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異世界でも無難に生きたい症候群【完結】  作者: 安泰
決着編

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そんなわけでやってくる。

ちょっとややこしい話です。あとがきにザックリまとめます。

「ししょー!おはようございます!」

「ああ、おはようウルフェ」


 朝から元気なウルフェの挨拶、久し振りの再会もあってその元気良さは何割増しにも感じる。こうしてイリアスの家で朝食の準備をしていると、ターイズに帰ってきたんだなってしみじみ思うな。


「ししょー、なにかお手伝いしたいです!」

「それじゃあ食事を並べるのを手伝ってくれ。そう言えばハークドックが来てないな、飲み潰れでもしたのか?」

「はい、昨日ラクラと飲み比べをしていました。その最中にエクドイクさん達が来て、パッタリ!」


 ああ、『紫』に追い出された『蒼』とエクドイクは『犬の骨』で飯を食ってきたって言ってたな。トリンじゃ『蒼』の気配だけで素早く安全な位置に移動できていたハークドックも、大量の酒を飲んでいる状況じゃ対応力が落ちていたのだろう。まあゴッズはあの強面とは裏腹に優しい奴だし、それなりに介抱してもらっているか。

 そんなことを考えていると家主が姿を現した。昨日の不機嫌そうな様子は微塵も感じられない。


「おはよう二人とも」

「おはようイリアス!」


 この二人の顔を見るのは久し振りなのだが、そう感じさせないものがある。特訓の成果はそれなりに聞いているのだが、日常における性格面には変化がないようでなによりだ。これで二人とも修行僧のような性格になっていたら、ラクラをさらに甘やかしてしまうことになりかねない。

 なお当のラクラ本人は食事を始めてから暫くしてようやく現れた。トリンから帰ってから仮眠を取り、『犬の骨』から帰って真っ先に酔い潰れて寝ていたというのに、まだ眠そうにしているとは。


 朝食を食べたあとはターイズの城にある会議室に集まり、セレンデ攻略に向けての作戦会議を始めることになった。マセッタさんが用意した通信用の水晶を使い、『金』やエウパロ法王、ゼノッタ王にタルマ王もこの話し合いを聞ける状態になっている。


「さて、これまでの展開は既に報告してあると思いますが、ネクトハールが隠れ蓑としていた拠点のうち、トリンにあったものを全て制圧することに成功しました。残すはセレンデ本国に潜伏している首謀者達を追い詰めるだけ。これも各国の代表の協力あってのこと、先に礼を言わせてもらいます」

『そんな前置きはいらん。御主が話題に入らず長々と挨拶すると違和感しかないからの』

「……一応各国の代表を前にしてるんだ。挨拶くらいしておかないとだろ」

『うちの者はそこまでこの水晶の通信を維持できるわけじゃないからなぁ、ガーネ王と同意見というわけではないが端的に話してもらえると助かる』


 ゼノッタ王と『金』はマリトとは違った意味で気軽に接してくる。もうちょい一国の王としての威厳をだな。


「……そうですか。コホン、ネクトハールを追い詰めるにあたってクリアすべき課題がいくつかあります。まずはツドァリという落とし子の存在です。隠密に長けた才能を持ち、その者が関与した建物や場所などは常人には発見することすらできません。現にトリンでも同様の措置を取られた地下室、拠点などがありましたが、そのいずれもツドァリが作ったとみられる特殊な鍵がなければ近づくことすらできませんでした」

『その時点で割と詰んでないか?トリンにある隠れ家とセレンデにある隠れ家とでは鍵の使い分けくらいしているだろう?』


 ゼノッタ王のまともな意見を聞くと不思議な気分になるのだが、このおっさんは無能ってわけじゃないんだよな。ただ普段甘えてくる系おっさんなのでギャップを感じてしまうだけで。


「鍵は拠点ごとに別の物が使われていることは事実ですが、複数の鍵を入手したことである法則が見えました。ツドァリ当人はおそらくマスターキーのようなものを所持していると考えられます」

『マスター……?』

「それ一本で自分が作った全ての錠前を開けることができる鍵のことです。ソライドから回収した鍵を調べたところ、ある特殊な魔力の波長に対応する仕組みがあることがわかりました」


