次に待つ展開は。
「防壁には絶えず無数のアンデッドが群がっている。報告では未だに底が見えぬとのことだ。現状では突破される心配は無いが弓矢と投石用の石が不足すればいよいよ魔法による攻撃が主体となる。ユグラ教の聖職者達の集まりはどうだ?」
「問題なく、メジスより聖職者の部隊が派遣されており、間もなく交代制での迎え撃ちが可能となるでしょう。念のために周辺の斥候を行いつつの行軍故に多少の遅れはあるようですがクアマの兵力がそこ迄持たぬと言うことはありますまい」
ユグラ教クアマ支部の代表、セラエス大司教より現在の報告を聞かされる。
このゼノッタ=クアマ、四十を過ぎいい加減世継ぎを選ばねばならぬという時期にこのような大規模な戦闘の指揮を執ることになるとは……実に頭が痛い。
「各地の領主には現地での待機を命じてある。本国の兵が疲弊するようであれば彼等を呼び出す予定だ……だが……」
無数のアンデッドの脅威は現時点では絶望的と言うほどではない。
魔物達は最も移動の容易い平地だけを利用しているためその全てが防壁に集まっている。
知能のない愚直な侵攻を防壁が抑え込む、その上からの射撃系攻撃による封殺攻撃は十分に効果を発揮している。
アンデッドの残骸が足場となる危険性があるため時折過度な火力での魔法攻撃を行う必要があるが魔法部隊のローテーションもそこまで無理のあるものではない。
しかし持久戦に対応できるとしてもそれを永続的に続けていては国庫が傾く。
何とか事態の収束を図らねばならないのだが、その方法が非常に困難なのだ。
アンデッドの数が尽きると言う期待は今の所しない方が良いだろう。
ともなればこれらアンデッドに指示を出している存在、蒼の魔王を排除する他にない。
だがクアマの兵力では魔界に逆侵攻を行い、魔王の元まで辿り着ける可能性はほぼない。
そもそも居場所すらわからないのだ、行き先も決められぬまま兵士達を魔界に送る真似はできない。
「魔界への斥候は効果が無いようですな」
「ああ、アンデッド達は日夜関係なく襲い掛かってくる。そんな魔物が蔓延る大地を隅々まで探索するのは困難だ。敵の拠点の位置も兵力の最大数も分からぬ状況では防戦一方だ」
普段からクアマ魔界に足を運んでいるのは腕利きの冒険者達、そんな彼等でも命の危険を冒すような散策は行わない。
金を積んで雇ってはいるが成果の期待はできないだろう。
「――数日前、件の者達がリルベに滞在しているとの報告が入りました」
顎髭に手を添えながら、つい唸り声が出てしまう。
突如聞かされた魔王の復活、これだけでも開いた口が塞がらない状況だったのにさらに聞けばあの紫の魔王がこのクアマに潜伏していたと言うではないか。
急遽商人達の商館全てに兵士を派遣して詳細を探った所、確かに存在不明の女が一人幅広く土地を転々としていた痕跡が発見された。
その情報を隠していた筈の商人達でさえも混乱しているほど、実に巧みに潜伏していたらしい。
他にも隣国である南の大国ガーネの国王までもが魔王だと言う始末。
その二体の魔王を仲間に引き込み第三陣営を宣言した勇者ユグラと同じ星の異世界の者。
一度に情報が湧きすぎだ、子供時代に遊びの隠れ家にしていた廃屋の布団を叩いた時に舞い上がった埃の量に驚いた時以上だ。
その青年はセラエス大司教の協力要請を受け、このクアマに足を運んでいるとのことだが私の下に来るわけでもなく、近くの領地であるリルベに滞在している。
「魔王を従えたユグラの星の民の事か……。セラエス大司教、このクアマに訪れていると言うのに何故その者達はこのクアマ城を訪れない?」
「王や私の目の届かぬ範囲で何やら画策していると見るのが妥当かと」
不穏な気配のする話以外も交えてもらいたい。このままでは危機感が麻痺しかねん。
