強化されたことで、地上での移動速度は確実に向上している。何より『嗅ぎ取る鼻』と『聡き耳』によって五感が数段研ぎ澄まされているのは大きな変化だ。現時点でも俺は前よりも数段強くなった実感がある。しかしこれでは足りない。失ったデュヴレオリの役割を果たすには、あまりにも微々たる変化だ。
「児戯に興じる程度には回復したか。エクドイク」
「――碧の魔王か」
姿を現したのは碧の魔王とニールリャテス。現れた方向からして、マリト達と話をしていた後なのだろう。マリトと比べれば常に不機嫌そうな印象ではあるが、今は若干機嫌が良さそうにも見える。
「なによ『碧』。これだってちゃんとした特訓なんだから。児戯扱いは酷いんじゃない?」
「児戯を児戯と呼んでなにが悪い。それともその方法を続けていけば、覚醒状態の魔族に勝てるのか?」
「それは……」
碧の魔王は俺に視線を向ける。頭の先からつま先まで、まるで品定めでもしているかのような目だ。そしてそれが終わると僅かに口を歪ませて笑った。
「悪くはない。当初は望みが薄いと思っていたが、良い形に転んでくれたようだな。デュヴレオリといったか、良き散り様だ」
「っ、貴方ね!?」
「褒めているのだ。エクドイク、貴様は可能性を手にした。覚醒状態の魔族達を倒す可能性をな」
「……どういうことだ?」
こちらの質問に答える前に、碧の魔王は植物を発生させ、俺達の前に展開させていく。植物で作り出された地図、ところどころに俺やイリアス達を模した駒も用意されている。
「『黒』は軍略などには頼らない。全てが力押し、今後の展開の予想も容易だ。奴は正面から大防壁を突破するつもりで、ほぼ無尽蔵とも言える軍勢をぶつけ続けてくるだろう」
「……対策はあるのか?」
「魔物は無限でも、案内役は有限だ。『黒』本人には魔物をこちら側に届けることができない。それができるのは魔族である者達と『色無し』だけだ。今は姿が確認されていないが、この第二波も魔族達が誘導しているはずだ」
力を失っている黒の魔王がセレンデ魔界から動くことは自殺行為にも近い。手足となる魔族と無色の魔王さえ倒せれば、魔物の誘導は止まるという話か……。
「『色無し』ってかなり強いんでしょ?勝てるの?」
「勝つ以外の道はない、心配するだけ無駄だ。俺が『色無し』とぶつかる時、『黒』は魔族を使い、こちら側に最大限の被害が生まれるように動くだろう。貴様にはその時、魔族の一体を正面から抑えてもらう」
「だが今の俺では……」
「相手は覚醒状態の魔族だ。魔族になって日も浅い貴様では差があるのは当然だ。ならば貴様も覚醒状態へと辿り着けば良い」
「俺も……覚醒状態に……」
オーファローと対峙して理解したのは、奴が俺よりも遥か先にいる存在だということ。魔族として完成されており、自身の力を完全に制御できている。俺と奴とでは立っている場所が違うのだと、嫌というほど思い知らされた。
「何を言い出すかと思えば……。それができれば苦労はないわよ!そもそも貴方にそれが叶えられるなら、どうしてニールリャテスは覚醒状態に至れてないのよ!?」
「コレは条件を満たすことができない。コレがこの先何千何万年と生きようとも、覚醒状態に到ることはない」
「えへへ……」
「なんで照れ臭そうに笑っているのよ……。じゃあエクドイクは条件を満たせるっていうの?」
「そうだ」
「だ、断言するのね……」
「ただし、覚醒状態へと至ることの意味を貴様は身を以て知ったはずだ。あの化物と同じように成り果てる覚悟はあるか?」
世界の理にも干渉し、理外の力を操るオーファロー。奴に勝つためには、同じ次元に辿り着く必要がある。そうなった自分の姿をイメージし、その周囲を想像する。
俺は既に魔族、人間であることを止めている。だが人間性だけは残していた。だからこそ周りの皆は俺を人として見て、人として扱ってくれていた。理外の力を手にすれば、その視線や対応も大きく変わることになるだろう。
「――可能性があるのであれば、俺はそれを掴み取る」
それでも迷う必要はない。
「悪魔に託されたからと、他人を理由に立ち向かえる話ではないぞ」