 マスターキーの仕組みを含め簡単に説明していく。鍵には四つから五つの波長を受け止める細工が施されていた。それが拠点や地下室に施されている構築のピンに反応し、視認できるようになる仕組みだった。そして複数の鍵に対応した波長を調べていくことで、共通する波長がいくつも見つかったのだ。

 つまりツドァリは事前に用意した複数の波長からランダムに抜き出したものを組み合わせ、隠密性のある拠点を作り出しているということになる。完全に異なる波長にした方がより優れた隠密性を持つのだが、用意された波長は共通するものばかり。このことが意味すること、ツドァリは一本で全ての隠れ家に入ることのできるマスターキーを保有していると考えられる。


『よくはわからんが、そのマスターキーとやらを奪えば奴らの拠点の何処にでも攻撃を仕掛けることができるというわけか?』

「はい。そしてトリンで回収した鍵を解析し、大賢者バラストスに一本の鍵を作ってもらいました」


 この鍵は回収した鍵が対応する魔力の波長の全て、そしてそれらの波長の作り方から他に使用されているだろう波長複数に対応させている。ツドァリの癖を見極めながら用意したマスターキーに類似する物というわけだ。波長の精度に関しては大賢者バラストスが保証してくれている。


『トリンでは使われていない魔力の波長を予測したということじゃな。しかしその予測と違う魔力の波長を使われていた場合、その鍵は機能しないのではないかの?』

「そこに関しては自信がある。ツドァリの癖はきっちりと読み解いている」


 隠し拠点に施された仕組みを詳しく調べ、ツドァリの性格などを色々と分析したことでこの鍵の精度には自信が持てる。メーカーが作った物ならいざしらず、個人が作った物にはその個性が宿る。ツドァリの鍵にも当人の性格が読み取れるような要素がいくつも見られたのだ。


『そういうところは本当に化物じみておるの……』

「次に考えるべきはネクトハールの周りにいる落とし子の直接的な妨害。現段階で最も警戒すべきはアークリアルと呼ばれる男です」


 メジスの聖騎士、その団長である実力者のヨクスを圧倒したデュヴレオリ。そのデュヴレオリが防戦一方になるほどの相手。その実力は人類最強と呼んでも間違いないだろう。


『聞けば聞くほど恐ろしい男だな。どうにかできるものなのか?』

「倒せと言われても多分無理です。ただアークリアルが対応できる相手には限りがあります。時間さえ稼げれば残った者達でネクトハールへと辿り着くことができるでしょう」


 伝説の勇者と同じレベルの戦闘センスを持つ相手を、策略の一つや二つで倒せるとは思っていない。だがアークリアルの体は一つ、一度に全ての人数に対応することはできない。ここで重要なのはアークリアルにどれだけの戦力を投入すべきなのかということだ。少なければ足止め役が倒されたあとに追いつかれ、多すぎればネクトハールやラーハイト達に割く人員が足りなくなる。


『しかしネクトハールを抑えたからと言って、アークリアルが止まるわけではないのだろう?』


 これは相手の大将を討ち取った時点で終わるゲームではない。当然ネクトハールやリティアルを倒せばアークリアルも敵討ちを狙ってくるだろう。


「ネクトハールを始末したあとは総力を上げて逃げます」

『総力を上げて逃げるなんて初めて聞いたな……』

「アークリアルの戦闘能力は規格外ですが、その他の才能に関しては常人のそれと同じです。こちらには逃走技術に秀でた仲間もいますので逃げるだけならどうにかなるでしょう」


 アークリアルがデュヴレオリを殺しきれなかったことについては、アークリアルが手加減をしていた可能性も大いにある。だがエクドイク達と対峙した際、アークリアルは近くに隠れたエクドイク達を見つけ出すことができなかった。同じ落とし子であるモラリやヤステトが捕まっているのに見逃したということは考えられない。この結論からして、エクドイクやデュヴレオリのバックアップがあればアークリアルから逃げることは十分に可能だと判断できる。


『しかし厄介な落とし子は他にもいるんだろう?大丈夫か?』

「他者の肉体に魂を移すことのできるラーハイトについては、殺さずに麻痺毒などで無力化できればどうにかなります。本人の戦闘力もずば抜けているというわけでもありませんし」


 もっともラーハイトが迎え撃つために準備をしている可能性を考えれば、楽に勝てると言った甘い話はまずないだろう。上手く立ち回られると相応の時間を稼がれてしまうことにもなる。