ユグラ教の最高責任者であるエウパロ法王もその青年に肩入れしている様子であり、セラエス大司教からはしばらく様子見することを勧められたがその通りにして正解と言えるだろう。
世界に深い傷痕を残した魔王達、その世界の怨敵たる魔王を仲間に取り込み中立を宣言するなど正気とは思えない。
だがその特異性については協力を願う価値は大いにある。
今まで水面下で活動していた魔王の存在を暴き、仲間にした手腕は勇者ユグラと同等の偉業と言えよう。
「今はその者の働きに期待せざるを得ないのだろうが……その後の事も念頭に行動しなければならない現状で手元にいないと言うのはなかなかに不安要素だな」
「ご安心を、その者と対面したことがありましたが少し睨む程度でこちらの視線から目を逸らすような臆病者。多少の知恵が回り、ユグラの星の世界の知識の恩恵があるが故に成果を出せているに過ぎない若造です」
思ったよりも小物と言うことか……期待は下がる。
生半可にユグラと同じ叡智を持つために容易に敵の手に落ちる可能性のある存在……。
「味方としては心許ない限りだな、安心できんではないか」
「保有している力には価値があります。そして御しやすい、その意味での安心と言う事です」
「成程、そういうことか。だがそう易々と手綱を握れるのか?」
「方法は幾らでも。魔王にすら情を持つような甘い考えの男一人、絡めとる事など造作もありません」
セラエス大司教、現在のエウパロ法王が就任する前より大司教の座に居続け、長期に渡ってユグラ教に貢献した男。
貴族達と表向きの交流を深めているウッカ大司教と比べればその知名度は低い。
だがセラエス大司教の素性を知っている者は決して軽視することはない。
宗教とは純粋な信仰だけで成り立つものではない。
金になり、利権となり、良からぬ欲の発端ともなる。
セラエス大司教はそういった問題の芽を世間に知られることなく摘み取り続けた陰の立役者だ。
正式な手順を踏んで裁かれた悪よりもきっと多くの悪が彼の手によって知られることなく処理されてしまっているのだろう。
私も彼にとっては御しやすい王と見られているのかもしれない。
だがその意志思想には私も十分賛同し、尊敬の念もある。
この世界を綺麗にする為に誰よりも率先して手を汚した男だ、その手助けになるのならば扱いやすい駒となるのも悪い事ではないだろう。
◇
「クアマには行かないだと!?」
蒼の魔王の侵攻を防ぐにあたり、今後の方針を全員に説明する。
その中で声を上げたのが真っ当な意見担当のイリアスだ。
「情勢や地図と言ったクアマの情報だけならトクサド卿が用意してくれた資料で事足りるからな。用意の速度も迅速で非常にありがたい」
「そ、それはどうも……」
ちなみにトクサド卿もしっかりと呼びつけてある。
場所は牢獄から品の良さを感じる応接間へと移っている分トクサド卿の表情は若干穏やかだ。
「しかしクアマに行かねば色々と不利益があるのではないのか?」
「今のところ大した問題は無いな」
「例えば……人手とかあるだろう?」
「多少の物資や人手ならトクサド卿から借りれば済む。戦力としての人手という意味ならクアマに行ったところで期待はできない」
「何故そういい切れる?」
「クアマはセラエス大司教が幅を利かせている国だ。そしてクアマ国王はセラエス大司教と頻繁に会う仲の良さだ」
クアマがユグラ教から魔王復活の情報を得てなお沈黙を保っているのはセラエス大司教の差し金だろう。
ならば自然とクアマ国王もセラエス大司教と同じく反第三陣営派となる。
魔王の軍勢に攻められてもユグラ教経由でしか他国への救援を求めないような国だ、他の勢力への警戒心は非常に強いだろう。
