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85話 第四章 第十四節 服選び

 ペンダント騒動が終わり、いよいよ本番だ。ショウの目的はユウの服選び。見事なまでに脱線していた。


「オヤジ? 魔道服を頼むよ」

「女性物だったね。ちょっと待ってな」


 店主は店の棚に並んでいる商品を手に取っている。複数あるようだ。


「兄ちゃん。どんなのが良いんだ?」


 店主がカウンターに数着の魔道服を並べた。白色、黒色、茶色、薄水色、ピンク、オレンジ等。かくいろいろとあるようだ。

 だが、ショウは自分のファッションセンスに自信がなかった。自分が着る分には、自分で気にいればそれでよい。他人にとやかく言われる筋合いはない。しかし、贈り物となると話は別だ。気に入ってもらえなければ意味がない。

 ショウはどれにしようかと悩んでいた。今まで送った物、全てに喜んだユウ。次もそうだとは限らない。だからこそ、そろそろ不満を漏らすかもしれないとショウが悩む。

 しかし、一人で悩んでも仕方がない。ここには二人の女性がいることを思い出した。二人からアドバイスを貰えばいいものが買える。そう思ったショウが二人に相談を始めた。


「なぁ? ユウの服、どれがいいと思う?」


 トウカとツバサは未だにペンダントの行方の話しをしていた。ショウに話しを振られて、二人の動きが止まった。


「えっ? あたしが選ぶの?」


 トウカが嫌そうな顔をした。まったく乗る気でない様子だ。未だにユウのことを恐れているのかもしれない。気に入るものを差し出さねば魔法で吹き飛ばされることを懸念けねんしているようにもみえる。


「じゃあ、私が選びますっ!」


 一方、ツバサは選ぶ気満々のようだ。その様子を見たショウはツバサにお願いすることにした。


「じゃあ、ツバサ見繕ってくれよ」

「はい。分かりました」


 ツバサが一着の服を手に取った。灰色のローブのようだ。


「これなんて、どうですか? 見習い魔道士っぽくて、ユウさんにいいかも」

「それって、レベル1の装備じゃないか?」

「そうですよ。私なんて、いつも雑魚呼ばわりですから、ユウさんも雑魚仲間にしますっ」


 ツバサの服の選び方は、たぶん間違ってるのだと、ショウでも感づいた。相談するんじゃなかったと、後悔がつのる。


「おい、またユウに怒られるぞ」

「じゃあ、こっちの服で」


 ツバサは今度は、ピンクの色の魔道服を手に取った。首元にはファーが付いていて、可愛い系の服のようだ。


「ユウがピンクか? まぁ、あいつなら何でも似合いそうだがな」

「なんで、そんなに高評価なんですか? 私もピンク似合いますか?」


 ショウがツバサのピンク色の服を着る姿を思い浮かべた。意外と似合うかも知れないと少しばかりデレた。そして、さらにピンク服のまま、斧を構えている姿を想像した。ピンク服に斧装備。萌アニメで見た光景と瓜二つだ。発言を躊躇ためらった。


「ショウ先輩っ! なんで何も言わないんですかっ!」


 ショウが発言を躊躇ためらったのが裏目に出たようだ。だからと言って萌えアニメのキャラとそっくりとは言えるはずない。そもそも、ツバサに助言を求めたところが間違いだ。このままでは服選びが終わらないことを悟り、ショウは実用性で考えることにした。


「オヤジ? レベルの40の魔道服を頼む」

「兄ちゃん? レベル40なんて王国の軍団長レベルの服だよ? 誰が着れると言うんだい?」


 レベル40、現在この世界での最高レベルだ。それだけのレベルがあれば王国の軍団長を名乗ることが出来るのであろう。それほどのレベルの服が欲しいといわれ、店主は驚いたのだ。

 ショウは、軍団長レベルの服だと言われ考えていた。現在のこの世界での最強クラスの服で目立つのもよろしくない。トウカみたいに拉致される可能性すらある。しかし、ユウなら拉致されても余裕なのかもしれない。この世界ではユウは強すぎる存在だ。


「ショウ先輩っ! じゃあ、やっぱりレベル1の見習い服にしましょうよ」


 ツバサは未だにレベル1の見習い魔道服をユウに着せたいようだ。日頃の恨み晴らすかのように執念深い。


「さすがにレベル1じゃあ、ダメだろう? もう少し何とかしてやらないとな」

「そうですか?」


 ツバサはまったく納得していない様子だ。


「じゃあ、オヤジ? レベル30くらいの服はどうだ?」

「レベル30ならこの服だが、それでもエリート兵並の服だ。着れるのかい?」


 この世界ではレベル30でも強い部類に入るようだ。しかし、あまり質を落としてはユウに申し訳ない。ショウはレベル30の服を選ぶことにした。


「オヤジ、その服で頼むよ」


 店主が手に取った服は純白の魔道服だ。ユウに良く似合うのではないかとショウは想像を膨らませる。


「兄ちゃん、プレゼントか何かかい? ラッピングくらいサービスするよ」


 店主がショウにラッピングを提案した。贈り物なら当然だろう。ショウはそこまで考えが至らなかった。しかし、その言葉を聞いたツバサは全否定した。


「必要ないですっ! そのままくださいっ!」

「おいツバサ? どうしたんだ? サービスしてくれるんだからラッピングしてもらえばいいじゃないか?」

「ダメですっ! すぐ着るんで、無駄になっちゃいますっ!」


 ショウはラッピングを諦めた。ツバサに言ってもどうせ聞き入れない。


「オヤジ、そのままでいい。ラッピングはなしで」


 ショウが言うと、ツバサはニコリとした。そして、ショウは代金を支払い、女性物の魔道服を受け取った。


「そういえば、ツバサは新しい服は要らないのか? それ、トウカのお下がりだろう?」


 ツバサの服は昨日、石化から解けた時にとりあえず着せたトウカのお古だ。昨日は新しいのはいらないと言っていたが、性能が高い服のほうがいいに決まっている。


「私ですか? この服でいいですよ。それより炎の剣がほしいですっ!」

「ツバサさんには斧があるわっ!」


 急にトウカが話しに割り込んできた。


「でも、私も炎の剣ほしいです……」

「なんだ? オレの渡した斧が気に入らなかったか?」

「そ、そんなことありません。いつでも使いますっ!」


 ツバサは、貰った斧を大切にしているようだ。


「じゃあ、炎の剣はいらないな」

「そんなぁ」


 ツバサの不用意な発言で炎の剣はお預けとなった。


「じゃあ、買い物は終わりだな。戻るか?」


 これでユウの服を無事に手に入れることが出来た。あとはユウに喜んでもらえるか、どうか。ショウは白い魔道服を手に掛け帰路に着く。

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