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そして準備は整う。

 使いの悪魔からの伝言で同胞とはガーネで合流することとなり、以前にも同胞が泊まっていた屋敷へと足を運ぶ。今ガーネには各国の代表がいるとのことで『蒼』は一緒に来ないようにと釘を刺された。

 当人は『クアマ魔界で魔物達の管理と調整があるから構わないわよ』と言っていたので、そうかと残して置いてきた。

 それにしても随分と騎士達が多い。怪訝な顔を向けられたがレアノー卿と玄関で出会えたおかげで特に問題なく中に入ることができた。


「同胞、いるか?」

「お、来たかエクドイク」


 扉を開くとそこには同胞達が皆揃っており、マリトやエウパロ、ゼノッタに金の魔王もいる。後は確か……ガーネ国大臣のルドフェインだったか。


「随分と部屋の権力密度が高いな。作戦会議か?」

「お前にしちゃあなかなかにユニークなことを言ってくれるな。作戦会議の方はお前を待っていた。それまでは雑談だ」

「雑談と言っても、それなりの話題だろう?」

「今の今までエウパロ法王と漬物について討論していた。ゼノッタ王も始める気になったようだ」

「驚くほどの雑談だな。しかし俺を待つ必要はなかったのではないのか?事後報告だけでも十分だと思うのだが」

「お前の報告を含めて考えないと二度手間だろう。クアマ魔界の魔物の数はどうだ?」

「そう言うことか。数としては何とも言い難いな。かき集めてはいるが防壁を攻めた時よりも大分少ないな。一万用意出来るかどうかだ」


 元々死霊術で作られたアンデッドを主体として戦っていた『蒼』にとって、クアマ魔界で生まれる魔物は戦力として数えられていなかった。見た目は似たり寄ったりでも魔物は一度死ねば復活させることができないらしい。

 デュヴレオリほどの高レベルな魔物になれば魂と呼べるものが存在するのかもしれないが、低レベルの魔物ではその存在を感知することすらできないらしい。

 ならば紫の魔王が操っていた大悪魔達を蘇らせられないかとも提案したが、自らの魔力で生まれた魔物以外には魔力による干渉は難しいらしい。都合よくはいかないようだ。


「戦力としてはどうだ?」

「下級の魔物となると悪魔と変わらないな。影に溶け込むこともできない分、扱いも難しい。ただ簡易的な武器なら持てる。弓や槍を持たせれば雑兵くらいには使えるだろう」

「騎士程にはないにせよ、一般兵士くらいなものか。それでも万単位ってのは大きい」

「ターイズの騎士は質ばっかり優先して、数が少ないからの。全部で一万にまるで届かぬとはどういうことじゃ」

「一人が最低でも十倍、最高でなら千倍は働く。十万を超える兵がいたところで負けるつもりはない」

「遊撃でさらに散らすじゃろうに」

「だからこその遊撃だ。敵の戦列に亀裂を生み出し、呼吸を乱す。他国には出来ぬ突撃を騎士達は迷わず行える。そして生還できる」


 大規模な戦闘になれば有利となるのは数が多い方だ。数が多ければ多いほど、正攻法の強さが滲み出る。奇策を取り入れたところで、余程の番狂わせを起こさない限りは飲み込まれるだけだ。

 だがターイズの騎士達の練度は高い。上位に存在する冒険者達レベルの存在が当然のようにひしめき合っている。


「聖騎士もそれなりには戦えるが、流石にターイズの騎士のように無茶はさせられんな」

「んじゃあ魔物の一部に関してはターイズの騎士達に扱いを任せても良いよな」


 そう言って同胞は指輪を取りだす。特に装飾のない、シンプルな指輪だ。その数は三つでそれぞれ色が異なっている。


「お、以前に話していたノラに造らせておった道具じゃな」

「ああ。通常の人間がこの指輪を通して思念を送ると、魔王みたいに魔物に大まかな指示を出せるって道具だ」

「片手間でそんな物を作らせていたのかい……?」

「仕組みは簡単だけどな。『紫』の指示的な思念が混ざった魔力が込められていて、指輪に魔力を込めるとその魔力が周囲に拡散して近くの魔物に伝わるって物だ。つまりは使い捨てだ」