「確かに非友好的な者の為に貴重な戦力をどうぞと分け与えることは無いだろうな。そこのトクサド卿でさえ魔界への派兵は渋るだろう」
「いや、あの、その……」
「エクドイク、あまり苛めてやるな」
「お前が言うのか」
「大人数で責め立てる時は相手の反論意志を折る時や立場を奪い追い込む時だけだ」
「……覚えておこう」
嫌われ役は少ない方が良い、そもそもウルフェの教育に悪い。
「先に説明しておくとトクサド卿がリルベの兵士に戦準備だけを行わせ派兵を全く行っていないのはクアマ国王の指示だ」
「そうなのか?」
「は、はい!」
「現在の戦況は防壁の上に兵士達が陣取り防壁下に群がるアンデッド達を遠距離攻撃で這い上がってこないように散らし続けていると言ったものだ。意志のないアンデッドにはそれで充分だからな。そして防壁の上に陣取れる人数には限りがある」
「そうか、戦場が防壁だけの状態で各領土から兵士を集めれば戦えない兵士の分の兵糧が無駄になるのか」
「そういうことだ。今後戦況が長引き本国の兵士が疲弊、もしくは戦場が複数に増える事態になればすぐにでも派兵の通達が来るだろうよ」
アンデッドの総数はとにかく多い、防壁の外側に逆侵攻を掛ければ乱戦となりそれこそ兵士が消耗品となってしまう。
数の限度が見えない相手に総力戦を挑むのは愚行だ。
防壁が守れると判断できるうちは消耗を控え、効率的に相手の戦力を削ることに専念すべきだろう。
とは言えこれが通じるのは相手に意志がないまま愚直に数での一点突破を狙っている場合だけだ。
アンデッドに意志は無くとも指示ができる存在がいる以上は多方での戦闘も考慮すべきだ。
「だがこれでは膠着状態になるだけではないか?」
「確実になるな。つまりはここまでは蒼の魔王のシナリオ通りってわけだ。クアマからクアマ魔界に攻め入るには情報が圧倒的に足りていない。クアマにできるのは現状維持を続け斥候や冒険者を魔界に送り込んで蒼の魔王の所在地を突き止める事だろう」
ついでに言えばこちらが何らかの情報アドバンテージやらを活かして戦況を変化させるのを待っている。
だがクアマでそれらの行動を行えばこちらの手の内を常に把握された状態と言う事になる。
もちろん策の一つや二つ、こちらにしかない手段を用いる気は満々だがそれをセラエス大司教の掌の上で行うつもりはない。
「クアマとの連携は行わなくて平気なのか?」
「奴さんの動きを把握した状態で小回りの利くこっちが勝手に動けば十分連携だ。こちらの動きはトクサド卿がとっくに伝えてくれているからな」
「そうだな」
「ひっ!?」
全員の視線がトクサド卿に向けられることで怯えるトクサド卿。
当然ながらトクサド卿が秘密裏にクアマ本国に連絡を入れていることを感知するなどエクドイクを使えば容易いことだ。
不可視の魔法を掛けた鎖を衣服やらに仕込めばあら不思議、その鎖を盗聴器として使うことができる。
ほんと、利便性においてエクドイクの右に出るものはいない。
「別に咎めるつもりはない、領主としての仕事はしっかりこなしてもらって構わない。伝え方次第では止めるがその辺はしっかりと口を堅くしてくれているからな? ただ本国からこちらを連れて来いと言った命令に関してはこちらが断固拒否している旨をしっかり伝えておいて貰えれば良い」
あえて黙っていたのは行動を監視されていることを気取られないためだ。
トクサド卿としては秘密裏に情報を本国に送ったつもりなのだろうがそれを当然の様に見破られていたともなればセラエス大司教との下手なやり取りは行わないだろう。
「は、はひ! そ、それでお使い様はこの後どうされるのでしょうか……?」
「結局この魔物の進軍を止めるにはクアマ魔界にいる蒼の魔王をどうにかしなきゃならないからな。その為の準備を行うつもりだ」