「確かにそれもある。俺はこの力をデュヴレオリに託された。その意思に報いなくてはならないと思う気持ちもある。だがこの戦いに加わっているのは、紛れもない俺の意思だ。俺はこの戦いに勝ちたい。そのために俺ができることは何でもやりたい。デュヴレオリの意思は俺を立ち向かわせる理由ではなく、立ち向かわせてくれる力だ」
「自らが忌避される怪物になろうとも、か?」
「それで俺以外の皆が、無難に生きられる人生を手にする機会を得られるのであれば」
俺は同胞の影響を大きく受けてきた。同胞が日頃から口にしていた『無難に生きたい』という言葉、それを理解していく上で同じように願うようになっていた。
だが俺は同胞の姿を見て、ただ無難に生きたいと願っているわけではないと知った。同胞はそうありたいと願いつつも、自分よりも他者を優先していた。その意味を、同じ願いを持つようになってから理解できるようになっていた。
もちろん自分が波風を立てずに、平穏に生きられればそれも良い。だが世界は自分一人ではない。目を見開けば、そこには多くの者達がいる。彼等、彼女等は俺の人生に関わりを持ち、その人生を彩ってくれる大切な存在だ。
そんな彼らにこそ、平穏無事に生きて欲しい。そんな幸せな皆の側で生きていたい。それが同胞の願っている『無難に生きたい』の意味なのだと、俺は解釈している。
「エクドイク……」
「心配することなどないさ。俺にはお前がいる。俺が何に成り果てようとも、お前は決して俺を俺としか見ないだろう?」
俺は『蒼』と共に生きると決めた。この戦いに勝たなければ、その意思を貫くこともできないのだ。人間に恐れられ、憎まれる魔王として生き続けなければならない『蒼』。そんな彼女が幸せに生きられる未来のためならば、俺が何に成り果てようとも問題はない。俺は俺であれば良いのだ。
◇
黒の魔王は少しの休息を取った後、再び戦線の様子を眺め続けている。自身は言葉を投げかけることしかできない、なれば事の顛末だけは最後まで見届けよう。そんな意思が伝わってくる。
ただ休息の間、こちらには一切話しかけてこなかったわけで。ちょっと寂しい気持ちもある。
「やぁ、退屈そうだね」
「代わり映えのない光景な分、精神衛生上はよろしいんだけどな」
当然のように意識の隙間に介入するように、黒の魔王の心象世界の中に現れる湯倉成也。こいつも結構な暇人なんだよな。暇人でなきゃダメな奴なんだけども。
「知った顔が倒れていく光景を見るよりかは、魔物が無駄死にしていく光景の方が良いってことかな?」
「……まぁな」
現状黒の魔王陣営で失われたのは、セレンデ魔界の魔力が数パーセントと元魔族のイドラクのみ。対する人間陣営サイドはそれなりの死者も出ているし、魔族に対抗するための勇士達も倒れている。
ウッカ大司教やマーヤさんは救助されていたようだが、ここにいてはその安否も不明だ。そしてデュヴレオリの最期も……そのことを考えるだけでも心のなかにドス黒い感情が溢れそうになる。
「何もできないのは歯痒いかい?」
「それでもコレが最善だ。そう割り切るしかないさ」
もしも自分が向こう側にいれば、何かしらできることはあったかもしれない。ザハッヴァ達を理解し、イリアス達の戦いを楽にする策の一つや二つ、必ず思いついてみせただろう。だがそれ以上にこの男を動かさないことの方が大事なのだ。この湯倉成也が動けば、それだけでこの戦いは終わってしまう。『俺』が無力になることで、この男が動かないのであれば、これ以上の成果はないだろう。
「大局を理解していても、つらいものはつらいだろうに」
「そりゃあな。それで、お前はそんなつらくて苦しんでいる男相手に嫌がらせか?」
「ただの様子見さ。妙な勘が働いてね」
その言葉に表情が強張りかけたが、どうにかいつものままでいられた。黒の魔王の心の中ということもあって、肉体的な負担がないのが幸いしている。
湯倉成也は自らの才能を増殖させ、あらゆる分野に精通している。その中にはハークドックのような危機察知能力もあれば、リティアルのような観察眼もある。自身の思考の外にある要因に気づくことができる才能の一つや二つ、所有していて当然なのだろう。