 よく見れば指輪には『魔物に攻撃』『負傷者を回収』『撤収』とそれぞれ掘られている。

 細かい命令は出来ずとも、確かに指示を出せれば戦力として役立つだろう。


「負傷者の回収ってあるけど、具体的には?」

「倒れている人間を捕まえ、設定された拠点へ運搬を行う。余った分は魔物に攻撃指示と同じ行動だ。人間に妨害されると人間を降ろし、撤収するようになっている。この指輪にはガーネ本国が登録してあるな」

「設定地点は変えられるんだね」

「メジスで負傷した人をガーネまで運んでいたら力尽きかねないからな。ガーネに向かう者とメジスに向かう者にはそれぞれ別の奴を渡すことになるから気にしなくて良いぞ」

「撤収はどのように使うんじゃ?最後まで戦わせた方が良いじゃろうに」

「一つは勝利した場合だな。撤収させるとそれぞれの魔王の指示できる位置へ戻る。じゃないと放置になっちゃうからな。もう一つは敵が強く、予想以上に撤退を早く済ませた時とかだな。わざわざ無駄死にさせるよりかは一回撤収させた方が再利用できる。騎士達に持たせるから問題はないと思うが、万が一焦って全部発動させてしまった場合は『魔物に攻撃』を最優先に処理するように優先順位も設けられている。今は『紫』の悪魔だけだが、一部の騎士には『蒼』の魔物も動かせられるよう指輪を用意するつもりだ」


 仕組みだけで言えばそう難しくはない。騎士全員に渡すことは無理だとしても、隊長格にのみなら十分渡るだろう。

 魔物を使うことは俺も考えていたが、『蒼』の処理能力を考えると一箇所でしかまともに使えないと思っていた。だがこれなら各戦場に回すこともできるだろう。


「ところでその指輪を用意したということはだ。緋の魔王は軍を各地に散開させると読んでいるのか?」

「ええ、そう読んでいます。素人でも分かる定石無視ですけどね」

「伏兵として潜めるだけならまだしも、わざわざ複数に展開して各地へ侵攻か……何故そうなると?」


 ゼノッタの疑問も理解できる。兵を複数の隊に分けて戦場で展開するのは敵を望ましい形で迎え撃つためだ。一部を潜ませる伏兵も、自らの兵を余すところなく効果的に戦わせるための手段。

 だが同胞の言う緋の魔王の方針はその定石を無視している。少数精鋭ならまだしも、兵を悪戯に分断させれば各個撃破されるだけで終わるだろう。


「そう動くであろうと言う要素が幾つか見つかっています。理由に関しては緋の魔王の好みとしか言えませんが、ただそれを押し通せる何かはあると思います」

「つまり、それでも勝てる方法があると?」

「魔王にはユグラナリヤの与えた常軌を超えた力がある。多分はそれが状況を打破するためのものかと」


 緋の魔王の力……。『蒼』には『殲滅』の力、紫の魔王には『籠絡』の力、金の魔王には『統治』の力がある。それらは通常の魔法とは異なる特異な力。そしてそれは当然緋の魔王にも与えられているのだ。


「『闘争の緋』、『緋』に与えられたのは『闘争』の力じゃな」

「詳しくは知らないんだったよな?」

「うむ。一応使用したのを一度だけ見たことがある。じゃが具体的な効果はいまいち分からんかったの。まあ使った相手が『碧』じゃったからな――」


 話によれば魔王達がユグラの下で魔王としての力を学んでいた時、碧の魔王と緋の魔王が意見の対立後、一度だけ戦闘にまで発展したことがあったらしい。

 その際に紫の魔王と『蒼』も巻き込まれ、三人の魔王は碧の魔王に瀕死の重傷を負わされた。


「多分じゃが、身体能力の向上とかじゃろうな。だが相手が悪い。『碧』の強さはそれこそ異次元じゃからな。ユグラや『黒』、『色無し』側の域にいるとも言える」

「それだけ聞くと緋の魔王はパッとしないんだよな」

「そうは言うがの。ユグラが仲裁に入った時、全身傷だらけで這いつくばりながらも『緋』だけは『碧』を睨んでおった。それだけでも十分に凄まじい男じゃぞ」

「先ずはその力の本質を理解することが必要になるな。まあそれまではマリトの指揮に期待するとしよう」


 同胞はこれまでの話を大まかにまとめてくれた。ユグラ教の通信技術を各戦場の後方に用意し、マリトとエウパロがその情報を共有し、マリトが指示を出していくこととなっていた。