「準備と言いますと以前要求された木材やらですか?」
「ああ。あと手の空いているこの街の大工を借りたい。呼び寄せられるよな?」
「それはもちろんですが……兵士等はよろしいのですか?」
「リルベの兵力はクアマの兵力でもあるからな。勝手に消費したらただでさえ心証が悪いのにさらにヘイトが溜まりかねん」
そもそも少数精鋭で来ているのに余計な人数を増やして動きを鈍らせては仕方がない。
戦闘関連はイリアス達に任せられる範囲で受け持てば十分、行うべきは蒼の魔王を見つける事だ。
「そうだ、鍛冶屋に弓矢の生産を依頼しておいてくれ。防壁で確実に減っているのが矢だ、それが尽きたら兵士達が軒並み暇になるわ魔法を使える連中の酷使が始まるわでリルベへの派兵依頼がすぐに飛び込んで来かねないからな」
「そ、そうですね、直ちに!」
トクサド卿は一礼してその場をワタワタと離れていく。
人数比が人数比だ、非常に居心地が悪かっただろう、可哀そうに。
「ふむ、準備に関して私達にできる事はあるのか?」
「色々あるぞ、一番忙しくなるのはエクドイクだろうがな」
「ふふん、やはりこの中では俺が一番頼りになると言う事だな」
「ほう、言ってくれるな」
何故か不敵な笑みで返すイリアス。
言えない、特にお前は当面出番ないとか言えない。
「エクドイクには別に指示を出すとしてミクスとラクラはその下準備の手伝いだ。イリアスとウルフェはこちらの補佐、大半は力仕事を頼むことになるが構わないな?」
全員に確認するとラクラ以外が素直に頷いた。
「一応言いたいことがあるなら聞くぞ」
「私にもエクドイクさんと同じ事ができませんか?」
ふむ? ほう、ほうほう。
以前エクドイクと何かあった際に対抗心でも燃やしたのか、そもそもラクラに燃える心があったのか。
難易度としてはエクドイクに任せるのが手っ取り早いがある意味では単純作業、ラクラにもできる事だしな。
本来の狙いのついでにこちらも少々手を加えるのも悪くない。
「良いぞ、エクドイクと分担できるならその分エクドイクの負担も減る。ただしミクスの負担はちょっと増えるからな」
「私は構いませんぞ! ラクラ殿がやる気になるなんて流れ星を見つけるよりも滅多にないことですからな!」
「何か引っかかりますが、ありがとうございますミクスちゃん!」
「……ふん」
対するエクドイクは興味なさそうな素振りを見せているがあの様子だと内心燃えていそうだな。
まあ非常に地味な作業になるのだが……言わないでおこう。
◇
蒼の魔王の居城、蒼の魔王は人間への侵攻を開始したにも拘らず憂鬱そうな顔で黄昏れる。
そこに現れたのは少年姿のラーハイト。
「戦況を少しばかり見て来ました。見事に拮抗状態ですね」
「そんなこと言われなくても分かるわよ……嗚呼、死にたい……」
「それにしても何故中央の防壁を一点集中といった策を取ったのですか? 数を展開すれば各地での混戦に持ち込めたでしょうに」
ラーハイトはワザとらしく首を傾げて見せる。
少年の姿とは言え、可愛らしさなど微塵もない。
蒼の魔王はそんな質問に溜息をつきながら気怠そうに答える。
「貴方、今策と言ったわね? どうして人間相手に小賢しい策を練らなきゃならないのよ。そんなことをすれば『私は力比べに不安を抱いています』って言うようなものじゃない。そんな風に思われようものならひたすらに死にたくなるわよ」
「ですがあのような攻め方ですと徒に兵を消費するだけではないのですか?」
「……消費? そんな下らない発想を持つあたり貴方は人間なのね……良いわ、少しだけ説明してあげるわ……死にたい……」
蒼の魔王が視線を適当に流し、片手で何かを招く仕草を行う。
すると間もなくして一体のアンデッドが現れた。
