そんなわけで、手は壁で拭きました。
巨大スクリーンに映し出されているのはセレンデで起きている現在の状況。それを腹にたまらない菓子と炭酸飲料を両手に眺める。大事になっている光景を、これでもかと他人のふりをして眺める行為はなかなか癖になる。
「映画鑑賞って趣味はこういうもんなのかね。なるほど、娯楽にはなるわな」
死霊術を禁忌として扱っているのはユグラ教と世界であり、ユグラ本人は死霊術を禁忌魔法としては扱っていなかった。ユグラ曰く、多少の才能と努力だけで扱えるようなものを禁忌とすることに意味はないとのこと。
つってもだ、この魔法が脅威であることは間違いのない事実だ。それは過去の歴史が証明してくれている。
この魔法の真価が発揮されるのは、戦場ではなく市街などの人口が密集している場所だ。自分が襲われると自覚している兵士でさえ不覚を取るのに、ただの一般人達がアンデッド相手にできることなど限られている。
「おうおう、これは子供にゃ見せられねぇな。ハハハッ!」
アンデッドは死霊術の影響を受けた魔力を帯びており、その魔力は死者を新たなアンデッドとして目覚めさせる。
ヒルメラは死霊術を施したアンデッドを街中のあらゆる場所で同時に解き放った。アンデッドは近くにいる人間を襲い、新たなアンデッドを生み出す。その連鎖はアンデッドの数が増えるほど加速していく。
一時間もしないうちに、セレンデの国はパニックに陥り、どこからでも悲鳴が聞こえてくる素敵な光景になった。この流れはラーハイトがスピネを滅ぼした時と同じ、まあ奴の施しなんだから似てくるのは仕方ねぇよな。
「ラーハイトが生きてりゃ、楽しそうな顔で眺めてたんだろうなぁ」
厳密に言えば、ラーハイトが接触しようとしていたのはヒルメラではなくその母親であるロサ=セレンデだった。
現セレンデ王に夫を殺され、自分の娘がそいつらの子供と王位を争うような境遇の女だ。それこそ手段を選べないことを理解してラーハイトは接触したわけだ。
だがラーハイトはヒルメラの方に可能性を見出した。四歳児相手に何を見出してるんだこの変態って言いてぇが、実は同感だったりする。
ヒルメラはノーデリクトランリスと同じ類の賢い賢いお子様だ。復讐と保身に必死だった母親と違い、大局を見据えることができていた。だからラーハイトから死霊術の手解きを受けることを躊躇わなかった。
「ま、自分の兄に執着し過ぎて暴走する辺り、ガキはガキだよな」
あまりそのへんを責めるのは俺自身にも刺さるものがあるからな、ここは適度に応援させてもらうことにする。つってもこのまま被害が広がられるのも、この世界を監視するものとしては悩ましいところではある。
まあ陸続きの隣国が浄化魔法を得意とするメジスだし、最悪の場合でもセレンデが全滅程度で済むか。
「お、もう避難誘導が始まってんな。スピネの時と比べりゃ随分と対応が早ぇな」
街で騒ぎが起きてから暫くして、セレンデの兵士達が動きを見せた。大盾を持った兵士がアンデッドの進行を妨害し、軽装の兵士達が市民を安全な場所へと誘導を行っている。
死霊術で作り出されたアンデッドの厄介な点は、その再生力にある。死体に死霊術の魔力が馴染んでいる間は常にアンデッドとして生まれ変わり続けているような状態だから、斬ったり潰したりする程度じゃ倒すこともできない。
直接的な対処法はその死霊術の影響を受けた魔力をどうにかするしかない。浄化魔法でその効果そのものを打ち消すか、莫大な威力をもって魔力そのものを飲み込んでしまうかだ。前者は事前からの習熟が必須だし、後者はあまりにも燃費が悪い。
だからセレンデの兵でアンデッドを駆逐することはまず不可能。奴さんらはユグラ贔屓のメジスを最も警戒していた国、ユグラ教お得意の浄化魔法に長けている者がほとんどいないからだ。
ただスピネのことは記憶に新しいのか、死霊術の攻撃を受けた時のプランを考えていた奴がいたようだ。この迅速な対応はそうでなければ説明がつかない。