その湯倉成也の才能が『俺』を無意識的に警戒させている。俺が何かを企んでいると、気づかれているのだ。
「気難しい魔王だからな。機嫌を損ねない方が難しいだろ」
「程々にね。彼女が君の排除を願うのならば、それくらいは叶えなきゃならないんだ。新しい体を用意するのは色々と手間が掛かるし、リスクも増える」
それでもこの男はこちらの思考を読むといった能力は使ってこない。こうして姿を見せてくるのは、『黒の魔王の邪魔をするな』というメッセージを届けているだけに過ぎないのだ。まあ、暇人なのは間違いないわけだが。
「黒の魔王が恨んでいるお前を頼るほど、俺が嫌われるかどうかってとこか」
「頼られるのは嬉しいことなんだけどね。妥協の末というのは虚しさも残るよ」
今はもうこいつと最初に出会った時の状態とは違う。様々な情報を得て、じっくりと考える時間が得られた。今はもう、心の内を読まれてはいけない状況だ。
湯倉成也はいつでも『俺』の心を読める。いつでも読めるからこそ、今すぐに読もうとはしない。その気にさせないギリギリの範囲をかい潜る必要があるが……この様子ならばまだ大丈夫だな。
「へぇ、これが『黒』様の心の中か。『黒』様の心情が殺風景というよりは……ユグラ、君がその男を収納する空間を設けたからかな?」
「――どうして君がここにいるのかな?オーファロー」
いつからこの場所に入り込んでいたのか、そこには現実世界となんら変わりのない姿をしたオーファローがいる。ここは黒の魔王の心の中なのだから、実際には精神だけを飛ばした状態なのだろうが……戦闘向けの魔法はからっきしだったオーファローにこんな真似ができたのか。まあ理に干渉するといった戦い方をする男だ。ここに入り込んだ手段も似たようなものなのだろう。しっかしセキュリティが甘すぎて心配になるレベルだな、おい。
「それくらい心を読めばすぐだろう?好奇心だよ。君の次に現れた異世界転移者、つまりはさらなる次世代の要因ともなる存在だ。この戦いが終わった後に、『黒』様はその男を解放するんだろう?その時にどうするか、見極めておこうと思ってね」
湯倉成也が相手だというのに、オーファローは臆することなく話している。湯倉成也の方はというと……わりと不味い状況だ。具体的に言うと、家の中に入り込んだ害虫を見つけたような眼をしている。
「君は自身の好奇心を満たすために、『黒』の心の中に踏み込んだ。そういうことで良いんだね?」
「そうだね。でも手は出さない方が良いんじゃないかな?僕は君のさじ加減で死ぬことになるだろうけど、そうなればそれは君が行う『黒』様への妨害行為だ。対価を用意できたとしても、コレ以上の溝は作りたくないだろう?」
オーファローを見る湯倉成也の眼には感情が籠もっていない。それでも即座に手を出さないということは、オーファローの言葉にも一理があると考えているからだ。
ここでオーファローを殺すことは、湯倉成也が人間側に得を与える行為に等しい。『俺』との約束を破ることにもなるし、黒の魔王にさらに嫌われる理由ともなるだろう。
「まぁ、ここに長居することが不満だというのであれば、一つ提案をさせてもらおうか。ユグラ、『統治』の力は使えるんだろう?僕とその男を仮想空間に案内してもらえないかな?」
「そして彼に君と同等の力を与えて、戯れてみたいと」
「ああ、心を読んでくれたんだ。そうだね、その男が君と同じように理に干渉できるようになったら、どれほどになるのか興味がある。次世代を超える力を発揮するのか、それとも君には遠く及ばないだけの凡夫なのか」
「その願いを聞き届ける必要が、僕にあると?」
ああ、くそ。このオーファローとかいう奴、わかってて言ってやがるな。湯倉成也の判断基準はとても曖昧、黒の魔王絡みになっても簡単に覆りかねない。『俺』がこの反則級の存在を戦いに加わらせないためにこうしていることを理解し、この状況を維持したかったら自分の余興に付き合えと言わんばかりだ。