 各国の代表の中で最も盤面を把握でき、最善手を選べる者としては妥当な人選だろう。


「しかし策を用いるのならば、同胞も共に控えていた方が良いのではないか?」

「個人的に相手を嵌めることは得意だけどな。戦術になってくるとド素人だ。マリトに戦術指南を受けながら緋の魔王の打つ手を読み切ろうとは思ったが、正直知識不足過ぎる」

「そうだね。筋は悪くないからあと五年学べば形にはなるだろうけど、軍略はちょっと無理っぽいね」


 意外、と思うことは良くないことだろう。同胞の強みは相手の心を読むことに特化している。だがいくら心が読めたとしても、個の力だけでは何かを成し遂げることは難しい。そこに俺やイリアスと言った戦力が加わり初めて驚異的な存在になり得るのだ。


「では同胞はどう動くのだ?」

「こっちはイリアスと一緒にちょこちょこ戦場を動き回る予定だ。現地でしか掴めない感覚もあるからな」

「ターイズの騎士達と同じで遊撃ということか。確かにイリアスやウルフェの戦力は遊撃向けとも言えるが……」

「『紫』と『蒼』には基本裏で魔物を動かしてもらう。『金』はガーネ王としての責務を全うだな」

「そうじゃな。妾の力は集団戦では役に立たんからの。魔物の数も少ないしの」

「むしろいたのか」

「うむ、『紫』の悪魔の作り方を真似ての。遊びがてら城の一室に魔力を満たして魔物を生み出してみたのじゃ」

「ああ、何故か突如出入りを禁止された宝物庫の一つですね。ガーネ城でなんてことをしているんですかこの王は」


 ルドフェインが金の魔王を白い目で見ている。驚きすらしていないのはどういうことか気になるところではあるが、想定の範囲内ということなのだろうか。


「一応聞くが、戦力としてはどうなんだ?」

「驚くほど戦闘に向かぬ魔物でな。下手をすると御主が互角に殴り合えるの」

「そいつは弱いな」


 全員が頷く。それで良いのか同胞。俺も頷いたが。


「数も十に満たぬ。じゃが意外と使い道はあるやもしれん。後で見せるとしよう」

「おう、人手、魔物手はいくらあっても多過ぎることはないからな」

「俺と『蒼』はクアマ魔界で準備を進めるが、どう動けば良い?」

「クアマ魔界からメジスやガーネまでの移動ルートはクアマ経由か山脈越えがいるだろう?『紫』の魔物は現在ターイズとガーネの国境付近、メジス魔界に集結させている。だが『蒼』の魔物は潜伏には向いていないだろうし、早い段階である程度の数をメジス魔界の方に移動させておいてくれ」

「分かった。伝えておこう。そうだ、戦闘が始まってからの連絡手段はどうする?」

「そっちには通信用の水晶を持たせたラクラを付ける。こっちにはミクスに持たせるから随時連絡は出来るだろう」


 ということはラクラと一緒に戦うことになるのか。……いや、意識しても仕方がない。こと魔物の殲滅に関してはラクラの実力は俺以上に期待ができる。強力な力を得たと受け止めておくだけにしておこう。


「うう、私も尚書様と一緒が良かったです……」

「諦めろ、適材適所だ。第三陣営としての役割は裏方で戦争の支援をしつつ、緋の魔王の考えを読み取ることだ。そうなるとガーネ、メジスそれぞれに観察力の高い奴が必要になる。この中で一番物事を見ることができるのはお前だ」

「ミクスちゃんじゃないんですか?」

「考える力も考慮すれば圧倒的にミクスだが、今回は気づくことが先決だ。そのことに関してはラクラの方が高いと見積もっている」

「絶妙に悪く言われている気がするのは気のせいでしょうか!?」


 ラクラ、確かにお前には何かをしながら考えることは不向きだが、既にメジス側で戦う俺にいたっては適材かどうかさえ意識されてないことを忘れるな。

 だがそれも仕方ない。俺の観察力は敵の強さを計ることには長けているが、その相手の思考についてはまるで読めない。それができればもう少し『蒼』を怒らせずに済むのだが、精進の仕方をそのうち聞かねば。