「手腕は認めるが……具体的な解決策はあるのかね?」
セレンデは名前こそユグラによって名付け直された国だが、その本質は他の大国とは大きく異なる。それは国としては他国よりも優れている点であるはずなのだが、今回はそのせいで取り返しのつかないことになる可能性もある。
「少なくともセレンデ王は他国に助けを求めようとはしない。王子がどのように干渉するか、そのへんがポイントってところか……ま、頑張ってくれや」
スクリーンに映し出している映像をあの男の周辺へと切り替える。そろそろあの男にも現状が伝わる頃合い、やはり見るのならば物語の主人公に視点を移さなければ始まらないのだろう。
◇
街が異様に騒がしいと、エクドイクとデュヴレオリが様子を見に行ったのと入れ替わりでヌーフサの部下の兵士が伝令にやってきた。
国の至るところでアンデッドの襲撃が発生、市民を次々と襲いながらその数を増やし、現在もその被害を拡大しているとのこと。ヌーフサはこちらに事態の収束に向けての協力を求めてきたのだ。こちらは即座に了承し、ヌーフサが臨時拠点として利用している屋敷へと向かった。
「よく来てくれたな。我関せずと捨て置いてくれても構わなかったのだがな」
「それができれば、この国で嫌な気分になることなく帰れていたさ」
今回のアンデッドの襲撃、もちろん『蒼』の仕業ではない。当人は先程からとても不満げな顔をしている。不死者を統べる魔王としては、自分のお株を奪われるような襲撃なのだから無理もない。
「念の為に確認するが、ワシェクトをそちらで匿っている……ということはないな?」
「音信不通なのか」
「事件が起こる少し前からな。だが今回の騒動を起こしたのはワシェクトではないだろう」
「ヒルメラか」
ヌーフサは無言のまま頷く。チサンテとユミェスはヌーフサの監視下にあり、下手な行動は取れない。やけになって部下に死霊術による撹乱を命じた可能性もなくはないが、あの二人が部下にそれだけの力を預けるとは考えられない。
ヌーフサとワシェクトは本来の目的であるヌーフサを王にするという目的を達成したばかり、その目的を水泡に帰すような真似はしない。そうなれば消去法でヒルメラとなる。
状況を整理すれば、ラーハイトが最初に接触していたのはヒルメラの方。チサンテとラーハイトの取り引きを、自分が死霊術を得た事実を隠す囮にしていたことになる。
「ヒルメラ王女は最初からこれを狙っていたのか?」
「それは違うよ、イリアス。少し前まではヒルメラは自分がラーハイトと接触した過去を隠し通すことだけを考えていた。使うつもりなんて微塵もなかったはずだ。ヒルメラの願いはワシェクトに王になってもらうことだった。ヒルメラ自身も裏では色々と手を回していたんだろうね」
しかし二日ほど前にワシェクトの使いからの報告で、セレンデ王はヌーフサを次期国王にすることになったと連絡がきた。つまりは正式な手段でワシェクトを王にする道は潰えてしまったのだ。
「ユグラの星の民、お前はヒルメラの行動をどう捉える?」
「ヒルメラはワシェクトに強い執着心を持っていた。ワシェクトには全てを手に入れて欲しい、そうでなければならないといった一種の強迫観念にも近い。多分ヒルメラはこのセレンデを力で支配し、ワシェクトに捧げるつもりなのだろうね」
「……そこまで分析しておきながら、この事態は防げなかったわけか」
「可能性の一つとしてしか考慮できない内容だからね。正直君らの誰がラーハイトと接触していても不思議じゃなかったわけだし」
王子達は誰もが秘密を抱えており、それらを必死に隠していた。それを探るにはそれらを守る力を削ぎ落としていかなければならず、優先順位を決めた際にチサンテとユミェスが先になってしまっていたのだ。
その優先順位を決める要因にヒルメラの干渉があったのは事実。純粋にヒルメラが他の王子よりも上手く立ち回っていたのが今回の結果に繋がってしまっている。