 ゼノッタ王ばかりが質問をしていたが、ここで別の声が上がる。トリンの国王、タルマ王と繋がっている水晶だ。


『その者についてはあまり知らないが、元モルガナのギルドマスターであったリティアル=ゼントリーなら知っている。トリンにもその名声は届いていたからな。人の素質を見抜く真眼と呼ばれた冒険者。その観察眼は人の心を読むことさえできるのではとも聞いている』

「リティアルとの読み合いは正直こちらの方が不利です。相手の考えを読めるのはお互い様でも、あちらには年季がありますからね」


 読み負けないようにと策略を色々と考えたが、結局はリティアルの想定内に終わりそうな予感ばかりだった。なら読み合いという勝負をすること自体無駄ということになる。


『随分と弱気ではないか。それとも、それでさえ問題がないと格好つける準備かね?』

「たった今格好つけられなくなりました。ありがとうございます。対策はありますよ」


 別に『俺』は日本で負けなしだったわけじゃない。むしろトータルで見れば負けた経験の方が多いくらいだ。だから自分よりも格上、手の内を見透かしてくるような相手も初めてじゃない。

 リティアルは生まれた時から相手の本質を見極める才能に恵まれていた。立場や実力の差による敗北はあっても、読み合いで完敗したようなことはほとんどないだろう。つけ入るならばそこだ。


『そうか。ならば構わない。そもそも勝つ算段がないのであればこうして話し合いの席を設けることもなかっただろうがな』

「ええ、セレンデ攻略については色々と準備を進めています。皆さんにこうして参加していただいたのはことの重大さを共有したいがためですから」

『……ふむ、続けたまえ』

「まずはネクトハールが何を目的としているのか、そこから話しましょう。湯倉成也が後世に残した特殊な存在、落とし子と呼ばれる存在を集めて何をしているのか」


 ネクトハールは碧の魔王の下を離れてからリティアル、ラーハイト達と接触した。協力者を得られたということはその者達にとってメリットがあることを示せたからだ。


『目的か。落とし子を集めるその過程、各国の王政を転覆させようとしていたことは知っているが、その先については色々と気にはなっていた。よもや選民思想による国造りというわけではあるまい?』

「ええ、それはないですね。落とし子の才能は自らの子供に継がれるわけではありませんし。ネクトハールが調べているのは落とし子として『どのように変化させているのか』という点、湯倉成也の技術を手に入れることです」

『――ユグラの御業か。確かに欲したいと思うものはいるだろうな。だがそれも過程なのだろう?』

「はい。ネクトハールはかつて碧の魔王が見つけた落とし子を追い、魔物を使ってターイズを襲いました。魔族が存在しているという事実を露呈してでも、その落とし子の才能を欲したからです」

『その才能とは?』

「理に干渉する才能です」


 マリトの方に僅かに視線を向ける。この部屋には暗部君もいるがそのことは伏せつつ説明をしなければならない。


『ピンとこないな。理に干渉するとはどういうことだ?』

「湯倉成也は魔王達に超越した力を与えました。さらには蘇生魔法を始めとする多くの禁忌魔法を生み出しています。理に干渉する才能というのは、この世界に存在する魔法をそんな次元へと昇華することができるようになるものと思ってください」

『禁忌と呼ばれる蘇生魔法を編み出すことができる才能というわけか……』

「それは魔法に限った話ではなく、個々が持つ才能にも干渉できたのでしょう」

『……つまりはこういうことか?ユグラはその力を使って才能を生みだしていったと』


 落とし子という部分的な才能を持つ者達を多く生みだした背景、それが物語っているのだ。何故才能を一つ一つ小分けにするような真似をしたのか、ではないのだ。才能を一つ一つ増やしたからこそ、同じように未来の人間にその才能が開花する仕様を思いついたのだと。


「はい。湯倉成也は最初から万能の人間ではなかった。湯倉成也が持ちうる才能は全て、その一つの才能から生み出されたものです」


 もしも湯倉成也の全ての才能が生まれた時から存在しているのであれば、湯倉成也は日本でも歴史に名を残すような偉人として存在していただろう。しかしそんな事実は存在しえない。同じ日本人として生きているが、歴史の教科書でそんな奴の名前を見つけたことは一度もない。