「侵攻まであと一ヶ月あるかどうかだ。準備は怠らずにやっていこう」

「同胞はこの後どうするつもりだ?ガーネの方に残るのか?」

「いや、ターイズに戻る。『紫』の魔具作成やノラ達の様子も見ておきたいからな」

「では妾も一緒に行くかの」

「せめて分身を送ってください。戦争間近で国を出る王がいますか」


 ルドフェインが金の魔王を窘める。怒りの表情はないが、つくづく視線が冷たい。側近とはここまで感情を殺す者なのか……参考になる。


「政治は分身体でもできる。しかしの、尻尾を撫でてもらう喜びは本体でなければ満足に味わえぬのじゃ」

「では終わるまでおあずけにしておいてください。悪友さんもよろしいですね?」

「わかった」

「わかられた!?おのれルドフェイン!」

「おのれと言いたいのは私です」


 同胞もルドフェインとは争いたくないらしい。厄介な相手を見極められる同胞が素直に避けるということはやはり相当な手練れ……。


「そうだ同胞。ジェスタッフの方はどうする?」


 ジェスタッフは既にクアマ魔界の一部を浄化し、小規模な集落を建設している。リオドの冒険者を始めとした人員をかき集め、その開拓の速度は目を見張るものがある。

 だが魔界の浄化には浄化魔法に特化した者が大勢必要となる。緋の魔王の攻撃に備え始める以上、新たな領地の確保は難しい。暫くは建築が主体となるのだろう。


「ある程度戦闘の出来る冒険者は流してもらうが、ジェスタッフ自身はクアマ魔界で建国作業を進めてもらう。流石にクアマ魔界にまで侵攻されることはないと思うけどな。どの道ある程度の魔物はクアマ魔界で管理するんだし、ついでに守りを固めて置いて貰おうか」

「そうだな。景観が少々物騒になるが、その辺は我慢してもらうとしよう」

「日夜魔物に囲まれての生活ともなると、精神的にきつそうだよな。ジェスタッフならなんとか対策くらい考えるだろ」


 その後も幾つか細かい点を確認し合い、話し合いは進んでいった。俺は書記を任され、話し合った内容を複数の羊皮紙にまとめていき、各代表に配ることとなった。

 一歩離れた位置で観察していると分かることもある。軍事関係の話になるとマリトやエウパロが主体となって話すが、話の進行を取り持っているのは同胞だ。

 各国の代表も我を主張せず、協力すべきだと理解をしている。そしてその潤滑油として同胞の存在が大いに役立っているのだろう。

 同胞もそれを理解し率先して舵取りをしている。技能だけに頼らず、自らの立場をも利用する。やはり同胞から学べることはまだまだ多いと実感させられる。

 だが学べることが多いのは同胞だけに限った話ではない。俺と境遇の違う者などいくらでもいる。必要なのは学べることを見出すことだ。

 同胞は俺に学ばせようとしてくれているからこそ見出しやすい。だがそれだけでは足りない。それだけの成長では俺は一生同胞の掌の上にいるだけの存在だ。もっと欲を持っていかねば。