「否定はできんな。そして理由については自分も同意見だ。ワシェクトにはヒルメラを抑えるように言っていたが、あの弟の妹に対する溺愛具合を甘く見過ぎていた」
「ワシェクトは現在安全な場所に監禁されていると考えていいだろうね。無事だろうけど……下手な説得をしてヒルメラの気分が変わればその限りではないかな」
「ユグラの星の民、お前にはワシェクトの救出とヒルメラの無力化を頼みたい。元々チサンテの派閥にいた兵どもでは民達を避難させることで精一杯だからな」
「それは構わないが……君は逃げないのかな?ヒルメラが一番殺したいのは君だろう?」
ヒルメラの目的はセレンデの機能を完全に麻痺させることだ。国民に恐怖を刷り込ませ、抵抗する力を奪った上で、武力による支配を行おうとしているのだろう。
その中で民に支持されるような存在にいられては困る。ヒルメラは間違いなくワシェクト以外の王族は根絶やしにするつもりだろう。特にこのヌーフサは何が何でも殺したい存在ということになる。
「そうだろうな。街がパニックになる前にアンデッドの群れの襲撃を受けたくらいだ。おかげで父上を助け出すこともできなかった」
「セレンデ城は既に占領されているってことか」
「自分はこのまま救助活動を続ける。自分がここに残って指揮をしていた方が、避難させた民達が襲われるリスクも減らせるからな」
ヒルメラも現在セレンデの兵を動かしているのがヌーフサであることは理解しているはず。ヌーフサが本国から逃げようとすれば、アンデッド達に追撃を行わせようとするだろう。
そうなれば徒歩で避難をしている国民達は無事では済まない。限られた兵力では守りながらの逃走なんてできるはずもない。
「分かった。それじゃあ行動に移ろう」
イリアスとウルフェ、ミクスを連れた四人でセレンデ城へ。他の仲間達は街にいるアンデッドの遊撃を行わせることにした。
アンデッドの群れを突破しながらの行動だけならば、単純な戦闘力に秀でたイリアスとウルフェ、そして斥候役のミクスがいればなんとかなるとの判断だ。
こうしている今でもアンデッドの数は増え、兵士では手がつけられなくなるのも時間の問題だろう。死霊術は術者を倒しても指揮を失うだけで脅威が残り続ける以上、アンデッドそのものを迅速に処理しなければならない。そうなると集団戦に秀でているエクドイクやラクラには街で戦ってもらうしかないのだ。
「既に広域に渡って被害が発生しているようですからな……。『蒼』殿の力でどうにかできないのですかな?」
「ラーハイトの時のように干渉を受けたら自爆するって感じじゃないだろうし、死霊術を上書きすればアンデッドを無力化できると思うわよ。ただそれをまとめてやる場合、私の魔力でセレンデを満たさなきゃならないんだけど……」
「……色々と取り返しがつかなくなりそうですな」
「第二のクアマ魔界はいらないものね。一匹ずつ丁寧に頑張るわ」
死霊術を昇華させた『殲滅』の力は広域における影響力を誇る。自身の魔力の届く範囲ならば即座に死霊術の効果を適用できる強力無比な力だが、その分汎用性に乏しく誰かを守りながら戦うような局面では扱いづらい。
「尚書様、メジスへの救援は……」
「頼む。自分が言える立場ではないだろうが、それでもだ」
こちらの返事よりもヌーフサが頭を下げる方が早かった。セレンデ王の安否が不明な今、ヌーフサが頭を下げるということはセレンデそのものが頭を下げていることに他ならない。
仮想敵国として距離を置いていた隣国に助けを乞うことの意味を、ヌーフサが理解してないなんてことはないだろう。それでもヌーフサはこうすることが最善なのだと判断し、迷わずに行動しているのだ。
「わ、わかりました!」
「ラクラはメジスへの連絡後ハークドックとマセッタさん達に合流して事情を説明しておいてほしい。今後メジスとの連携の判断はマセッタさんに任せると。『蒼』とメリーア、ベラードは既に遊撃で戦闘しているエクドイクと合流してサポートを。『紫』は国境付近で待機させている悪魔達を使って、避難をしている人達の支援を。君自身の安全を確保できたら、デュヴレオリにも遊撃に出てもらいたい」