現在防壁を攻めているアンデッドと同じ物、単体の戦力だけで言えば兵士以下である。
とは言え通常攻撃だけではその体に内在する魔力により何度でも修復を行い不滅の存在として周囲の生物を襲い続けるため油断はできない存在だ。
「現在防壁を攻めているのと同じ下級のアンデッドですね」
「貴方、これを倒せる? 倒せるならさっさと倒してくれないかしら?」
「はぁ、良いですが」
ラーハイトは魔法を使用する。
自らの魔力が漂う範囲にポイントをセットし、その後ワンアクションで鋭利な水晶を発生させる独自の魔法だ。
地中から突き出した水晶は容易く猫背だったアンデッドの腹から背中まで貫通する。
しかしアンデッドはバタバタともがいて死ぬ気配はない。
ラーハイトは歩み寄り発生した水晶に手を触れる。
すると水晶は白い輝きを帯び始め同時にアンデッドが震えた後に硬直し、やがて塵となって地面へと零れていった。
「これでよろしいですか?」
「ラーハイト、貴方今浄化魔法を使ったわね?」
「これでもメジスに司祭として潜り込んでいましたからね。防壁を護っている者達も同様にこうしてアンデッドを塵に還していますよ」
「浄化魔法がどうして悪魔やアンデッドに効果的か知っている?」
「ええまあ、浄化魔法は魔力を切断する仕組みに近く体の大半を魔力で構築されている悪魔や悪霊に当てればその体の構築を触れた端から破壊し再生不可にできる。アンデッドに効果的な理由としては死霊術によって繋げられた肉体と魂の結合を切断しやすい……であっていますよね?」
「そう、一度死霊術によって繋げられた肉体と魂を切断すれば死霊術は解ける。その後塵になるのは死体を無理に動かした際に死霊術の魔力で肉体が損壊するからなのよね」
そういって蒼の魔王は塵を指差す。
すると塵は見る見る元の形を取り戻し、先ほどのアンデッドへと戻っていった。
その様子に僅かにラーハイトの表情が真顔になる。
「……これは」
「塵だって元はその生者の肉体の一部なのだから死霊術を掛け直せばアンデッドとして再利用は可能なのよ」
「ですが今の工程、死霊術を発動する気配は無かったように見えたのですが」
ラーハイトは蒼の魔王の挙動を見逃さないように見つめていた。
だが蒼の魔王がしたことは塵を指差しただけ、魔法の構築や発動の傾向は見られなかった。
ただ意識しただけで塵となったアンデッドに再度死霊術を施したのだ。
「別に隠す事でもないのだから教えてあげるわ。魔王は魔物を生み出す魔力を生み出すことは知っているわね?」
「その魔力が大地の魔力を侵食することで魔界が生まれるのですよね」
「私の魔力はね、死霊術で生み出される魔力と同質、死者をアンデッド化させる特性を持っているのよ」
「それは……」
ラーハイトは思わず生唾を飲む。
今の言葉が本当ならば蒼の魔王の兵力は未だアンデッド一匹すら失っていないことになる。
今攻めているアンデッド達は皆防壁のこちら側、ここ蒼の魔王の魔力が満ちているクアマ魔界にて塵にされているのだ。
「ええ、このクアマ魔界がある限り私が意識するだけでアンデッドは無限に作れるの。質の良い物はもう一工夫いるけどね……これが時間掛かって面倒で……嗚呼、死にたい……」
「しかし無限に作り出せるとは言え、このままでは膠着状態が徒に続くのではないですか?」
「今までの話で分からなかったの? クアマの防壁なんて後数日も持たないわよ」
ラーハイトは言葉を中断し、今までの会話から蒼の魔王がいかなる方法で防壁を突破するのかを考える。
そして一つの結論にたどり着いた。
「……なるほど、やはり魔王様は何方も恐ろしい」
「中身が大人とは言え子供に恐れられるなんて……嗚呼、死にたい……」
蒼の魔王は嘆きながらまた一人虚空を見つめ溜息をついた。