「ま、話し合えるのはこんなところか」

「そうだね。後は各国で持ち帰って、進捗を確認しつつってところだね」

「では先ほどの話の続きだが、干したキノコのゆで汁を使うと言うのは――」


 ……確かに漬物は美味い。だがユグラ教の長や一国の王が食いつく話題なのかと言われると首を傾げたくなる。

 ただ意外とためになる話なのも事実、俺もメモを取っておくとしよう。野菜を美味しく食べる方法はいくらあっても損ではないからな。


 ◇


 この場所には正直顔を出すだけでも遠慮してぇ。何せどこもかしこも獣臭ぇ。魔物がまともに風呂に入るとか思っちゃいねぇが、来客には気を遣って欲しいもんだね。


「――何の用だ、『色無し』」


 流石に緋獣ともなれば俺の突然の来訪にも驚くことはねぇか。堂々と玉座に座ったまま俺を見つめてきやがる。

 まあ周囲にいるユニーククラスの魔物達の警戒心は、さっきから臨戦態勢マックスで見ていて愉快だがな。


「そろそろ戦争が始まりそうだからな。激励をしにきたってことにしておこうか?」

「邪魔をしにきただけならば去れ」

「邪魔とか言うなよ。傷つくぜ?」

「そうか、それは誇りに思おう」


 あらやだ、こいつの冗談のセンス、微妙に好みだな。本気で思っているとは考えないでおく。

 あまりじらしても雑魚共が緊張に耐えられずに飛び掛かってきかねない。さっさと本題を話しておくとするかね。


「俺は戦闘に関しちゃノータッチだ。だが一つお前に要求をしに来た」

「要求だと?」

「ユグラの星の民、素性や容姿についてはラーハイトから聞いているよな?もしも戦争の際にそいつを捕まえることができたのなら、殺さずに俺に引き渡しちゃくれねぇか?」

「『蒼』や『紫』、そして『金』を手懐ける男をみすみす逃せと言うのか」

「好き勝手にやらせちゃぁヤベェ奴だがな。個人の実力はお前の支配下にあるどの魔物よりも弱ぇよ?捕まえられる時ってのは殺せる時だ。その時に殺すのを止めてくれりゃあ良いだけだ」


 そりゃあ周囲にあの女騎士や落とし子がいたんじゃ緋獣自身でも捕獲は難しいだろうよ。だがそれらを排除してしまえば後はただの人間でしかねぇ。

 あの『地球人』、どうせ戦争に関わるのは目に見えてるし、負けた時に放っておくとあっさり死ぬだろうからな。黒姉のためにも命だけは繋いでもらわなきゃならねぇ。


「……それをする利点が見えんな」

「おいおい、誰に言ってるんだ?俺はユグラの次に世界の理に詳しい男だぜ?お前程度に利点を与えるなんて、わけないに決まってるだろ?」


 おっと、周囲の雑魚が更に苛立ちを覚えちまった。事実を言うだけで怒るなんて沸点低いねー。


「良いだろう。わざわざ殺す真似は避けよう。人相の分かる物を寄越せ。配下にも伝えておく」

「そいつは助かる」

「だがユニークの者までだ。それ以下の魔物が衝動を抑えきれずに喰い殺したとして、我には何の落ち度もない」


 あるに決まってんだろ。それくらい躾けろ。とは言わねぇでおくか。できないことをやれって言うほど俺は外道じゃねぇ。ユグラとは違うんですよ、ユグラとは。

 空間上に『地球人』の姿を映し出してやる。ここにいる連中に見せりゃ十分だろう。


「言っておくが、こいつには回復魔法も使用できない。うっかり深手を負わせればそれだけで死ぬからな」

「承知した」


 本当に大丈夫かね?俺は禁忌に触れた奴以外には敵対行動を取れねぇ。つまりはいざって時に割り込むこともできねぇ。

 あーやだやだ。こんな獣共を信じろとか、できるわけもねぇ。


「ま、激励に来たってのは嘘じゃねぇ。今となっちゃ魔王としての役割を果たしているのはお前だけだ。今ならユグラもお前の侵攻を止めようとはしねぇだろうよ。精々ユグラから叶えてもらった願いを噛みしめるんだな、将軍様よ」

「――言われるまでもない。我が願いはこの数百年、一度たりとも揺らいだことはない」


 だろうな。こいつの頑固さは筋金入りだ。何せあの碧王に喧嘩を吹っ掛けて、半殺しにされても折れねぇような奴だ。この世界にいるどんな強者でもこいつの心は折れねぇだろうよ。

 ただその野心が狂ってやがるがな。さて、そろそろ帰らねぇと体に獣臭さが染み付いちまう。


「そんじゃまあ、楽しめ緋獣。寝ても覚めても終わらぬ闘争を」


なおこの場で一番話についていけていないのはマリトと同じ部屋にいるせいで緊張して動けていないミクスです。


さて今回のキャラクターデザインラフは一回飛ばし、代わりに別のイラストを紹介させていただきます。

なんと、イラスト担当であるひたきゆうさんがTwitterでの販促イラストを描いてくださっていたのです。

挿絵(By みてみん)

私服姿のイリアスさん。表紙に比べ幾分か楽な笑顔な点が、オフっぽさが出て良いですよね。

自作のキャラにイラストがつくだけでも嬉しいのに、こうして描き下ろされるイラストが生まれると言うのは作家冥利につきますね。今のパソコンの壁紙はこのイラストです。顔のサイズが実物大になるように調整しています。

ただどうもひたきゆうさんには恐縮させてしまっているので、もっと温和的に感謝を伝えていかねば……。

怖くないですよー、肋骨に転生して喜ぶ話とか書いているちょっと変な人なだけですよー。なるほど、これは厄介だ。

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国主同士が漬け物話題で盛り上がれるのは 平和な証で。
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