役割を決め、行動へと移る。もう日が沈んでいるというのに、空が明るい。パニックの影響で火災が発生し、それが空を明るく染め上げてしまっているのだ。
消火活動を行うはずの兵士達はアンデッドから人々を逃がすだけで手一杯、火の手はどんどん広がっていくだろう。
横目で見たイリアスの顔は険しく、今すぐにでも救助活動をしたい気持ちと成すべきことを成さねばならないという気持ちの板挟みになっているのだろう。
「急ごう。ヒルメラを止めないことには事態は収まらない」
「……ああ」
イリアスが『私』を担ぎ上げ、走り出す。目的を意識させることで抱えている不安などを紛らわせる方法は効果的だが、それは彼女達だけに限った話ではない。
こうして冷静に判断をしようとしている『私』でさえ、内なる気持ちに揺さぶられそうになっているのを必死に誤魔化している。
いや、少し違うか。これは抑え込もうとしているのだ。この事態が起きてから元に戻ろうとしている『俺』を。
変わるべきだと理解しておきながらも、変わってしまえば取り返しがつかない結果になると予感してしまっているからだ。
◇
「おいおい、何が起こってんだよ……」
妙に外が騒がしいと思ったけど、まさかアンデッドが人を襲っているとは。一体いつからここはクアマ魔界になったのやら。……これ愚痴ったら『蒼』の魔王が嫌そうな顔をしそうだな、気をつけとこ。
アンデッドの動きそのものはそこまで脅威じゃねぇ。肉体の限界を無視した怪力は油断ならねぇが、理性が全くない獣の攻撃と同じだ。フェイントの一つもない単調な攻撃なんざ、どうやったって当たるわけがねぇ。
「つっても、俺じゃあ殺しきれねぇんだよなぁ……」
旋棍で頭を叩き潰そうが、こいつらはすぐに再生して動きを再開しやがる。奥の手でも使えば再生不可能なレベルにまで破壊できるかもしれねぇんだが……既に視界に入っているアンデッドを処理するだけで魔力切れになるっての。
「ハークドックは動きを止めることに専念して!トドメは私が刺すから!」
マセッタは俺が転倒させたアンデッドに浄化魔法のエンチャントを施した剣を突き刺している。刺されたアンデッドは再生することなく崩れていく。
「なー、それ俺の武器にも付与できねぇの?」
「打撃武器に付与しても内部まで浸透しにくいでしょ!毎回お腹や口にそれ突っ込みたいの!?」
「……よし、任せたわ!」
ぶん殴ってるだけでも武器が臭くなってるってのに、そんなことしたらこいつを捨てることになっちまうからな。
「ハークドック、少しずつ場所を移して!アンデッドとの戦いは陣地を制圧していく感じでやらないとダメなの!」
「はいよ!」
塵に還ったアンデッドも、近くに他のアンデッドがいればその魔力の影響で復活しちまうことがあるとかなんとか。だからこうやってアンデッドを倒した場所では他のアンデッドと戦わないように戦場をコントロールする必要がある。『蒼』の魔王は全滅させても即座に全部復活できるとか言ってたしな、ほんと死霊術ってやべーわ。
「きっと代表さん達は事態を把握して行動に移っているはずだわ!私達もこの場所の安全を確保したら合流しなきゃ……!」
「だよな。しっかし元気になってようやく暴れられるって思ったのに、相手が死人って……なんだか締まらねぇなぁ……」
この場所にはセレンデ兵の救援が来てねぇ。そりゃあ街中がアンデッドの襲撃を受けてんなら、自分の足で逃げられる連中を優先して助けるよな。そして余裕ができたらようやくこっちに……できるんかね、余裕。
前蹴りで目の前のアンデッドの膝を砕きつつ、背後に迫っていたアンデッドを右腕の悪魔で掴み、他のアンデッドへとぶん投げる。
怪我を恐れねぇってのはすげーけど、だからって攻撃を避けねえってのはただのバカだ。怪我明けの運動にゃもってこいだけどな!