 才能を隠していた?それもない。魔王のような世界にとって傍迷惑な存在を生み出すような奴が、それだけの才能を持ちながら人間社会の中で自重していられるはずがない。湯倉成也は異世界転移する前までは普通の人間に過ぎなかったはずだ。

 考えられるのは湯倉成也がこの世界に転移した際に、何らかの手段で才能を増やす術を手に入れたということ。それが理に干渉する才能だ。湯倉成也は自らの才能を増やし続け、はては勇者と呼ばれる存在にまで化けたのだ。


『その理に干渉する才能は全ての始まりとなる才能、その才能までも未来の落とし子に託したということなのか?いや、できることなのか?』

「湯倉成也は何者かにその才能を与えられたのでしょう。だから才能を増やすという発想が、他者に植え付けるという発想が出てきたのです。与えられたものならば、同様に他者に与えることもできると。理に干渉する才能もその一つでしかないと」

『一体どのような存在が……』

「その件についてはまた今度。ここで最終的な目的について説明すると、ネクトハールは蘇生魔法を使って魔王になろうとしています」


 それが碧の魔王に対する劣等感からきているのか、それとも対抗心からきているのか、ニールリャテスから聞いた話だけでは詳しくはわからない。だがネクトハールが碧の魔王と同等以上の存在になろうとしていることは間違いないだろう。


『魔王……か……。その話が本当だとすれば、一刻でも早くネクトハールの目的を阻止しなくてはならないな。猶予はどれほどあると考えている?』

「恐らくですが、ネクトハール達は既に蘇生魔法の構築だけならばほとんど完成させていると思います」

『な、なんだって!?』


 ゼノッタ王が面白い声を出している。そりゃあ阻止しなければならない蘇生魔法の開発が既に済んでいるとわかったら驚くよな。


「『俺』はかつて『殲滅』の力を与えられた蒼の魔王に関する書物を読んだことがあります。そこに記された内容は文字が読めないものでも、その力の劣化版とも言える死霊術を身につけることができました。これと同じで蘇生魔法にも類似した下位互換となる魔法が存在していると考えられます。そしてネクトハールの仲間には一人、魂の扱いに長けている落とし子がいます」

『ラーハイトという男か……』

「はい。ラーハイトの才能を調べれば魂に干渉する術を学ぶことができるはずです。ですがラーハイトはネクトハールの傍から離れ、各地で暗躍をしていた。つまり調べられる部分は全て調べ終わっていると考えられます」


 奴らは蘇生魔法の下地となる知識を早い段階で得ている。長い間碧の魔王の下で魔法の研究をしていたネクトハールならば、蘇生魔法の構築に手が届いていてもおかしくはない。ではどうして落とし子を探し続け、理に干渉する才能を必要としたのか。


『では何故奴らは魔王を生み出していないのだ?』

「そこは無色の魔王のおかげでしょうね」

『無色の魔王……ユグラによって世界を監視する為の存在だと聞いているが』

「無色の魔王は禁忌に触れた者に警告、及び処理を行う仕組みのような立場です。もしもネクトハール達が真っ直ぐに蘇生魔法を完成させようとした場合、無色の魔王がそれを妨害することになるはずです」

『ならば危惧する必要は……いや、そうか。そういうことか。理に干渉するということはそう言う意味も含めるのだな?』


 タルマ王の言葉に頷く。と言っても相手側にはこちらの様子は見えていないのだが。

 あの無色の野郎の話では湯倉成也は魔王達を一度殺した後、無色の魔王に世界を見張る役目を与えた。そしてその後自ら時空魔法に手を出して神様と呼ばれる存在によって殺されたと。

 つまるところ、湯倉成也は無色の魔王と言うシステムを生み出した後、そのシステムに反応しないように禁忌に干渉していたのだ。


「湯倉成也はこの世界の者達が禁忌に手を伸ばさないよう、無色の魔王という存在を用意した。無色の魔王は湯倉成也の用意した監視網に引っかかった者だけを処理する。ですがその監視網の抜け道となるのが理に干渉する才能です」


 無色の魔王は禁忌に触れたものをシステム的に感知し、その上で対象を処罰する。だがもしもそのシステムに検知されなければどうなるのか。無色の魔王はその力を自由に振るうことを許されず、自ら敵対行動を取ることができない。イラつく態度で挑発することが精一杯、システムに検知されない者が無色の魔王に攻撃されることはないのだ。


