表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/257

97話 第五章 第七章 トウカの隠し事

 メイド控え室の扉が激しく閉じられた。そしてメイド長の声が響く。


「皆さん、もう少し節度を持ってください」


 急いで片付けを始めるのはメイド達。当然、トウカも含まれている。決して、トウカがはしたない格好をしていた訳ではない。そして、今日来たばかりのトウカが私物を置いている訳でもない。それでも、皆と協力して片付けを行っている。連帯責任れんたいせきにんというものだ。そんなあわただしい中、一人のメイドがトウカに質問した。


「さっき、入口にいた方が新人の執事さん? お嬢様の部屋で会ったんでしょ?」


 トウカがお嬢様の部屋に食事を運んだ時の話だ。メイドの界隈かいわいでも話題に上がっている。新人の執事が早速おもちゃにされたと言う事実。


「ツバサさんのこと?」

「え! もう、名前まで聞いたの? トウカさん、ずるい!」

「えっと……。名札なふだをたまたま見たのよ」


 トウカが苦しい言い訳で逃れようとする。執事に名札などぶら下げていない。名札が付いてるなんて、まるで幼稚園児のようだ。


「トウカさん、何か隠し事しない?」


 メイドの一人が、じと目で見つめる。


「な、何もないわ」


 トウカがソッポを向いた。目がキョドっているのを誤魔化しきれていない。今のトウカは隠し事だらけ。ツバサのことはもちろん、城に侵入することすら隠し事。思い当たる節が多ければ、挙動不審きょどうふしんにもなるだろう。


 そして、片付けが一段落すると、再度、扉が開かれた。ツバサの姿が現れるとメイド達の黄色い声が木霊こだまする。まるでアイドルスターが現れたような歓声だ。


 そんな中、ツバサが口を開いた。


「トウカさん、帰りますよ」


 その言葉を発した途端とたん、メイド達の目がトウカに集まる。


「ちょっと、知り合いなの?」


 メイドの一人に突っ込まれた。


「えっと、ちょっと知ってたり、知らなかったり……」


 トウカは冷や汗全快だ。誤魔化してやり過ごそうとした作戦は泡と消えた。


「一緒に帰るって、もしかして新人執事さんと付き合ってるとか?」

「まさか! あたし別にいるもん!」


 トウカは全力で否定する。否定してしばらくすると顔を赤らめる。


「え? 誰、誰?」


 メイド達は興味津々だ。


「言わなきゃ、ダメ?」

「ダメよ」


 メイド達が身を乗り出す。


「今度、連れて来るから」


 トウカは手を合わせ堪忍ポーズを取り入口のツバサの元に駆け出した。


「ツバサさん、行くわよ」


 トウカがツバサの手を取り廊下に駆け出す。


「やっぱり、トウカさん、ずるい」


 背後からはメイド達の嫉妬の念が伝わってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