「ちゃんとしてよね!ここには逃げられない人達だって大勢いるんだから!」
「おう、ここにいる爺さん婆さん達にゃ話し相手になってもらったりして世話になってんだ。アンデッドになりゃ今より元気にはなるだろーが、おもしれー話が聞けねぇのは嫌だからなぁ!」
マセッタが狙われねぇように、前に出てアンデッドの注意を惹きつけながら暴れる。ここまでのろまな連中じゃ、本能様もあくびをしちまいそう――ッ!?
「――っ!?」
いきなり真横をアンデッドの頭部がすり抜けた。突然のことに反応が遅れ、慌てて振り返るとマセッタは咄嗟に結界を展開し、飛んできた頭部から身を守っていた。ほっとするも、すぐに前を向き直してアンデッド達の奥にいる奴に視線を向ける。
「新鮮なアンデッドなら触っても汚れないかなって思ったけど、既に皮膚がグズグズだね。思ったよりも上手く投げられなかったなぁ」
敵、それもこの事態を起こした連中の仲間だと判断。迷うことなく探知魔法を使用する。うっかりお誘いしたくなるような可愛い子ちゃんに見えたが、どうやら男らしい。
「ム、ムールシュトさん?」
「やぁ、マセッタ。それと君の方は初めましてかな、ハークドック」
ムールシュトって呼ばれた男は可愛い顔で笑っていやがる。確かマセッタが以前言ってたな、王女様の護衛かなんかで兄弟にべた惚れしてる変な男がいるって。ここまで見た目が女の男ってのも珍しいが、それ以上にこいつは……。
「何の用だって……聞くのは野暮だな。そんだけ殺気を滲ませてりゃ、誰でも分かるぜ。目的は俺達のようだが……恨まれるようなことをした覚えはねーぞ?多分だけどな」
「念の為だよ」
「……は?」
「以前彼が君の話をしたことがあってね。頭の回転はちょっと悪いけど、予想を良い意味で裏切ってくれる信用のできる男だって。だから念の為に潰しにきたんだ」
彼ってのは……兄弟のことか。褒められてるんだろーが、微妙に喜びきれねー評価だな、おい。つーか、兄弟が評価してたからって理由だけで俺を潰しに来たってのかよ。
間違いねぇ、こいつはギリスタみてぇにどこか頭がぶっ飛んでやがる人種だ。姐さんのような真面目な騎士様の風体だが、変人特有の気配が全く隠せていねぇ。
「マセッタ、俺がこいつの相手をする。ガンガン手を出してくれ」
「普通そこは手を出すなとかじゃないの!?」
「普通の喧嘩や殺し合いなら、そう言うかもしれねぇが……こいつはユグラの落とし子だ」
「っ、……そう、わかったわ」
奴がどんな才能を持っているかは分からねぇが、それだけは確信できた。多分守りに関する才能だとは思うが……なんか妙だ。本能様が警戒している時点でやべー奴なのは分かる。だが本能様が警戒しているのは奴の落とし子としての才能じゃない……?
ウルフェやアークリアルのような落とし子を相手にする時よりかは、どっちかと言うと姐さんのような素でやべー系の相手をするような……そんな感じだ。
何にせよ、こいつはここで倒しておくべき敵だ。本能様じゃなくて、俺の勘がそう言ってやがる。
ハークドックと戦うと大体どういう奴なのが見極められちゃうし、入院続きでムールシュトに会えなかったのはムールシュト側にとってはかなりのラッキーだったりする。