もちろんこのまま放置すれば、オーファローは殺されて湯倉成也と黒の魔王の関係は悪化する。そこまでくれば湯倉成也はもう『面倒だ』とこの戦いを切り上げかねない。それではこちらの計画が総崩れになってしまう。
「ええい、お前ら、人様の心の中で険悪になるな!湯倉成也、『俺』なら構わない。黒の魔王の機嫌を損ねるくらいなら、そこの狂人の遊びにくらい付き合ってやる。どうせ精神面以外の安全は保証してくれるんだろ?」
「……仕方ないね。良いよ、オーファロー。素直に『黒』の命令に従っている報酬として、場所くらいは提供してあげるよ」
ほんと、人様の心の中で何を睨み合ってるのやら……。湯倉成也が指を鳴らすと、周囲の景色が入れ替わる。『金』の『統治』の力で創られた仮想世界に飛ばされる感覚に似たものを感じたが、こいつほどになると移動も一瞬なのか。
周囲の景色はどこを見ても水平線が見える平野。オーファロー相手に細部まで意識してやるわけがないだろうと言わんばかりの、即興で創りましたって感満載の世界だ。
「そういや俺の意識って今は黒の魔王から切り離されてるんだろ?向こうは大丈夫なのか?」
「問題ないよ。君の魂そのものはまだ彼女の中だ。ここに移したのは魂ではなく意識だ。その辺の細かい説明を知りたいなら、頭に直接流し込むけど?」
「遠慮しておく。それで、さっきの会話の流れで大体は理解しているが……どうするんだ?」
「君を一時的にオーファローと同格にする。理に干渉する手段、知識を与える感じだね。あとは好きに遊ぶといいさ」
湯倉成也は魔王達に特殊な力を与えた。その力の大本は理に干渉する術からくる。肉体はさておき、擬似的に魔王に並ぶ力を得るってことか。普段ならワクワクの一つでもするところなのだろうが、あいにくとこの状況下でわぁいと喜べるほどお気楽にはなれない。
「肉体とかはどうするんだ?流石にこの体は一般人のままだろ?」
「力を得れば、いくらでも補強の仕方はあるよ。魔族の体かどうかなんて、オマケのようなものさ。それにこの空間で死んだ場合は自動的に復活する。命の心配はしなくていいさ」
「ピンとこない次元の話だな。そもそも『俺』は争い事とか不向きなんだがなぁ……」
「それなら大丈夫さ。ユグラと違って、僕は元々争い事に向いているとは言えない人種だったからね」
オーファローの表情はほとんど変わらない無愛想っぷりだが、声色がやや楽しげなのは伝わってくる。この魔族にとって、主である黒の魔王の目的などはどうでも良いのだろう。こいつの奥底にあるのは、自身の昇華。自らの在り方を追求し、その先に進み続けたいという欲望だ。
「オーファロー、期限に付いてだけど――」
「僕が飽きれば、それで終わるよ。そこの男の心が壊れそうになった場合は止めても構わない」
完全に玩具である。だがこの狂人が大人しく黒の魔王と人類の戦いのピースとして収まってくれるのであれば、多少の負担は背負ってやるべきだろう。
それに黒の魔王の駒に干渉できるまたとない機会だ。これを利用してイリアス達に少しでも楽にさせるよう仕込めるものは仕込んでおこう。
「君の方から他に何かあるかい?」
「要はオーファローが納得するように頑張れば良いだけだろう?」
適当に準備運動をしながら肉体の感覚を確かめる。空腹感などがないのがちょっと不気味ではあるが、普段通りに動く分には問題なさそうだ。その理に干渉する術を与えられた先にどうなるかはさておき。
「話が早くて助かるなぁ。ユグラよりも未来から来た異世界人……君がどれほどの差異を生み出せるのか、とても楽し――」
「そうだね、これは余興だ。君にとっても、こちら側にとっても。君が目指す悪の姿の底、見せてもらうとしようか」
「……へぇ、良い眼だね。ああ、これは想像以上に得られるものがありそうだ……っ!」
そもそもこの男に対しては、抱いている黒い感情もそれなりにある。『私』も息抜き憂さ晴らしのつもりで戯れさせてもらうとしよう。
黒の魔王が知ったら怒な案件である。
後に「あーセ○ムって良い商売なんだなぁ」と主人公から得た知識に納得するユグラであった。
コミカライズの三巻の書影が公開されましたね。ニ巻に比べ、元気そうなウルフェで何よりです。