『ネクトハールが完全に研究を完成させた場合、無色の魔王という抑止力を無視した上で蘇生魔法を使えるようになる……というわけか』

「こちらに関してはどれだけ研究が進んでいるのか、判断のしようがありません。ですが、トリン側の拠点の防衛にアークリアルを投入しなかったことを考えると、そう遠くないと思います」


 リティアルは『俺』がトリンを狙うと読んでいた。それでもアークリアルをセレンデ側に残したのは何としてもセレンデにいるネクトハールを守り続けなければならなかったからだ。ネクトハールがセレンデを離れられない理由、それは研究が大詰めだからこそではないかと推測できる。


『うむむ……国を転覆させようとする者達だ。そんな者が魔王となり、魔界を生み出せば過去の歴史を繰り返すことになりかねんな……』

「ネクトハールやリティアルはさておき、ラーハイトはロクな魔王にならないと断言できますね」


 あいつは自分の目的の為ならばリティアルはもちろん、ネクトハールの寝首さえ掻くだろう。この世界で平和に暮らしている人達のことなんてさらに意識の外だ。


『――セレンデでラーハイト達が騒動を起こす可能性を考慮して、メジスでも聖騎士を派兵する用意を済ませておこう』


 このタイミングでエウパロ法王と繋がっている水晶から声が響く。普段聞く声よりも重々しい。ことの重大さを受け止めているのか、それとも他に何か……。


「聖騎士にはセレンデに存在する他の拠点の制圧もお願いしたいと思っていますが、可能ですか?」

『無論だ。ユグラ教として以上に、人として、世界に遺恨を残す新たな魔王が誕生することは阻止しなければならない。その為の協力を惜しむ理由がない』

「……ありがとうございます。ツドァリ対策の鍵の製法を後程伝えますので、複製の手配をお願いします」


 各国にとってネクトハールはテロを企てた魔族であり、要注意の危険人物でしかなかった。だが世界にとって決して見過ごせない脅威であることを認識してもらえたことで、取り逃がした場合も速やかに連携が取れるだろう。

 今回の会談ではセレンデの代表を加えなかった。自国の中で魔王となる研究をしていると知れば、自国の問題だからとこちらの準備を待たずに行動してしまうリスクがあったからだ。セレンデに着いたらまずはその代表と上手く交渉をすることから始めなければならないのだが……、ワシェクト王子のことを思い出すとちょっと心配になってくる。

 まあ今回も無事に各国の代表に共通意識を持たせることができたようだし、この調子で頑張っていくしかないよな。そんなことを考えていたらターイズ城の番兵さんが血相を変えて飛び込んできた。


「し、失礼します!陛下!大変です!」

「何事だ。今は重要な会議中だぞ!」

「そ、それが、魔王が……!」


 魔王がって……『金』はガーネにいて、『紫』と『蒼』は隅っこでこの会議に参加しているわけで……ということはまさか……。

 そんな嫌な予感を現実にしてやろうと言わんばかりに、番兵さんの背後からニールリャテスがひょっこりと顔を出した。


「あ、ここにいましたか!やっほー、ニールリャテスでーす!実は何とですね、現在この城に我が王が向かっておられます!なので早急にもてなす準備をしてくださーい!でないと私も皆さんも殺されちゃいますよー!ほんと、私も巻き込まれちゃうのでお願いしますー!」


 寝耳に水な発言のおかげで誰もが顔を引き攣らせている中、話を真面目に聞いていなかったラクラだけが欠伸をしていた。


・ネクトハール達は魔王になろうとしている。

・魔王になる蘇生魔法は禁忌で、使おうとすると無色の魔王が邪魔しにくる。

・無色の魔王はユグラの残したシステムに従って行動している。

・理に干渉する才能があればそのシステムに引っ掛からずに蘇生魔法を使用できる。

・理に干渉する才能を手に入れる為、ネクトハール達は落とし子を調べている。


・まとめると『無色の奴を無視して魔王になれるチートスキルを手に入れること』がネクトハールの目的です。

ややこしいね!

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― 新着の感想 ―
[一言] ずーっと疑問だったんだけど、湯倉は落し子を作って何がしたかったんだろう? どうやって…も疑問だけど… いずれ出てくるのかな?
[一言] 予想と全然違ったw
感想一覧
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